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4章 三国鼎立

救出されるも時既に遅し

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 牢に捕らえられた諸葛瑾の元にコツコツコツと足音が忍び寄る。
 諸葛瑾「我が人生も終わりか。殿が徐州の民を守る姿に心を打たれ、こうして仕えたが。役目を果たせず申し訳ありません」
 ???「そう悲観することも無いんじゃないかねぇ子瑜殿」
 顔をあげるとそこには懐かしい姿があった。弟の諸葛亮の学友であり水鏡先生と名高き司馬徽に臥竜・鳳雛・翼虎・蛇亀を得れば、天下をあまねく統べることができると言われし鳳雛こと龐統士元である。
 諸葛瑾「龐統なのか?亮の友人の?」
 龐統「そうさ。それより、ここまで酷い目に遭わせるとはねぇ。その傷、拷問も受けたようだね」
 諸葛瑾「わかるか。うぐっ。殿がどういう考えなのか。交州に向かう兵には誰が追従するのかとか色々聞かれたが何も知らないで通した。ゴホッゴホッ」
 ???「取り敢えずお水をお飲みくだされ」
 諸葛瑾「感謝する。酒宴でもお見かけしたような」
 ???「これは失礼を。孫策様に仕えております魯子敬と申します」
 諸葛瑾「なんだ。鞭の次は飴だったわけか。例え亮の友人の連れであろうとも殿の御身を危なくするようなことを喋るつもりはない。とっとと帰ってくれ。ゴホッゴホッ」
 魯粛「勘違いしないように、確かに今は孫策様に御仕えしておりますが、劉備殿と戦うことは得策ではないと考えています。回避する道を探していたのですがお聞き入れして貰えることはなく。この度、劉備殿のところへ亡命しようかと思案していた時、龐統殿より、声をかけられましてな。諸葛瑾殿の救出に来た次第」
 諸葛瑾「なんと。孫策も一枚岩ではないということか。つくづく我が殿は恵まれている。将からは敬われ、民からは慕われている。だからこそあの御方の目指す漢室復興に力を貸したいと思えるのだ。ゴホッゴホッ」
 龐統「漢室復興とは大きく出たねぇ。北に曹操。東に孫策。西に劉璋と挟まれている状態で、これは明らかに誰かの罠が働いているよ。陰謀ってやつさ。華北に向かったっていう関羽殿にも危機が迫りつつあるんじゃないかな」
 諸葛瑾「!?一刻も早く、殿にこの事をお伝えせねば」
 魯粛「今、扉を開けます」
 魯粛は鍵のようなものを取り出し、牢の扉を開け、諸葛瑾を解放する。そして、コソコソと逃げるようにして、外に出ようとしたのだが不思議なことがあった。
 魯粛「先程まで居た見張りのものが誰1人としていない?」
 龐統「これは、良くないことが起こっているか、もう孫策が荊州目指して進軍を開始したかだろうねぇ」
 遠くの方で怯えている兵を見つける魯粛。
 盧粛「これは何があったのだ?」
 呉の兵士「魯粛様、どうしてまだここに、孫策様なら昨日の深夜、主だった重臣たちを集め、荊州侵攻を開始したと。残っているのは、俺のような下っ端だけのはず。ですがこれは朗報です。どうかこの騒ぎをお鎮めください。奴らが出たんです。悪名高き姜鄭義賊団が。怖くて怖くてここから一歩も動けませんでした」
 諸葛瑾「姜鄭義賊団が!?ゴホッゴホッ」
 呉の兵士「お前は、どうして外に出ている。まさか、盧粛様、嘘だと言ってください」
 盧粛「すまない。俺はもう孫策には付いていくことはできん。袁術の時と同じよ。孫策もまた何かとてつもないものに取り憑かれておるようだ」
 呉の兵士「孫策様を裏切るというのなら貴方方をここより出すわけには行きません。殺してでも止めます。グフッ」
 手刀のようなもので瞬時に気絶させられる呉の兵士。
 姜藍「危機一髪ってところかい。諸葛瑾殿、無事かい?」
 諸葛瑾「姜藍殿、助かりましたぞ。ゴホッゴホッ」
 姜藍「その傷、許しちゃおけないね。覚悟しな」
 諸葛瑾「待ってください。その2人は、私のことを助けてくださったのだ。殿に謁見を申し出ている」
 姜藍「成程、そういうことならアタイからも感謝するよ。ここに居た守備兵は粗方、気絶させといた。汚職していた官僚から金を巻き上げて、民たちにも返したしアタイたちのやることは終わりさ。旦那には申し訳ないことをしたね。最悪、殺し合いになることも考えて、かつての仲間を集めて待機してもらっていたのに、ここにきたら拍子抜けするぐらい見張の兵が少なくてね」
 諸葛瑾「姜鄭義賊団が孫策の兵に会わなかった?これは不味い。早く、殿に伝えねば。ゴホッゴホッ」
 姜藍「なんだって、何言ってるんだい諸葛瑾殿?孫策の兵?まさか、そんなことって、アタイたちは今徐州の方を本拠地にしているんだ。孫策が兵を動員してそれにアタイたちが合わなかったってことは間違いなく荊州方面に進軍していると考えるべき。昨日、劉備様は交州征伐へと兵を進められた。今、荊州の防備は相当手薄。旦那にはアタイから言っておく。魅美、3人に馬を。アナタは、その後華雄にこの事を伝えて、一刻も早く、劉備様の判断を」
 魅美「心得ました頭領様」
 魅美からこのことを聞いた華雄はすぐさま行動に移す。連れてきていた元董卓軍の兵と張繍が治める荊州の南陽郡の要城の一つ宛城へと向かうことに決める。
 華雄「報告ありがとよ。藍にちょいとばかし荊州の危機救ってくるから温かい飯頼むわって伝えといてくれや」
 魅美「必ずお伝えします。大旦那様もどうか御無事で」
 華雄「おぅ。聞いた通りだ」
 張繍「ここからなら我が居城に近い、防備も整えねばならん。ひとまずはそこから各郡へと救援を行うべきであろう」
 李儒「全く、父親に似て油断ならない男ですね孫策も」
 徐栄「拍子抜けしていたところだ。逆に孫策の背を討ち、奇襲してくれる」
 華雄「それはアリかも知れねぇ。進軍を少しでも遅れさせられれば、それだけ荊州の防備が整うかもしれねぇ。それに徐栄、お前にならその大役任せられる。実績が半端ねぇからな」
 徐栄「あぁ、任せてくれ。少しでも時間を稼いでくれる」
 胡車児「張繍様は、城の防備を俺は徐栄と共に」
 張繍「わかった。頼んだぞ2人とも荊州に異変が伝わるまでなんとか」
 徐栄「あぁ、奇襲は俺の最も得意とするところ」
 こうして、諸葛瑾が救われたのは良いことだったが時既に遅く、孫策は夜の闇に乗じて、荊州へと侵攻を開始していたのである。だが幸いなことにここに徐栄が居たのである。徐栄、董卓軍の武将として各地を転戦した。そんな徐栄は、孫堅・曹操を奇襲にて大いに大敗させた実績もある奇襲の名手なのであった。
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