炎舞の双子と飛竜を駆る少女

純粋どくだみ茶

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05.いつつめ

05.女神との会話

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火龍神殿の主であるベティ(龍神)は、セール王国にある女神ラティア様の神殿へお付きの神官2名と
供に向かった。

セール王国にある女神ラティア様の神殿は、馬車で移動すれば数週間はかかる程の距離なのだが、ベティ(龍神)が所属する冒険者チームのリーダー榊が各所に設置した転移石を用いれば、一瞬でセール王国までの移動が可能だ。

転移石は、榊が各所で経営しているピッツア屋の食材の運搬やスタッフの移動に使うために設置したものだが、店の場所がセール王国の水神様の神殿の近くだったり、エルネス王国の火龍神殿の目の前にあるため、各神殿への移動には、ピッツア屋を利用していた。

相変わらずセール王国の女神ラティア様の神殿へ続く参道には、飯屋、宿屋、土産物屋、出店が多く参拝客や観光客で溢れかえっていた。
セール王国の女神ラティア様の神殿の近くには、水神様の神殿もあり観光客は、両方を参拝する者が殆どであった。

この水神様の参拝者がよく買っていく土産に、水神様の角が生えたカチューシャがあった。
参拝者は、この"なりきり水神様カチューシャ"を男女問わず頭に付けて、水神様になりきるというもので、このカチューシャを付けたまま女神ラティア様の神殿に参拝に来る観光客も少なくなかった。

ベティの頭に龍神の証である角が生えていた。
しかし、参道を歩いている男女の半分くらいの頭には、"なりきり水神様カチューシャ"を付けていた。だから人の頭から角が生えている事など誰も気にしてはいなかった。

「ベティ様、頭の角がここではたいして目立ちませんね。」

「そうなのじゃ、"なりきり水神様のカチューシャ"を皆が付けておるからの。」

「こんなに角を気にせんでもよい場所なんぞ他にはないのじゃ。楽でよいのじゃ。」

ベティは、軽い笑い声を発しながらお付きの2人の神官を伴って参道を女神ラティア様の神殿へと向かった。



女神ラティア様の神殿前は、観光客と信徒達でごった返していた。
その人混みの中で道案内をしている神官を見つけると、ベティは気さくに話しかけた。

「おぬし、悪いが火龍神殿から来た龍神のベティじゃ。悪いが神官長のところへ案内してくれ。」

ベティは、水龍の水神様とは、懇意にしておりたびたび水神様の神殿に遊びに来ているので、神官も見知ったベティが神殿の奥へと勝手に入って行ってもだれも咎めたりはしなかった。

しかし、女神ラティア様の神殿へは、年に数度しか訪れないため、神殿内へずけずけと入って行く訳にはいかなかった。
神殿に参拝に来る観光客や信徒達の道案内をしていた神官は、声をかけて来た者へと顔を向けた。

そこには、まだ16歳くらいの少女と2名の神官が立っていた。
神官の服は、この神殿のものではなく、白地で裾に向かって赤く染められた物だった。

神官は、各地の神殿の神官服を熟知しているため、この神官服を着た神官が火龍神殿の者である事を直に理解した。
しかし、火龍神殿の主が来るとの連絡は受けていなかったため戸惑った。

「えっ、火龍神殿のベティ様。火龍の…。はっ、はい。こちらへどうぞ。」

神官は、慌ててベティと2人の神官を神殿の奥へと案内した。



神殿の奥へ通されたベティと2人の神官は、神官長の事務所へと通された。

「ようこそお越しくださいました。火龍神殿の龍神様が直々にお越しくださるとは、何か緊急なご用件でしょうか。」

ベティは、出されたお茶をぐいっとひと飲みしてから要件を切り出した。

「すまんの。急に来たりして。そうなのじゃ緊急の要件なのじゃ。」

「女神ラティア様がの、うちの火龍の幼生どもに加護を授けてくれたのじゃ。」

「ただな、うちの幼生どもは、まだ生まれて間もないものでな、女神ラティア様の神殿に、参拝に来た事は一度もないのじゃ。」

「それは、おめでとうございます。ですが、当方の神殿に参拝に来られない方でも、加護を授かる方は大勢いらしゃいます。」

神官長は、にこやかな顔でさらっと受け流した。
こやつ、今嘘を言ったな。分かって言っておるのか。女神の加護などそう簡単に授かるものではない事くらい神官ならずとも誰でも知っおるはずじゃ。
こやつのらりくらりとかわすつもりじゃな。ベティは、神官長の笑顔の奥底に秘めた思惑を疑いはじめた。

