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514 学園の対策
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2016. 10. 28
**********
ティアは新学期が始まる二日前。学園長に呼び出されていた。
「すまないね。君にだけは言っておくべきだと思ったものだから」
「それは、今回編入されてくるウィストの王女の事ですか?」
「……よく知っているね……」
わざわざ呼び出された理由は、どうやら予想通り、ウィストの第一王女の事だった。
「ヒュリア・ウィスト。彼女はとても優秀でね。この国から三つ隣のコウザレーヌの国立学園からも、首席だったと聞いています。編入試験の代わりに、あちらで試験を受けていただきまして、それに問題はありませんでした」
フェルマー学園の編入試験は難しいと有名だ。それに合格できる実力があるという事は、ベリアローズがそうであったように、この学園でも首位をキープできる実力があるという事になる。
ヒュリアは、その実力があった。
「ただ、国外からという事で、子ども達がどのような反応をするのかと不安なのです」
「それで、私にフォローを?」
「ええ……君の学園での影響力はかなりのものですから……」
ティアが認めるのならと、自然に受け入れるようになるだろうと踏んだのだ。
「それとなくは気にしますが、私も人ですから、好き嫌いもありますよ?」
「もちろんです。無理強いはしません」
あまり求められても困る。何より、学部も違う。それほど自然には接点を持てないだろう。それに、今回気にしなくてはならないのはその王女だけではない。
「もう一人いますよね? 高学部入学の公爵の養女が」
「おや。ご存知でしたか」
そう。今回、高学部から入学する事になったローズ・リザラント。あのサティアの偽物だ。
王女の目的も彼女ではないかとティア達は考えている。
「学園長は、彼女について、何か聞いていますか?」
「何がですか? そういえば、ウィストにいた方だったと……他には……」
学園長がここまで、個人についての情報を口にするのは、それだけティアを信頼しているからだ。
そして、ティアも学園長を信頼している。
「彼女、神の王国という組織に関わりがあるようなのです」
「それは、あの異種族を否定する……分かりました。万が一にも子ども達にその影響がないよう、先生方へ徹底しましょう」
「お願いします。信仰など、自由ですが……影響を受けやすい年齢ですし」
「ええ。承知しました。お気遣いありがろとうございます。いけませんねぇ。あなたもこの学園の生徒だというのに、頼り過ぎてしまって……」
ファルが大切にしている少女。それが分かるからこそ、学園長も特別視している。サクヤが獣人族である事も承知で雇っている人だ。何か察しているのかもしれない。
「良いんです。それと、先生方だけでは難しいでしょうから……シルさん」
「はっ、失礼いたします」
「え、えっと……君は?」
学園長は当然、クィーグとの契約は承知している。しかし、それでも警備員として会っていたに過ぎない。
シルのように、突然何処からともなく現れ、警備員の制服も着ていない者とは関わって来なかったようで、驚くのも無理はない。
「彼はシルです。学園の警備をする一族の者ですが、私の担当らしくて、たいていは私の傍にいます。本来は学園の警護要員ではありませんが、王女と公爵令嬢を見張らせます」
「いいのかい? 君の担当なのだろう?」
ティアに常についているはずの人員を使ってもいいのかと気になったようだ。これにシルが真面目に答える。
「私はティア様の専属です。ティア様のご命令ならば従います」
「そ、そう……」
「命令って……なんでそんなに固いの……?」
「ティア様が仰るのでしたら、何でもいたします」
「……」
なぜか機嫌が悪いように感じる。
「シルさ……」
「シルとお呼びください」
これは聞く耳を持っていないと判断したティアは、学園長へ再び顔を向ける。
「……学園長。そういう事でこちらは任せてください」
「は、はい……頼みます」
これで失礼すると言って、機嫌の悪いシルを連れて部屋を出るのだった。
**********
舞台裏のお話。
アデル「ティア、何で呼ばれたのかな?」
キルシュ「新学期が近いから、式の打ち合わせかもしれない」
アデル「でも、それって明日なんでしょ?」
キルシュ「まぁ、ティアは特別だからな」
アデル「ティアって、学園にファンクラブあるよね?」
ラキア「そうなのですか?」
アデル「あ、ラキア姉さん。うん。凄いんだよ。全学部に男女関係なくいるの。先生達も何人かいるって、カグヤ先生が呆れてた」
キルシュ「あれだよな……月に一度の学内集会で、ティアが挨拶した日は、異様な空気になるんだよな……」
アデル「そうそう。なんでか教会の人とか来てるよね。そんで拝んでく」
キルシュ「未だに聖女様なんだな……」
ラキア「そうでしたか。ですが、そろそろ飽きられる頃ですね。中学部に上がられますし」
キルシュ「なるほど。それほど熱意も続くものではないですしね」
アデル「何言ってるの? キルシュ」
キルシュ「何って、そろそろ飽きがくる頃なのだろう?」
ラキア「そうですね。ティア様が聖女や令嬢仕様を飽きられる頃です」
キルシュ「……ティアが?」
アデル「そうだよ。言ってたもん。叩き落とすんだって」
キルシュ「な、何をだ?」
ラキア「分かっていませんね。イメージは叩き壊すのが面白いのです」
アデル「そうそう。化けの皮を剥いだ時が面白いんだよね」
ラキア「仮面を取った時の周りの衝撃は凄まじいでしょうね……」
キルシュ「……」
アデル「分かる! はぁ……楽しみ……」
キルシュ「か、神のご加護がありますように……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
うっとりしてます。
シル君は何か怒っているようです。
学園の対策も練らなくてはならないですから、クィーグの協力は必要ですよね。
