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第五章 封印の黒い魔人
046 魔術師の夢と少女の祈り
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それは、理修が生まれる三百年程前の話だった。
ダグストが未だ国ではなく、小さな集落であった頃。そこには、毎日のように森から出てきた魔獣に怯えて暮らす人々がいた。
「ねぇ、父ちゃん。何で、あっちの森で狩りをしないの?」
物が分かるようになった子ども達は皆、青々と茂る豊かな森ではなく、わざわざ少し離れた木の実も少ない森へと狩りに向かうのが不思議だった。
「あの森の向こう側には、魔族が住んでいるんだ。あの森に入れば、魔族が、恐ろしい魔獣をけしかけてくる。絶対に入るんじゃねぇぞ」
そう言って大人達は、恐ろしいと身を振るわせながら教え込んだ。それでも、入りたくなるのが、無知な子どもの性だ。しかし、恐ろしい魔獣が棲み着いているのは確かで、逃げ帰って来られる子どもは、ほんの数人だった。
何年、何十年と森の恐ろしさと不安を抱えていたその集落に、一人の魔術師が住み着いた。集落の人々は、その魔術師に毎日のように亡くした子ども達の事や、魔族への恨み言を吐いていった。
「それなら、私の研究に協力してください」
協力すれば、守ってもらえる。子ども達を死なせずに済むと、集落に住む人々は、この研究に協力した。
魔術師が求めたのは、祈りだ。強い、想い。そしてある日、それは現れた。
黒い大きな魔人。その大きさは、森の木々を軽く上回り、おぞましい姿で、集落に近い森の一部を焼き払った。
「遅かったか……あのバカ。また、ふざけたものを呼んだな」
その様子を上空から見下ろし、そう呟いたのは、魔人を呼び出した魔術師の数少ない友人、リュートリールだった。
黒い魔人は、現れた集落の中心地より動こうとはしない。幸いなことに、その手から放出された炎は、時間がある程度経たないと次を撃てないようだ。
リュートリールは、素早く集落の中心へと降り立ち、魔術師を探した。
「クルト」
「っ、リュートリール!」
すぐに気配を察知して見つけた魔術師、クルトは、リュートリールを見ると青ざめた顔をして駆けてきた。
「そのっ、こ、こんなモノが出てくるなんて……」
「前回ので、懲りていなかった事に驚くよ。バカなんだな」
「っゆ、友人に向かって、そんなっ」
「友人?お前はあれだ。知人以上、友人未満ってやつだ。友人ではない。認識的には、バカで充分だ」
「………」
リュートリールは、この世界では既に伝説の魔術師だ。世界さえ渡る事が出来る異質な存在。リュートリールにできない事は誰にもできないとまで言われていた。そんな絶対的な存在であるリュートリールの友人が、魔術に失敗して、自身の呼び出したモノにあたふたして良いはずがない。
「た、助けてください!」
「断る。明らかに別次元の生物ではないか。前から気になっていたが、お前は何がしたいんだ?」
「……ゆ、勇者を……」
「なに?」
「っ勇者を召喚したいのですっ。世界を平和に導く、善良な戦士を!」
力の込もったその言葉を聞いたリュートリールは、思わず持っていた杖で思いっきりクルトを殴った。
「ッブふっ……っ……!!」
横にスイングした杖で殴られたクルトは、そのまま数メートル、ゴロゴロと転がり、しばらく痺れるような痛みにうずくまって耐えなくてはならなかった。
「喚び出したモノに責任も持てないようなバカが、勇者を召喚すると?埋められたいのか?今すぐ、お前の存在全てを使って、この異界のモノを還した方が、よっぽどこの世界の為になるな」
「ひっ……ま、待ってっ……」
言った事が本当に出来てしまうのがリュートリールであり、伝説にまでなる所以だ。クルトが慌てるのも無理はない。
「待って何が変わる?アレをお前が還すか?それとも、聖女の祈りで封印されるか?」
そう、リュートリールが、涙を浮かべるクルトに詰め寄った時だ。再び魔人が炎を森へと放った。
「ふん。あまり、悠長にはしておれんな」
見上げた先には、足下にいるリュートリール達に見向きもしない魔人。
「……見れば見る程、奇妙な生物だ……手にあるのは、口か?目は……前に四つと後ろに一つ……いや、前がどっちだ?」
見たこともない生物に、リュートリールは、改めて興味を持った。そうして、クルトの存在など忘れ、魔人を観察していると、幼い声が響いた。
「やめてっ。これ以上、森を燃やさないで」
「ん?」
声の発信源を探して、目を向けた先には、少女が一人、魔人の正面で叫んでいた。
「お願い。この森には、私の友達や、母さんと父さんがいるのっ」
