20 / 80
18 家族団らんでした
しおりを挟む
敦子は、美代子の車で家まで送ってもらった。
男の人たちは、あの後あとかたずけをしてから帰るといったので、一足お先に帰ってきたのだ。
その日の夕食の時には、やはり湖で起きた出来事が、家族の中で話題になった。
「 いやっ、すごかったよ。いきなりだからさ。みんなびっくりして、慌ててみたら水柱が高~く上がっててさ 。 」
「 お父さん、みんな見たの? すごいわね。私も見たかったわ~。敦子も神社行ったんでしょ? 敦子も見たの? 」
「 見てない。その時は、裏の滝にいたから。みんなのところに行ったら、もう水柱上がってなかった。 」
「 残念だったわね~。 」
「 やっぱりさ。ねえちゃん、善行が足りないんだよ。俺なら絶対見たのにな~残念。 」
「 お前が見れるわけないよ。草刈もさぼったくせに。 」
「 そうだよ、聡なんてぐうたら寝てたじゃん。 」
父も敦子も聡にぼろくそだった。
「 それにしても今までこんなことなかったでしょ。どうしたのかしらね。 」
母は、驚きながらも、この奇妙な出来事に心配顔をした。
「 大丈夫。今年は、滝の量も多いし、いい年になるよ。 」
「 そうねえ、去年までは、滝の水枯れそうだったものね。 」
そうなのだ。ここ最近は、いくら雨が降っても、なぜか滝の水が枯れてきていて、とても観光資源にはなりえそうもなかったのだ。同じように湖の水も透明度もなくなり、水がずいぶん減ってきていた。
あの湖は、滝の水が流れていることもあり、滝の水の水量の影響は大きい。
しかし今年は、見事に滝の水量がふえ、そのためかわからないが、湖の水も今までより透明度が増している。
「 よかったじゃん。これなら観光の売りになるんじゃない? それよりさ俺、ねえちゃんちで、面白いもん見ちゃったよ。 」
「 なに? 面白いものって。 」
すかさず母が、突っ込む。
「 聡、余分なこと言わなくていいの。もう泊めてあげないよ。 」
敦子が、異様に反応したからだろうか。父親は、ものめずらしそうに言い合う二人を見ているし、母親は、興味津々で聡に話を促した。
「 ねえちゃんちいった日、隣の人になぜかにらまれちゃったんだよ。それで今日の朝、こっちに戻ってくるとき、またお隣さんに会ってさ。弟って挨拶したら、なぜだかすごいご機嫌になってさ、お見送りまでされちゃって。びっくりしちゃったよ。それでその人なんだけどさ、すごいイケメンなんだよ。男の俺が見たって、すごいカッコいいのよ。そんな人と、なんでねえちゃんと仲いいのか、わかんないんだよね~。だってねえちゃんだよ、‟平凡が歩いてる”って言われるぐらいのさ。 」
「 失礼ね、なによ平凡が歩いてるって。誰が言ったのよ。それにね、玉山さんとは、何でもないの。ただ同じビルで働いてるっていうだけ。 」
「 そうかなあ~。あれは、普通で見たら脈ありって感じなんだけどなあ。でもあの人じゃあね、ねえちゃんとは、あまりに住み世界が違うって感じだしね~。珍動物を見る感じの興味なのかなあ。 」
それまで、黙って聞いていた母が言った。
「 なに、そのお隣さんて。どんな人なの? 敦子、電話じゃあ何も言ってなかったじゃない。 」
「 だっていうほど接点ないもの。ただのお隣さんなだけだし。 」
「 それにしちゃあ、一緒にご飯食べに行ったり、ご飯作ってあげたんだろ。 」
「 聡! うるさい、もう黙っててよ。 」
「 そうなの? お食事行ったりしたの? 」
「ただ成り行きで、ごちそうしたから、お礼に食事に連れて行ってくれただけ。 」
「 成り行きって何なのよ? 」
母の追及の手は休まない。
敦子は仕方なく、空を飛んだところを、見られたところは言わずに、料理を作っていたときに、お隣まで匂ってそれで料理に興味を持たれて、ごちそうしただけだといった。
お隣さんは、大家さんの親戚だということも言っておいた。
「 そうなの? お付き合いしている人いるのかしらね~。 」
「 いるんじゃね~。あんだけカッコいいんだからさ。いなかったとしてもハードル高いでしょ。 」
聡が、身もふたもないことを言って、なぜだか母親をがっくりさせていた。
「 それにね、あの人うちのビルの中の○○商事にお勤めされているの。私とは、ご縁はないの。 」
敦子が、そうきっぱり言ったので、母親と父親は、なぜだか顔を見合わせたのだった。
父親が、その場の雰囲気を変えるように言った。
「 林さんとこの息子さん、今お付き合いしている人いないんだってな。誰かいい人いないかなあなんて言ってたぞ。 敦子どうだ? 」
「 どうだって、あの林さんだってかっこいいじゃん。うちの職場の子の中でも結構人気あるよ。 」
聡が突っ込みを入れてきた。
