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エングラントの槍編
誘惑の岩での会見
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翌朝ミカは目を覚ました。と言うよりはゴツゴツの地面と滝の音がうるさくて熟睡できなかった。
ミカが体を起こすとシュタインが首を半分もたげて言った。
「おはよう。眠れたかな?」
「それが、滝の音に惑わされてうまく眠れませんでした」
「それもまた精神修行の内さ」
シュタインが起きながら言った。
「さて、今日もリグルが作ってくれた保存食を食べようか」
もう火は消えている。シュタインはミカに一食分渡すとポリポリと食べ始めた。猪の肉に味付けし干した物だった。
ミカはムースを見て言った。
「ムースさんは昨日から何も食べてないですけど、大丈夫なんですか?」
「ドラゴン族は何でも食べるんだよ。大量にな。今お前さん方が食べてる量では少ないから食べないだけだよ」
「それにドラゴン族は一回食べると何ヶ月も食べなくても生きられるんだよ。だから心配しなくていいよ」
シュタインは食べながら言った。
ミカは、何でも食べると言う所に引っかかっていた。何でもの中に人間も入っているのだろうか?
朝食を済ますと焚き火の跡を消して出発した。夢見の湖まではあっという間だった。
ムースはシュタインとミカを湖の畔に下ろすと、自分は湖の中に入っていった。
かなり深さのある湖のようで、ムースの体はすぐに水の中に消えた。首だけ出して浮かんでいる。
「会見が済み次第ここに戻ってくるよ」
「ああ、分かった。のんびりやっておく」
シュタインとムースは言葉を交わすと別れた。
すぐ近くに森があるが、道のようなものは見えない。それでもシュタインは迷う事なくスタスタと歩いて行った。
森の中は落ち葉の絨毯がふかふかだった。上空を舞う風が木々を揺らしてザワザワ音を立てた。
森と言っても少なからず起伏があって、時々ミカは落ち葉に足を取られて転びそうになった。
約束の日付までにはまだ数日あった。シュタインは森の中を右へ左へウロウロして時間を潰しているようだった。
「師匠。まっすぐ約束の場所へ向かわれてはどうですか?」
「ん? ああ、そうだね。でもこうして辺りを偵察してるんだよ」
「偵察?」
「この先ミカも一人で誰かと会見をする事もあると思うから、そんな時は期日よりも早く来て周辺を偵察しておくといい」
「そんなもんですか?」
「そんなもんさ」
二人は数日間を森の中で過ごした。
期日の日、シュタインとミカは約束の時刻より少し早めに誘惑の岩に着いた。その岩は人の背丈程の高さで大きな一枚岩だった。二人は岩から少し離れた所に立ち止まった。
「バオホ! もう来てるなら出てきてくれ!」
しかし何も変化はなかった。
「おかしいな。もう来ている筈なんだが」
「約束の正午までまだ少しありますよ」
「ああ、そうなんだがね……先日も言ったように、こう言った待ち合わせの時は相手よりも先に来て隠れて相手を観察してみたほうがいい」
「どうしてです?」
「面と向かった時には見せない本音を話すことがある。態度が違ったりね。それを前もって見極めておくのは交渉を有利に進められるんだよ」
「なるほど。で、既にバオホも来ているとお思いなのですね」
「ああ、そうなんだけどね」
その時、徐ろに誘惑の岩の上部の辺りが光り輝き出した。ミカはその眩しさに思わず顔を背けて手で光を遮った。
シュタインも右手で光を遮ってはいたが視線は光の方に向けていた。
「やはり来ていたか」
シュタインは呟いた。
