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第四章 学園に行くケモナー
キャットファイト
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食堂に入ると、まだ人が少ない。前に座っていた席があいていたので、そこに腰をおろす。
「とにかく。あまり、エフデ殿のことは知られるなよ?兄であると知られれば、ケルンを利用する者がでるやもしれぬからな」
「僕のお兄ちゃんなのに…内緒にするの?」
「そうだ。内緒にしておく方がいいだろう」
ミケ君の心配は正論だ。エフデを探すために偽マルメリーがケルンを脅したことは記憶に新しい。
ミケ君のいうとおり、内緒だぞ?
「…わかった…むー」
なんで、むくれてんだ?
「お兄ちゃん…自慢したいもん…」
しなくていいからな。
自慢をしたいって気持ちが持てるようになってきたのは、喜ばしいんだが、なんで俺を?この年頃なら、自分の長所とかじゃないのか?
帰ったら育児書を読み直そう。
そんな風に決意していると目の前から軽いため息が聞こえた。
「まぁ、それ以外にも、建国貴族の子息に、ケルンのことを知られたくないからな」
何かお茶でも頼もうかと思っていたら、ミケ君は、机の一点を見つめていった。
その姿は何かを隠しているようにしか、みえなかった。
「なん」
「あの!」
そのこと尋ねようとした瞬間に声をかけられた。
誰だろうと見てみると、見たことがない上級生だった。
一言でいうなら…可愛い系ではなく、美人系の女の子だ。メリアちゃんとは系統が異なる美少女だな。すっと鼻筋も通っているし、銀糸に近い金髪に、軽くロールしてるけど、目元が…ん?すぅと、軽く上がっていて、青い色?どこかで似た人を見たような気がする。
「はい、何ですか?」
何か用があるのだろうし、ミケ君は、相手を観察しているので、その女子生徒の用件を尋ねるのは、ケルンの役割となった。
「あ、あの…ケルン様…ですよね?」
ケルンを知っているか、探していたのかな?
「はい、ケルンです!」
元気よく返事をしたが、なんの用だろうか?
目の前の少女はさらに、瞳をらんらんと輝かせた。
「フェスマルク家の?」
「はい!」
小声でミケ君が、おい!といったけど、家名がバレても問題…あったかもな。色々とまずい。
素直に即答させてはいけなかったかも。
おい、ケルン。
「ん?」
注意しろよ?
「うん!」
美少女の先輩…といっても、三つか四つ…だといいな…身長がおそらく、二十センチは違うのに、歳の差が一つや二つとかだったら、ショックがでかい。
雰囲気が花が咲いたような…昨日、感じた気配みたいなんだけど、まさか、この女の子が原因かな?
にこりと笑ったけど、猛禽類みたいな目が、どうみたって、獲物を見つけたようにしかみえないんだけど。
「動物が好きな?」
「はい!」
「彫像もできる?」
「はい!」
「エフデ様の弟の?」
「はい!…あっ!」
かなりハイテンポで質問されたから、答えていた。
が!そこは、素直に返事したらダメだろう!エフデが厄介事になるって聞いたばかりで内緒にするって決めたのに!
と、女の子にがばっと抱きつかれたときに、俺の叫びはケルンには届かなかった。
「ああ!お会いしたかった!」
「うわ!」
「ケルン!」
苦しい!
く、首が!首がしまってる!
ミケ君、腰元に手をやったけど、何もないよってか、助けて!ケルンが苦しんでるから!
「あ、あの!苦しい!です!」
「ケルン様!ケルン様!」
聞いちゃいねぇ!
会ったことのないお祖父様とお祖母様が、見えてきたぞ。
ぞくりと、背筋が凍る。頭が酸欠だからかな。
机が凍ったような気がした。いや、うっすら凍ったのか?、
「女、ケルンから、すぐに離れよ」
「何?」
「聞こえなかったか?ケルンから離れよといっているんだ!」
ミケ君が皇子モードになっているのに、女の子は、鼻で笑った。怖くないのか?
