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間章2 勇者達、シルフィーユ王国へ
バーンとの模擬戦
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○○○ 桜木春人 視点
バーンさんと出会って3日間、俺・真也(竜崎)・義輝(久保)はバーンさんと、美香(島崎)・夕実(吹山)はリフィアさんと訓練を行っている。また結束力を高めるため、お互い名で呼ぶ事になった。
現在、俺達は風の神殿に向けて移動中だ。この移動中でも、バーンさんの訓練は続いている。魔力纏いを使用しながら足に魔力を集中させ移動しているため、移動速度が恐ろしく速い。しかも、ここは大森林だから、障害物が多過ぎる。バーンさんのペースに合わせながら走っているんだが、ペースが速くなったり遅くなったり、明らかに俺達を翻弄している。この訓練が、バーンさんと出会った翌日から続いていて、今日で2日目だ。昨日の移動訓練の時間はたった30分だった。けど、そのたった30分だけで、全員が疲れでダウンした。やってみてわかったが、維持するのが滅茶苦茶しんどい。始めは楽な訓練で助かったと思っていたが、時間が経てば経つ程、魔力纏いを維持するのが困難になってきた。俺達の1日のスケジュールは、
移動訓練→休憩→移動訓練→休憩→模擬戦→就寝
と訓練尽くしだ。移動が終われば、模擬戦を行い、終了すればそのまま就寝。目覚めると、移動の訓練が始まる。ハッキリ言って、この2日間は地獄だった。ただ、不思議なのは昨日にしても今日にしても起きると、身体が凄く軽くなっていた。しかも、移動訓練での限界時間が延びてきているのだ。それをバーンさんに言うと、どうやら俺達が就寝した後、リフィアさんがボロボロになった俺達の身体を回復魔法『リジェネレーション』で少しずつ回復させることで、魔力や骨、筋肉といった部分を成長させていたらしい。王都に到着するまで、移動中は常時この訓練を続けると言った時、俺達全員絶句したね。
また、バーンさんと模擬戦を始めてわかった事がある。俺達はまだまだ経験不足という事が、これでもかというぐらい思い知らされた。
・動きやフェイントが素直過ぎる ・魔力纏いに頼るな ・連携が雑過ぎる
・聖剣の攻撃力に振り回されている ・甘さを捨てろ
などなど、欠点を数多く言われ、日々治そうと努力している。今からは、一対一でバーンさんと模擬戦だ。
「今回の模擬戦は素手で行う。その状態で、ハルトの現状の強さを知りたい。全力で来い」
「わかりました」
これまで『魔力纏い』を全開にして挑んでも、剣術や体術全てにおいて、歯が立たなかった。今の俺の全力、それなら最初から全開でやってやる!俺は『魔力纏い』から『雷闘気』に変化させた。
「ほう、『魔力纏い』の上位をもう覚えていたのか、さすがだな」
「その言い方からすると、そういうバーンさんも覚えているんですね?」
「ああ、覚えているとも」
やはり---か。現状、バーンさんは『魔力纏い』しか使っていない。今の俺の全力がどこまで通用するか、せめて上位を使わせたいな。
「いきます!」
俺は、全力全開でバーンさんの顔に右ストレートを打ち込もうとしたが軽く回避された。しかも、顔色1つ変えていない。く、連続で打ち込む。
「はあ、は、たあ!」
く、これまでのことを思い出せ、焦るな。フェイントや殺気を織り交ぜて、戦うんだ。
「お、最初より良い動きになっているな。フェイントに殺気も入っている、中々だな。だが---」
ことごとく回避されている----か、これならどうだ?俺は、最高速で縦横無尽でバーンさんの周囲を走り徐々に間合いを詰めていった。
「戦い方は、まずまずだが---」
む、始めて隙が出来た!ここだ!バーンさんの右脇腹に全力の一撃を---
《ズン》
「ガハ、---え、---なんで」
いつの間にか自分の腹に、バーンさんの左拳は深くめり込んでおり、俺は崩れ落ちてしまった。
「見事にカウンターが決まったな」
「カ、カウンター?でも、---バーンさん、---手が動いていなかったはず」
「ああ、俺は何もしていない。お前自らが、俺のこの拳に突っ込んで来たんだよ」
どうなってるんだ?俺が突っ込んだ?そんな馬鹿な!