「それは、とても嬉しいことなのじゃがな。実はな、それだけじゃなくての、人化の術も授かったのじゃ。」

「えっ、人化の術ですか。」

「そうじゃ、龍族なら数百年の歳月を経てようやく会得できるか、龍神とならなければ会得できない術じゃ。」

「人化の術は、女神様の加護など比べ物にならん代物じゃ。」

「それにな、最近うちの幼生共の成長が著しいのじゃ。」

「はあ、そうなのですか。」

やはり、神官長は知らぬ存ぜぬで押し通すはらずもりのようだ。

「女神ラティア様は、神器"神の導き"など使用していないと思っておるがの。」

「神器"神の導き"とは、何の事でしょうか。」

「ほお、しらばっくれるか。」

「申訳ありません。私共は存じ上げておりません。」

「ならば仕方ない。女神ラティア様に直接話をするのじゃ。」

「えっ、今なんて…。」

ベティ(龍神)は、神官長の事務所を出ると、礼拝堂へと向かった。

「あっ、あのお待ちください。」

神官長は、慌ててベティ(龍神)の行動を阻止しようとした。
しかし、ベティ(龍神)の歩く速さについていけず、あっという間に礼拝堂へと来てしまった。

ベティは、礼拝堂の祭壇の脇に立つと、女神ラティア様と直接話をすべく龍神の力を用いた。
しかし、女神ラティア様からの返答はなかった。

「そうか、わしと話をしたくないか。ならば、うちの幼生共に何をしようと企んでおるのか分からんが、それはわしの龍神の力を用いて全力で阻止させてもらうのじゃ。」

「それに、わしが所属しておるチームのリーダーである榊殿が毎月奉納しておる菓子があったの、あの道明寺と草餅とやらも金輪際なしじゃ。」

「榊殿は、わしの話をよーく聞いてくれるでの。わしが言えば…。」

すると、礼拝堂の祭壇の上に光の塊が現れると、見目麗しい女神ラティア様が姿を現した。
礼拝堂には、次の礼拝の順番待ちをしていた信徒や観光客でごった返していた。

そこに突如として現れた女神ラティア様の姿を見た観光客や信徒達は、一斉に悲鳴とも思える声を上げると皆膝を付いて頭を垂れた。

「龍神、話が強引すぎます。それに、道明寺と草餅は、創造神様が心待ちにしておいでです。」

「それを突然止めると言われたら、私の立場というものがありません。」

「ほう、頭の中に直接話かけて来るとは、聞かれては困る話があるのじゃな。」

礼拝堂の祭壇の前では、女神ラティア様の具現化された姿と、それと話をするベティ(龍神)の姿のみが際立っていた。

「仕方ありません。本来ならば、神界だけの極秘事項なのですが、龍神であるベティさんには特別にお教えいたします。くれぐれも関係者以外の方へはお話にならないようお願いいたします。」

「分かったのじゃ。心して聞くのじゃ。」

女神ラティアは、ベティの頭の中に直接話をすると、事の重大さについて切々と説いた。

「なんと、そのような事が始まろうとしておったのか。」

「はい、時が来たら水神と龍神のおふた方にも協力をあおぐつもりでおりました。」

「そうか。そうじゃの。このような理由であるならば、致し方あるまい。」

「分かったのじゃ。わしとしてもなるべく協力はするのじゃ。」

ベティがそう言うと、女神ラティア様は、礼拝堂で膝をついて頭を垂れる観光客と信徒達に向かってほほ笑むと静かに消えていった。

「神官長どの、急に神殿に押しかけてきたりして悪かったのじゃ。」

「女神ラディア様との話も済んだので、わしは帰るとするのじゃ。」

ベティ(龍神)は、神官長にそう言い残すと、お付きの2名の神官を連れて神殿を後にした。
しかし、礼拝堂は、女神ラティア様がご降臨された事で大騒ぎとなっていた。

「女神ラティア様がご降臨さそばされたぞ。」

「女神ラティア様だ。」

「何かおこるのか。」

「天変地異の前触れか。」

神官達は、騒ぎ立てる観光客や信徒達に冷静になるようにと説いて周ったが、観光客と信徒達は冷静を保てずにいた。
神殿は、いつまで混乱の中にあった。



混乱の渦の中、神官長は、従えた神官見習い達に言った。

「よいですか、あの方が火龍神殿のベティ様、龍神様です。顔を覚えておきなさい。」

「あの方は、この世界で水神様と並ぶ最大火力の持ち主です。」

「そうですね。火力だけなら水神様よりも上かもしれません。」

「龍神様は、火龍神殿の主ですが、とある冒険者チームのメンバでもあります。」

「その冒険者チームのリーダーは、皆さんもご存じだと思います。毎月、この神殿にお菓子を奉納に来られる"榊"殿です。」

「ベティ様は、龍神様ではありますが、その冒険者チームの一員という事を大切になされているようです。」

「ですから龍神様に何かお話をする場合、まず"榊"殿に話を通してください。」

「この神殿に何かあった場合、王に助けを求める事も大切ですが、緊急を要した場合は冒険者チームの"榊"殿に助けを求めなさい。」

「"榊"殿に助けを求めれば、それは龍神様に助けを求めた事と同義となります。」

神官見習い達は、神官長の言葉を黙って聞き入れ、しずかに首を立にふった。



「さて、用事も済んだ事だし飯でも食べてから帰るのじゃ。」

「お前達も好きなものがあれば言ってくれ。好きなだけご馳走するのじゃ。」

2人の神官は、顔を見合わせると楽しそうにしているベティに向かって聞き直した。

「ベティ様よろしいのですか。」

「よいのじゃ、最近は、村や街からの依頼で魔獣退治くらいでしか神殿から出られないのじゃ。」

「こうやって外に出た時くらい、楽しまないといけないのじゃ。」

ベティの両手には串焼きが握られていた。
本当にディオネとレアを心配してここまでやって来たのか、実は神殿から出て美味しいものを食べるための口実だったのかよく分からないベティだった。
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