首の苦しさがなくなった。
なんとか、抱きつくのをやめてくれた。寒さを感じたのはやはり酸欠が原因だったみたいで、机に異常は見当たらない。
ただ、逃げ出すのは不可能だ。
肩を強く持たれて逃げ出せそうにないが、ちらりと見た女の子は、とても勝ち誇ったような顔をしている。
「ほう…私をリンメギン国、王太子が第一王女と知っても、そのような対応ができるのか?クウリィエンシアの皇子殿?」
「何…?」
リンメギン国の第一王女って、リンメギン王様の手紙だと、王女って、孫娘しかいないと聞いているんだけど。
「も、もしかして、リンメギン王様の孫娘さん…ですか?」
そう聞くと、また抱きつかれ…く、首が!
「そうですわ!貴方の婚約者になるマリーヌです!」
婚約者になる?はい?誰が誰と?
「婚約者?」
ミ、ミケ君。何で、こっちまで、冷めた目で見るんだよ!
「ぼ、僕が聞いたのは、会ってくださいだったんですけど!」
婚約者になるとかそんな話はしてないぞ!手紙の約束は、学園で孫娘さんに会ってお話だけって!
「私は、祖父からケルン様と婚約をなんとしても進めよと」
王様は何をしているんだよ!王様は父様と話をして、婚約者とかの話はなかったことにしたんだけどな。
うぉぉぉぉ!首が苦しい!誰か助けて!
そろそろもげるぅぅぅぅ!
「ねぇ、お兄様。そちらの方は…どなた様ですか?」
「メリア!」
あ、あれ?今の縄張り争いの猫の鳴き声みたいに、話しているのは、メリアちゃん?
ま、まさか、あのいつもほわほわと、優しく淑女を目指していて、控えめで、何か話す時も、「ケルン様、私もですわ」と、いつも肯定してくれるあの、ケルンのお嫁さんになったら、素晴らしい奥さんになるな!っていう、メリアちゃんが!
ちらっとうかがう。
修羅が立ってらっしゃる。
「あら、もしや、アメリア皇女様ですか?私はリンメギンのマリーヌです」
「ああ、マリーヌ王女ですか」
は、春なのに、真冬みたいだな。
「で?マリーヌ王女?淑女が殿方にそのようにはしたない行為をなさる理由は?」
隠している尻尾が、タシーン!と、音をたてたような気がした。
「あらあら。私は、ケルン様の婚約者になる身。妻となる者が夫に寄り添って、何か問題でも?まだ淑女のなんたるかもわからぬような!貴女ではおわかりにならないでしょうけど」
「あら、何を世迷言を申されていらっしゃるので?婚約者になる身でしたか?まだ正式に決まったわけでもないでしょう?それに、私はケルン様の母上であられる、ディアニア様より、ケルン様のことを末長く!頼むと直接のお言葉を承っておりますわ。ですから、お下がりくださいませ」
そういうなり、マリーヌから、ケルンを奪い取って、ミケ君に受け渡していた。
双子の息の合った流れに、彼女も止める暇がなかったようだ。
お互いまだうわべをつくろっているが、かなり、煽りあっている。
マリーヌの背後に龍が、メリアちゃんの後ろには虎が見える。
戦いの火蓋は、マリーヌからだった。
「この!…泥棒猫!ケルン様はこのマリーヌがいただきます!引っ込んでなさい!」
「猫で結構!ケルン様は、猫がお好きなのですよ?何も知らない貴女と、私たちを同列にしないでくださる?」
猫の獣人だと気づかれたかと思ったけど、そうじゃない。女の子同士の争いには、口を出してはいけない。
飛び火どころではない。蜂の巣集中砲火。精神が崩壊する。
「ね、ねぇ、ミケ君」
「何だ、ケルン」
女の子が触っていた所を、ばしばしと叩いているけど、汚れていないんだけどな。マーキング?