見学していた真也と義輝を見ると、2人とも状況が飲み込めていないようだった。
「その様子だと、どうしてそうなったのか、3人とも理解していないな?」
「「「はい」」」
全くわからん。バーンさんは、俺の攻撃を避けてはいたが、攻撃をする素振りを見せていなかった。なのに、この結果である。
「まず、ハルトはフェイントを入れつつ、俺との間合いを少しずつ詰めてきた。そして、お前は俺に隙が出来たと思ったろ」
「はい」
「それ自体がフェイントだ。お前は俺の右脇腹に攻撃を行うことだけに集中し、俺の動きを見ていなかった。右脇腹に当たる直前に体の位置を少し動かしたんだよ。体の位置を動かしたことで、お前の腹は俺の左拳に突っ込んだわけだ」
マジかよ!全然気付かなかった。
「あとは、雷闘気の弱点も利用したがな」
「弱点!そういえば、攻撃を軽々と回避してましたけど、まさか---」
嘘だろ。雷闘気は、今回が初見なのはずだ。少し見ただけで、俺にもわからない弱点を見抜いたのか!
「雷闘気自体は強力なスキルだが、使用者であるハルトが完全に使いこなせていない。移動時、若干の雷が発しているせいで、移動場所がモロバレだ。しかも、動きが直線的だ。今回のカウンターはそいつを利用させてもらった」
俺達は呆然とするしかなかった。初めて見ただけで、そこまで見抜けるものなのか?
「ふふふ、バーンは野獣だから、フェイント攻撃は大得意なのよね。しかも、直感と先読み能力がズバ抜けているから、自分よりスピードのある邪族相手でも、難なく討伐しているわよ」
リフィアさん、本人の前で野獣と言っていいんですか?
「野獣か、ある意味そうだな」
本人、納得してるよ。
「ハルト、雷闘気を体表1cmになるまで圧縮しろ。そこまで制御出来れば、弱点も克服するだろうし、基礎能力値の約10倍まで力を引き上げれるはずだ」
げ、体表1cm!雷闘気は制御がかなり難しい。----やるしかないか。
「バーンさんは出来るんですか?」
「ああ、こんな感じだ。『炎闘気』という名称だ」
バーンさん身体が青く輝いている。おいおい、極めるとこうなるのか。パッと見た感じ、力を感じないように見えるが、青く輝いている部分には炎が恐ろしい密度で圧縮されているのがわかる。
「俺も、そこまで出来るよう頑張ります!」
現状、多くの欠点は確かにあるが、それらを克服すれば俺達はもっと強くなれる。もっともっと強さに貪欲になっていくんだ。バーンさんに必ず追いつき追い越してみせる!
○○○ 吹山夕実 視点
私は、夢でも見ているのでしょうか?漫画やアニメでよく見かける格闘シーンが目の前で繰り広げられています。正直、私にはあんな戦闘無理です。はあ~、魔法に関しても、美香がシャドウキングを討伐した時のような強力な魔法は使えません。ハッキリ言って、私はお荷物なのではなかろうか?役立てるものとしたらユニークスキルぐらいじゃないかな。だからこそ、自分を高めたい。もっともっと強くなって、みんなの役に立ちたい。
あ、いけない。余計な事を考えてしまった。それにしても、春人君の動きが殆ど見えません。薄っすらと残像が見えているぐらいです。バーンさんは、自分からは殆ど動いていないけど、春人君の動きを確実に捉えている節があります。捉え方に関しては、なんとなくわかる気がする。
「ミカ、ユミ、この戦いを見て、どう思う?」
え、どう思うって率直に言って良いのだろうか?
