上 下
2 / 21

2.カード選びは慎重に

しおりを挟む
 会場内に設置された大型モニターに七種のカードが表示された。

・二枚舌:二度解答できる権利
・クローズド:関係者を十名まで絞り込める
・検死観:被害者の死亡時刻を正確に知ることができる
・ノーライ、ノーライフ:事件に無関係な嘘を見抜ける
・カンニング:犯人特定のためのアイテムを教えてもらえる(※締め切りの百分前)
・幻影ジョーカー:他のチームのカード一枚を無効にする
・ロバの耳:秘密の仕掛けがあれば知ることができる

 以上が今回の探偵ゲームで用いられるカード七種だった。再登場のカードがほとんどだが、一枚だけ、「幻影ジョーカー」は初お目見えだ。
 争奪戦は四度行われ、一勝負ごとに勝者チームが好きなカードを一枚選べる。四度の争奪戦後、残される三枚はゲームの勝敗とは無関係に、その時点で獲得カードの少ないチームから順に好きな一枚を選び、もらえるシステムだ。獲得カード数が同じであれば、チームを構成する二人のこれまでの公式戦勝利数が少ないチームが優先される。今回の三チームで言えば、桐生・片薙がトップで、石倉・馳、螢川・高田と続く。
「狙い目は?」
 片薙に問われ、桐生は「それを決める前に、もう一つ重要な情報を待たないと」と応じた。
<なお、今回の事件が起きる舞台は、雪で閉ざされた古びた屋敷。警察は当面の間介入不可能な状態にあるとします>
 この設定を知ることで、カードの優先順位がある程度決まる。たとえば、警察の介入が当分ないのであれば、死亡推定時刻が分かるのは大きい。古びた屋敷には、秘密の仕掛けがあるのかもしれない。
「とりあえず、カンニングと検死観がトップツー。だが、このどちらかは幻影ジョーカーで無効にされる恐れが高いかな」
「だったら、幻影ジョーカーも獲れるように頑張る?」
「いや、そううまく行くとは考えにくい。片薙さんは知らないかもしれないけれど、僕はこの争奪戦パートはあんまり得意じゃない。二つ獲得できれば御の字」
「じゃあ、どうするって?」
「うーん、さっきの二枚はパスして、ロバの耳とノーライを優先して狙う方がいいかもしれない。ロバの耳は外れカードであることも多いけれど、ここのところ外れ続きだったかっら、そろそろ来る予感が。ノーライは推理材料の取捨選択に――」
 話の途中だったが、アナウンスが入った。第一の争奪戦の説明が始まる。

 最初のカード争奪戦は運任せの要素が強い、トランプ遊びの神経衰弱。トランプ五十二枚全てを裏向きにし、めくっていくのは通常ルールのままだが、七種のカードは先の提示順に、トランプの赤(ハート及びダイヤ)1~7に対応しているところが異なる。赤の1~7のいずれかで最も早くペアを完成したチームがそのトランプの数字に対応するカードを獲得できる。
 ただし、ペアの完成に色の一致は必要でなく、たとえばスペードのエースとハートのエースを開いた場合、ペア完成と見なされ、場から取り除かれる。対応する二枚舌のカードは、この時点では獲得不可能となる。全てのカードが獲得不可能に陥ったときは、1~7のペア(赤と黒)を最初に完成させたチームが権利を有する。よって、他のチーム取られないようにわざと色違いのペアを開き続け、全てを無効にした上でカードの獲得を目指す作戦もあり得る。
 桐生らは、赤を揃えることでカード獲得を目指しつつ、状況の推移によっては獲得不可能に持ち込む二段構えを取ることにした。尤も、他の二チームの作戦と大きく異なるとは考えにくい。
 序盤は無関係のトランプばかりが続いたが、二巡目で、桐生・片薙組がハートの3を開くもペアは不成立。次いで螢川・高田組が二枚目に開いたのがダイヤの5。石倉・馳組が開くも無関係。桐生組も同様。螢川組のときに動きがあり、二枚目でクラブの3が出た。順番が回ってくる石倉・馳組は、選択の幅が広がる。ダイヤ3もしくはハートの5狙いで行くか、ハートの3とクラブの3でペアとするか。セオリーでは後者かもしれないが、直後に他チームに赤の5のペアを完成される恐れもある。5に対応するのが、最も強力なカードの一つと言えるであろう、カンニングであるのは大きい。とは言え、3に対応する検死観も悪くはない……。

 つづく
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

どんでん返し

あいうら
ミステリー
「1話完結」~最後の1行で衝撃が走る短編集~ ようやく子どもに恵まれた主人公は、家族でキャンプに来ていた。そこで偶然遭遇したのは、彼が閑職に追いやったかつての部下だった。なぜかファミリー用のテントに1人で宿泊する部下に違和感を覚えるが… (「薪」より)

十二階段

崎田毅駿
ミステリー
 小学四年生の夏休み。近所の幼馴染みの女の子が、パトカーに乗って連れて行かれるのを見た僕は、殺人者になることにした。  そして十年以上の時が流れて。 ※「過去を知る手紙?」の回で、“畑中”となっていた箇所は“小仲”の誤りでした。お詫びして訂正します。すみませんでした。通常は誤字脱字の訂正があってもお知らせしませんでしたが、今回は目に余るミスでしたのでここにお知らせします。 ※本サイト主催の第5回ホラー・ミステリー小説大賞にて、奨励賞をいただきました。応援、ありがとうございます。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

最近、夫の様子がちょっとおかしい

野地マルテ
ミステリー
シーラは、探偵事務所でパートタイマーとして働くごくごく普通の兼業主婦。一人息子が寄宿学校に入り、時間に余裕ができたシーラは夫と二人きりの生活を楽しもうと考えていたが、最近夫の様子がおかしいのだ。話しかけても上の空。休みの日は「チェスをしに行く」と言い、いそいそと出かけていく。 シーラは夫が浮気をしているのではないかと疑いはじめる。

密室島の輪舞曲

葉羽
ミステリー
夏休み、天才高校生の神藤葉羽は幼なじみの望月彩由美とともに、離島にある古い洋館「月影館」を訪れる。その洋館で連続して起きる不可解な密室殺人事件。被害者たちは、内側から完全に施錠された部屋で首吊り死体として発見される。しかし、葉羽は死体の状況に違和感を覚えていた。 洋館には、著名な実業家や学者たち12名が宿泊しており、彼らは謎めいた「月影会」というグループに所属していた。彼らの間で次々と起こる密室殺人。不可解な現象と怪奇的な出来事が重なり、洋館は恐怖の渦に包まれていく。

失踪した悪役令嬢の奇妙な置き土産

柚木崎 史乃
ミステリー
『探偵侯爵』の二つ名を持つギルフォードは、その優れた推理力で数々の難事件を解決してきた。 そんなギルフォードのもとに、従姉の伯爵令嬢・エルシーが失踪したという知らせが舞い込んでくる。 エルシーは、一度は婚約者に婚約を破棄されたものの、諸事情で呼び戻され復縁・結婚したという特殊な経歴を持つ女性だ。 そして、後日。彼女の夫から失踪事件についての調査依頼を受けたギルフォードは、邸の庭で謎の人形を複数発見する。 怪訝に思いつつも調査を進めた結果、ギルフォードはある『真相』にたどり着くが──。 悪役令嬢の従弟である若き侯爵ギルフォードが謎解きに奮闘する、ゴシックファンタジーミステリー。

処理中です...