「僕と母様が似てるっていうけどさ」
「よく似ているな」
「いや…あのね?…メリアちゃんもやっぱり似てるよね」
即答でいわれると、いくら母様のことが好きだっていってもさ、何か嫌なんだけど。しかも、良い意味ではないよね、その似てるって。
ケルンよりもメリアちゃんは母様と似てるとこがある。ほら、怒っているとだんだん、微笑みがまして…右足がトントンっと、リズムを刻んでるし。
あれ?もじもじと、ミケ君が、している。トイレかな?一緒に行く?
予測とはまったく違うことをミケ君の口から聞いた。
「あのな…メリアと婚約すれば…メリアだけでなく…特別に私をモフルことができるが…?」
「え!婚約しないとモフれないの!…あ!でも、二人とも僕のお嫁さんになってくれるんだよね?モフッても」
「は、はしたないではないか!」
顔真っ赤なんだが…やはりもふもふするのは恥ずかしいのか。
というか、ケルンはわかっていないんじゃねぇかな?お嫁さんっていうのは家族になることっていう認識しかしてないぞ。
けれども残念だ。非常に残念だ。
だめらしい。
「ダメなんだ…残念だね、お兄ちゃん」
実に残念だ…二人をもふりたいのに。
「…エフデ殿はご容赦願います…ケルンは…そ、そのとき次第で!」
「わーい!」
え!俺だけダメなのかよ!
ミケ君は、さらにもじもじとしている。
「や、約束として、その」
「お兄様。抜け駆けは許しませんわ」
バトルしているのに、こっちの会話がきこえるのか。メリアちゃん、本当に母様に似ているって。
「ケルン…何だ、この状況」
「あ!アシュ君!…何だろうねー…僕にもわからない」
アシュ君とミルデイ…あと、エセニアぐらいの年頃かな?メイドさんがついてきた。
メイドさんは、その…胸元をもう少し閉じている方がいいんだけど…ボタンがとめれないのかもしれないけど。
胸がはちきれそうで重そうだ。
「お嬢様。会議のお時間です」
「わかりました。ケルン様!またいずれごゆっくり、二人だけで!お話いたしましょう…アメリア皇女。貴女とも決着をつけたく思うわ」
「ふふふ。すでに勝敗が決まった戦いなど、無意味でなくって?」
どんなバトルだったかは、聞き流していた。あまり聞いてはいけない。可愛いとか、ちっちゃいとか、ケルンには禁句なんだぞ。泣くぞ。
とりあえず、帰るらしい、一応先輩みたいだし…先輩と呼ぶか。マリーヌ先輩に、挨拶をしないとな。
ほら、マリーヌ先輩にさよならの挨拶をしとけ。
「マリーヌ先輩!ごきげんよう!」
そういうと、マリーヌ先輩は、とろんと…あ、この顔はろくでもない顔をしている。
「マリーヌ…先輩…ああ!ケルン様!いっそ私の部屋に」
「お嬢様。参りますよ」
メイドさんに引きずられてマリーヌ先輩は、食堂から出て行った。
「ケルン様。食事のあと、兄を借りますわね?お兄様。よろしいですわね?」
「はぁー…わかった。私も話たいからな」
食事は美味しく食べた。はずだ。
味は良かったと思う。
記憶に残っていないけどな!
二人を見送って、アシュ君とミルデイと、ケルンの三人だけか。
アシュ君は、仲良くなったと思うけど、まだまだだよな…ケルンとアシュ君が仲良くなれば、ミケ君とアシュ君も、もっと仲良くなれるんじゃないか?
そうだ!母様がいっていたじゃないか!
仲良くするには、これが一番だって!
アシュ君を誘っていくぞ!
「うん!あのね、ミルデイ、アシュ君。僕とデートしよ?」
そういうと、アシュ君は…やめて!そんな目でみないで!
ケルンはこういう子なんだよ!
