24 / 24
真実と愛
しおりを挟む
王宮の自分の部屋に戻ると、あぁ帰ってきたのだなと感じ、ここが帰る場所だといつの間にか認識していた自分に驚いた。
教会での暮らしも穏やかで楽しかったが、やはり愛する人のいるここでの暮らしがいい。
「ヴェリテ様!」
ノックもなしに部屋の扉が開かれ、ガルディエーヌが入ってきた。
「ヴェリテ様、よくご無事でおられました…!心配していたのですよ!2度とこんなことはなさらないでください!」
「うん…。ごめんね、ガルディエーヌ。」
「本当に帰ってきてくれて良かった…。」
「ありがとう。」
ガルディエーヌを抱きしめる。
本当はガルディエーヌと共に逃げ出すことも考えていたのだが、そのせいでガルディエーヌが罪に問われてはいけないと思った。
もう2度と会えないと思っていたガルディエーヌに会えて堪らなく嬉しい。
「ありがとう、ガルディエーヌ。本当にごめんね…。」
「もう謝らないでください。こうして帰ってきてくれただけで十分ですよ。」
「ありがとう…。」
ヴェリテは何度も何度も感謝の言葉を口にした。
教会にいる間、洗濯の大変さを知るたび、子供の寝かしつけの苦労を知るたび、ガルディエーヌのことを思い出して、深い感謝の年が込み上がってきた。
「ヴェリテ様、私の方こそ、ヴェリテ様の不安を取り除けなくてすみません。
幼い頃、ヴェリテ様が家族からの愛を求めなくなった時、私は非常に心配しました。二度とこの子にこんな思いをさせないと誓いました。
しかし、結局は頼りになれなかった…」
「違うよ、ガルディエーヌ!もしガルディエーヌがいなかったら僕はあの時耐えられなかったと思う。ガルディエーヌが僕の心の支えになってくれた。それは今もだよ。本当にありがとう、ガルディエーヌ。」
2人は長い間、抱きしめあった。
大事な話があると父から呼び出された。
案内人に付いていくと、ファクティスと初めて会ったあの部屋に着いた。
部屋には父と兄と、そしてファクティスとアガサ侯爵がいた。
「皆、集まってくれてありがとう。
早速本題に入るが、今日は俺の本当の息子について審議しに来てもらった。」
父の言葉に皆、覚悟していたように身を固める。
「しかし、どちらが本当の息子だなんて分かるのでしょうか?
見た目だけで言えば確実にファクティスだと思いますが。」
アガサ侯爵が口を挟む。
「おい、説明しろ。」
「はっ。僭越ながら私めが説明させていただきます。」
若い兵士が前に進み出た。
「私の姉は、メディカモンに嫁ぎました。」
メディカモンという国はヴェリテも習った。医療先進国だ。
「姉からの手紙に興味深いことが書かれてあったのです。
ある貴族の奥方が妊娠をされたが、丁度その時浮気の疑いも出ていた。本当にその貴族の子供か分からない。そこで研究者が親子鑑定薬を作り、それが最近完成したのだ、と。」
「「親子鑑定薬?」」
ヴェリテとファクティスの声が重なる。
「はい。10年という期間を経て完成したのだと書かれてありました。結果、その子供は貴族の子供ではないことが判明したのですが、親子同然に育てられてきたので情が湧き、実の親子として暮らしていくことになったそうです。それで親子鑑定薬の存在も隠されたそうです。」
「ではその薬があれば親子かどうか分かるのですね!」
ファクティスは嬉々とした表情で言う。
一方、ヴェリテは不安な気持ちに苛まれていた。