光は徐々に弱まった。そして弱まるにつれ人影が見えてきた。光が完全に収まった時、岩の上には一人の老人のような男が立っていた。皮の鎧を着ていてその上から長いローブを羽織っている。フードを被って顎に長い髭を蓄えていた。
「久しぶりだな、シュタイン」
「前にあったのはいつの事だったかな?」
二人は淡々と言葉を交わす。
「そっちの女は何者だ?」
「これはミカ。僕の弟子さ」
「弟子とな? シュタインよ、お前は変わったな」
「用件を端的に言おう。冀求の指輪について何か知らないか?」
「冀求の指輪だと? ははは。そんな物にかまけている暇はない。用件とはそれだけか?」
「そんな物だと? バオホよ、お前何か探し物でもあるのか? 冀求の指輪に興味はないのか?」
「そんな物はとうの昔に飽きてしまったよ。昔馴染みだから話してやろう。私はついにローエ・ロートを手に入れたのだ」
「ローエ・ロートを⁉︎」
噂は本当だったか。そして一番所持して欲しくない者の所へ行ってしまった。
ローエ・ロートは魔法の剣だ。その力を知るものによって使われれば強大な力となる。
「正確には私が見つけたのではなく贈り物としてもらったのだ。交換条件と共にな」
「交換条件だと?」
「フェネッケン採掘場とフェネッケンの街を制圧して欲しいと言うのだよ」
「フェネッケン採掘場と言えばポーレシア最大級の鉱石の採掘場。そんな所を制圧しろと言う奴は限られている」
「余計な詮索はしない事だな」
ミカは高度な会話についていけなかった。シュタインはミカに分かるように、しかしバオホから視線を外さずに言った。
「ポーレシアは今隣国のエングラント大公国と戦争状態にある。とは言っても今は均衡が保たれてて一部国境付近でイザコザがあるくらいで済んでいるがな」
ポーレシア王国の西に隣接するエングラント大公国はとても好戦的な国で、領地の拡大を常に目指して、隣接するいくつかの国と領土戦争を繰り返している。
「ポーレシア国王は戦争を好まないお方なのでエングラント大公国に攻め入るまではしないが、攻め込まれれば防戦する」
そうやって今までは均衡を保ってきていた。
「もしフェネッケン採掘場が占領されたら、この均衡は大きく崩れるぞ」
「そうだ。シュタインよ、フェネッケンは私によって占領される。そうなれば鉱物資源の多くを失ってポーレシアは終わるだろう。昔のよしみだから忠告しておく。ポーレシアを去れ。エングラントに来い。それが一番の方法だ」
「何故だ! 政治になど興味のないお前が、何故たった一国の問題に手を貸すのだ?」
「ローエ・ロートがその褒美だ」
「……なるほどな。お前は変わらないな」
ミカは思った。ポーレシア王国の西にあるエングラント大公国とポーレシア王国が大々的に戦争になったら、国の南部に位置するミカの実家はどうなるのだろうか?
「どうやら冀求の指輪の事を聞いている場合ではないようだな。お前に情報を聞いてから屋敷に戻りのんびり情報を精査しようと思っていたが、のんびりなどしていられない。今すぐフェネッケンに行かなければ」
「どうやら今度は敵として会うことになりそうだな」
バオホはそう言うと右手を軽く握り前に突き出した。その手には指輪がはめられている。
「レンダード マ ヤ! 光よ溢れろ。ブライエン!」
「光の魔法だ! ミカ、バオホから視線を外せ!」
バオホの指輪は急激に光を増し、見ていられないほどに輝き出した。バオホがここに現れた時と同じだ。ミカは顔を背けて手で光を遮った。
シュタインは目を閉じて耳に全神経を集中させた。バオホは次の魔法を唱えていた。
「ペリグル ミンダラ スニヤラニ……」
シュタインはそれがテレポートの魔法だとすぐに分かった。
「時空よ、我が手に。ステポール!」
光の闇が消えるともうそこにはバオホの姿は無かった。ミカが口を開く。
「師匠、これは一体……」
