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4章 三国鼎立

諸葛瑾の災難

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 少し話は戻り、諸葛亮が軍師として劉備に登用された頃、諸葛瑾が孫策担当の外交官に就任した。諸葛瑾の役割は、孫策との外交関係の向上及び現状維持である。そのため度々、孫策が居城としている呉城へと赴いていた。
 諸葛瑾「この度、我が主劉玄徳様より孫家との外交を一任された諸葛子瑜と申します。よろしくお願いいたします」
 孫策「孫家の総大将を務めている孫伯符と申す。遠路はるばる大義である。荊州の簒奪、んん、ゴホン。いや失礼した。荊州の制圧、見事であった。此度はどのような御用かな?」
 諸葛瑾「本日は御挨拶にお伺いさせてもらったところ。長居は致しません。これで失礼致します」
 周瑜「わざわざ遠いところから来てくださったのです。そんなに急いで帰る必要もないのでは。どうです酒宴でも」
 諸葛瑾「いえ、御挨拶にお伺いしただけですので」
 孫策「ほぉ。劉備が新しく寄越したやつは俺の酒が飲めねぇと。ほぉ、成程な」
 諸葛瑾「いえ、大変失礼しました孫策殿。そういうことであれば、お付き合いいたしましょう」
 孫策「違う違う違う。言い方ってもんがあるだろ。俺は劉備に屈してるわけでもなけりゃ臣下になったつもりもねぇ。付き合うじゃなくて是非付き合わせてくださいだろうが」
 諸葛瑾「ぐっ(なんという横暴を。しかし、私のせいで孫策殿と事を構えるわけには行かない。ここは下手に出るしかない)大変失礼しました孫策様、その酒宴に是非とも参加させていただきたい」
 孫策「やればできるじゃねぇか。そこまで言われたら仕方ねぇよな公瑾」
 周瑜「伯符、そう虐めてやるな。すまない諸葛瑾殿」
 諸葛瑾「いえ、確かに無礼でありました。改めてお詫びを申し上げる」
 孫策「そうだ。テメェらがお願いする側なんだからよ。次からはきちんとしろよ」
 諸葛瑾「はい」
 居心地が悪い場所での酒宴ほど憂鬱なことはない。酒は進まず。飯も通らない。それを見て、これ見よがしに嫌味を言う孫策。
 孫策「諸葛瑾、飲んでるか?おい、全然進んでねぇじゃねぇか。なんだなんだ。ここの酒は不味いってか?」
 諸葛瑾「いえ、元々酒には弱い体質でして」
 孫策「あぁ、俺の酒が飲めねぇ。遠回しにそう言ってんのか?」
 諸葛瑾「いえ、そのようなことは頂きます。グビグビ」
 孫権「策兄上、この酒はほんと美味しいぜ。イヤッホー」
 孫策「おぅ権。すっかり出来上がってんじゃねぇか」
 孫権「おいおい酒が進んでねぇやつなんて居ねぇよなぁ」
 周泰「、、、頂いている」
 呂蒙「美味いですなぁ」
 呂範「酒は百薬の長と言いますからなぁ」
 凌統「やっぱ水が良いからだな。こんなに美味しいの徐州では飲めないんだから飲まなきゃ損ですよ諸葛瑾殿」
 孫権「おぅ今度は俺が継いでやんよ。なんだこの小さいのはお猪口じゃねぇんだぞ。もっと大きいやつ持ってこいや。客に失礼してんじゃねぇぞ」
 呉の兵士「孫権様、了解しました(ほんと酒癖悪くて嫌になっちまうぜ。普段は温厚な性格してんのに酒が入ると孫策様よりも数倍恐ろしい)」
 諸葛瑾「いえ、私はこれで充分ですので」
 孫権「なんだテメェ分身なんかしやがってよ。そういうことかよ。おぅおぅ。1番でかいやつじゃないと満足できねぇってか。良いじゃねぇか気に入ったぜ。おい、1番でかいの3つ持ってこいや」
 呉の兵士「いや、それは流石に。いえ、すぐにお持ちします」
 断ろうした時、兵士は殺気を感じた。目の前の孫権から孫策よりも恐ろしい圧倒的殺気を。殺される断れば殺される。肯定するしかなかった。かくして、諸葛瑾の前に大きな皿のようなものに並々と注がれた酒が3つも並ぶ。
 孫権「おぅ。まぁ飲めや」
 諸葛瑾「い、いただきます(なんなのだ。この居心地の悪い空間は、生きた心地がせん)」
 諸葛瑾は、3つの大酒を飲み干して突っ伏した。
 孫権「おいおいもうダウンかよ。チッ、雑魚が。おい、おんなじのを6つ持ってこいや」
 呉の兵士「はっはいぃぃぃぃぃ」
 孫権、どんだけ飲んでもザルであり、酒が入ると普段の温厚な部分は消え失せ言葉遣いは荒くなり、行動も横暴となる。諸葛瑾もその洗礼を受けたのである。目を覚ますと酒宴は終わっていて、用を足しに廊下を歩いていた時、偶然か必然か孫策と周瑜の会話を聞いてしまったのである。
 孫策「劉備からの使者は酔い潰れたか」
 周瑜「伯符、まだ時ではないのだ。そう目の敵にしてやるな」
 孫策「今にして思えば、于吉ってクソ野郎は劉備の命令で動いてたに違いねぇ。結果、1番得したのは奴らだろうが。荊州の切り取り合戦からは撤退させられ、俺の傷が治るまで時間を要することとなった。その間にも着々と荊州全土を支配下に組み込んでいきやがった。父上もなぜあんな奴に尚香を嫁がせる。ふざけるな。此度、交州の反乱に乗じて、劉備から荊州と揚州北部を奪い取ってくれる」
 周瑜「伯符、そう興奮して声を荒げるな。誰か聞いているかもしれないだろう」
 諸葛瑾「(そんなまさか。孫策は荊州と揚州北部を狙っている?不味い、頼られては断れない性格の殿のこと。必ずや交州征伐へと赴くだろう。その隙を狙われては、たまったものではない。一刻も早く、ここから出て、殿にお伝えしなければ。パキッ)しまった」
 周瑜「そこに誰かいるのか?」
 孫策「へぇ、これはこれは諸葛瑾だったかな?」
 諸葛瑾「厠を探しておりまして」
 周瑜「待て、伯符。今殺せば、何かあったと劉備に勘付かれる。ここは幽閉するのが良いだろう」
 孫策「チッ。公瑾の言う通りだな。この場で斬り殺して、首を劉備に届けてやりたかったところだが。そうしたらせっかくの奇襲が台無しとなるからな」
 諸葛瑾は捕らわれ、牢獄へと幽閉されるのであった。
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