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4章
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葬儀の日も列席者は結構いた。
席は半分くらい埋まってたと思う。
さあそろそろ出棺しようかという時に外で暴れてる声が聞こえた。
皆が棺に囲むように集まってる中、列席者達が何かしらと顔を見合わせる。
声の主がだんだんホールへ近づいてくる。
そして中に入ってきた。
――田丸家だった。
通夜と同様家族そろって場所にそぐわない格好で来た。
「あれ、昨日の……」
「止めれなかったの?」
ざわつくホールに気にもせず、田丸の父は「おい来たぞ! 辛気くせーなー」とヤジを飛ばす。
「あっ、お花だーちょーだいー」
田丸は祭壇にある花を乱暴に引きちぎる。
「す、すみません! 止めれなくて!」
女性の葬儀スタッフが申し訳無さそうに会場の人達に頭を下げる。
「申し訳ございませんが、ご家族様と近い友人だけなので本日は……」と女性スタッフが田丸一家に声をかける。
「あん? この女は息子の友人だぞ。出て悪いんか?」
田丸の父は女性スタッフに凄む。
「それとも差別する気? 息子が病気だからって」
「いえ、そういうつもりではなく、ご遺族の意向で……」
スタッフの声のが弱々しくなる。
田丸父と母は私達家族に近づいてきた。
「あんた達差別するの? うちの息子と同級生だったから出てもいいでしょ! 来てやったというのに……」
田丸の母が喚く。
ホールの雰囲気が凍りつく。
来てやったって、むしろこちらはお断りしたいわ!
田丸は棺に行ってドンドンと叩く。
しかも勝手に棺の窓を開ける。
「ねーしーちゃんー、おきてよー! 朝だよ!」
祭壇の花は引きちぎられ、あちこち床に落ちていた。
「お客様、棺に触るのはご遠慮頂けますか?」
スタッフに注意された瞬間、田丸は大きな声でギャーと叫びながら棺を叩く。
まるで邪魔されたといわんばかりに。
精進落とし終了後に、葬儀スタッフにあの家族を入らせるなと父が強く言っていた。
対応したのが女性スタッフで押しのけて力づくで中に入ろうとしたのだろう。
「来てやったって、何ですか? 頼むから邪魔しないで下さい! おたくらのせいで……」
母が唇を震わせながら訴える。
「えっ? うちの息子さんが何したってのよ? 勝手に死んだんでしょ。息子の要望聞かなかったあんたの娘が悪いのよ。ブスの癖にうちのかわいい息子のお気に入りになってもらっただけでありがたく思いなさいよ!」
田丸の母の心ない言葉に母は泣き崩れる。
私達家族、列席者達何も返せないこの無力感。
「妹がブスですって? 聞き捨てならないですね」
「ブスは事実じゃない。うちの息子は純粋で天使みたいなものよ。そんな息子の言うことを聞けないお前の妹に天罰が下ったのよ!」
吐き捨てるように田丸の母が妹を侮辱する。
「どこが天使? 悪魔の間違いでしょ? あなたの息子さんがやったことぜーんぶ知ってますよ。カエルの子はカエルって言いますけど、見事に息子さん引き継いでますね」
「さすが近所で有名人なだけありまして肝がすわってますねー。まともな人なら、出禁を言われた時点でここに来ないですよー」
「息子さんが癇癪おこしても、暴力ふっても何も対処しない時点で差別もなにもあるか! 自分達の身を守るために避けてるだけです。それが何か?」
「これ以上妹の最期を邪魔するなら容赦なく叩き潰します!」
自慢の妹をこれ以上侮辱されてたまるか。
「亜津紗、もういいから、これ以上言うな」
父に止められた私は、呼吸が荒くなっていた。
セレモニースーツに悪い汗が染み付いていた。
例のガタイいい男性スタッフが「申し訳ございませんが、あなた達は出禁です。これ以上台無しにされるなら警察呼びます。それでもよろしいですか?」
「はぁ? 警察だと? この田丸様に逆らう気か? 俺の鶴の一声でお前たちを潰すことができるんだぜ。ここの葬儀会社は障害者差別するってな」
「障害者だろうが病気だろうが、ご遺族の意向で式を台無しにする方は入場禁止にして欲しいと。私達スタッフはそれに応えるまでです――もう一度言います、あなたがたは出禁です」
「この方達をお連れしなさい」
男性スタッフ達が力づくで田丸家を追い出す。
「……俺の力でこの会社を潰してやる! 覚えとけ!」