「春人の動きが殆ど見えません。でもバーンさんは、確実に捉えていますよね?なんでわかるんでしょうか?ただ単純に、バーンさんが強いから?」
うん、美香の言う通りだ。春人君の動きがわかる原因も想像つく。
「ミカにはそう映るのね。まあ、バーンが強いというのも理由の1つだけど、ユミはどう?ハッキリ言っていいわよ」
「え、それではハッキリ言わせてもらいます。春人君の動きは殆どわかりませんが、多分私でも対応出来ます。やり方次第では勝てるのではないかと」
「ちょっと夕実、どういうこと?あの動きを見て、どうやって勝てるの?」
「私が対戦相手なら、殆ど動かないで勝てると思う。倒し方はカウンター」
「ええ!カウンターて、ボクシングのあれよね?相手のタイミング合わせて放つ技だよね?」
「そう、でも春人君の動きに合わせる必要はないと思う。今の春人君を見てると、動きが単純だから攻撃のタイミングがわかりやすい。だから、バーンさんも殆ど動いていない。ただ突っ立っていれば、そこに春人君が突撃してくるんだから、そこに拳を置くだけで勝てると思う。でも言うのは簡単だけど、今の私だと、かなりの危険を伴うかな。美香なら出来るんじゃない?」
「そう言われて見ると、確かに動きが単純ね。うん、あれなら私も合わせれると思う」
リフィアさんは、この答えに辿り着けるか、私達を試しているのかもしれない。
「ふふ、ユミの答えが正解よ。うん、あなた達のメンバーの中で、最適解を導き出せるのはユミね。その次にヨシキかな。現状、ヨシキの方が答えを出せる速度は早いけど、無難な答え80%、最適解20%ね。ユミの場合、答えを出す速度は遅いけど、無難な答え30%、最適解70%で、最優秀な答えを導き出している時が多いわ。実戦において、戦闘中に導き出した答えによって、勝敗が決する。間違えれば当然死ぬ。勝つための最適解を導き出せる資質を持つ人がパーティーに必須なのよ。ユミはパーティーの中で確かに最弱かもしれないけど、今後生き抜く上で、最も重要な資質を持っているの。だから自信を持ちなさい!」
ええ!今、私、褒められたんだよね。私は、リフィアさんのいう資質を持っているんだ。たとえ弱くても、正しいを答えを出して、そこにみんなを導いていけばいいのか!
「はい!もっと自分に自信を持ちます。正しい答えを出して、みんなを勝利に導けるように頑張ります」
「ええ、ユミなら出来るわ。そして、あなた達5人はパーティーとして良いバランスを保っている。ムードメーカーのシンヤとミカ、どんな状況下でも比較的冷静に判断が出来るヨシキとユミ、そして要の存在であるハルト。まだまだ拙いところはあるけど、鍛えれば強さだけでなく、中身も成長していくわ。頑張りなさい」
「「はい!」」
ああ、将来、リフィアさんのような包容力のある女性になりたいな。
「あら、ユミの言う通りになってしまったわね」
「ホントだ!夕実、凄いじゃん。春人・真也・義輝は全然理解出来ていない感じだよ」
本当に私の言った通りになってしまった。私は、見学している状態で最適解を導き出せた。でも、バーンさんはあの戦いの状況で全く焦らず、最適解を瞬時に出してる。そりゃあ、経験の差は凄く大きいけど、バーンさんもリフィアさんのいう資質を身に付けているということなのかな。もっと経験を積みたい。困難な状況下でも、勝利に導くための最適解を出せるようにしたい。
「あ、リフィアさん、さっき言っていた資質には、何か名前があるんですか?」
美香、それは別にどうでもいいのでは?
「別に名前はないんだけど、友達のウィルに話したら、【その資質、オプティマルソルーションという名前にしよう!】ということになったのよ。バーンも響きが気に入ったみたいで、時折口にしているわね」
「おー、オプティマルソルーション、カッコいい名前だ!夕実と義輝は、オプティマルソルーションを持っているんだね」
そのウィルという人は、絶対に転生者だ!
