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第二話 Q&A【事件編】
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巌鉄の反応を見た舞香はくすりと笑い「はい、それじゃメモ取って」と携帯を開く。折りたたみ式らしきそれを覗き込んでみると、白黒の画面に現在の時刻が記されていた。時代の進歩を実感する巌鉄。別にポケベルにも電話帳機能があるから、そこに入力しても良かったのだが、アナログな巌鉄は素直に警察手帳を取り出した。舞香が羅列した番号をメモすると、確認のために読み上げる。相違ないことを確認したであろう舞香が頷き、今度は巌鉄がポケベルの番号を教えた。この時代、どこにいても連絡が取り合えるのは凄いことだと思う。
葬儀は淡々と進んでいるようだが、今さらになって中に入るわけにもいかない巌鉄と舞香。読経をバックミュージックに今後の動きの確認をする。
「さて、とりあえず手をつけるとしたら、その付きまとっていた男の特定だな。家の前で待ち伏せしていたことがあるくらいなら、他にも目立つような行動を取っていた可能性が高いだろう。彼女の周辺から事情を訊いて回れば、なにか分かるかもしれない」
すでに捜査一課の人間ではないものの、それなりのノウハウはいまだに健在の巌鉄。捜査一課と行動が被ってしまうのも面倒であるため、まずは警察にも知らされていない事実――もとい、警察が相手にしなかったストーカー男の件から調べ始めたほうがいい。
「だったら、私が千秋の周囲に話を訊いてみる。一応、あの子の職場も知ってるし」
いくら警察とて、1人の人間の人間関係を洗い出すというのは難しい。もちろん、人海戦術をもってすれば可能であるが、たった2人しか人がいない状態で、被害者の個人情報を良く知る者がいるのはありがたい。
「だったら、俺は一度ストーカーの件を相談したやつを探し出して話を訊いてみるか。まぁ、門前払いしたってことは、ろくに調書も取ってないだろうけど」
被害者の人間関係周辺の洗い出しは舞香に任せる。それならば、巌鉄は巌鉄で、自分にしかできないことをする。すなわち、警察の内部調査である。まだ、そのストーカー男と事件が結びついているわけではないが、もし直結していることが明らかになったとしたら、警察の対応も問題視されることになるだろう。なぜなら、危険性をはらんでいる人物について、被害者は確かに助けを求めたというのに、門前払いで帰してしまったのだから。
「じゃあ、それで決まりね。お互い、なにか分かったことがあったら、お互いに連絡するようにしよう」
坊主の読経はいつしか終わり、いよいよ出棺の時間を迎えたらしい。線香をあげるにせよ、最後の別れを告げるにせよ、ここを逃したら二度と機会はないだろう。
葬儀は淡々と進んでいるようだが、今さらになって中に入るわけにもいかない巌鉄と舞香。読経をバックミュージックに今後の動きの確認をする。
「さて、とりあえず手をつけるとしたら、その付きまとっていた男の特定だな。家の前で待ち伏せしていたことがあるくらいなら、他にも目立つような行動を取っていた可能性が高いだろう。彼女の周辺から事情を訊いて回れば、なにか分かるかもしれない」
すでに捜査一課の人間ではないものの、それなりのノウハウはいまだに健在の巌鉄。捜査一課と行動が被ってしまうのも面倒であるため、まずは警察にも知らされていない事実――もとい、警察が相手にしなかったストーカー男の件から調べ始めたほうがいい。
「だったら、私が千秋の周囲に話を訊いてみる。一応、あの子の職場も知ってるし」
いくら警察とて、1人の人間の人間関係を洗い出すというのは難しい。もちろん、人海戦術をもってすれば可能であるが、たった2人しか人がいない状態で、被害者の個人情報を良く知る者がいるのはありがたい。
「だったら、俺は一度ストーカーの件を相談したやつを探し出して話を訊いてみるか。まぁ、門前払いしたってことは、ろくに調書も取ってないだろうけど」
被害者の人間関係周辺の洗い出しは舞香に任せる。それならば、巌鉄は巌鉄で、自分にしかできないことをする。すなわち、警察の内部調査である。まだ、そのストーカー男と事件が結びついているわけではないが、もし直結していることが明らかになったとしたら、警察の対応も問題視されることになるだろう。なぜなら、危険性をはらんでいる人物について、被害者は確かに助けを求めたというのに、門前払いで帰してしまったのだから。
「じゃあ、それで決まりね。お互い、なにか分かったことがあったら、お互いに連絡するようにしよう」
坊主の読経はいつしか終わり、いよいよ出棺の時間を迎えたらしい。線香をあげるにせよ、最後の別れを告げるにせよ、ここを逃したら二度と機会はないだろう。
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