ひろいひろわれ こいこわれ ~華燭~

九條 連

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第6章

第3話(2)

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「えっと、それは……」
「本屋行ったあとから莉音くん、様子おかしかった気がするし、タケ爺はタケ爺でメチャクチャ莉音くんのこと気にしちょんしで、なんか俺も、どげえしたらいいかわからんくて、結局思いつく原因って思って、つい白状してしもうたんだけどさ」

 達哉は申し訳なさそうに言う。

「莉音くんな気にせんでいいって言うちくれたけど、俺が余計なことしたせいで、本当はさらに拗れたんじゃねえかって」
「あ、いえっ! それはほんとに全然!」
 莉音はあわてて否定した。

「あの、そのおかげでようやくきちんと話ができたのは、ほんとなので……」

 東京に戻る件と週刊誌が結びつかないのだろう。達哉は腑に落ちない顔をしている。しばし躊躇ためらった後、莉音は思いきって事情を告げた。

「本当はおじいちゃんと揉めてるの、東京に戻るかどうかじゃなくて、僕がお付き合いしてる人とのことが原因なんです」
「……え?」
「僕いま、好きな人がいて、その人とお付き合いしてるんですけど、正直、僕みたいな人間からすると住む世界も違うし、雲の上にいるような人で。だけど相手の人も僕のことすごく大事にしてくれて、お互い真剣なんです。でも、おじいちゃんからすると納得がいかないっていうか、受け容れられない関係で、そのことで衝突して言い合いになってしまって」

 話していくうちに達哉の顔色が変わる。話の内容に週刊誌がどう関係しているか、気づいたのだろう。

「莉音くん、それ、付き合うちょん人って……」

 確認されてもはっきり答えるわけにいかず、言葉を濁す。だが、達哉はそれで、明確に察したようだった。

「うわ、ごめん! 俺、メチャクチャやらかしちょんやんっ。ただでさえ心象悪かったんに、タケ爺にバラすとか、マジで最悪っ。莉音くん、ほんとごめんっ!」
「あ、いえ、全然。あの、ほんとに大丈夫ですから」
「大丈夫って、そげなわけ…っ」

 深々と頭を下げる達哉に、莉音はおろおろと声をかけた。

「どっちにしても前の日、ワイドショーで取り上げられてるの見ちゃってたらしくて」

 莉音の言葉に、達哉は驚いたように顔を上げた。

「しょうがないですよね。それぐらい、すごい人なんです」
 莉音は笑った。

「……タケ爺は、なんて? っつうか、莉音くんな大丈夫だったん? 自分がおらんあいだに、あげな……」
「大丈夫です。デマだって、わかってるので」
「いや、だけど……」
「記事を目にしたときは、もちろんショックでした。でも、あの内容は本当じゃないって僕にはわかるし、おじいちゃんとはずっと、気まずいままお互いにその話題を避けて過ごしてたようなところがあるので、昨日あらためて話したんです。僕が思ったこと、僕たちの関係、これからどうしていきたいか」

 達哉は莉音の顔を見つめた。

「気持ちは、伝わったと思います。最後はおじいちゃんも、東京に戻ることを理解してくれたので」

 莉音の言葉にじっと耳を傾けていた達哉は、やがてふっと視線を落とした。

「そうかな。タケ爺、ほんとに納得したんやろうか」
「え?」
「莉音くんとタケ爺が揉めたこと、相手ん人は知っちょんの?」
「あの、知ってるっていうか、目の前で揉めたので……」

 達哉は目を瞠った。

「目の前で揉めた? それで?」
「えっと、それが原因で、その人とも拗れてしまって……というか、僕が一方的に怒っちゃっただけなんですけど、そのまま東京の家を飛び出してきてしまって、いまに至ります」

 話しながら、子供じみた己の行動を恥ずかしく思った。だが達哉はなぜか、それを聞いて表情を険しくした。

「莉音くん、こっち来て一か月くらいだよね? 相手ん人とどういうやりとりしたんかわからんけど、そうやって莉音くんが不在んあいだにこげなことするって、なんか俺には理解でけんのやけど。不誠実っちいうか」

 達哉の言葉に愕然とした。

「莉音くんの好きな人、俺も悪う言いとうねえけど、話聞いちょんと、なんかスッキリせんっちゅうか、モヤモヤすんだよね。タケ爺が反対するんも、わかる気がするっちゅうか」
「ごかっ……、誤解です! あの記事はほんとにデマですし、彼は――」
「莉音くん、ほんといい子だよね。素直で真面目で純粋で。俺、ガキんころも莉音くんのこと好いちょったけど、大人になって再会してみて、やっぱ俺ん認識、間違うちょらんかったなって」
「え? あの……?」
「なんかそげな子がさ、小狡こずるい大人に良いごつまるめこまれて、ひたむきに相手を信じちょんって、やりきれんっちゅうか」
「そんなことないです。べつにまるめこまれてなんか」
「莉音くん、たまに寂しそうな顔しちょんよ? 自分で気づいちょん?」

 言われて、莉音は言葉を失った。
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