貴方の事を愛していました

ハルン

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その日、ミレーナは自室で苦行に耐えていた。

「ね、ねぇラナ…本当にまだやるの?」
「当たり前です!お嬢様は元々細いですが、今の流行りはもう少し細いのが人気なんです」
「そうなのね…」

ミレーナは、ラナの言葉に重々しく頷く。

「お嬢様、いいですか?いち、にの、さん!で行きますよ?」
「わ、分かったわ…」
「では、ゆっくりと息を吐いて下さい。いち、にの、さんっ!」
「~~~っ!!」

ラナの掛け声と共に、これ以上無理だと思っていたコルセットがさらに締まる。専属侍女ラナの容赦の無い締め上げに、ミレーナは心の中で叫ぶ。

(ラ、ラナっ!無理無理無理っ!!こ、これ以上締められたら、内臓が飛び出ちゃうから…!)

そんなミレーナの切実な叫びが届いたのか、ラナは漸くその手を止める。

「ふぅっ…!お疲れ様です、お嬢様。後は、化粧とドレスを着るだけですよ」
「つ、疲れたわ…」

よろよろとソファーに座り込むミレーナに、ラナはすかさず用意しておいた果実水を差し出す。

「今日は、お嬢様の大切なデビュタントです。そんな大事な日に、手を抜くなんて出来ませんからね」

いつも以上にやる気に燃えるラナに、ミレーナは程々にお願いしますと伝える。


ミレーナがルークと婚約してから10年が経った。


つい先日、ミレーナは12歳になって入学した学園を卒業した。貴族の女性は、16歳になると成人したとみなされ王族主催のデビュタントを迎える。遂に今日、ミレーナはデビュタントを迎えるのだ。

「学園も無事ご卒業されたので、今後は沢山の夜会に出る事になりますね」
「そうね。きっと、デビュタントの後に沢山の招待状が届くと思うわ。これなら、学生の時の方がよかったわ。デビュタントしていない女性は夜会に出られないから」

今後の事を思うと、重い溜息が溢れる。

「あら?ですが、ルーク様にもっと会いたいから早く卒業したいと少し前に言ってましたが?」
「そっ、それはそれ!これはこれよ!」

ミレーナが学園に入学する前にルークは学園を卒業していたので、ミレーナはルークと学園生活を共に出来なかった。卒業後は、侯爵家の跡取りとして父である侯爵の元で領地経営の勉強を本格的に始めていた。ミレーナも、学園に入学し学業に専念していた。その為、プレゼントなどは届くが会える回数は減ってしまっていた。

「今日のデビュタントのエスコートは、伯爵様では無くルーク様がして下さるのですよね?」
「えぇ。お父様は、お母様と後で来て下さるらしいわ。お母様が、ギリギリまでレオンの世話をするらしいから」
「レオン様はまだ幼いので、連れて行けませんものね」

レオンは、ミレーナの年の離れた弟だ。

ルークと婚約した時、一人娘だったミレーナ。
このままでは伯爵家を継ぐ者がいなくなってしまう。その為、親戚筋から優秀な養子を取ろうかと両親は話していた。しかし、ミレーナが11歳になった頃、弟が生まれたのだ。レオンと名付けられた天使の様な愛らしさの後継の誕生に、伯爵家は歓喜に包まれた。

「まだレオンは寂しがりやだから、突然家族が見当たらなくなったら泣いてしまうわ。だから、今のうちに沢山構って遊び疲れて寝させるそうよ」

可愛いレオンが、必死に家族を探して泣く姿を想像すると胸が痛む。だから、両親が自身のデビュタントに少し遅れてやって来るのは問題ない。

ミレーナは、両親と共にレオンにメロメロであった。

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