魔拳のデイドリーマー

osho

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第19章 妖怪大戦争と全てを蝕む闇

第442話 The Eclipse

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 なるほどつまり、

1.僕はカムロの攻撃でここに飛ばされた
2.ここはカムロ曰く『あの世』らしい
3.エルクは僕を連れ戻すために追って来た
  しかし帰り方はわからない

 以上、エルクから説明してもらった今の現状である。
 あんのヤロー……やってくれたな。

 僕がなぜか『邪気』を引き寄せるっていう弱点? 体質? を見破られたのもそうだけど、まさかあの世直送のゲートなんてもんを用意してるとは……流石に予想もできなかった。

 いや、しかしここ本当に『あの世』なのかな?

「それについてもカムロの奴が自慢げに語ってたわ。ただ単にこの空間は、『この世』に留まれない死者の魂とかが最終的に行きつくだけの空間であって、便宜上それを『あの世』って呼んでるみたい。本来命ある者が干渉できず、行くこともできない世界っていう意味なら変わりないからって」

「あー、そういや僕にもそんなこと言ってた気がするな……」

 地面に水をこぼした時、砂粒や小石の間を通って浸透し、地下へ地下へ沈んでいく。地表に残っている、『濡れている』とわかる部分はそのうち乾いてしまうから、まるで水が『消えてなくなった』ように見えるし、昔はそう思われていたそうだ。地面に水をこぼすとなくなってしまうって。

 それと同じようなものかな。死者の魂は、砂粒の間を通る水と同じ。死という形で『こぼれる』と、『この世』には留まれず、命ある者には通れない隙間を通って『あの世』に『沈む』。

「そっちの例えの方がわかりやすいわね」

「ありがと。となると……さしずめ僕たちは、本来は沈んでいった水しか来れないような、地下水脈に直通の穴に落ちた、みたいな状況か……」

「ここが、魂だけが来る単なる異空間なら、私達はここに居ても大丈夫なの?」

「いや、全然大丈夫じゃない。『あの世』って呼ばれてるだけはあって、人間が生きていくのに必要な環境は整ってるわけじゃないみたいだからね……気付いていないかもしれないけど、エルクや僕がここで普通にしてられるのは、『指輪』に組み込んでおいたギミックのいくつかが作動してるからだよ。今軽く解析してみたけど、この空間には少なくとも、人間の生存に必要な酸素もなければ気圧もない。この辺にある黒いモヤっていうか煙も、生きている人間にはどっちかっていうと有害」

「うげ……私、意外とヤバい綱渡りしてたのね」

「ホントにね。まあ、僕が言えたこっちゃないけど……ま、そういうわけだから、どうにかしてこの空間はさっさと出ていくべきだねっと」

 エルクと一緒に、すっくと立ちあがる。その動きで風が起こったからか、黒いモヤがふわっと風に吹かれたみたいに周囲に軽く散る。

 ただの煙みたいに見えるけど……いや、見えないか。
 この黒いモヤは多分、『邪気』と同質のものだ。しかし『邪気』そのものじゃない……多分、死者の魂の成れの果てだろう。

 丁度いい言い方が思い浮かばないけど、これらは魂そのものじゃなくて……この空間で長い年月を経……たかどうかはわからないけど、風化した、あるいは分解されて元素的なものに還ってしまった魂なんだろう。
 構築するもとの物質はそうなんだと感じている。僕の中の『シャーマン』の部分が。

 ……ちょっと持って帰ろう。魂の元になる物質なんて、そうそう手に入るもんじゃない。

「あんたはまたマッド根性出して……それ、誰かの魂の一部なんでしょ? 言ってみれば誰かのご遺灰みたいなもんじゃないの? ちょっと気持ち悪くない?」

「そんなこと言ったら毎日僕ら魚とか鳥とか恐竜のご遺体の肉をいただいてるでしょ。こういうのは気の持ちようだよ。それと、糧になってくれた者への感謝を忘れないこと。……それに、マッドにまともな倫理期待できると思わないでね」

「最後のが本音でしょうが。いやまあ、前半部分は確かにそうかもだけど……難しいわね倫理」

「師匠がここにいたらバキュームで吸い込んだかもしれないな……っていうか、今師匠って、やっぱりまだ『キョウ』で留守番してくれてる感じ?」

「ええ……あの後すぐにネリドラ達が、船の通信設備で連絡とってね……ダメ元で救援要請出したんだけど却下食らったわ。『そのくらいで狼狽えんな』『アイツなら大丈夫だろ』って」

「わぉ、信頼されてるんだ僕……ははは、こりゃ裏切るわけにはいかないな……」

 危っぶな、もうちょっとで何か永遠の(かどうかはわからんけども)眠りについてたかもしれないなんて言えない……エルクにマジで感謝しないと。

「で、そろそろこの空間を出る手は思いついたの? ずっと考えてたんでしょ?」

「まあね。ここはひとつ、こいつを使ってみようかなと」

 そう言って僕は、収納からあるものを取り出して両手に乗せ、エルクに見せる。

「これ確か、『縮退炉』とかいう奴よね? あんたの『アルティメットジョーカー』の胸にも装着されてる、魔力炉の類で……暴走すると周囲一帯消滅するっていうヤバい奴」

「そう。中に極小のブラックホールを封印してあって、そこに魔力で疑似的に発生させた質量をエネルギー変換してホーキング放射からの……まあいいや。簡単に言うと、これは質量、ないし超がつくレベルの重力を利用してエネルギーを生み出してるんだ。で……ここからが重要なんだけど、空間系魔法の天敵って知ってる?」

「……確か、それも『重力』なのよね? あんたが前に言ってたわ」

「そう。でも、多分僕が自力で使える魔法とかじゃあ、この空間をぶち破るだけの重力を作ることはできない。だから……コレを使う」

「ひょっとして……わざと暴走させるの?」

「うん。もったいないけど、コレ1つを爆弾として使う。でも……今回はあえて、もう1つ先に進んでみようかなと思ってる」

 エルクに『僕の後ろにいて』と言って、その通りに彼女が僕の背中側に回ってくれた後に……僕は『アルティメットジョーカー』を発動。黒のライダースーツとプロテクターの装甲を身に纏い、髪の前半分が金色に染まる。
 その状態で、膨大な魔力を『魔力式縮退炉』に注ぎ込み、炉の出力を一気に高めていく。

 許容限界を超えて魔力を注がれた縮退炉は、ほどなくして僕の手の中で砕け散り……圧縮していたブラックホールがむき出しになる。ほとばしるすさまじい重力波が、空間全体をきしませる。まるで世界が揺れているかのようだ。

 けど僕はそこに、さらに魔力を注いでいき……ブラックホールの質量をさらに増大させる。手に握ったまま、放さないようにだけ気をつけながら。
 ブラックホールを握れるのかって? 握れる。僕なら。気合で。

 そのまま後先考えずに……ってわけじゃないけど、とにかく魔力を注いでブラックホールを暴走させまくっていく。すると、手の中から……幾筋かの光が漏れ出し始めた。光すら吸い込んでしまうはずの、ブラックホールから。

 ……さて、ここで理科の時間だ。

 宇宙において、巨大な質量をもつ星が寿命を迎えて死ぬ時に何が起こるか知ってるだろうか?

 『星の死』……その形の1つが『ブラックホール』だ。重力によって光すら吸い込み塵にするそれは、宇宙に黒い渦、あるいは穴となって観測される。

 そしてもう1つ、『星の死』の形として有名であろうものがある。
 それは……『超新星爆発』。

 巨大な質量をもつ星が起こす大爆発。周辺数光年にある天体やら何やらを消し飛ばす威力になるらしいそれは、宇宙におけるもっとも凶悪な災害の1つ。
 これが起こった後にブラックホールが残る場合もあるようだが、今回僕はこれを逆行させている。
 