○○○
『精神一到』はユニークスキルで、一定の条件が揃うと発動し、スキル自体が相手の弱点や討伐方法を明確に教えてくれます。
『オプティマルソルーション』は、スキルでもユニークスキルでもありません。単なる資質です。戦いを開始してから、相手を観察することで、いかに相手を効率良く倒すかの最適解を自分で考える力です。
バーンさんと出会って3日間、俺・真也(竜崎)・義輝(久保)はバーンさんと、美香(島崎)・夕実(吹山)はリフィアさんと訓練を行っている。また結束力を高めるため、お互い名で呼ぶ事になった。
現在、俺達は風の神殿に向けて移動中だ。この移動中でも、バーンさんの訓練は続いている。魔力纏いを使用しながら足に魔力を集中させ移動しているため、移動速度が恐ろしく速い。しかも、ここは大森林だから、障害物が多過ぎる。バーンさんのペースに合わせながら走っているんだが、ペースが速くなったり遅くなったり、明らかに俺達を翻弄している。この訓練が、バーンさんと出会った翌日から続いていて、今日で2日目だ。昨日の移動訓練の時間はたった30分だった。けど、そのたった30分だけで、全員が疲れでダウンした。やってみてわかったが、維持するのが滅茶苦茶しんどい。始めは楽な訓練で助かったと思っていたが、時間が経てば経つ程、魔力纏いを維持するのが困難になってきた。俺達の1日のスケジュールは、
移動訓練→休憩→移動訓練→休憩→模擬戦→就寝
と訓練尽くしだ。移動が終われば、模擬戦を行い、終了すればそのまま就寝。目覚めると、移動の訓練が始まる。ハッキリ言って、この2日間は地獄だった。ただ、不思議なのは昨日にしても今日にしても起きると、身体が凄く軽くなっていた。しかも、移動訓練での限界時間が延びてきているのだ。それをバーンさんに言うと、どうやら俺達が就寝した後、リフィアさんがボロボロになった俺達の身体を回復魔法『リジェネレーション』で少しずつ回復させることで、魔力や骨、筋肉といった部分を成長させていたらしい。王都に到着するまで、移動中は常時この訓練を続けると言った時、俺達全員絶句したね。
また、バーンさんと模擬戦を始めてわかった事がある。俺達はまだまだ経験不足という事が、これでもかというぐらい思い知らされた。
・動きやフェイントが素直過ぎる ・魔力纏いに頼るな ・連携が雑過ぎる
・聖剣の攻撃力に振り回されている ・甘さを捨てろ
などなど、欠点を数多く言われ、日々治そうと努力している。今からは、一対一でバーンさんと模擬戦だ。
「今回の模擬戦は素手で行う。その状態で、ハルトの現状の強さを知りたい。全力で来い」
「わかりました」
これまで『魔力纏い』を全開にして挑んでも、剣術や体術全てにおいて、歯が立たなかった。今の俺の全力、それなら最初から全開でやってやる!俺は『魔力纏い』から『雷闘気』に変化させた。
「ほう、『魔力纏い』の上位をもう覚えていたのか、さすがだな」
「その言い方からすると、そういうバーンさんも覚えているんですね?」
「ああ、覚えているとも」
やはり---か。現状、バーンさんは『魔力纏い』しか使っていない。今の俺の全力がどこまで通用するか、せめて上位を使わせたいな。
「いきます!」
俺は、全力全開でバーンさんの顔に右ストレートを打ち込もうとしたが軽く回避された。しかも、顔色1つ変えていない。く、連続で打ち込む。
「はあ、は、たあ!」
く、これまでのことを思い出せ、焦るな。フェイントや殺気を織り交ぜて、戦うんだ。
「お、最初より良い動きになっているな。フェイントに殺気も入っている、中々だな。だが---」
ことごとく回避されている----か、これならどうだ?俺は、最高速で縦横無尽でバーンさんの周囲を走り徐々に間合いを詰めていった。
「戦い方は、まずまずだが---」
む、始めて隙が出来た!ここだ!バーンさんの右脇腹に全力の一撃を---
《ズン》
「ガハ、---え、---なんで」
いつの間にか自分の腹に、バーンさんの左拳は深くめり込んでおり、俺は崩れ落ちてしまった。
「見事にカウンターが決まったな」
「カ、カウンター?でも、---バーンさん、---手が動いていなかったはず」
「ああ、俺は何もしていない。お前自らが、俺のこの拳に突っ込んで来たんだよ」
どうなってるんだ?俺が突っ込んだ?そんな馬鹿な!