では次回、一日空けて30日です。
よろしくお願いします◎
**********
ティアは新学期が始まる二日前。学園長に呼び出されていた。
「すまないね。君にだけは言っておくべきだと思ったものだから」
「それは、今回編入されてくるウィストの王女の事ですか?」
「……よく知っているね……」
わざわざ呼び出された理由は、どうやら予想通り、ウィストの第一王女の事だった。
「ヒュリア・ウィスト。彼女はとても優秀でね。この国から三つ隣のコウザレーヌの国立学園からも、首席だったと聞いています。編入試験の代わりに、あちらで試験を受けていただきまして、それに問題はありませんでした」
フェルマー学園の編入試験は難しいと有名だ。それに合格できる実力があるという事は、ベリアローズがそうであったように、この学園でも首位をキープできる実力があるという事になる。
ヒュリアは、その実力があった。
「ただ、国外からという事で、子ども達がどのような反応をするのかと不安なのです」
「それで、私にフォローを?」
「ええ……君の学園での影響力はかなりのものですから……」
ティアが認めるのならと、自然に受け入れるようになるだろうと踏んだのだ。
「それとなくは気にしますが、私も人ですから、好き嫌いもありますよ?」
「もちろんです。無理強いはしません」
あまり求められても困る。何より、学部も違う。それほど自然には接点を持てないだろう。それに、今回気にしなくてはならないのはその王女だけではない。
「もう一人いますよね? 高学部入学の公爵の養女が」
「おや。ご存知でしたか」
そう。今回、高学部から入学する事になったローズ・リザラント。あのサティアの偽物だ。
王女の目的も彼女ではないかとティア達は考えている。
「学園長は、彼女について、何か聞いていますか?」
「何がですか? そういえば、ウィストにいた方だったと……他には……」
学園長がここまで、個人についての情報を口にするのは、それだけティアを信頼しているからだ。
そして、ティアも学園長を信頼している。
「彼女、神の王国という組織に関わりがあるようなのです」
「それは、あの異種族を否定する……分かりました。万が一にも子ども達にその影響がないよう、先生方へ徹底しましょう」
「お願いします。信仰など、自由ですが……影響を受けやすい年齢ですし」
「ええ。承知しました。お気遣いありがろとうございます。いけませんねぇ。あなたもこの学園の生徒だというのに、頼り過ぎてしまって……」
ファルが大切にしている少女。それが分かるからこそ、学園長も特別視している。サクヤが獣人族である事も承知で雇っている人だ。何か察しているのかもしれない。
「良いんです。それと、先生方だけでは難しいでしょうから……シルさん」
「はっ、失礼いたします」
「え、えっと……君は?」
学園長は当然、クィーグとの契約は承知している。しかし、それでも警備員として会っていたに過ぎない。
シルのように、突然何処からともなく現れ、警備員の制服も着ていない者とは関わって来なかったようで、驚くのも無理はない。
「彼はシルです。学園の警備をする一族の者ですが、私の担当らしくて、たいていは私の傍にいます。本来は学園の警護要員ではありませんが、王女と公爵令嬢を見張らせます」
「いいのかい? 君の担当なのだろう?」
ティアに常についているはずの人員を使ってもいいのかと気になったようだ。これにシルが真面目に答える。
「私はティア様の専属です。ティア様のご命令ならば従います」
「そ、そう……」
「命令って……なんでそんなに固いの……?」
「ティア様が仰るのでしたら、何でもいたします」
「……」
なぜか機嫌が悪いように感じる。
「シルさ……」
「シルとお呼びください」
これは聞く耳を持っていないと判断したティアは、学園長へ再び顔を向ける。
「……学園長。そういう事でこちらは任せてください」
「は、はい……頼みます」
これで失礼すると言って、機嫌の悪いシルを連れて部屋を出るのだった。
**********
舞台裏のお話。
アデル「ティア、何で呼ばれたのかな?」
キルシュ「新学期が近いから、式の打ち合わせかもしれない」
アデル「でも、それって明日なんでしょ?」
キルシュ「まぁ、ティアは特別だからな」
アデル「ティアって、学園にファンクラブあるよね?」
ラキア「そうなのですか?」
アデル「あ、ラキア姉さん。うん。凄いんだよ。全学部に男女関係なくいるの。先生達も何人かいるって、カグヤ先生が呆れてた」
キルシュ「あれだよな……月に一度の学内集会で、ティアが挨拶した日は、異様な空気になるんだよな……」
アデル「そうそう。なんでか教会の人とか来てるよね。そんで拝んでく」
キルシュ「未だに聖女様なんだな……」
ラキア「そうでしたか。ですが、そろそろ飽きられる頃ですね。中学部に上がられますし」
キルシュ「なるほど。それほど熱意も続くものではないですしね」
アデル「何言ってるの? キルシュ」
キルシュ「何って、そろそろ飽きがくる頃なのだろう?」
ラキア「そうですね。ティア様が聖女や令嬢仕様を飽きられる頃です」
キルシュ「……ティアが?」
アデル「そうだよ。言ってたもん。叩き落とすんだって」
キルシュ「な、何をだ?」
ラキア「分かっていませんね。イメージは叩き壊すのが面白いのです」
アデル「そうそう。化けの皮を剥いだ時が面白いんだよね」
ラキア「仮面を取った時の周りの衝撃は凄まじいでしょうね……」
キルシュ「……」
アデル「分かる! はぁ……楽しみ……」
キルシュ「か、神のご加護がありますように……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
うっとりしてます。
シル君は何か怒っているようです。
学園の対策も練らなくてはならないですから、クィーグの協力は必要ですよね。
では次回、一日空けて30日です。
よろしくお願いします◎
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