黒の瞳の覚醒者

一条光

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番外編~フィオ・ソリチュード~

自慢の

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「皆さん見えますか!? 誰もが気になっていた、物語の中にしか居なかった存在が今私たちの目の前に!」
 テレビに出てクロイツ王とソフィアが話を終えて、その後外に出てみんなが少しだけ話をして、今はクーニャの顕現にテレビ関係者だけじゃなく、集まった野次馬もみんな興奮してすまほを向けてる。
「クルシェーニャさんはどういった経緯で如月さんと行動されているんでしょう?」
「くっくっく、儂が主と共に在る理由か――それは主が儂に勝ったからだ!」
 クーニャの言葉で周囲にどよめきが広がりワタルに注目が集まった。
 本人は物凄く居心地が悪そう。

「勝った!? つまりその、如月さんはクルシェーニャさんと戦ったんですか!?」
「そうだ、主は凄いのだぞ、フィオとティナも共に戦っておったが最終的に儂を打ち倒し平伏させたのは主だ」
「如月さんは何故クルシェーニャさんに挑まれたのですか? 怖くはなかったんですか?」
「あ~、向こうで大陸が滅ぶレベルの奇病が広がったんですよ、でもその大陸にある国の責任者たちは我先に船で逃げ出して船がなくなってとんでもない数の難民が残されたんです」
「まさかクルシェーニャさんは大陸に居る難民を全て運ばれたとか?」
「いくらなんでもそんな事出来るか、主はクロイツに居る移動手段を持つ者を迎えに行く手段として儂に助けを求めてきたのだ」
「えーと、何故それで戦いに?」
「う、うむ、訪ねてくる者が途絶えて久しく、八つ当たりで儂が吹っ掛けた」
 やっぱりあれ八つ当たりだったんだ……。
 他もみんな唖然としてる。

「しかし主は見事儂を屈伏させた、以来儂は主を主とし命尽きるまで共に在る事を誓ったのだ」
「……」
 進行役は何度もクーニャとワタルに視線を行き来させてる。
 人間がドラゴンに勝ったのがよほど信じられないみたい。
「おい小娘、儂が大した事がないと思っておらぬか?」
「そ、そんな事はありません」
 食われそうなくらいにクーニャが顔を寄せて睨むからテレビ関係者はみんな竦み上がってしまった。

「お主らに雷帝の力の片鱗を見せてやろう――」
 咆哮を上げるとクーニャは舞い上がり虚空に向けて雷撃を放った。
 その凄まじさに全員が呆然として空を見上げてる。
「ふははははっ! こんなものは序の口だ、魔物の大軍勢を殲滅せしめた儂の雷はこんなものではない」
 目を覆いたくなる程の雷光を放ち火炎を吹き上げて舞い上がる様を見上げる人たちを見てワタルは頭を抱えて悶えてる。
「しかも! 主も儂と同じ事が出来るのだ、人の身でそれを成すのだ、どれほどの事か分かるか? 儂よりも巨体の竜に挑み、儂をも持ち上げる巨人を殺し、大地を覆うばかりの魔獣を殺し尽くす偉業を成した英雄が儂の主だ!」
「あのアホドラ……」
 興が乗ってワタルの自慢を続けるクーニャを見てワタルは顔を覆った。
「くぅ、クーニャに先に色々言われてしまったが、私もまだまだワタルの自慢を――」
「勘弁してくれ……」
 クーニャの方に向けられたカメラの前に出ようとするナハトを必死に止めようとしてる。

「少しは主の凄さが分かったか?」
「は、はい!」
「なら特別に少し空に連れてってやろう――ミシャ、あれを頼む」
「ほいきたのじゃ」
 ミシャが蔓草でゴンドラを作ってるけどテレビ関係者達はかなり不安そうにしてる。
 この世界の乗り物は金属で作られてるし蔓草で飛ぶとなると不安なのかもしれない。
「なんだその顔は、ミシャのこれは一つの村の住民全てを運ぶのにも耐える程に丈夫だ、心配はいらぬ」
 そうは言われても不安は消えないようでそれぞれが互いの反応を窺ってる。

「あの、その大きさなら僕も乗ってもいいですか?」
 テレビ関係者が二の足を踏んでいると野次馬の男が手を上げた。
「構わぬ、好きにしろ」
 クーニャの返事を受けて男は駆け寄ってゴンドラに乗り込むとクーニャを写し始めた。
 近くで撮りたかったみたい。
 心なしかクーニャも機嫌良さげ。

「なんだつまらぬ、こやつだけか?」
 クーニャがそう問うと野次馬が流れ込み始めた。
 そして流れにあてられたのかカメラを持ったテレビ関係者も乗り込んだ。
「では行くぞ」
 羽ばたきと共に浮かび上がると歓声が上がった。
「凄い喜んでる」
「そりゃこの世界に普通に生きてたらドラゴンに乗れるなんて事ないしな、ファンタジー好きじゃなくても興奮するだろ」
 ワタルもちょっと嬉しそう?
「何が嬉しいの?」
「え、あぁ……自慢の愛龍だなと思ってさ」
「私は?」
「へ? あぁ、あ~……自慢の婚約者だよ」
「ワタル映ってるわよ?」
「げっ!? ――って嘘じゃん」
 下にあるカメラもクーニャの姿を追っているのに気が付いてワタルはため息をついた。