「はい。その研究者の方に来ていただきました。」
すると大きなカバンを持った、眼鏡をかけた神経質そうな男が現れた。
机に器具だと思われる色々なものを置いていく。
「陛下とヴェリテ様とファクティス様の3人には、この紙に自分の血を垂らしてもらいます。一滴で効果は出るのでご安心を。」
3人は躊躇うことなく親指を切り、血を垂らす。
「検査結果は明日分かります。」
「これで安心だな。」
兄はヴェリテの頭を撫でた。
「はい…。ですが不安です。僕がお父様の子供でなかったら…。」
「血のつながりはなくとも絆は消えん。」
父が少しぶっきらぼうに言った。
しかし、ヴェリテにはそれが父の最大の優しさだということが分かっていた。
そんな中、アガサ侯爵の顔は真っ青になり、プルプルと震えていた。貧乏ゆすりは激しく、爪を噛んでいる。
「そんな慌てた顔をしてどうした?アガサ侯爵。」
父が問いかけると、アガサ侯爵は大きく体をびくつかせた。
「い、いえ…、なんでもございません。
私は仕事もありますのでここで帰らせていただこうと思います…。」
そそくさと退出しようとするアガサ侯爵を皇帝が引き留めた。
「アガサ侯爵、俺にはまだ聞きたいことがある。
ファクティスがくれたポプリのことだ…と言えば分かるだろ?」
「ポ、ポプリ?何のことですか?」
「ファクティスにポプリに何を入れたか聞いたんだ。ポプリには中庭の花と、そしてアガサ侯爵からポプリに入れるといいと貰った粉末を入れた、と。」
「え?ぼくの作ったポプリ人何か問題でもあったのですか?」
ファクティスはキョトンとした顔をする。
「あのポプリを貰った後、いい香りがしてよく眠れたんだ。」
「それは良かったです!」
ファクティスが嬉しそうに微笑む。
「しかし、メイユーラミに叩き起こされてな。どうして禁止薬物の匂いがするのですか?と。」
アガサ侯爵は青い顔をますます青くした。
「ドログーズというのだな、その薬物は。最近庶民の間で流行っており、騎士団が見回りを強化しているそうだ。
しかし捕まえても捕まえてもどこからかその薬物は出回ってしまう…。
侯爵、心当たりがあるのでは?」
「そんな!陛下の勘違いでございます!もし、私がファクティスに渡した粉から薬物が検出されたのだとしたら、きっと私も嵌められていたのです!」
「一体誰にというのだ。」
「例えば…この賤しき偽物皇子などに!」
ヴェリテは急に自分を指さされてびくりとした。偽物という言葉に胸がスギズキと痛む。
「馬鹿にするのもいい加減にしろ!」
皇帝が声を張り上げた。
「言い訳しても無駄だ…。侯爵家に捜索隊を送ってある。
何が出てくるのか見ものだな。
あと侯爵が王宮に送り込んだ侍女や騎士についても調べはついてる。」
アガサ侯爵は歯を食いしばる。
「そんな…!ではぼくは?ぼくはどうなると言うのですか?ぼくのお父さんは陛下なのですよね?そう侯爵が言ったのではないですか!」
侯爵はキャンキャンと騒ぐファクティスを睨みつける。
「検査結果は明日出るらしいが…、もうどうでも良い!
お前なんて皇子なわけがないだろう!」
ファクティスは驚きで固まる。
「たまたま平民街を歩いていたらお前を見つけて使えると思ったから声をかけただけだ。お前の出自なぞ知るわけがない!」
「やはり、ファクティスが偽物だったか…。」
父が呟いた。
「では、ぼくの本当の家族は?ぼくの本当のお父さんは…?
侯爵が本当の父親に会わせてやるって言ったから、あの宿屋を出てきたのに!」
「お前も親不孝な子供だな。宿屋の平民たちが、捨子のお前をここまで育ててくれたのだろう?それだというのにお前は簡単に見捨てて…。」
アガサ侯爵がふっと笑う。
ファクティスはワナワナと震える。
「きっとファクティスは、タンドレッスの従姉妹の子供だろう。」
父が口を開いた。
「タンドレッスの従姉妹のレイデュという女が護衛騎士と駆け落ちして消息が分からなくなっている。ファクティスの髪の色や瞳の色はタンドレッスとも同じだが、従姉妹のレイデュとも同じだ。
タンドレッスの家に計らってお前を保護してもらうよう頼んでやる。」
ファクティスは小さくはい、と呟いた。
後日、アガサ侯爵の処刑と侯爵家の剥奪が決まった。そして、親子鑑定の結果、ヴェリテは皇帝の子供だと分かった。
こうして、長い苦悶の日々は終わりを告げた。
「お父様、お兄様…、本当に良かった。
僕がお父様やお兄様の家族で本当に良かったです。」
父はヴェリテと兄を抱きしめた。
「俺もお前たちが俺の子供で本当に良かった。俺を父親にしてくれてありがとう。」
「俺も2人の家族でよかった。」
「ああ、フロワは王宮に残ってくれるから良いとして、ヴェリテを嫁にやりたくないな。今からでも婚約を解消するか。」
「おやめください!僕はジュスティス様を愛していますので。」
「妬けてしまうな。」
2人してヴェリテが嫁に行かないように引き止める姿を見て、ヴェリテはクスクス笑う。
なんだかんだ言っても、2人がジュスティスを認めているのは分かっていた。
「お嫁に行っても、僕はずっとお父様とお兄様の家族ですよ。」
ヴェリテはまた涙をこぼした。
国で1番大きな教会の鐘が鳴り響く。
豪華で、かつ神聖な雰囲気を漂わせる大きな扉が開かれる。
白いレースのふんだんにあしらわれたタキシードを着たヴェリテが皇帝と共に現れる。
ゆっくりと歩みを進めた先には、同じく白いタキシードを着たジュスティスの姿。
神父が2人に問いかける。
「愛とは美しいものではありません。時には辛く、悲しく、貴方に悲惨な思いをさせるでしょう。それでも、健やかなる時も病める時も、死が2人を分つまで愛し合うことを誓いますか?」
ヴェリテは
「誓います。」
と力強く答えた。
ジュスティスも後に続く。
愛することは簡単なことではない。愛されることも簡単なことではない。
時には傷つき、時には悲しむこともあるだろう。
それでも誰かを愛するとは素晴らしいことだ。
愛を1度は諦めてしまったが、今こうして手に入れることができた。
愛することに臆病になっていた時もあったが、今は幸せだ。
あぁ、あの時愛を求めることを完全にやめてしまわなくて良かった。
それからも、この愛と共に生きていこう。
ー完ー
教会での暮らしも穏やかで楽しかったが、やはり愛する人のいるここでの暮らしがいい。
「ヴェリテ様!」
ノックもなしに部屋の扉が開かれ、ガルディエーヌが入ってきた。
「ヴェリテ様、よくご無事でおられました…!心配していたのですよ!2度とこんなことはなさらないでください!」
「うん…。ごめんね、ガルディエーヌ。」
「本当に帰ってきてくれて良かった…。」
「ありがとう。」
ガルディエーヌを抱きしめる。
本当はガルディエーヌと共に逃げ出すことも考えていたのだが、そのせいでガルディエーヌが罪に問われてはいけないと思った。
もう2度と会えないと思っていたガルディエーヌに会えて堪らなく嬉しい。
「ありがとう、ガルディエーヌ。本当にごめんね…。」
「もう謝らないでください。こうして帰ってきてくれただけで十分ですよ。」
「ありがとう…。」
ヴェリテは何度も何度も感謝の言葉を口にした。
教会にいる間、洗濯の大変さを知るたび、子供の寝かしつけの苦労を知るたび、ガルディエーヌのことを思い出して、深い感謝の年が込み上がってきた。
「ヴェリテ様、私の方こそ、ヴェリテ様の不安を取り除けなくてすみません。
幼い頃、ヴェリテ様が家族からの愛を求めなくなった時、私は非常に心配しました。二度とこの子にこんな思いをさせないと誓いました。
しかし、結局は頼りになれなかった…」
「違うよ、ガルディエーヌ!もしガルディエーヌがいなかったら僕はあの時耐えられなかったと思う。ガルディエーヌが僕の心の支えになってくれた。それは今もだよ。本当にありがとう、ガルディエーヌ。」
2人は長い間、抱きしめあった。
大事な話があると父から呼び出された。
案内人に付いていくと、ファクティスと初めて会ったあの部屋に着いた。
部屋には父と兄と、そしてファクティスとアガサ侯爵がいた。
「皆、集まってくれてありがとう。
早速本題に入るが、今日は俺の本当の息子について審議しに来てもらった。」
父の言葉に皆、覚悟していたように身を固める。
「しかし、どちらが本当の息子だなんて分かるのでしょうか?