「 そうなのか? 」
なぜだか父親が、がっくりしていた。
「 ねえそれより、あの神社の由来とか縁起のか何か知ってる? もともとは、うちのご先祖様が、神主さんだったんでしょ。」
敦子は、話の流れを変えたかったのと、あの神社の事を知りたかったのだ。
幼い時から、お祭りに参加していたとはいえ、あの神社の事は、あまりよく知らない。
知ってることといえば、昔あの滝と池を住処にしていた竜を祭ったものだといわれている。
あるとき前代未聞の干ばつが、この地方を襲った時、竜が雨をもたらしてくれたといわれている。
それからこの地方では、お社を建て、滝と湖をご神体としてお祭りしている。
「 うちが神主さんというのは、ちょっと違うけどな。もともとは、うちの祖先が、巫女さんとなってあの神社を祭っていたんだよ。けど何代目かに後継ぎの女の子が、生まれなくて、代理で神主になったらしいんだ。確かうちのどこかに神社の由来を書いた巻物があった気がするんだけどな。もともとは、ご神体は、玉だったと書いてあった気がするなあ。まあ俺も小さい時に、おじいさんに聞いただけだけどな。 」
「 そうなの。今は、ご神体鏡だよね。 」
「 そうだな。玉がなくなって、ご先祖様の誰かが作らせたんだろうな。 」
敦子は、ふっと頭の中に何か、思い浮かんだ気がした。
しかしそれは、何も形を持ったものではなかったのだった。
男の人たちは、あの後あとかたずけをしてから帰るといったので、一足お先に帰ってきたのだ。
その日の夕食の時には、やはり湖で起きた出来事が、家族の中で話題になった。
「 いやっ、すごかったよ。いきなりだからさ。みんなびっくりして、慌ててみたら水柱が高~く上がっててさ 。 」
「 お父さん、みんな見たの? すごいわね。私も見たかったわ~。敦子も神社行ったんでしょ? 敦子も見たの? 」
「 見てない。その時は、裏の滝にいたから。みんなのところに行ったら、もう水柱上がってなかった。 」
「 残念だったわね~。 」
「 やっぱりさ。ねえちゃん、善行が足りないんだよ。俺なら絶対見たのにな~残念。 」
「 お前が見れるわけないよ。草刈もさぼったくせに。 」
「 そうだよ、聡なんてぐうたら寝てたじゃん。 」
父も敦子も聡にぼろくそだった。
「 それにしても今までこんなことなかったでしょ。どうしたのかしらね。 」
母は、驚きながらも、この奇妙な出来事に心配顔をした。
「 大丈夫。今年は、滝の量も多いし、いい年になるよ。 」
「 そうねえ、去年までは、滝の水枯れそうだったものね。 」
そうなのだ。ここ最近は、いくら雨が降っても、なぜか滝の水が枯れてきていて、とても観光資源にはなりえそうもなかったのだ。同じように湖の水も透明度もなくなり、水がずいぶん減ってきていた。
あの湖は、滝の水が流れていることもあり、滝の水の水量の影響は大きい。
しかし今年は、見事に滝の水量がふえ、そのためかわからないが、湖の水も今までより透明度が増している。
「 よかったじゃん。これなら観光の売りになるんじゃない? それよりさ俺、ねえちゃんちで、面白いもん見ちゃったよ。 」
「 なに? 面白いものって。 」
すかさず母が、突っ込む。
「 聡、余分なこと言わなくていいの。もう泊めてあげないよ。 」
敦子が、異様に反応したからだろうか。父親は、ものめずらしそうに言い合う二人を見ているし、母親は、興味津々で聡に話を促した。
「 ねえちゃんちいった日、隣の人になぜかにらまれちゃったんだよ。それで今日の朝、こっちに戻ってくるとき、またお隣さんに会ってさ。弟って挨拶したら、なぜだかすごいご機嫌になってさ、お見送りまでされちゃって。びっくりしちゃったよ。それでその人なんだけどさ、すごいイケメンなんだよ。男の俺が見たって、すごいカッコいいのよ。そんな人と、なんでねえちゃんと仲いいのか、わかんないんだよね~。だってねえちゃんだよ、‟平凡が歩いてる”って言われるぐらいのさ。 」
「 失礼ね、なによ平凡が歩いてるって。誰が言ったのよ。それにね、玉山さんとは、何でもないの。ただ同じビルで働いてるっていうだけ。 」
「 そうかなあ~。あれは、普通で見たら脈ありって感じなんだけどなあ。でもあの人じゃあね、ねえちゃんとは、あまりに住み世界が違うって感じだしね~。珍動物を見る感じの興味なのかなあ。 」
それまで、黙って聞いていた母が言った。
「 なに、そのお隣さんて。どんな人なの? 敦子、電話じゃあ何も言ってなかったじゃない。 」
「 だっていうほど接点ないもの。ただのお隣さんなだけだし。 」
「 それにしちゃあ、一緒にご飯食べに行ったり、ご飯作ってあげたんだろ。 」
「 聡! うるさい、もう黙っててよ。 」