 ブラックホールをほどよくほどいて、重力だけを残してホーキング放射……質量のエネルギー変換を止める。そのまま質量を増大させていき、手の中に握っている極小天体を、重力を利用して超圧縮……そしてまたそこに質量を供給、を繰り返す。
 徐々に僕の手の中から漏れ出る光は、すさまじいエネルギーの迸りに変わっていく。ブラックホールの重力波によって軋みまくっていた空間は、今もう既に崩壊寸前にまでなっていた。

 僕の手の中に……ブラックホールを材料に作った『超新星爆発』が形成されつつあった。

 背中に隠れているエルクが、ヤバいほど大きなエネルギーに顔を青くしながら尋ねてくる。

「それ、使って……この空間を壊すの?」

「それもあるけど、それだけじゃない。この空間自体は、さっきの重力波でもうボロボロになってるから、ここまでの力はいらないだろうしね。……ちょっと別なことにも使おうと思ってるんだ」

「別なこと……?」

「うん。折角こんな、『あの世』なんてヤバい場所に来れたんだからね……ひとつ、カムロの奴の真似でもしてみようかな、と」

 僕らの足元に漂っている、この黒いモヤ。
 これらは、死者の魂が元になったエネルギーであり、『邪気』ほどじゃないが、人体に有害な物質……言うなれば、『陰』のエネルギーだ。

 そして、僕が手にしているこの『超新星爆発』。
 さっきカムロがエネルギーとして使った『八咫烏』は、太陽の化身だと言われている。
 太陽というのは、自ら光を発する星……『恒星』だ。そして、『超新星爆発』は、巨大な質量をもつ星の死に際に起こる現象。その星は『恒星』である場合が多い。
 それなら……同質のエネルギーとして扱えるはず。つまりは、『陽』の力だ。

 どこまで広がっているかもわからない空間全体に充満する、膨大な『陰』の力。
 半径数光年を完全に消し飛ばす光と熱を発生させるほどの、莫大な『陽』の力。

 この2つを、『陰陽術』で混ぜ合わせれば……いや、折角だからここでももう一工夫加えよう。

 もうだいぶ前になるが……ミュウと行った茶店で、『ゴマ団子』がきっかけで思いついた、『陰陽術』の基礎理論に関する考察。
 『陰陽術』は、単に相反する2つのエネルギーを融合させているというわけではなく……相反する2つがぶつかって壊れたことで、その中にもともと含まれていた、何にも染まっていない純粋な『力』が放出されているのだ、というもの。
 ゴマをすりこぎなんかで潰すと、中身が出てきてより風味とかが増すことから気づいた。なんとまあ安直な発想だよね。

 『中身』まで含めて余すことなくエネルギーとして使うことで、莫大な力を発揮する。

 これを念頭に置いた上で……『超新星爆発』と『魂の成れの果て』のエネルギーを混ぜ合わせていく……っ……!

 ――――――――!!

 あふれ出すすさまじいエネルギーに、空間が悲鳴を上げる。今にも砕けそうになっている。

 カムロがやったのを見ていたから、何が起こるかはわかっていた。
 混ぜ合わせる端から、すさまじいエネルギーが生み出されていく。人の体には到底収まりきらないんじゃないかってくらいの……攻撃魔法かなんかに用いれば、あたり一面を更地にしてしまえるであろうくらいに膨大なエネルギーが、僕の体の中で暴れまわる。
 けど……大丈夫、このくらいなら、耐えられる。

 どんどん膨れ上がるエネルギーに耐えながら、2つのエネルギーを体内で混ぜ合わせることを続け……その中で僕は、繰り返し、あることを試し続けていた。

(もっとだ、もっと効率よく……! 『陰』と『陽』の融合、それが指し示す本質、導き出されるであろう『あの現象』……材料ならたっぷりある。いくらでも試せる、やり直せる! できるはずだ、僕なら……今なら、絶対に!)