見学していた真也と義輝を見ると、2人とも状況が飲み込めていないようだった。
「その様子だと、どうしてそうなったのか、3人とも理解していないな?」
「「「はい」」」
全くわからん。バーンさんは、俺の攻撃を避けてはいたが、攻撃をする素振りを見せていなかった。なのに、この結果である。
「まず、ハルトはフェイントを入れつつ、俺との間合いを少しずつ詰めてきた。そして、お前は俺に隙が出来たと思ったろ」
「はい」
「それ自体がフェイントだ。お前は俺の右脇腹に攻撃を行うことだけに集中し、俺の動きを見ていなかった。右脇腹に当たる直前に体の位置を少し動かしたんだよ。体の位置を動かしたことで、お前の腹は俺の左拳に突っ込んだわけだ」
マジかよ!全然気付かなかった。
「あとは、雷闘気の弱点も利用したがな」
「弱点!そういえば、攻撃を軽々と回避してましたけど、まさか---」
嘘だろ。雷闘気は、今回が初見なのはずだ。少し見ただけで、俺にもわからない弱点を見抜いたのか!
「雷闘気自体は強力なスキルだが、使用者であるハルトが完全に使いこなせていない。移動時、若干の雷が発しているせいで、移動場所がモロバレだ。しかも、動きが直線的だ。今回のカウンターはそいつを利用させてもらった」
俺達は呆然とするしかなかった。初めて見ただけで、そこまで見抜けるものなのか?
「ふふふ、バーンは野獣だから、フェイント攻撃は大得意なのよね。しかも、直感と先読み能力がズバ抜けているから、自分よりスピードのある邪族相手でも、難なく討伐しているわよ」
リフィアさん、本人の前で野獣と言っていいんですか?
「野獣か、ある意味そうだな」
本人、納得してるよ。
「ハルト、雷闘気を体表1cmになるまで圧縮しろ。そこまで制御出来れば、弱点も克服するだろうし、基礎能力値の約10倍まで力を引き上げれるはずだ」
げ、体表1cm!雷闘気は制御がかなり難しい。----やるしかないか。
「バーンさんは出来るんですか?」
「ああ、こんな感じだ。『炎闘気』という名称だ」
バーンさん身体が青く輝いている。おいおい、極めるとこうなるのか。パッと見た感じ、力を感じないように見えるが、青く輝いている部分には炎が恐ろしい密度で圧縮されているのがわかる。
「俺も、そこまで出来るよう頑張ります!」
現状、多くの欠点は確かにあるが、それらを克服すれば俺達はもっと強くなれる。もっともっと強さに貪欲になっていくんだ。バーンさんに必ず追いつき追い越してみせる!
○○○ 吹山夕実 視点
私は、夢でも見ているのでしょうか?漫画やアニメでよく見かける格闘シーンが目の前で繰り広げられています。正直、私にはあんな戦闘無理です。はあ~、魔法に関しても、美香がシャドウキングを討伐した時のような強力な魔法は使えません。ハッキリ言って、私はお荷物なのではなかろうか?役立てるものとしたらユニークスキルぐらいじゃないかな。だからこそ、自分を高めたい。もっともっと強くなって、みんなの役に立ちたい。
あ、いけない。余計な事を考えてしまった。それにしても、春人君の動きが殆ど見えません。薄っすらと残像が見えているぐらいです。バーンさんは、自分からは殆ど動いていないけど、春人君の動きを確実に捉えている節があります。捉え方に関しては、なんとなくわかる気がする。
「ミカ、ユミ、この戦いを見て、どう思う?」
え、どう思うって率直に言って良いのだろうか?