「 そうなの? お食事行ったりしたの? 」
「ただ成り行きで、ごちそうしたから、お礼に食事に連れて行ってくれただけ。 」
「 成り行きって何なのよ? 」
母の追及の手は休まない。
敦子は仕方なく、空を飛んだところを、見られたところは言わずに、料理を作っていたときに、お隣まで匂ってそれで料理に興味を持たれて、ごちそうしただけだといった。
お隣さんは、大家さんの親戚だということも言っておいた。
「 そうなの? お付き合いしている人いるのかしらね~。 」
「 いるんじゃね~。あんだけカッコいいんだからさ。いなかったとしてもハードル高いでしょ。 」
聡が、身もふたもないことを言って、なぜだか母親をがっくりさせていた。
「 それにね、あの人うちのビルの中の○○商事にお勤めされているの。私とは、ご縁はないの。 」
敦子が、そうきっぱり言ったので、母親と父親は、なぜだか顔を見合わせたのだった。
父親が、その場の雰囲気を変えるように言った。
「 林さんとこの息子さん、今お付き合いしている人いないんだってな。誰かいい人いないかなあなんて言ってたぞ。 敦子どうだ? 」
「 どうだって、あの林さんだってかっこいいじゃん。うちの職場の子の中でも結構人気あるよ。 」
聡が突っ込みを入れてきた。
「 そうなのか? 」
なぜだか父親が、がっくりしていた。
「 ねえそれより、あの神社の由来とか縁起のか何か知ってる? もともとは、うちのご先祖様が、神主さんだったんでしょ。」
敦子は、話の流れを変えたかったのと、あの神社の事を知りたかったのだ。
幼い時から、お祭りに参加していたとはいえ、あの神社の事は、あまりよく知らない。
知ってることといえば、昔あの滝と池を住処にしていた竜を祭ったものだといわれている。
あるとき前代未聞の干ばつが、この地方を襲った時、竜が雨をもたらしてくれたといわれている。
それからこの地方では、お社を建て、滝と湖をご神体としてお祭りしている。
「 うちが神主さんというのは、ちょっと違うけどな。もともとは、うちの祖先が、巫女さんとなってあの神社を祭っていたんだよ。けど何代目かに後継ぎの女の子が、生まれなくて、代理で神主になったらしいんだ。確かうちのどこかに神社の由来を書いた巻物があった気がするんだけどな。もともとは、ご神体は、玉だったと書いてあった気がするなあ。まあ俺も小さい時に、おじいさんに聞いただけだけどな。 」
「 そうなの。今は、ご神体鏡だよね。 」
「 そうだな。玉がなくなって、ご先祖様の誰かが作らせたんだろうな。 」
敦子は、ふっと頭の中に何か、思い浮かんだ気がした。
しかしそれは、何も形を持ったものではなかったのだった。
0
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
拾った少年は、有能な家政夫だった
あさじなぎ@小説&漫画配信
恋愛
2年付き合った年上の彼氏に振られた琴美。
振られた腹いせに友達とやけ酒飲んだ帰り道、繁華街で高校生くらいの少年を拾う。
サラサラの黒い髪。二重の瞳に眼鏡をかけたその少年は、「家、泊めていただけますか?」なんてことを言って来た。
27歳のOLが、家事堪能な少年と過ごす数日間。
小説家になろうにも掲載しているものを転載。一部加筆あり。以前拍手にのせていたifエンドのお話をのせています。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
【完結】悪女のなみだ
じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」
双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。
カレン、私の妹。
私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。
一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。
「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」
私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。
「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」
罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。
本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる