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第二話 Q&A【事件編】

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 彼女の気持ちは痛いほど分かる。しかしながら巌鉄自身は捜査権を持たない。いくら懐いてくれているとはいっても、倉科にそれを頼むのはお門違いだろう。万が一があった場合、倉科のキャリアに傷をつけてしまう。結局のところ、当たり障りのない返答しかできない。

「悪いが、警察に任せたほうがいい。さっきも言ったが、俺から捜査一課のほうに話を通しておくから」

 彼女の手を剥がそうとするが、しかし執念が強いのか、巌鉄の腕を握る力は強かった。

「警察は信用できない。あの子、付きまといの相談に何度か警察署に行ってるんだ。でも、事件が起きないとどうにもできないって話で門前払いだよ。それどころか、相談に行った時の千秋の格好を見てさ、随分と文句を言ってきたみたいなんだ。そんな短いスカートを履いてるから付きまとわれるんだ――とか」

 その話を聞いた巌鉄は溜め息をひとつ。警察は組織であるがゆえに、確かに事件が起きないと動けない。もっと現場の実情的な部分を言うのであれば、事件を未然に防ぐために人員を割けるほどの余裕がない。刑事とて人間であり、人間である以上、誰にでもキャパシティというものがある。それをオーバーするのは、誰だって嫌がることであろう。刑事とて、誰でも無償で正義を背負えるわけではないのだ。1年中いつでも、自分の都合など後回しで、誰かのために戦えるヒーローなど、現実には存在しないということだ。だからといって相談に来た人に八つ当たりをするのは違うが。

「そうか……相談に来ていたのに門前払いされたか。まぁ、警察には警察の事情ってもんがあるんだが、実際に人が死んでるんだ。結果責任は警察にあると考えてもいいだろう。俺の力じゃどこまでやれるか分からないが協力させてもらおう。ただし、あんまり期待はするんじゃねぇぞ」

 もしかすると、千秋の事件は未然に防げたのかもしれない。結果論にしかすぎないが、しかし千秋が死んでしまった件については、警察側に結果責任を背負う義務がある。その罪滅ぼしという意味も込めて、舞香の頼みを聞いてやっても、多分バチは当たらないだろう。

「ありがとう。それじゃあ、携帯番号の交換を――」

 舞香はそう言うと携帯電話を取り出した。まだ、あまり世間では目にしないものだが、しかし持っている人も増えてきているようだった。

「おいおい、俺はそんなハイカラなもん持ってねぇよ。ベルは仕事で持たされてるけどよ」
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