そう訴える少女を見て、リュートリールは森を探索する。しかし、広大な森の何処にも、人の気配はなかった。
「あの子は、何を言っている?誰もあの森には居ないぞ?」
その独白を聞いたクルトは、か細い声で少女の事を話した。
「彼女は、ミーナ。ミーナの両親は、森で魔獣に……元気付ける為に……『強い魔獣の中で、お母さんとお父さんは、生きている』と……」
「言ったのか……」
「……はい……」
純粋なミーナは、それを信じて疑わなかったらしい。だから、今でも森で、魔獣として両親が生きているのだと思っているのだ。
「よく、森に入らなかったな」
父母を恋しがり、森へと入りそうなものだがとリュートリールは眉を寄せた。
「彼女は……魔獣と心を通わせられるのです……」
「なにっ……ほぉ……なるほど。特殊能力持ちか。それで、こんなモノが喚ばれたと……」
神の恩恵を受ける『特殊能力持ち』は、そう珍しくはない。だが、稀にその能力のせいで世界の理を歪ませる事がある。
「この辺りの空間が少しおかしいのは、彼女の力だな」
次元を渡ることの出来るリュートリールだからこそ、感じられた違和感だ。魔人が異界から喚び出されてしまったのは、この場にあるほんの少しの次元の歪みが原因だった。そして、彼女の強い祈りが、これを可能にしてしまったのだ。
「……という事は……マズイな」
この後起こるであろう可能性に、リュートリールはハッと顔を上げた。だがほんの一瞬、遅かったようだ。
「……本当?っありがとう。それじゃぁ、あの大きな岩で良い?」
少女は、いつの間にか魔人と通じ合ったらしい。言葉を分からないはずの魔人が、ミーナを見下ろすように頭を下げていた。
「約束ね……うん。なら、おやすみなさい」
そう言って、ミーナは祈るように目を閉じた。すると、魔人の体が発光し、その大きさを変え、小さな光の玉となり、ミーナが先ほど指差した岩へと吸い込まれていった。
「……やってくれたな……」
「……ミーナ……」
この後、ミーナは聖女として崇められるようになる。そして、ミーナは生涯、この魔人の宿る岩を守り、平和を祈り続けた。
まんまと厄介なモノを封印されたと、リュートリールは友人達にこぼした。それは、孫娘の理修にも伝えられた。
『また喚び出すのも面倒だから、そのままにしておいた』
この判断が、後世どう影響するのか、残念ながら、そんな事をリュートリールが気にするはずもなかったのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
ダグストが未だ国ではなく、小さな集落であった頃。そこには、毎日のように森から出てきた魔獣に怯えて暮らす人々がいた。
「ねぇ、父ちゃん。何で、あっちの森で狩りをしないの?」
物が分かるようになった子ども達は皆、青々と茂る豊かな森ではなく、わざわざ少し離れた木の実も少ない森へと狩りに向かうのが不思議だった。
「あの森の向こう側には、魔族が住んでいるんだ。あの森に入れば、魔族が、恐ろしい魔獣をけしかけてくる。絶対に入るんじゃねぇぞ」
そう言って大人達は、恐ろしいと身を振るわせながら教え込んだ。それでも、入りたくなるのが、無知な子どもの性だ。しかし、恐ろしい魔獣が棲み着いているのは確かで、逃げ帰って来られる子どもは、ほんの数人だった。
何年、何十年と森の恐ろしさと不安を抱えていたその集落に、一人の魔術師が住み着いた。集落の人々は、その魔術師に毎日のように亡くした子ども達の事や、魔族への恨み言を吐いていった。
「それなら、私の研究に協力してください」
協力すれば、守ってもらえる。子ども達を死なせずに済むと、集落に住む人々は、この研究に協力した。
魔術師が求めたのは、祈りだ。強い、想い。そしてある日、それは現れた。
黒い大きな魔人。その大きさは、森の木々を軽く上回り、おぞましい姿で、集落に近い森の一部を焼き払った。
「遅かったか……あのバカ。また、ふざけたものを呼んだな」
その様子を上空から見下ろし、そう呟いたのは、魔人を呼び出した魔術師の数少ない友人、リュートリールだった。
黒い魔人は、現れた集落の中心地より動こうとはしない。幸いなことに、その手から放出された炎は、時間がある程度経たないと次を撃てないようだ。
リュートリールは、素早く集落の中心へと降り立ち、魔術師を探した。
「クルト」
「っ、リュートリール!」
すぐに気配を察知して見つけた魔術師、クルトは、リュートリールを見ると青ざめた顔をして駆けてきた。
「そのっ、こ、こんなモノが出てくるなんて……」
「前回ので、懲りていなかった事に驚くよ。バカなんだな」
「っゆ、友人に向かって、そんなっ」
「友人?お前はあれだ。知人以上、友人未満ってやつだ。友人ではない。認識的には、バカで充分だ」