ミルデイも、ミルデイで、疲れたような顔になってる。ダブルパンチはつらいよ。
「坊っちゃま。言葉選びは慎重にお願いします」
母様直伝なんだけど、ケルンがいっても嬉しくないよな。
とりあえず、遊びに行こう!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
携帯でかくと顔文字がでてきてそのままだったので修正しました。わりとあるあるです。
「とにかく。あまり、エフデ殿のことは知られるなよ?兄であると知られれば、ケルンを利用する者がでるやもしれぬからな」
「僕のお兄ちゃんなのに…内緒にするの?」
「そうだ。内緒にしておく方がいいだろう」
ミケ君の心配は正論だ。エフデを探すために偽マルメリーがケルンを脅したことは記憶に新しい。
ミケ君のいうとおり、内緒だぞ?
「…わかった…むー」
なんで、むくれてんだ?
「お兄ちゃん…自慢したいもん…」
しなくていいからな。
自慢をしたいって気持ちが持てるようになってきたのは、喜ばしいんだが、なんで俺を?この年頃なら、自分の長所とかじゃないのか?
帰ったら育児書を読み直そう。
そんな風に決意していると目の前から軽いため息が聞こえた。
「まぁ、それ以外にも、建国貴族の子息に、ケルンのことを知られたくないからな」
何かお茶でも頼もうかと思っていたら、ミケ君は、机の一点を見つめていった。
その姿は何かを隠しているようにしか、みえなかった。
「なん」
「あの!」
そのこと尋ねようとした瞬間に声をかけられた。
誰だろうと見てみると、見たことがない上級生だった。
一言でいうなら…可愛い系ではなく、美人系の女の子だ。メリアちゃんとは系統が異なる美少女だな。すっと鼻筋も通っているし、銀糸に近い金髪に、軽くロールしてるけど、目元が…ん?すぅと、軽く上がっていて、青い色?どこかで似た人を見たような気がする。
「はい、何ですか?」
何か用があるのだろうし、ミケ君は、相手を観察しているので、その女子生徒の用件を尋ねるのは、ケルンの役割となった。
「あ、あの…ケルン様…ですよね?」
ケルンを知っているか、探していたのかな?
「はい、ケルンです!」
元気よく返事をしたが、なんの用だろうか?
目の前の少女はさらに、瞳をらんらんと輝かせた。
「フェスマルク家の?」
「はい!」
小声でミケ君が、おい!といったけど、家名がバレても問題…あったかもな。色々とまずい。
素直に即答させてはいけなかったかも。
おい、ケルン。
「ん?」
注意しろよ?
「うん!」
美少女の先輩…といっても、三つか四つ…だといいな…身長がおそらく、二十センチは違うのに、歳の差が一つや二つとかだったら、ショックがでかい。
雰囲気が花が咲いたような…昨日、感じた気配みたいなんだけど、まさか、この女の子が原因かな?
にこりと笑ったけど、猛禽類みたいな目が、どうみたって、獲物を見つけたようにしかみえないんだけど。
「動物が好きな?」
「はい!」
「彫像もできる?」
「はい!」
「エフデ様の弟の?」
「はい!…あっ!」
かなりハイテンポで質問されたから、答えていた。
が!そこは、素直に返事したらダメだろう!エフデが厄介事になるって聞いたばかりで内緒にするって決めたのに!
と、女の子にがばっと抱きつかれたときに、俺の叫びはケルンには届かなかった。
「ああ!お会いしたかった!」
「うわ!」
「ケルン!」
苦しい!
く、首が!首がしまってる!
ミケ君、腰元に手をやったけど、何もないよってか、助けて!ケルンが苦しんでるから!
「あ、あの!苦しい!です!」
「ケルン様!ケルン様!」
聞いちゃいねぇ!
会ったことのないお祖父様とお祖母様が、見えてきたぞ。
ぞくりと、背筋が凍る。頭が酸欠だからかな。
机が凍ったような気がした。いや、うっすら凍ったのか?、
「女、ケルンから、すぐに離れよ」
「何?」
「聞こえなかったか?ケルンから離れよといっているんだ!」
ミケ君が皇子モードになっているのに、女の子は、鼻で笑った。怖くないのか?
