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森の聖域 2
眠るリーン 2
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リーンは世界樹との対話を続けた。
世界樹は長い年月『森の聖域』に、たたずんでいるが、会話する相手が居なかったのか、言動も思考も子供のようだ。
リーンは幼い頃のキースやミーナ、ニーナ達とのやり取りを思い出しながら、世界樹と話をしていた。
ずっと我慢していたのか、話す相手がいなかったからか、世界樹は話し始めたら止まらなかった。
なぜ、『行かないで』『一人にしないで』『側にいて』と繰り返し言うのか、知りたかっただけなのに…。
これまでの世界樹との話をまとめると、世界樹が『森の聖域』の魔素の多いコノ地域に根付いて、長い年月の間に自我を持ち、木霊や土霊、風霊達が集まるようになった。
けれど世界樹の回りは魔素が濃く、時折、人族や獣人族が訪れるだけで、誰も近付けるような場所ではなかった。
ある時、世界樹が根を伸ばしていると、自分と同じ木の魔力を持つ不思議な子供を見つけた。
けれどその子供が瀕死の状態だったので世界樹は、その子供を伸ばした根で包み、まだ名も無き頃の『森の聖域』へと連れて帰り、傷を治そうとしたが、世界樹には出来なかった。
その時『森の聖域』にいた有翼族が、木の根に包まれた子供に『時間の巻き戻り』の魔法をかけて傷を治した為、その魔法が世界樹にも受理されてしまった。
それから世界樹の中に別空間が出来、傷を治すようになったが、『時間の巻き戻り』の魔法の為、記憶が消えていくのを止めることは出来ずにいた。
その中で記憶だけが記録として、その空間に結晶となって漂っていたのでそれを集めた場所が、私が『記憶の図書館』と呼ぶ場所の事だった。
傷が癒えた子供は魔力が強く、この地で暮らしていても平気だが、記憶が無いので、時々訪れる人族や獣人族にいろんな事を習いながら生活し、いつしか外の世界に憧れて、出ていってしまった。
『森の聖域』を出て、その子が瀕死の状態になり魔力が消えかけると、世界樹は迎えに行って、傷を治した。
それの繰り返し…。
みんな『森の聖域』から、世界樹の側から離れて行ってしまう…。
だから『行かないで』、『側にいて』なのだ。
あまりにも複雑で、どう答えてあげれば良いのか分からない…そんな内容だった。
リーンが気が付くと、新緑の木々の中で身体を横たえていた。
眠っていたのか、意識を失っていたのか分からないが、どれだけかの時間が経過したのだろう。
リーンは身体を起こし、背伸びをして、ふと思った。
世界樹が『時間の巻き戻り』をするたび、ココでの事が記憶に残らないのだろうと思った。
なので『私』の傷が癒えて外に出ると、忘れてしまう…と、言うことだろう。
とはいえ、瀕死の状態でココに来るから会話など出来ないだろうが…。
その点、私は自ら魔力を取り戻したくてココへ来た。
だから世界樹とも会話できるのだろう。
リーンがそんなことを考えていると、再び頭の中に声が響いてきた。
「…話し…聞かせて…」
話をするのは良いが、姿が見えないと、一人でしゃべっている気がして落ち着かない。
せめて姿があれば…。
「…姿を現せないか?」
「…姿…」
「人族でも獣人族でも、木霊の姿でも良い。現具体化…だったか…。幻でも良いし、個体が分かる姿を見せてくれると有りがたいが…」
リーンがそう言うと、しばらく静になり、リーンの目の前の新緑がガサガサと動き、緑色の長い髪の毛の、緑色の瞳の、膝丈くらいの大きさの木霊が姿を現した。
「こんにちわ」
リーンが微笑んで言うと、世界樹は狼狽えながら、喋りかけた。
「こ…こんにち…わ…」
…可愛い。
世界樹はリーンから少し離れて座り、じっと見てくる。
「どんな話が良い?」
リーンが聞くと、少し首を傾げて言う。
「…時間を…巻き戻ししても、…記憶を…失くしたくない…理由…」
リーンは微笑んで言った。