「………」
リュートリールは、この世界では既に伝説の魔術師だ。世界さえ渡る事が出来る異質な存在。リュートリールにできない事は誰にもできないとまで言われていた。そんな絶対的な存在であるリュートリールの友人が、魔術に失敗して、自身の呼び出したモノにあたふたして良いはずがない。
「た、助けてください!」
「断る。明らかに別次元の生物ではないか。前から気になっていたが、お前は何がしたいんだ?」
「……ゆ、勇者を……」
「なに?」
「っ勇者を召喚したいのですっ。世界を平和に導く、善良な戦士を!」
力の込もったその言葉を聞いたリュートリールは、思わず持っていた杖で思いっきりクルトを殴った。
「ッブふっ……っ……!!」
横にスイングした杖で殴られたクルトは、そのまま数メートル、ゴロゴロと転がり、しばらく痺れるような痛みにうずくまって耐えなくてはならなかった。
「喚び出したモノに責任も持てないようなバカが、勇者を召喚すると?埋められたいのか?今すぐ、お前の存在全てを使って、この異界のモノを還した方が、よっぽどこの世界の為になるな」
「ひっ……ま、待ってっ……」
言った事が本当に出来てしまうのがリュートリールであり、伝説にまでなる所以だ。クルトが慌てるのも無理はない。
「待って何が変わる?アレをお前が還すか?それとも、聖女の祈りで封印されるか?」
そう、リュートリールが、涙を浮かべるクルトに詰め寄った時だ。再び魔人が炎を森へと放った。
「ふん。あまり、悠長にはしておれんな」
見上げた先には、足下にいるリュートリール達に見向きもしない魔人。
「……見れば見る程、奇妙な生物だ……手にあるのは、口か?目は……前に四つと後ろに一つ……いや、前がどっちだ?」
見たこともない生物に、リュートリールは、改めて興味を持った。そうして、クルトの存在など忘れ、魔人を観察していると、幼い声が響いた。
「やめてっ。これ以上、森を燃やさないで」
「ん?」
声の発信源を探して、目を向けた先には、少女が一人、魔人の正面で叫んでいた。
「お願い。この森には、私の友達や、母さんと父さんがいるのっ」
そう訴える少女を見て、リュートリールは森を探索する。しかし、広大な森の何処にも、人の気配はなかった。
「あの子は、何を言っている?誰もあの森には居ないぞ?」
その独白を聞いたクルトは、か細い声で少女の事を話した。
「彼女は、ミーナ。ミーナの両親は、森で魔獣に……元気付ける為に……『強い魔獣の中で、お母さんとお父さんは、生きている』と……」
「言ったのか……」
「……はい……」
純粋なミーナは、それを信じて疑わなかったらしい。だから、今でも森で、魔獣として両親が生きているのだと思っているのだ。
「よく、森に入らなかったな」
父母を恋しがり、森へと入りそうなものだがとリュートリールは眉を寄せた。
「彼女は……魔獣と心を通わせられるのです……」
「なにっ……ほぉ……なるほど。特殊能力持ちか。それで、こんなモノが喚ばれたと……」
神の恩恵を受ける『特殊能力持ち』は、そう珍しくはない。だが、稀にその能力のせいで世界の理を歪ませる事がある。
「この辺りの空間が少しおかしいのは、彼女の力だな」
次元を渡ることの出来るリュートリールだからこそ、感じられた違和感だ。魔人が異界から喚び出されてしまったのは、この場にあるほんの少しの次元の歪みが原因だった。そして、彼女の強い祈りが、これを可能にしてしまったのだ。
「……という事は……マズイな」
この後起こるであろう可能性に、リュートリールはハッと顔を上げた。だがほんの一瞬、遅かったようだ。
「……本当?っありがとう。それじゃぁ、あの大きな岩で良い?」
少女は、いつの間にか魔人と通じ合ったらしい。言葉を分からないはずの魔人が、ミーナを見下ろすように頭を下げていた。
「約束ね……うん。なら、おやすみなさい」
そう言って、ミーナは祈るように目を閉じた。すると、魔人の体が発光し、その大きさを変え、小さな光の玉となり、ミーナが先ほど指差した岩へと吸い込まれていった。
「……やってくれたな……」
「……ミーナ……」
この後、ミーナは聖女として崇められるようになる。そして、ミーナは生涯、この魔人の宿る岩を守り、平和を祈り続けた。
まんまと厄介なモノを封印されたと、リュートリールは友人達にこぼした。それは、孫娘の理修にも伝えられた。
『また喚び出すのも面倒だから、そのままにしておいた』
この判断が、後世どう影響するのか、残念ながら、そんな事をリュートリールが気にするはずもなかったのだ。
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