「話は後だ。予定が大幅に変わってしまったよ。急ごう」
バオホはテレポートの魔法を使ってシュタイン達の前から姿を消した。
シュタインはミカの手を取り自分の方に引き寄せた。そして腰に手を回し抱きかかえるように体を密着させた。
「し、師匠! やめて下さい!」
「オブザード マ ザード 解き放て。ミカ、飛ぶよ!」
と同時に二人の体は上空めがけて飛び上がった。木々の枝が体に刺さったのは一瞬だった。
突然の事にミカは悲鳴すら出なかった。
「とにかく時間が鍵だ。急いでムースの所へ戻る。僕にもテレポートがあれば楽なんだがな」
テレポートの魔法は失われた古代魔法の一つだ。シュタインはテレポートを持っていなかった。
「バオホは炎の魔剣ローエ・ロートを何者かから貰ったと言っている。その代償にフェネッケン採掘場を侵略せよと。奴は約束を守る男でね。エングラントの槍はフェネッケンからすぐの所にある。奴は必ずフェネッケン採掘場に現れるぞ」
「何者がその魔法の剣を与えたのですか?」
「フェネッケン採掘場を欲しがると言う事は個人じゃない。フェネッケンが奪われたらポーレシアは戦争や生活に必要な鉱物資源の殆どを失い隣国の侵攻から国を守れなくなる。そうなって一番喜ぶのは……」
「エングラント大公国ですか?」
「その通り。やつはエングラントの国民であるし、そこに来てローエ・ロートとなれば手を貸すのが奴の性格だ」
空を飛びながらシュタインは説明した。
しかし、フェネッケン採掘場が奪われると言う事は完全にポーレシア王国とエングラント大公国が本格的な戦争状態になると言う事だ。ミカは途端に不安になってきた。
*
ムースの飛行速度は凄かった。シュタインとミカが戻り事情を説明し終わると直ぐに二人を乗せて北に飛び立った。フェネッケン採掘場は夢見の湖からほぼ北にある。
フェネッケン採掘場はポーレシアの西のヴェストファーガン地域、エングラントとの国境付近にある。国境線になっている雪割り山脈の麓にあるのだった。その採掘場から直ぐの所にフェネッケンの街がある。
バオホの住むエングラントの槍は、フェネッケンから雪割り山脈を超えて少し南へ行った所に聳え立つ。バオホはテレポートで既にエングラントの槍に戻り魔法部隊の編成を行なっているはずだ。早急にフェネッケンの守りを固める必要がある。
しかしまずはその地域を治めている領主に報告して許可を得る必要がある。
ヴェストファーガン地域の領主はフェネッケンから東に五日程の所にあるドライブルクの街にいるヴァイスだ。
ムースの翼ならひとっ飛びだ。
しかしムースは人目にさらされる事を嫌がるので、ドライブルクから少し離れた森の中に下ろしてもらった。
「ムース、ありがとう。今回はとても助かった」
「時間が惜しい。早くゆけ」
シュタインは頷くとミカを連れて森を抜けた。
ミカが体を起こすとシュタインが首を半分もたげて言った。
「おはよう。眠れたかな?」
「それが、滝の音に惑わされてうまく眠れませんでした」
「それもまた精神修行の内さ」
シュタインが起きながら言った。
「さて、今日もリグルが作ってくれた保存食を食べようか」
もう火は消えている。シュタインはミカに一食分渡すとポリポリと食べ始めた。猪の肉に味付けし干した物だった。
ミカはムースを見て言った。
「ムースさんは昨日から何も食べてないですけど、大丈夫なんですか?」
「ドラゴン族は何でも食べるんだよ。大量にな。今お前さん方が食べてる量では少ないから食べないだけだよ」
「それにドラゴン族は一回食べると何ヶ月も食べなくても生きられるんだよ。だから心配しなくていいよ」
シュタインは食べながら言った。
ミカは、何でも食べると言う所に引っかかっていた。何でもの中に人間も入っているのだろうか?