首の苦しさがなくなった。
なんとか、抱きつくのをやめてくれた。寒さを感じたのはやはり酸欠が原因だったみたいで、机に異常は見当たらない。
ただ、逃げ出すのは不可能だ。
肩を強く持たれて逃げ出せそうにないが、ちらりと見た女の子は、とても勝ち誇ったような顔をしている。
「ほう…私をリンメギン国、王太子が第一王女と知っても、そのような対応ができるのか?クウリィエンシアの皇子殿?」
「何…?」
リンメギン国の第一王女って、リンメギン王様の手紙だと、王女って、孫娘しかいないと聞いているんだけど。
「も、もしかして、リンメギン王様の孫娘さん…ですか?」
そう聞くと、また抱きつかれ…く、首が!
「そうですわ!貴方の婚約者になるマリーヌです!」
婚約者になる?はい?誰が誰と?
「婚約者?」
ミ、ミケ君。何で、こっちまで、冷めた目で見るんだよ!
「ぼ、僕が聞いたのは、会ってくださいだったんですけど!」
婚約者になるとかそんな話はしてないぞ!手紙の約束は、学園で孫娘さんに会ってお話だけって!
「私は、祖父からケルン様と婚約をなんとしても進めよと」
王様は何をしているんだよ!王様は父様と話をして、婚約者とかの話はなかったことにしたんだけどな。
うぉぉぉぉ!首が苦しい!誰か助けて!
そろそろもげるぅぅぅぅ!
「ねぇ、お兄様。そちらの方は…どなた様ですか?」
「メリア!」
あ、あれ?今の縄張り争いの猫の鳴き声みたいに、話しているのは、メリアちゃん?
ま、まさか、あのいつもほわほわと、優しく淑女を目指していて、控えめで、何か話す時も、「ケルン様、私もですわ」と、いつも肯定してくれるあの、ケルンのお嫁さんになったら、素晴らしい奥さんになるな!っていう、メリアちゃんが!
ちらっとうかがう。
修羅が立ってらっしゃる。
「あら、もしや、アメリア皇女様ですか?私はリンメギンのマリーヌです」
「ああ、マリーヌ王女ですか」
は、春なのに、真冬みたいだな。
「で?マリーヌ王女?淑女が殿方にそのようにはしたない行為をなさる理由は?」
隠している尻尾が、タシーン!と、音をたてたような気がした。
「あらあら。私は、ケルン様の婚約者になる身。妻となる者が夫に寄り添って、何か問題でも?まだ淑女のなんたるかもわからぬような!貴女ではおわかりにならないでしょうけど」
「あら、何を世迷言を申されていらっしゃるので?婚約者になる身でしたか?まだ正式に決まったわけでもないでしょう?それに、私はケルン様の母上であられる、ディアニア様より、ケルン様のことを末長く!頼むと直接のお言葉を承っておりますわ。ですから、お下がりくださいませ」
そういうなり、マリーヌから、ケルンを奪い取って、ミケ君に受け渡していた。
双子の息の合った流れに、彼女も止める暇がなかったようだ。
お互いまだうわべをつくろっているが、かなり、煽りあっている。
マリーヌの背後に龍が、メリアちゃんの後ろには虎が見える。
戦いの火蓋は、マリーヌからだった。
「この!…泥棒猫!ケルン様はこのマリーヌがいただきます!引っ込んでなさい!」
「猫で結構!ケルン様は、猫がお好きなのですよ?何も知らない貴女と、私たちを同列にしないでくださる?」
猫の獣人だと気づかれたかと思ったけど、そうじゃない。女の子同士の争いには、口を出してはいけない。
飛び火どころではない。蜂の巣集中砲火。精神が崩壊する。
「ね、ねぇ、ミケ君」
「何だ、ケルン」
女の子が触っていた所を、ばしばしと叩いているけど、汚れていないんだけどな。マーキング?