 『陰』と『陽』の融合を繰り返す。
 1+1が、2にも3にも、5にも10にもなる。
 けど、それじゃ足りない。そんなもんじゃない……! 僕が望むのは……

(1+1=4
 1+1=2
 1+1=6
 1+1=11
 1+1=4
 1+1=7
 1+1=5
 1+1=6
 1+1=10
 1+1=……




 …………10000000ERROR!!)




「よし、来た! この構築パターンか!」

 絶え間なく起こる『陰と陽の融合』の中で、たった1つ成功した『それ』を僕は見逃さなかった。
 『それ』が起こった構築パターンをすぐさま解析して記録し、それを組み込んで……一気に残るエネルギーを反応させる。最早、この空間全てを埋め尽くしてもにとどまり切らないほどのエネルギーが作られ……その奔流に充てられながら、僕の中で……新たな力が生まれる。

 あの時を思い出す。
 『リアロストピア』の最終決戦の時……2人の母から受け継いだ力を取り戻し、『ザ・デイドリーマー』に覚醒し、『アルティメットジョーカー』を作り出したあの時を。

『精神エネルギー増大……臨界点突破。虚実境界線崩壊、イメージ現界、実数事象侵食開始』
『武装概念化、把握、理解、変容、構築開始……完了』
『エネルギー回路、制御術式構築完了。『陰陽術』対応確認』
『新機動力機構、術式構築、安定……『対消滅魔力炉』稼働確認』
『コンディション、オールグリーン』

 装備に組み込んだ電子音声が、僕の変容をそのまま言葉にしていく。

 直感でわかる。今度生まれるそれは……『究極アルティメット』を超える。
 あの時と同じだ。『夢』も『現』も、『陽』も『陽』も、『生』と『死』すら、僕は……超える!

 魔力も、霊力も、妖力も、そして『邪気』や『究極の闇』すらも! 人体に有害とか度の種族に有利とかの違いはあるが、所詮はどれも『力』でしかない。
 結局の所、誰がどう使って、その結果何が起こるか。そこに集約される。

 力そのものに善悪はない。要は、力に負けず、振り回されず、自分の思うようにそれを振るうことができさえすればいいんだ。それができればよかったんだ。
 でも僕はそれができなかった。理由は今もって不明だけど、『邪気』に振り回されて思う通りの戦い方ができなかったから、こうしてピンチになって、皆に心配をかけた。

 だから、僕が新たな力に願い、新たな力を手に入れて目指すことは……『力』を支配する『力』。
 たとえそれが僕にとって、毒だの害だのになるものだろうと、相いれない力だろうと……それに振り回されることなく、知ったことかと塗りつぶしてねじ伏せて、自分を通す力!

 常識を否常識で踏み越えるように!
 気合で不可能を可能にするように!

 僕の一番得意な属性は闇だから……たとえ太陽だろうと恒星だろうと超新星だろうと、闇で全て塗りつぶして、世界を僕の色に染めるくらいの気持ちで! あと何かダーク系ヒーローって個人的に好きな感じなのでテンション上がります。
 そう、それなら名前は……これがいい。



「 『 エクリプスジョーカー 』 !! 」



 ☆☆☆



 最初にそれに気づいたのは、またしてもナナだった。
 
「……あれは……?」

 ミナトに続いてエルクまでもが転移門の中に消え、それでも諦めることなく、シェリーたちが戦い続けていた中……突如として、戦場の上空にそれは現れた。

 最初は、夜になって星が出て来たのかと思うくらいの小さな光だった。しかし、それにしては妙に地上に近い位置に光っていることから、違うとわかる。

 その光は徐々に強くなっていき、そうなれば当然、戦っている者達もその存在に気づく。
 星に見えていたのが満月くらいに見え始め、それを超えてさらに大きく、そして強く輝きを放つようになっていく。最後にはそれは、戦場全体を照らす太陽のようになった。