見た目だけで言えば確実にファクティスだと思いますが。」
アガサ侯爵が口を挟む。
「おい、説明しろ。」
「はっ。僭越ながら私めが説明させていただきます。」
若い兵士が前に進み出た。
「私の姉は、メディカモンに嫁ぎました。」
メディカモンという国はヴェリテも習った。医療先進国だ。
「姉からの手紙に興味深いことが書かれてあったのです。
ある貴族の奥方が妊娠をされたが、丁度その時浮気の疑いも出ていた。本当にその貴族の子供か分からない。そこで研究者が親子鑑定薬を作り、それが最近完成したのだ、と。」
「「親子鑑定薬?」」
ヴェリテとファクティスの声が重なる。
「はい。10年という期間を経て完成したのだと書かれてありました。結果、その子供は貴族の子供ではないことが判明したのですが、親子同然に育てられてきたので情が湧き、実の親子として暮らしていくことになったそうです。それで親子鑑定薬の存在も隠されたそうです。」
「ではその薬があれば親子かどうか分かるのですね!」
ファクティスは嬉々とした表情で言う。
一方、ヴェリテは不安な気持ちに苛まれていた。
「はい。その研究者の方に来ていただきました。」
すると大きなカバンを持った、眼鏡をかけた神経質そうな男が現れた。
机に器具だと思われる色々なものを置いていく。
「陛下とヴェリテ様とファクティス様の3人には、この紙に自分の血を垂らしてもらいます。一滴で効果は出るのでご安心を。」
3人は躊躇うことなく親指を切り、血を垂らす。
「検査結果は明日分かります。」
「これで安心だな。」
兄はヴェリテの頭を撫でた。
「はい…。ですが不安です。僕がお父様の子供でなかったら…。」
「血のつながりはなくとも絆は消えん。」
父が少しぶっきらぼうに言った。
しかし、ヴェリテにはそれが父の最大の優しさだということが分かっていた。
そんな中、アガサ侯爵の顔は真っ青になり、プルプルと震えていた。貧乏ゆすりは激しく、爪を噛んでいる。
「そんな慌てた顔をしてどうした?アガサ侯爵。」
父が問いかけると、アガサ侯爵は大きく体をびくつかせた。
「い、いえ…、なんでもございません。
私は仕事もありますのでここで帰らせていただこうと思います…。」
そそくさと退出しようとするアガサ侯爵を皇帝が引き留めた。
「アガサ侯爵、俺にはまだ聞きたいことがある。
ファクティスがくれたポプリのことだ…と言えば分かるだろ?」
「ポ、ポプリ?何のことですか?」
「ファクティスにポプリに何を入れたか聞いたんだ。ポプリには中庭の花と、そしてアガサ侯爵からポプリに入れるといいと貰った粉末を入れた、と。」
「え?ぼくの作ったポプリ人何か問題でもあったのですか?」
ファクティスはキョトンとした顔をする。
「あのポプリを貰った後、いい香りがしてよく眠れたんだ。」
「それは良かったです!」
ファクティスが嬉しそうに微笑む。
「しかし、メイユーラミに叩き起こされてな。どうして禁止薬物の匂いがするのですか?と。」
アガサ侯爵は青い顔をますます青くした。
「ドログーズというのだな、その薬物は。最近庶民の間で流行っており、騎士団が見回りを強化しているそうだ。
しかし捕まえても捕まえてもどこからかその薬物は出回ってしまう…。
侯爵、心当たりがあるのでは?」
「そんな!陛下の勘違いでございます!もし、私がファクティスに渡した粉から薬物が検出されたのだとしたら、きっと私も嵌められていたのです!」
「一体誰にというのだ。」
「例えば…この賤しき偽物皇子などに!」
ヴェリテは急に自分を指さされてびくりとした。偽物という言葉に胸がスギズキと痛む。
「馬鹿にするのもいい加減にしろ!」
皇帝が声を張り上げた。
「言い訳しても無駄だ…。侯爵家に捜索隊を送ってある。
何が出てくるのか見ものだな。
あと侯爵が王宮に送り込んだ侍女や騎士についても調べはついてる。」
アガサ侯爵は歯を食いしばる。
「そんな…!ではぼくは?ぼくはどうなると言うのですか?ぼくのお父さんは陛下なのですよね?そう侯爵が言ったのではないですか!」
侯爵はキャンキャンと騒ぐファクティスを睨みつける。
「検査結果は明日出るらしいが…、もうどうでも良い!
