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幼子たちからの洗礼(1)
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「マジか、あれって、開場待ちの列?」
二日目ではあったが、休日という事で、三人は示し合わせて早く寮を出た。少なくとも金曜日より来場者が多いであろう事、そして、金曜日には居なかった子供たちが来る事を警戒して、早めに気持ちを作っておきたかったからだ。
開場予定は10:00で、一時間前にも関わらず、入り口には列が出来ていた。
驚いて圭吾が言うと、待機列をじっと見た登弥が言った。
「どうだろう、そこまで人気かあ? この企画展……」
身も蓋も無いが、それほど宣伝をしているようにも見えない。第一三人は、そういう企画展示がある事すら知らなかった。大学構内でもポスターは見かけなかったし、市の図書館などについてもしかりだ。
「あー、わかった、あれ、プラネタリウムの待機列だ」
並んでいる場所や、待っている者たちの様子を見て判断したのか、合点がいったように登弥が言った。
三角市少年少女科学館のプラネタリウムは昨年設備を一新しており、近隣の他施設に比べて先進的なものが導入された事を売りにしていた。昼の情報番組で芸能人がレポートをしていた事を思い出したのだろう、登弥は納得したように悦に入っている。
「だいたいさあ、子供ならともかく、男女で来るか? しかも開場前に」
「ロボット好きなカップルだっているかもしれないだろ?」
不服そうに圭吾が言うと、
「確かに、キラキラおしゃれ女子が朝一に並ぶか、といえば、ちょっと疑問かも……」
自信なさそうに譲二がフォローした。
「だろー? だって、ロボットだぞ、ロボット、AIとか、それ系のテクノロジーって事であればまだしもロボット好き女子って」
茶化すように言う登弥に圭吾が冷水を浴びせかけるかのような事を言った。
「でも、昨日クローズ間際にきた紅緒さんは、ロボット好き女子なんじゃないのか?」
「確かに……」
譲二も圭吾に同意する。すると登弥はあきらかに表情を変えた。
「きっかけはそうかもしれないけど、……けど」
急に登弥が自信が無さそうに語尾を弱める。
「話の内容からしてリケジョって感じだったもんなあ、ロボット好きなのかもなー」
「それどころかオタクかもしれないぞ、家にはガンプラの山が……」
調子にのって圭吾と譲二が続ける。
「なんでリケジョでガンプラなんだよ、アニメオタクとは限らないだろ?」
登弥が言うと、
「なんでそんなにアニオタを嫌がるんだ」
圭吾が混ぜっ返す。
「誰も嫌だなんて言ってねーよ」
登弥が言えば、
「いいや、今、ガンプラを否定するニュアンスが含まれていたね!」
圭吾が断定する。
「誰もそんな事言ってない、てか、なんでそんなにガンプラに食いつくんだ、つっこむところそこか?」
「静岡県民はガンプラを大切にするんだよ!」
「適当な事言ってんじゃねーーーーッ」
いよいよ圭吾と登弥の言い合いが不毛になってきたところで譲二が二人の間に割って入っった。
「はい、そこまでッ!」
風の谷のナウシカのルパ様か、サンとエボシに割って入ったアシタカのごとくに、譲二が二人の間にいる。
「何のために早く来たんだ? コントの練習じゃないだろ?」
譲二の言葉に登弥も圭吾も納得したように、三人は関係者用出入り口を目指したのだった。
二日目ではあったが、休日という事で、三人は示し合わせて早く寮を出た。少なくとも金曜日より来場者が多いであろう事、そして、金曜日には居なかった子供たちが来る事を警戒して、早めに気持ちを作っておきたかったからだ。
開場予定は10:00で、一時間前にも関わらず、入り口には列が出来ていた。
驚いて圭吾が言うと、待機列をじっと見た登弥が言った。
「どうだろう、そこまで人気かあ? この企画展……」
身も蓋も無いが、それほど宣伝をしているようにも見えない。第一三人は、そういう企画展示がある事すら知らなかった。大学構内でもポスターは見かけなかったし、市の図書館などについてもしかりだ。
「あー、わかった、あれ、プラネタリウムの待機列だ」
並んでいる場所や、待っている者たちの様子を見て判断したのか、合点がいったように登弥が言った。
三角市少年少女科学館のプラネタリウムは昨年設備を一新しており、近隣の他施設に比べて先進的なものが導入された事を売りにしていた。昼の情報番組で芸能人がレポートをしていた事を思い出したのだろう、登弥は納得したように悦に入っている。
「だいたいさあ、子供ならともかく、男女で来るか? しかも開場前に」
「ロボット好きなカップルだっているかもしれないだろ?」
不服そうに圭吾が言うと、
「確かに、キラキラおしゃれ女子が朝一に並ぶか、といえば、ちょっと疑問かも……」
自信なさそうに譲二がフォローした。
「だろー? だって、ロボットだぞ、ロボット、AIとか、それ系のテクノロジーって事であればまだしもロボット好き女子って」
茶化すように言う登弥に圭吾が冷水を浴びせかけるかのような事を言った。
「でも、昨日クローズ間際にきた紅緒さんは、ロボット好き女子なんじゃないのか?」
「確かに……」
譲二も圭吾に同意する。すると登弥はあきらかに表情を変えた。
「きっかけはそうかもしれないけど、……けど」
急に登弥が自信が無さそうに語尾を弱める。
「話の内容からしてリケジョって感じだったもんなあ、ロボット好きなのかもなー」
「それどころかオタクかもしれないぞ、家にはガンプラの山が……」
調子にのって圭吾と譲二が続ける。
「なんでリケジョでガンプラなんだよ、アニメオタクとは限らないだろ?」
登弥が言うと、
「なんでそんなにアニオタを嫌がるんだ」
圭吾が混ぜっ返す。
「誰も嫌だなんて言ってねーよ」
登弥が言えば、
「いいや、今、ガンプラを否定するニュアンスが含まれていたね!」
圭吾が断定する。
「誰もそんな事言ってない、てか、なんでそんなにガンプラに食いつくんだ、つっこむところそこか?」
「静岡県民はガンプラを大切にするんだよ!」
「適当な事言ってんじゃねーーーーッ」
いよいよ圭吾と登弥の言い合いが不毛になってきたところで譲二が二人の間に割って入っった。
「はい、そこまでッ!」
風の谷のナウシカのルパ様か、サンとエボシに割って入ったアシタカのごとくに、譲二が二人の間にいる。
「何のために早く来たんだ? コントの練習じゃないだろ?」
譲二の言葉に登弥も圭吾も納得したように、三人は関係者用出入り口を目指したのだった。
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