朝食を済ますと焚き火の跡を消して出発した。夢見の湖まではあっという間だった。
ムースはシュタインとミカを湖の畔に下ろすと、自分は湖の中に入っていった。
かなり深さのある湖のようで、ムースの体はすぐに水の中に消えた。首だけ出して浮かんでいる。
「会見が済み次第ここに戻ってくるよ」
「ああ、分かった。のんびりやっておく」
シュタインとムースは言葉を交わすと別れた。
すぐ近くに森があるが、道のようなものは見えない。それでもシュタインは迷う事なくスタスタと歩いて行った。
森の中は落ち葉の絨毯がふかふかだった。上空を舞う風が木々を揺らしてザワザワ音を立てた。
森と言っても少なからず起伏があって、時々ミカは落ち葉に足を取られて転びそうになった。
約束の日付までにはまだ数日あった。シュタインは森の中を右へ左へウロウロして時間を潰しているようだった。
「師匠。まっすぐ約束の場所へ向かわれてはどうですか?」
「ん? ああ、そうだね。でもこうして辺りを偵察してるんだよ」
「偵察?」
「この先ミカも一人で誰かと会見をする事もあると思うから、そんな時は期日よりも早く来て周辺を偵察しておくといい」
「そんなもんですか?」
「そんなもんさ」
二人は数日間を森の中で過ごした。
期日の日、シュタインとミカは約束の時刻より少し早めに誘惑の岩に着いた。その岩は人の背丈程の高さで大きな一枚岩だった。二人は岩から少し離れた所に立ち止まった。
「バオホ! もう来てるなら出てきてくれ!」
しかし何も変化はなかった。
「おかしいな。もう来ている筈なんだが」
「約束の正午までまだ少しありますよ」
「ああ、そうなんだがね……先日も言ったように、こう言った待ち合わせの時は相手よりも先に来て隠れて相手を観察してみたほうがいい」
「どうしてです?」
「面と向かった時には見せない本音を話すことがある。態度が違ったりね。それを前もって見極めておくのは交渉を有利に進められるんだよ」
「なるほど。で、既にバオホも来ているとお思いなのですね」
「ああ、そうなんだけどね」
その時、徐ろに誘惑の岩の上部の辺りが光り輝き出した。ミカはその眩しさに思わず顔を背けて手で光を遮った。
シュタインも右手で光を遮ってはいたが視線は光の方に向けていた。
「やはり来ていたか」
シュタインは呟いた。
光は徐々に弱まった。そして弱まるにつれ人影が見えてきた。光が完全に収まった時、岩の上には一人の老人のような男が立っていた。皮の鎧を着ていてその上から長いローブを羽織っている。フードを被って顎に長い髭を蓄えていた。
「久しぶりだな、シュタイン」
「前にあったのはいつの事だったかな?」
二人は淡々と言葉を交わす。
「そっちの女は何者だ?」
「これはミカ。僕の弟子さ」
「弟子とな? シュタインよ、お前は変わったな」
「用件を端的に言おう。冀求の指輪について何か知らないか?」
「冀求の指輪だと? ははは。そんな物にかまけている暇はない。用件とはそれだけか?」
「そんな物だと? バオホよ、お前何か探し物でもあるのか? 冀求の指輪に興味はないのか?」
「そんな物はとうの昔に飽きてしまったよ。昔馴染みだから話してやろう。私はついにローエ・ロートを手に入れたのだ」
「ローエ・ロートを⁉︎」
噂は本当だったか。そして一番所持して欲しくない者の所へ行ってしまった。
ローエ・ロートは魔法の剣だ。その力を知るものによって使われれば強大な力となる。
「正確には私が見つけたのではなく贈り物としてもらったのだ。交換条件と共にな」
「交換条件だと?」
「フェネッケン採掘場とフェネッケンの街を制圧して欲しいと言うのだよ」
「フェネッケン採掘場と言えばポーレシア最大級の鉱石の採掘場。そんな所を制圧しろと言う奴は限られている」
「余計な詮索はしない事だな」
ミカは高度な会話についていけなかった。シュタインはミカに分かるように、しかしバオホから視線を外さずに言った。
「ポーレシアは今隣国のエングラント大公国と戦争状態にある。とは言っても今は均衡が保たれてて一部国境付近でイザコザがあるくらいで済んでいるがな」
ポーレシア王国の西に隣接するエングラント大公国はとても好戦的な国で、領地の拡大を常に目指して、隣接するいくつかの国と領土戦争を繰り返している。
「ポーレシア国王は戦争を好まないお方なのでエングラント大公国に攻め入るまではしないが、攻め込まれれば防戦する」
そうやって今までは均衡を保ってきていた。
「もしフェネッケン採掘場が占領されたら、この均衡は大きく崩れるぞ」
「そうだ。シュタインよ、フェネッケンは私によって占領される。そうなれば鉱物資源の多くを失ってポーレシアは終わるだろう。昔のよしみだから忠告しておく。ポーレシアを去れ。エングラントに来い。それが一番の方法だ」
「何故だ! 政治になど興味のないお前が、何故たった一国の問題に手を貸すのだ?」
「ローエ・ロートがその褒美だ」
「……なるほどな。お前は変わらないな」
ミカは思った。ポーレシア王国の西にあるエングラント大公国とポーレシア王国が大々的に戦争になったら、国の南部に位置するミカの実家はどうなるのだろうか?