「長くなるけど良いかな」
世界樹は頷く。
リーンはこれまでの旅の話を聞かせた。
世界樹は長い年月『森の聖域』に、たたずんでいるが、会話する相手が居なかったのか、言動も思考も子供のようだ。
リーンは幼い頃のキースやミーナ、ニーナ達とのやり取りを思い出しながら、世界樹と話をしていた。
ずっと我慢していたのか、話す相手がいなかったからか、世界樹は話し始めたら止まらなかった。
なぜ、『行かないで』『一人にしないで』『側にいて』と繰り返し言うのか、知りたかっただけなのに…。
これまでの世界樹との話をまとめると、世界樹が『森の聖域』の魔素の多いコノ地域に根付いて、長い年月の間に自我を持ち、木霊や土霊、風霊達が集まるようになった。
けれど世界樹の回りは魔素が濃く、時折、人族や獣人族が訪れるだけで、誰も近付けるような場所ではなかった。
ある時、世界樹が根を伸ばしていると、自分と同じ木の魔力を持つ不思議な子供を見つけた。
けれどその子供が瀕死の状態だったので世界樹は、その子供を伸ばした根で包み、まだ名も無き頃の『森の聖域』へと連れて帰り、傷を治そうとしたが、世界樹には出来なかった。
その時『森の聖域』にいた有翼族が、木の根に包まれた子供に『時間の巻き戻り』の魔法をかけて傷を治した為、その魔法が世界樹にも受理されてしまった。
それから世界樹の中に別空間が出来、傷を治すようになったが、『時間の巻き戻り』の魔法の為、記憶が消えていくのを止めることは出来ずにいた。
その中で記憶だけが記録として、その空間に結晶となって漂っていたのでそれを集めた場所が、私が『記憶の図書館』と呼ぶ場所の事だった。
傷が癒えた子供は魔力が強く、この地で暮らしていても平気だが、記憶が無いので、時々訪れる人族や獣人族にいろんな事を習いながら生活し、いつしか外の世界に憧れて、出ていってしまった。
『森の聖域』を出て、その子が瀕死の状態になり魔力が消えかけると、世界樹は迎えに行って、傷を治した。
それの繰り返し…。
みんな『森の聖域』から、世界樹の側から離れて行ってしまう…。
だから『行かないで』、『側にいて』なのだ。
あまりにも複雑で、どう答えてあげれば良いのか分からない…そんな内容だった。
リーンが気が付くと、新緑の木々の中で身体を横たえていた。
眠っていたのか、意識を失っていたのか分からないが、どれだけかの時間が経過したのだろう。
リーンは身体を起こし、背伸びをして、ふと思った。
世界樹が『時間の巻き戻り』をするたび、ココでの事が記憶に残らないのだろうと思った。
なので『私』の傷が癒えて外に出ると、忘れてしまう…と、言うことだろう。
とはいえ、瀕死の状態でココに来るから会話など出来ないだろうが…。
その点、私は自ら魔力を取り戻したくてココへ来た。
だから世界樹とも会話できるのだろう。
リーンがそんなことを考えていると、再び頭の中に声が響いてきた。
「…話し…聞かせて…」
話をするのは良いが、姿が見えないと、一人でしゃべっている気がして落ち着かない。
せめて姿があれば…。
「…姿を現せないか?」
「…姿…」
「人族でも獣人族でも、木霊の姿でも良い。現具体化…だったか…。幻でも良いし、個体が分かる姿を見せてくれると有りがたいが…」
リーンがそう言うと、しばらく静になり、リーンの目の前の新緑がガサガサと動き、緑色の長い髪の毛の、緑色の瞳の、膝丈くらいの大きさの木霊が姿を現した。
「こんにちわ」
リーンが微笑んで言うと、世界樹は狼狽えながら、喋りかけた。
「こ…こんにち…わ…」
…可愛い。
世界樹はリーンから少し離れて座り、じっと見てくる。
「どんな話が良い?」
リーンが聞くと、少し首を傾げて言う。
「…時間を…巻き戻ししても、…記憶を…失くしたくない…理由…」
リーンは微笑んで言った。
「長くなるけど良いかな」
世界樹は頷く。
リーンはこれまでの旅の話を聞かせた。
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