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第二話 彼女は死ぬしかなったのだ
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卒業式の混乱の中何が起きたかは、当時の参加者の日記や手記を見ても内容が異なり、正確なことは現在ではわからなくなっている。
しかし、王太子ジャンが婚約者であるロクロア公令嬢マリアと婚約破棄をして、ロクロア公庶子であるリリスとその日のうちに婚約を結び、それが教会に受理された、という事だけは確かである。
そしてこの事実自体が、王国の崩壊の引き金となった。
即日ハーベリア公でありロクロア公令嬢マリアが学園入り口で王国騎士団に討伐されることになる。
後世の創作では王国騎士団団長の暴走であるということが言われることもあるが、最低でも王太子からの指示が、状況から見て国王の指示のもとの行動であるだろうと考えられる血なまぐさいこれは、マリアに同行していた貴族令息令嬢も巻き込む惨事となり、貴族令息令嬢8名が巻き込まれることとなった。
このような凶行に及ぶのは、状況から見ればむしろ必然であると考えられる。
王太子がいくらマリアの悪行を並べ立てようと、状況から見て王太子とリリスの不貞は疑いようがなく、婚約破棄において有責なのは王太子である。
そういう意味ではリリスも責任があるのだが、あくまで庶子でしかなく正式なロクロア公の子ではないリリスはただの平民でしかなくその責任をロクロア公が負うことはない。
そうするとガリア王国側はロクロア公国及びハーベリア公国に多大な賠償責任を負う可能性があったのだ。
当時は融和ムードとはいえもともと反王国気質の強い二つの公国に、そのような状況になれば王国が崩壊しかねない危機感が王国側にあった。
それをうやむやにするためには当事者であるマリアを誅殺する必要があったのだ。
さらに言えば、二つの公国が反乱を起こした場合、その旗頭になるのはマリアの可能性が高かった。
特に公が健在なロクロア公国に比べ、本家の直系がマリアしかいないハーベリア公国は旗頭になれるのがマリアしかいない。
反乱がおきたときの相手の戦力を削るという意味でもマリアの誅殺は必須だった。
切羽詰まった王国側は、最大戦力である王国騎士団を即時対応できる部隊を全部出すという強硬策に出ていた。
一方ロクロア公国側はこれといった動きがない。せいぜいロクロア公国のタウンハウス付近で王国騎士団とロクロア公国騎士が小競り合いをした、という程度の記録しか残っていなかった。
気合が、そして焦り度合いが違うのだ。
結果は火を見るよりも明らかであり、マリアは予定通り誅殺されるのであった。
殺されたマリア側は、学友と雑談しながら学園の正門を出てきた、という事であり、この時のマリアの対応には疑問が多かった。後世の創作ではマリアが泥をすすりながらでも生き残る、といった話が出るぐらい不自然な行動であると言われることもある。
しかし彼女が生き残ることができる可能性があったか、といわれれば、後知恵で見れば不可能であっただろうとは考えられる。
王都とは王家の直轄地であり御ひざ元である。その治安は王家の直轄部隊が維持しており、王都出身者が多い彼らは土地勘も働く。
さらに、学園に急行した部隊以外にも、ロクロア公国のタウンハウスに急行し待ち構えていた部隊、さらに王都から脱出しないように見張る部隊もすべて展開していた。
完全に包囲されている状況であり、マリアが無事脱出できる可能性はなかった。
つまり
第二話 彼女は死ぬしかなったのだ
彼女がどうして正門から、学友と雑談しながら出てきたのか、については様々な考察がある。
学友をだまし道連れにすることで、さらに王国の混乱を助長しようとする意図があった、という分析がされることもある。
さすがにうがちすぎな考えにも思えるが、この時マリアとともに亡くなった貴族令息令嬢が、この後更なる混乱を王国にもたらすのだから、そのように考えることも致し方無い話だと思われる。
なんにしろマリアは誅殺された。
実行犯は王家直属の王国騎士団であった。
これにより数百年の歴史を有するハーベリア公国の本家直系は滅亡し、ロクロア公国の本家直系も現在のロクロア公だけという風前の灯火といわれる状況になってしまうのであった。