「どうやら冀求の指輪の事を聞いている場合ではないようだな。お前に情報を聞いてから屋敷に戻りのんびり情報を精査しようと思っていたが、のんびりなどしていられない。今すぐフェネッケンに行かなければ」
「どうやら今度は敵として会うことになりそうだな」
バオホはそう言うと右手を軽く握り前に突き出した。その手には指輪がはめられている。
「レンダード マ ヤ! 光よ溢れろ。ブライエン!」
「光の魔法だ! ミカ、バオホから視線を外せ!」
バオホの指輪は急激に光を増し、見ていられないほどに輝き出した。バオホがここに現れた時と同じだ。ミカは顔を背けて手で光を遮った。
シュタインは目を閉じて耳に全神経を集中させた。バオホは次の魔法を唱えていた。
「ペリグル ミンダラ スニヤラニ……」
シュタインはそれがテレポートの魔法だとすぐに分かった。
「時空よ、我が手に。ステポール!」
光の闇が消えるともうそこにはバオホの姿は無かった。ミカが口を開く。
「師匠、これは一体……」
「話は後だ。予定が大幅に変わってしまったよ。急ごう」
バオホはテレポートの魔法を使ってシュタイン達の前から姿を消した。
シュタインはミカの手を取り自分の方に引き寄せた。そして腰に手を回し抱きかかえるように体を密着させた。
「し、師匠! やめて下さい!」
「オブザード マ ザード 解き放て。ミカ、飛ぶよ!」
と同時に二人の体は上空めがけて飛び上がった。木々の枝が体に刺さったのは一瞬だった。
突然の事にミカは悲鳴すら出なかった。
「とにかく時間が鍵だ。急いでムースの所へ戻る。僕にもテレポートがあれば楽なんだがな」
テレポートの魔法は失われた古代魔法の一つだ。シュタインはテレポートを持っていなかった。
「バオホは炎の魔剣ローエ・ロートを何者かから貰ったと言っている。その代償にフェネッケン採掘場を侵略せよと。奴は約束を守る男でね。エングラントの槍はフェネッケンからすぐの所にある。奴は必ずフェネッケン採掘場に現れるぞ」
「何者がその魔法の剣を与えたのですか?」
「フェネッケン採掘場を欲しがると言う事は個人じゃない。フェネッケンが奪われたらポーレシアは戦争や生活に必要な鉱物資源の殆どを失い隣国の侵攻から国を守れなくなる。そうなって一番喜ぶのは……」
「エングラント大公国ですか?」
「その通り。やつはエングラントの国民であるし、そこに来てローエ・ロートとなれば手を貸すのが奴の性格だ」
空を飛びながらシュタインは説明した。
しかし、フェネッケン採掘場が奪われると言う事は完全にポーレシア王国とエングラント大公国が本格的な戦争状態になると言う事だ。ミカは途端に不安になってきた。
*
ムースの飛行速度は凄かった。シュタインとミカが戻り事情を説明し終わると直ぐに二人を乗せて北に飛び立った。フェネッケン採掘場は夢見の湖からほぼ北にある。
フェネッケン採掘場はポーレシアの西のヴェストファーガン地域、エングラントとの国境付近にある。国境線になっている雪割り山脈の麓にあるのだった。その採掘場から直ぐの所にフェネッケンの街がある。
バオホの住むエングラントの槍は、フェネッケンから雪割り山脈を超えて少し南へ行った所に聳え立つ。バオホはテレポートで既にエングラントの槍に戻り魔法部隊の編成を行なっているはずだ。早急にフェネッケンの守りを固める必要がある。
しかしまずはその地域を治めている領主に報告して許可を得る必要がある。
ヴェストファーガン地域の領主はフェネッケンから東に五日程の所にあるドライブルクの街にいるヴァイスだ。
ムースの翼ならひとっ飛びだ。
しかしムースは人目にさらされる事を嫌がるので、ドライブルクから少し離れた森の中に下ろしてもらった。
「ムース、ありがとう。今回はとても助かった」
「時間が惜しい。早くゆけ」
シュタインは頷くとミカを連れて森を抜けた。
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