田丸の父は捨て台詞を吐いてホールを追い出された。
仕切り直して、妹の最期を送ることができた。
席は半分くらい埋まってたと思う。
さあそろそろ出棺しようかという時に外で暴れてる声が聞こえた。
皆が棺に囲むように集まってる中、列席者達が何かしらと顔を見合わせる。
声の主がだんだんホールへ近づいてくる。
そして中に入ってきた。
――田丸家だった。
通夜と同様家族そろって場所にそぐわない格好で来た。
「あれ、昨日の……」
「止めれなかったの?」
ざわつくホールに気にもせず、田丸の父は「おい来たぞ! 辛気くせーなー」とヤジを飛ばす。
「あっ、お花だーちょーだいー」
田丸は祭壇にある花を乱暴に引きちぎる。
「す、すみません! 止めれなくて!」
女性の葬儀スタッフが申し訳無さそうに会場の人達に頭を下げる。
「申し訳ございませんが、ご家族様と近い友人だけなので本日は……」と女性スタッフが田丸一家に声をかける。
「あん? この女は息子の友人だぞ。出て悪いんか?」
田丸の父は女性スタッフに凄む。
「それとも差別する気? 息子が病気だからって」
「いえ、そういうつもりではなく、ご遺族の意向で……」
スタッフの声のが弱々しくなる。
田丸父と母は私達家族に近づいてきた。
「あんた達差別するの? うちの息子と同級生だったから出てもいいでしょ! 来てやったというのに……」
田丸の母が喚く。
ホールの雰囲気が凍りつく。
来てやったって、むしろこちらはお断りしたいわ!
田丸は棺に行ってドンドンと叩く。
しかも勝手に棺の窓を開ける。
「ねーしーちゃんー、おきてよー! 朝だよ!」
祭壇の花は引きちぎられ、あちこち床に落ちていた。
「お客様、棺に触るのはご遠慮頂けますか?」
スタッフに注意された瞬間、田丸は大きな声でギャーと叫びながら棺を叩く。
まるで邪魔されたといわんばかりに。
精進落とし終了後に、葬儀スタッフにあの家族を入らせるなと父が強く言っていた。
対応したのが女性スタッフで押しのけて力づくで中に入ろうとしたのだろう。
「来てやったって、何ですか? 頼むから邪魔しないで下さい! おたくらのせいで……」
母が唇を震わせながら訴える。
「えっ? うちの息子さんが何したってのよ? 勝手に死んだんでしょ。息子の要望聞かなかったあんたの娘が悪いのよ。ブスの癖にうちのかわいい息子のお気に入りになってもらっただけでありがたく思いなさいよ!」
田丸の母の心ない言葉に母は泣き崩れる。
私達家族、列席者達何も返せないこの無力感。
「妹がブスですって? 聞き捨てならないですね」
「ブスは事実じゃない。うちの息子は純粋で天使みたいなものよ。そんな息子の言うことを聞けないお前の妹に天罰が下ったのよ!」
吐き捨てるように田丸の母が妹を侮辱する。
「どこが天使? 悪魔の間違いでしょ? あなたの息子さんがやったことぜーんぶ知ってますよ。カエルの子はカエルって言いますけど、見事に息子さん引き継いでますね」
「さすが近所で有名人なだけありまして肝がすわってますねー。まともな人なら、出禁を言われた時点でここに来ないですよー」
「息子さんが癇癪おこしても、暴力ふっても何も対処しない時点で差別もなにもあるか! 自分達の身を守るために避けてるだけです。それが何か?」
「これ以上妹の最期を邪魔するなら容赦なく叩き潰します!」
自慢の妹をこれ以上侮辱されてたまるか。
「亜津紗、もういいから、これ以上言うな」
父に止められた私は、呼吸が荒くなっていた。
セレモニースーツに悪い汗が染み付いていた。
例のガタイいい男性スタッフが「申し訳ございませんが、あなた達は出禁です。これ以上台無しにされるなら警察呼びます。それでもよろしいですか?」
「はぁ? 警察だと? この田丸様に逆らう気か? 俺の鶴の一声でお前たちを潰すことができるんだぜ。ここの葬儀会社は障害者差別するってな」
「障害者だろうが病気だろうが、ご遺族の意向で式を台無しにする方は入場禁止にして欲しいと。私達スタッフはそれに応えるまでです――もう一度言います、あなたがたは出禁です」
「この方達をお連れしなさい」
男性スタッフ達が力づくで田丸家を追い出す。
「……俺の力でこの会社を潰してやる! 覚えとけ!」
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