「さて、時間の方が少し余ってしまいましたのでクルシェーニャさんが仰っていた如月さんの活躍のお話を伺ってみましょう、如月さんはヴァーンシアでは英雄との事ですが、他にも逸話などありますか?」
「そうですね……アドラでクラーケンを倒したりもしましたよ、異界者だとバレると酷い目に遭うのは分かっているのにそれでもワタルは襲われてる人を助ける為に怪物に立ち向かいました」
「クラーケン!? それって巨大なイカの事でしょうか? 規模はどのくらいでしょうか? 盗賊からリオさんを助けた時には覚醒者ではなかったという事ですがもしかして能力無しでクラーケンに?」
「いやいやいや、流石に能力無しでなんとかなると思える程馬鹿じゃないですって」
 そうは言うけどあれはかなりの無茶だった。
 助ける義理も無いのに。
「でも無謀なのは同じ、能力の精度は今よりも圧倒的に低かったし敵は海中に居てクーニャよりも大きい、その上助けるのは見ず知らず、最後は死にかけた」
「大切な人の為という事なら分かるのですが差別をする国の人々の為にどうしてそこまで?」
「じゃあ皆さんなら見捨てますか? 出来るかもしれない力があって、目の前で怪物に飲まれていく人を放置しますか?」
 アドラの所業が周知されてるせいか全員が言葉を失った。

「如月さんの行動を見るとリオさん達はかなり不安なのでは?」
「はい、見送る時はいつも不安です。でもワタルは全てを拾おうとする人ですから、目の前で起こる不幸を厭い、最後には打ち払ってしまう、そんな自慢の旦那様ですから信じて待っていられます」
「……と、いうことで、最後はリオさんの盛大な惚気でお送りしました」
 進行役がしめた事でリオの顔が真っ赤に染まった。
『お疲れ様でしたー』
「あ、あの、今のは惚気というかその……」
「最後はリオに持っていかれちゃったわね~、私ももっとワタルの自慢したかったわ~」
「うむ、私もまだまだ自慢したりない」
「でしたらどうでしょう、別の番組にも出演していただくというのは」
 責任者のような男が出てきてそんな提案をした。

「それ良いわねぇ、喜んで――」
「出ません!」
「え~、なんでよ~? 結構面白かったじゃない、ほら行くわよ」
 ティナが責任者の提案に乗った事で別のテレビ? にも出る事になった。
 そこでは私たちやタカアキとソフィアの関係を深掘りされて最後にはワタルとタカアキが模擬戦を披露する事になったりして最終的にはワタルは上の空になってた。

「疲れた……」
 模擬戦一つ程度で?
 戻って早々にワタルはベッドへと倒れ込んでしまった。
「模擬戦一つ程度で何を言っている」
「精神的に疲れたの!」
 ナハトに睨まれてワタルは拗ねてしまった。
「やっぱり、嫌でしたか?」
 リオに見つめられてワタルは口ごもった。 
 ワタルは戸惑うような表情が多かったけど、でもたしかに周りのワタルを見る目は少し変わった。
 だから、今回の事は私は良かったと思う。

「ねぇあの、ワタル……」
 アリスがもじもじしながらベッドに腰掛けてチラチラとワタルを窺ってる。
「どうした?」
「あぁ~、帰ったら話し合うって言ってたものねぇ?」
 それぞれが出会った時の話や今の関係性を話してる時にアリスだけキスしてないって話になって周りに囃し立てられて困ったワタルが帰ったら話し合うって言ってたんだった。

「あ……で、でも気持ちがはっきりしてないんだろ? 流されるのはよくないぞー?」
「でも……私だけみんなと違うみたいでやだ」
「ほらほらワタルどうするの~? ここにはカメラは無いわよ~?」
「囃し立てるな……アリス、大切じゃなかったら日本に連れてきてない、そういうのはお前が自分の気持ちがはっきり分かった時にしよう――代わりといったらなんだけど何か一つなんでも聞いてやるから、な?」
「……うん、分かったわ、早く分かるように頑張るわね!」
「う、う~ん?」
 アリスは意気込んでるけどワタルは眉を寄せて困り顔になってる。
 どっちの好きか、か……私が初めて言った時は否定されて拒絶されたっけ――。

「ふははははっ! 見よ、儂がテレビに映っておるぞ! うむうむ、人の目線で儂を見るとこう見えるのか、面白いな」
 テレビを点けて今日出た時の映像が繰り返し流れている事に気を良くしたクーニャがふんぞり返っている。
「主の自慢が出来て大いに有意義であった――主、これで迷惑かけた分は相殺出来たか?」
 ちょっとだけ不安そうに顔色をうかがうクーニャにワタルは表情を崩した。
 一応勝手に顕現して騒ぎになった事気にしてたんだ……。
「気にしてたのか、まぁ結局見世物感は強かったけど……ありがとな、クーニャは自慢の愛龍だよ」
「くふふ、そうであろう? やはり儂は主の自慢であったか! ふふふ、まぁ雷帝と呼ばれる儂を従えているのだから当然だがな!」
「こら跳ねるな、壊れたら弁償なんだぞ」
 ワタルに撫でられて上機嫌になったクーニャはしばらくの間ベッドで跳ね回っていた。
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