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第四章 学園に行くケモナー

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 ハルハレにアシュくんを連れて行ったら、ミルデイとまったく同じ顔をされた。
 申し訳なく思いつつ、気が抜けたアシュ君と少し仲良くなれた気がする。

「ケルン。俺たちは本当に同じ年齢か?」
「そうだと思…俺?」
「あ…い、今のは聞かなかったことにしてくれ!」

 素のアシュ君を知ってしまったってのもあるけどな。脅迫はしていないけど、仲良くしてくれるように頼んだ。

 そんな風に良い気分になっていたのに、ノイズにも似た音が頭に流れた。

『ケルン君?サーシャルです。杖のことで話があるので、研究室まで来てください』

『コール』か。サーシャル先生って、杖の授業の時に、杖作りが上手くいかなかったら、すぐに相談するようにって、いってくれた先生だよな?
 お昼過ぎても来ないから、向こうから連絡してきたのか?
 猶予は一日あるはずなのだが…たぶん、一日経ってもできないと、判断したんだろう。

「びっくりしたねー…なんか耳の奥がかゆい感じがする」
 慣れてないからな。とりあえず、部屋に戻って、杖を持ってから行こうか。
「そうする!あ、アシュ君。ごめんね。ちょっと僕、呼ばれちゃった」
「またか。今度は何をしたんだ?」

 アシュ君に断りを入れてから、行こうと思ったらそんな言葉を返される。

 いや、確かに、入学式当日に、停学になりかけたけど、毎回、何か問題を起こしているみたいに思わなくてもいいじゃないか。
 あと、その、眼鏡カチャってしながら、聞くのはやめて欲しいな。キャスを思い出して、謝りそうになる。

「大丈夫!ちょっとした確認かな?あ、ミルデイ!」
「はい、坊っちゃま」

 ミルデイに声をかけると、ミルデイは、コーザさんの元からすぐにこちらにきた。
 何か話していたようだけど、気のせいかコーザさんの周りに料理が置かれてないか?ハンクが作ったみたいな料理が目立っているが…コーザさんも同郷だからか。

 せっかく楽しそうに話していたみたいだし、ミルデイはお留守番してもらうか。休ませたいしな。
「そうだね!ちょっと先生の所に行ってくるから!」
「わかりました。お供を」
「一人で大丈夫!」

 一人で行って、帰ってくる。その間は、ミルデイも、自由行動にしてもらおう!我ながら良い案だと思う。

「そうはまいりません!お一人では、何かあるかもしれませんよ!」
「もー…ミルデイは心配症なんだから…学園内だから、平気だってー」

 学園内で、わざわざ、ケルンを狙うような人なんて、いないだろうに。

 ミルデイは、本当に心配症なんだな。カルドの影響…いや、エセニアだな。いつまでも、小さな子供じゃないんだからな!

 背だって、昨日よりも高くなってるはずだ!…数ミリぐらい。

 どんな風にミルデイを説得しようかと、思考を加速する直前に、アシュ君の淡々とした言葉が耳を打った。

「ケルン…君はもう少し、現状把握能力を鍛えた方がいいぞ」

 状況把握?
 いや、だから、ケルンを狙って…いた。リンメギンの人とか。特に王女様とか。ケルンというより、エフデを狙っている人が、まだいるかもしれない。

 エフデを狙ってお前を狙うかもしれないからな。
「お兄ちゃんが危ないの?…うん…気を付けます!」
 いや、お前が危ないんだからな?

 誘拐とかない!なんていい切れたら良かったのだけど、簡単に連れ去られると思う。

 非力。軽い。小さい。

 お手軽な物件です!みたいな三単語が、ケルンにピタッと当てはまってるからな。
 大人になったら、きっと、二の腕には、力瘤がドーンとあって、筋肉質かつ、大きな身長になっている!かもしれないが、今は…子供だから!

 不安なことをいわれたからか、ケルンの中でもどうしようかという感情が浮かんでは、消えていく。
 ミルデイと一緒に行くのが嫌なのではなくて、ミルデイも成長をしているから、自分も成長をしているところを、見せたいといことと、少しでも、楽にさせてあげたいということを考えている。

「研究室には、ご一緒できませんが…途中まででも構いません!お供をさせてください!」

 うっ…目を潤ませるなんて、高等テクニックを使うなんて…目の保護の為に、簡単に目が潤うとは聞いていたが、ミルデイにそんな顔をされると、悪いことしているようじゃないか。
 ぱっと見、女の子かと思うようなミルデイだぞ?仕方ないか。

「じゃあ…お願いするね!…アシュ君、ごめん。また時間があったら、お話しようね?」
「いつでも構わないから、そんなに落ち込まなくていい」

 こちらから、話をしたいと思って誘っておいて、こちらの都合でお開きにするなんて、失礼にもほどがある。なのに、アシュ君は、本当に気にしていないというような口ぶりだった。
 まるで、年下の弟の我が儘を聞く兄のような姿だ。
 なんだか、ケルンに対してお兄ちゃんっぽいな。今度、年下の兄弟いるか聞いてみよう。

 部屋に戻って、仕上げがまだな杖をポケットにしまう。
 サーシャル先生の研究室がある中央棟の十五階まで、駆け足で上がってきた。
 エレベーターを付けてほしい。まだ、どこにもないんだけどな。
 息切れが半端ない。ミルデイは、まったく息切れしていないし、何より、五階から、ケルンを背負って階段を上ってきたのにだ。

 申し訳ないが、ミルデイタクシーを利用する方が早くて、人前に出る姿じゃなくならなくて済むので、使ったのだ。

 運動不足なのかもしれないな…体力つけないといけないかもな。しかし、先生達はここまで、毎日どうやって…ああ、移動系の魔法があるから、それで来ているんだろうな。
 507号室はっと…あった。銀のプレートが多い中で、金色のプレートで、部屋の番号が書いてある。何かの階級かな?講師と、準講師みたいなものか?

「ここだ!ミルデイ、行ってくるねー!」
「はい、坊っちゃま。いってらっしゃいませ。終わりましたら、『コール』をお願いします」
「うん!ミルデイも行ってらっしゃーい!」

 手をふると、ミルデイは一礼して、廊下を歩いていく。
 正直なところ、部屋の外で待っているのかと思ったんだが、ミルデイは少しだけ名残惜しそうにして、ケルンから離れていく。
 自由行動をしてもらうのだけど、どこに行くんだろうな?新しい遊び場を見つけたのなら、是非、今度はミケ君達も呼んでみんなで行きたいものだ。

 しかし…結局、何だかんだ思いつつ、ミルデイタクシーを利用して送ってもらったな。
「僕ね、大きくなったらミルデイをおんぶしてあげる!」
 そのためには筋肉がいるな。ムキムキにならないと。
「ティルカみたいに?石を手でぱきんってできるようにならないとだめ?」
 あそこまでならなくていいから。

 ティルカの筋肉というか、石を砕く握力はケルンには無理だろ。



・・・・・・・・・・・・・・・・
感想でご指摘がありましたが、自分の更新速度が遅くて混乱させてしまったようです。
対処としては、矛盾のないところまで早めに上げるしかないと思います。

年末ですので、家のことでばたばたとしていたり、まとまった執筆時間をとれなかったのもあります。
今日はあと何度か更新しますが、明日と元旦は休むかもしれません。
それから、来年からは予約投稿にしたいと思います。

夜は人形作りの勉強をしようと思いますので、予約しないといけないなと思いまして。
投稿時間帯についてはまたお知らせします・
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