「太陽……? いえ、そこまで光が強くはないが……すさまじいエネルギーを感じる……!」

「ど、どんどん大きくなっていきますが……?」

「何だありゃあ……? お前さん達が何かした……わけじゃなさそうだな」

「そうね。その様子だとあんたでもないのか。でもそうなると……まあ、予想はつくわね……」

「ええ、あれは多分…………うちの義弟の仕業だわ」

 直径2mほどの大きさになった光球。
 そこから迸るエネルギー……不思議なもので、その大きさ、凄まじさだけはわかるが、それが魔力なのか、妖力なのか、霊力なのかは誰もわからない。

 だがそれが何であれ、あんなものが仮に爆発でもした日には、とんでもないことになると皆が思っていた中で……突如、その白色の光の中に、漆黒の色が混じる。

 中心から湧き出たその黒色は、渦を巻くような動きで広がり、白を塗りつぶしていく。
 力強い輝きを押しのけて黒が広がる、光の球体はたちまち闇の塊のようになり……光は外延部に揺らぐそれを残すのみとなった。
 光と闇の不思議な球体は、戦場全体に、明るさと暗さが混在した不可思議な空間を作り出した。

 それはまるで、日食のような光景だった。

 そして次の瞬間……球体が爆散し、中から……彼女達が待ち望んだ者が現れた。彼を迎えに行ったエルクを、『お姫様抱っこ』でその腕に抱えて。

 皆、嬉しそうに、その目に希望の光を取り戻し……一部は涙すら浮かべながら、その姿を目に焼き付ける。


「ごめん、遅くなった!」

「…………ミナト君、信じてたッ!」

「遅いわよ……って、何、その姿?」


 他の面々同様。嬉しそうにしながらも、照れ隠しに悪態をついたセレナだが……爆発の光が収まり、ミナトの姿がよく見えるようになったところで……それに気づく。
 ミナトの姿が、さっきまでと違うことに。
 それどころか、今までに見たことのない姿になっていることに。

 先程までミナトは、黒いライダースーツ調の服に、黒と金を基調としたプロテクターのような装甲に身を包み、首には金色のスカーフ。髪は前半分が金色に、瞳は緑色になっていたはずだ。

 だが今は、体に滑らかに密着するウェットスーツのような服で覆っている。厚みがあるためか体の線はそこまで出ておらず、これだけなら元のライダースーツ調に近いと言えなくもない。
 手の指先、足のつま先までそういったスーツに覆われており、首から上以外に肌が露出している部分が存在しない点は、『アルティメットジョーカー』と同じだ。

 だがその上に、プロテクター調の装甲と一体化しているロングコートを着ている。手の指の先までを覆うグローブとも一体化しているため、袖に開いている箇所が存在しない。そして、それは下半身……足の裾の部分も同様である。

 格闘時に使うと思われる、両手足や肩の部分は、手甲と脚甲として使うことを想定してだろう、装甲が少しだけ重厚になっている。
 それらの装甲が黒と金を基調としているのは『アルティメットジョーカー』と同じだ。また、体の各所に金色に光るラインが入っており、まるで全身各所をつなぐ血管のように走っている。

 最大の特徴、ないし相違点は……両肩と腰の左右に装着されている、内部に銀河を内包しているかのように輝く漆黒の水晶玉……『魔法式縮退炉』。元々は胸部に1つしか装着されていなかったそれが、全身4カ所に装着されていた。
 そして、『アルティメットジョーカー』の時に『縮退炉』があった胸部中心部には、それらよりも一回り大きな、『太極図』を模していると思しき黒白2色の球体……『対消滅魔力炉』が装着されている。そしてよく見れば、全身を走るラインは、最終的にそこに収束する形になっていた。

 首の中ほどまではぴったりと密着するスーツが覆っているが、それより上には特に装飾と言えるものはない。
 前髪の中に、メッシュのように一房だけ存在する金色と、黒い目の外縁の部分にわずかに翠色の光が灯る瞳を覗いては。

 その名も……『エクリプスジョーカー』。

 死の世界から帰還したミナトが作り出した……『日食』の名を関する新たなる力が、ヴェールを脱いだ瞬間であった。



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