「春人の動きが殆ど見えません。でもバーンさんは、確実に捉えていますよね?なんでわかるんでしょうか?ただ単純に、バーンさんが強いから?」
うん、美香の言う通りだ。春人君の動きがわかる原因も想像つく。
「ミカにはそう映るのね。まあ、バーンが強いというのも理由の1つだけど、ユミはどう?ハッキリ言っていいわよ」
「え、それではハッキリ言わせてもらいます。春人君の動きは殆どわかりませんが、多分私でも対応出来ます。やり方次第では勝てるのではないかと」
「ちょっと夕実、どういうこと?あの動きを見て、どうやって勝てるの?」
「私が対戦相手なら、殆ど動かないで勝てると思う。倒し方はカウンター」
「ええ!カウンターて、ボクシングのあれよね?相手のタイミング合わせて放つ技だよね?」
「そう、でも春人君の動きに合わせる必要はないと思う。今の春人君を見てると、動きが単純だから攻撃のタイミングがわかりやすい。だから、バーンさんも殆ど動いていない。ただ突っ立っていれば、そこに春人君が突撃してくるんだから、そこに拳を置くだけで勝てると思う。でも言うのは簡単だけど、今の私だと、かなりの危険を伴うかな。美香なら出来るんじゃない?」
「そう言われて見ると、確かに動きが単純ね。うん、あれなら私も合わせれると思う」
リフィアさんは、この答えに辿り着けるか、私達を試しているのかもしれない。
「ふふ、ユミの答えが正解よ。うん、あなた達のメンバーの中で、最適解を導き出せるのはユミね。その次にヨシキかな。現状、ヨシキの方が答えを出せる速度は早いけど、無難な答え80%、最適解20%ね。ユミの場合、答えを出す速度は遅いけど、無難な答え30%、最適解70%で、最優秀な答えを導き出している時が多いわ。実戦において、戦闘中に導き出した答えによって、勝敗が決する。間違えれば当然死ぬ。勝つための最適解を導き出せる資質を持つ人がパーティーに必須なのよ。ユミはパーティーの中で確かに最弱かもしれないけど、今後生き抜く上で、最も重要な資質を持っているの。だから自信を持ちなさい!」
ええ!今、私、褒められたんだよね。私は、リフィアさんのいう資質を持っているんだ。たとえ弱くても、正しいを答えを出して、そこにみんなを導いていけばいいのか!
「はい!もっと自分に自信を持ちます。正しい答えを出して、みんなを勝利に導けるように頑張ります」
「ええ、ユミなら出来るわ。そして、あなた達5人はパーティーとして良いバランスを保っている。ムードメーカーのシンヤとミカ、どんな状況下でも比較的冷静に判断が出来るヨシキとユミ、そして要の存在であるハルト。まだまだ拙いところはあるけど、鍛えれば強さだけでなく、中身も成長していくわ。頑張りなさい」
「「はい!」」
ああ、将来、リフィアさんのような包容力のある女性になりたいな。
「あら、ユミの言う通りになってしまったわね」
「ホントだ!夕実、凄いじゃん。春人・真也・義輝は全然理解出来ていない感じだよ」
本当に私の言った通りになってしまった。私は、見学している状態で最適解を導き出せた。でも、バーンさんはあの戦いの状況で全く焦らず、最適解を瞬時に出してる。そりゃあ、経験の差は凄く大きいけど、バーンさんもリフィアさんのいう資質を身に付けているということなのかな。もっと経験を積みたい。困難な状況下でも、勝利に導くための最適解を出せるようにしたい。
「あ、リフィアさん、さっき言っていた資質には、何か名前があるんですか?」
美香、それは別にどうでもいいのでは?
「別に名前はないんだけど、友達のウィルに話したら、【その資質、オプティマルソルーションという名前にしよう!】ということになったのよ。バーンも響きが気に入ったみたいで、時折口にしているわね」
「おー、オプティマルソルーション、カッコいい名前だ!夕実と義輝は、オプティマルソルーションを持っているんだね」
そのウィルという人は、絶対に転生者だ!
○○○
『精神一到』はユニークスキルで、一定の条件が揃うと発動し、スキル自体が相手の弱点や討伐方法を明確に教えてくれます。
『オプティマルソルーション』は、スキルでもユニークスキルでもありません。単なる資質です。戦いを開始してから、相手を観察することで、いかに相手を効率良く倒すかの最適解を自分で考える力です。
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