お前なんて皇子なわけがないだろう!」
ファクティスは驚きで固まる。
「たまたま平民街を歩いていたらお前を見つけて使えると思ったから声をかけただけだ。お前の出自なぞ知るわけがない!」
「やはり、ファクティスが偽物だったか…。」
父が呟いた。
「では、ぼくの本当の家族は?ぼくの本当のお父さんは…?
侯爵が本当の父親に会わせてやるって言ったから、あの宿屋を出てきたのに!」
「お前も親不孝な子供だな。宿屋の平民たちが、捨子のお前をここまで育ててくれたのだろう?それだというのにお前は簡単に見捨てて…。」
アガサ侯爵がふっと笑う。
ファクティスはワナワナと震える。
「きっとファクティスは、タンドレッスの従姉妹の子供だろう。」
父が口を開いた。
「タンドレッスの従姉妹のレイデュという女が護衛騎士と駆け落ちして消息が分からなくなっている。ファクティスの髪の色や瞳の色はタンドレッスとも同じだが、従姉妹のレイデュとも同じだ。
タンドレッスの家に計らってお前を保護してもらうよう頼んでやる。」
ファクティスは小さくはい、と呟いた。
後日、アガサ侯爵の処刑と侯爵家の剥奪が決まった。そして、親子鑑定の結果、ヴェリテは皇帝の子供だと分かった。
こうして、長い苦悶の日々は終わりを告げた。
「お父様、お兄様…、本当に良かった。
僕がお父様やお兄様の家族で本当に良かったです。」
父はヴェリテと兄を抱きしめた。
「俺もお前たちが俺の子供で本当に良かった。俺を父親にしてくれてありがとう。」
「俺も2人の家族でよかった。」
「ああ、フロワは王宮に残ってくれるから良いとして、ヴェリテを嫁にやりたくないな。今からでも婚約を解消するか。」
「おやめください!僕はジュスティス様を愛していますので。」
「妬けてしまうな。」
2人してヴェリテが嫁に行かないように引き止める姿を見て、ヴェリテはクスクス笑う。
なんだかんだ言っても、2人がジュスティスを認めているのは分かっていた。
「お嫁に行っても、僕はずっとお父様とお兄様の家族ですよ。」
ヴェリテはまた涙をこぼした。
国で1番大きな教会の鐘が鳴り響く。
豪華で、かつ神聖な雰囲気を漂わせる大きな扉が開かれる。
白いレースのふんだんにあしらわれたタキシードを着たヴェリテが皇帝と共に現れる。
ゆっくりと歩みを進めた先には、同じく白いタキシードを着たジュスティスの姿。
神父が2人に問いかける。
「愛とは美しいものではありません。時には辛く、悲しく、貴方に悲惨な思いをさせるでしょう。それでも、健やかなる時も病める時も、死が2人を分つまで愛し合うことを誓いますか?」
ヴェリテは
「誓います。」
と力強く答えた。
ジュスティスも後に続く。
愛することは簡単なことではない。愛されることも簡単なことではない。
時には傷つき、時には悲しむこともあるだろう。
それでも誰かを愛するとは素晴らしいことだ。
愛を1度は諦めてしまったが、今こうして手に入れることができた。
愛することに臆病になっていた時もあったが、今は幸せだ。
あぁ、あの時愛を求めることを完全にやめてしまわなくて良かった。
それからも、この愛と共に生きていこう。
ー完ー
397
お気に入りに追加
2,936
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(63件)
あなたにおすすめの小説
雫
ゆい
BL
涙が落ちる。
涙は彼に届くことはない。
彼を想うことは、これでやめよう。
何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。
僕は、その場から音を立てずに立ち去った。
僕はアシェル=オルスト。
侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。
彼には、他に愛する人がいた。
世界観は、【夜空と暁と】と同じです。
アルサス達がでます。
【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。
随時更新です。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
ハッピーエンド保証!