これで終わればめでたい、とは言えないがただの政争の一部でしかないだろう。
だが、ここまで強硬な行動をして何も反動がないわけがないのであった。
しかし、王太子ジャンが婚約者であるロクロア公令嬢マリアと婚約破棄をして、ロクロア公庶子であるリリスとその日のうちに婚約を結び、それが教会に受理された、という事だけは確かである。
そしてこの事実自体が、王国の崩壊の引き金となった。
即日ハーベリア公でありロクロア公令嬢マリアが学園入り口で王国騎士団に討伐されることになる。
後世の創作では王国騎士団団長の暴走であるということが言われることもあるが、最低でも王太子からの指示が、状況から見て国王の指示のもとの行動であるだろうと考えられる血なまぐさいこれは、マリアに同行していた貴族令息令嬢も巻き込む惨事となり、貴族令息令嬢8名が巻き込まれることとなった。
このような凶行に及ぶのは、状況から見ればむしろ必然であると考えられる。
王太子がいくらマリアの悪行を並べ立てようと、状況から見て王太子とリリスの不貞は疑いようがなく、婚約破棄において有責なのは王太子である。
そういう意味ではリリスも責任があるのだが、あくまで庶子でしかなく正式なロクロア公の子ではないリリスはただの平民でしかなくその責任をロクロア公が負うことはない。
そうするとガリア王国側はロクロア公国及びハーベリア公国に多大な賠償責任を負う可能性があったのだ。
当時は融和ムードとはいえもともと反王国気質の強い二つの公国に、そのような状況になれば王国が崩壊しかねない危機感が王国側にあった。
それをうやむやにするためには当事者であるマリアを誅殺する必要があったのだ。
さらに言えば、二つの公国が反乱を起こした場合、その旗頭になるのはマリアの可能性が高かった。
特に公が健在なロクロア公国に比べ、本家の直系がマリアしかいないハーベリア公国は旗頭になれるのがマリアしかいない。
反乱がおきたときの相手の戦力を削るという意味でもマリアの誅殺は必須だった。
切羽詰まった王国側は、最大戦力である王国騎士団を即時対応できる部隊を全部出すという強硬策に出ていた。
一方ロクロア公国側はこれといった動きがない。せいぜいロクロア公国のタウンハウス付近で王国騎士団とロクロア公国騎士が小競り合いをした、という程度の記録しか残っていなかった。
気合が、そして焦り度合いが違うのだ。
結果は火を見るよりも明らかであり、マリアは予定通り誅殺されるのであった。
殺されたマリア側は、学友と雑談しながら学園の正門を出てきた、という事であり、この時のマリアの対応には疑問が多かった。後世の創作ではマリアが泥をすすりながらでも生き残る、といった話が出るぐらい不自然な行動であると言われることもある。
しかし彼女が生き残ることができる可能性があったか、といわれれば、後知恵で見れば不可能であっただろうとは考えられる。
王都とは王家の直轄地であり御ひざ元である。その治安は王家の直轄部隊が維持しており、王都出身者が多い彼らは土地勘も働く。
さらに、学園に急行した部隊以外にも、ロクロア公国のタウンハウスに急行し待ち構えていた部隊、さらに王都から脱出しないように見張る部隊もすべて展開していた。
完全に包囲されている状況であり、マリアが無事脱出できる可能性はなかった。
つまり
第二話 彼女は死ぬしかなったのだ
彼女がどうして正門から、学友と雑談しながら出てきたのか、については様々な考察がある。
学友をだまし道連れにすることで、さらに王国の混乱を助長しようとする意図があった、という分析がされることもある。
さすがにうがちすぎな考えにも思えるが、この時マリアとともに亡くなった貴族令息令嬢が、この後更なる混乱を王国にもたらすのだから、そのように考えることも致し方無い話だと思われる。
なんにしろマリアは誅殺された。
実行犯は王家直属の王国騎士団であった。
これにより数百年の歴史を有するハーベリア公国の本家直系は滅亡し、ロクロア公国の本家直系も現在のロクロア公だけという風前の灯火といわれる状況になってしまうのであった。
これで終わればめでたい、とは言えないがただの政争の一部でしかないだろう。
だが、ここまで強硬な行動をして何も反動がないわけがないのであった。
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