「僕と母様が似てるっていうけどさ」
「よく似ているな」
「いや…あのね?…メリアちゃんもやっぱり似てるよね」
即答でいわれると、いくら母様のことが好きだっていってもさ、何か嫌なんだけど。しかも、良い意味ではないよね、その似てるって。
ケルンよりもメリアちゃんは母様と似てるとこがある。ほら、怒っているとだんだん、微笑みがまして…右足がトントンっと、リズムを刻んでるし。
あれ?もじもじと、ミケ君が、している。トイレかな?一緒に行く?
予測とはまったく違うことをミケ君の口から聞いた。
「あのな…メリアと婚約すれば…メリアだけでなく…特別に私をモフルことができるが…?」
「え!婚約しないとモフれないの!…あ!でも、二人とも僕のお嫁さんになってくれるんだよね?モフッても」
「は、はしたないではないか!」
顔真っ赤なんだが…やはりもふもふするのは恥ずかしいのか。
というか、ケルンはわかっていないんじゃねぇかな?お嫁さんっていうのは家族になることっていう認識しかしてないぞ。
けれども残念だ。非常に残念だ。
だめらしい。
「ダメなんだ…残念だね、お兄ちゃん」
実に残念だ…二人をもふりたいのに。
「…エフデ殿はご容赦願います…ケルンは…そ、そのとき次第で!」
「わーい!」
え!俺だけダメなのかよ!
ミケ君は、さらにもじもじとしている。
「や、約束として、その」
「お兄様。抜け駆けは許しませんわ」
バトルしているのに、こっちの会話がきこえるのか。メリアちゃん、本当に母様に似ているって。
「ケルン…何だ、この状況」
「あ!アシュ君!…何だろうねー…僕にもわからない」
アシュ君とミルデイ…あと、エセニアぐらいの年頃かな?メイドさんがついてきた。
メイドさんは、その…胸元をもう少し閉じている方がいいんだけど…ボタンがとめれないのかもしれないけど。
胸がはちきれそうで重そうだ。
「お嬢様。会議のお時間です」
「わかりました。ケルン様!またいずれごゆっくり、二人だけで!お話いたしましょう…アメリア皇女。貴女とも決着をつけたく思うわ」
「ふふふ。すでに勝敗が決まった戦いなど、無意味でなくって?」
どんなバトルだったかは、聞き流していた。あまり聞いてはいけない。可愛いとか、ちっちゃいとか、ケルンには禁句なんだぞ。泣くぞ。
とりあえず、帰るらしい、一応先輩みたいだし…先輩と呼ぶか。マリーヌ先輩に、挨拶をしないとな。
ほら、マリーヌ先輩にさよならの挨拶をしとけ。
「マリーヌ先輩!ごきげんよう!」
そういうと、マリーヌ先輩は、とろんと…あ、この顔はろくでもない顔をしている。
「マリーヌ…先輩…ああ!ケルン様!いっそ私の部屋に」
「お嬢様。参りますよ」
メイドさんに引きずられてマリーヌ先輩は、食堂から出て行った。
「ケルン様。食事のあと、兄を借りますわね?お兄様。よろしいですわね?」
「はぁー…わかった。私も話たいからな」
食事は美味しく食べた。はずだ。
味は良かったと思う。
記憶に残っていないけどな!
二人を見送って、アシュ君とミルデイと、ケルンの三人だけか。
アシュ君は、仲良くなったと思うけど、まだまだだよな…ケルンとアシュ君が仲良くなれば、ミケ君とアシュ君も、もっと仲良くなれるんじゃないか?
そうだ!母様がいっていたじゃないか!
仲良くするには、これが一番だって!
アシュ君を誘っていくぞ!
「うん!あのね、ミルデイ、アシュ君。僕とデートしよ?」
そういうと、アシュ君は…やめて!そんな目でみないで!
ケルンはこういう子なんだよ!
ミルデイも、ミルデイで、疲れたような顔になってる。ダブルパンチはつらいよ。
「坊っちゃま。言葉選びは慎重にお願いします」
母様直伝なんだけど、ケルンがいっても嬉しくないよな。
とりあえず、遊びに行こう!
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