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。
※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。
自衛お願いします。
記憶喪失の君と…
R(アール)
BL
陽は湊と恋人だった。
ひねくれて誰からも愛されないような陽を湊だけが可愛いと、好きだと言ってくれた。
順風満帆な生活を送っているなか、湊が記憶喪失になり、陽のことだけを忘れてしまって…!
ハッピーエンド保証
僕の大好きな旦那様は後悔する
小町
BL
バッドエンドです!
攻めのことが大好きな受けと政略結婚だから、と割り切り受けの愛を迷惑と感じる攻めのもだもだと、最終的に受けが死ぬことによって段々と攻めが後悔してくるお話です!拙作ですがよろしくお願いします!!
暗い話にするはずが、コメディぽくなってしまいました、、、。
婚約破棄と言われても・・・
相沢京
BL
「ルークお前とは婚約破棄する!」
と、学園の卒業パーティーで男爵に絡まれた。
しかも、シャルルという奴を嫉んで虐めたとか、記憶にないんだけど・・
よくある婚約破棄の話ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです。
***********************************************
誹謗中傷のコメントは却下させていただきます。
婚約破棄は計画的にご利用ください
Cleyera
BL
王太子の発表がされる夜会で、俺は立太子される第二王子殿下に、妹が婚約破棄を告げられる現場を見てしまった
第二王子殿下の婚約者は妹じゃないのを、殿下は知らないらしい
……どうしよう
:注意:
素人です
人外、獣人です、耳と尻尾のみ
エロ本番はないですが、匂わせる描写はあります
勢いで書いたので、ツッコミはご容赦ください
ざまぁできませんでした(´Д` ;)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
私的にも とても面白い作品でしたよ(*^^*)
小説沢山読ませて頂いてますが 作り込めばいいって訳じゃないと思います。無駄にダラダラ長くなってつまらなくなるより 物語なんだから多少矛盾なんか 読み手がカバーすればいいのです。ヴェルテの無垢さが可愛いし 健気で泣けます。作者様楽しい作品ありがとうございます。 心無いコメントなどに負けず 執筆活動頑張って下さい(*^^*)
私的には、すごく面白い作品だと思います!!
最後めっちゃ泣いてました…
愛されててよかった…確かに都合が良すぎる気もしますが実際にはいじめていたわけでもなかったし…
3万字って長いって思ってたんですが、短く感じちゃうくらい面白かったです!!
読み終わった後、短く感じたのに満足感がすごかったです!
これからも頑張ってください!!応援してます!
ヴェリテが無事に幸せになれてよかったです。とても面白い物語でした!
家族愛を知らない幼児がこんな悪夢を見て、未来の生き方を考えなきゃいけないなんて可哀想ですね
たとえ本当に偽物だとしても責任をとるなら偽物を本物と決めつけた王や兄ですから処刑なんてありえないですが、幼児じゃわかりませんもんね。婚約者にも愛されていないとわかってさぞ辛かったでしょうね
王・兄・婚約者は猛省して態度を改めたのでマシですが、クズな使用人どもはそのままなのが残念ですね。まあ使用人ごときせいぜいできるのは陰口を叩くことぐらいですから無害ですかねw
ファクティスも不運な子なので救済されて良かったです