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武神女帝編
ep439 決戦のための作戦会議だ!
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「おっ、空鳥も来てくれたのか」
「なんか疲れた顔しとうね? クジャク様とのバトルが響いてるけんか?」
「いーや。こいつが一人で勝手にタワー内部で迷子になってただけってー話だ。まー、とりあえずメンツは揃ったか」
階層そのものを間違えるという醜態をさらすも、とりあえずは目的地であったフェリアさんの部屋へと到着。フロスト博士と偶然会わなかったら、アタシはあそこを一人で一晩グルグルしてるところだった。
中に入ってみると、部屋の主であるフェリアさんの他に艦首将のベレゴマもいる。このメンツだと艦尾将のフレイムもいそうだけど、流石に体が大きすぎて中に入れない――
「フオオォ。オオォ」
「あっ、外で見張りをしてるのね。ご苦労さん」
――んだけど、しっかり窓の向こうで自己主張してくれた。どうやらジェットパックで宙を浮きつつ、この部屋を守ってくれてるみたいだ。
将軍艦隊の五艦将が三人、ウォリアール王族が(一応アタシを含めて)二人。これだけ揃うと、いよいよ決戦が近いって感じもしてくる。
「それじゃー、少し話をさせてもらうぞ。先代右舷将と左舷将の敗北、クジャク様の離反に伴う内部分裂もあって、天鐘一派の戦力は大幅に減衰してる。とはいえ、今でも厄介なのは変わりねーな。ここで始末をつけねーと、後々の面倒まで引きずっちまう」
「俺としては何よりも栗阿を救いてえ。天鐘をぶちのめすのなんて、そのための『過程』だ。……ともかく、連中に対抗する作戦は用意してんだろうな?」
「えー、まーね。向こうはラルカや牙島がいるのは面倒だが、それ以上に問題視すべきは空中戦艦コメットノアの存在ですな。現在はウォリアール東部沿岸にて待機中も、動き出せばウォリアール本土に被害が及んじまうってーことです。つーわけで、まずはあの空中戦艦をどーにかしよーと思いましてね」
フロスト博士主導の下で話題に上がるのは、敵にとって最大戦力とも言えるコメットノアの存在。もしもあの空中戦艦が本気で攻め入って来れば、ウォリアールという国自体に大打撃だ。
アタシ達の目的は洗居さん救出の他に、天鐘の暴虐を食い止めること。もうこれ以上の被害は出したくない。
「だったら、コメットノアを止めるのが先決ってことかな?」
「そーだな。それも本土に迫るよりも前――沿岸部で待機してるうちにな。俺様の予想じゃ、向こうは夜明けにこっちへ攻め込んでくる。天鐘も手持ちの戦力が減ったことで、相当焦ってるに違いねーな。なりふり構いもしねーだろ。……だから、今夜中に決着を着ける。まずはコメットノアの沈黙からだな」
「それは分かったんだけど、具体的にどうやるのさ? さっきも少しはぐらかしてたし」
そのために必要なのはコメットノアを早期に食い止めること。とはいえ、あんな巨大空中戦艦をどうすればいいのかって話になってくる。
以前に固厳首相が操縦していた時と違い、今のコメットノアはマザーAIで制御されているわけではない。もっとアナログな手段で代用し、その機能を活用してると予測できる。
もう以前と同じようなマザーAIへの干渉という手段は使えない。コメットノアを止めるならば、何か別の手段が必要になってくる。
「そこについてだが、ここにコメットノアの全体図面がある。……空鳥、オメーならこれを参考にして、どーやってコメットノアを止める?」
「へ? ア、アタシ?」
その方法なんだけど、どうにもアタシに白羽の矢が立ってしまう。いや、なんで?
しかも方法についてまでアタシに一任だし、ちょいと責任重大過ぎない? ご丁寧にコメットノアの図面まで用意しちゃってさ。
「オメーだってツバメ様と元将軍艦隊ボス候補の娘だろーが。技術者観点考察に基づき、どんな作戦を立てるのか俺様も興味があるってーことだ」
「まあ、アタシも責任を背負う立場ではあるけどさ。……分かった。ちょいと時間をもらうよ。外観だけでなく、電気系統に至る内部構造まで記されてるなら――」
なんだかフロスト博士の調子に乗せられ、アタシもとりあえずは図面を手に取って眺めてみる。
両親のことを引き合いに出されると、思わず技術者根性も一緒に騒ぐ。アタシの力が役に立つならば、率先して使いたいしね。
「……マザーAIを失った代わりに、おそらくは乗組員が手動で各装置を操作させてるんだろうね。そうなってくると、制御系を一つ潰したところで停止は難しい」
「だろーな。俺様もそこで難儀してる」
「強いて言うなら、緊急用の着地機能だけは元々のマザーAIとも別設定で、飛行性能を失えば自動で発動するってことか。ここら辺の安全装置って、いかにも星皇社長らしい設計だよね」
少しずつ設計図を読み解き、何かしらの停止手段を必死に模索。難しい話だけど、このぐらいの図面ならアタシでも読める。
まさか工業高校主席の頭脳が、こんなとんでも兵器を相手にするために使われるとはね。流石に色々と範疇を超えちゃってる気がするけど。
――でも、一つだけアタシにも可能性が見えてきた。
「コメットノアのメイン動力核融合炉――白陽炉だったっけ? あそこを壊しちゃえば、コメットノアはその機能を完全に停止するね。幸い、まだ沖合にあるなら緊急システムも含めて、被害も少なく着水できそうだ」
「……成程。だが、どーやって白陽炉を停止させるつもりってーんだ? あれはオメーの青い太陽よりも強力な核融合エネルギーだぞ? 止める手段がなければ、ただの机上の空論ってーやつだ」
「うん。アタシもそこが課題だと思うんだけど……」
制御系統が実質複数に別れているなら、動力系統の方を止めてしまうのが一番だ。コメットノアの動力源は白陽炉だけだし、ここを潰すのが総合的に見てもベストだ。
ただ、あれって核融合エネルギーなのよね。フロスト博士も述べるけど、その規模はアタシの空色の魔女としての力をも上回ってる。
一応はアタシの中でも『別の核融合エネルギーをぶつけて相殺』みたいな手段は思いついてるけど、それは同じ規模のエネルギーをぶつけられれば可能という話だ。
アタシの青陽では太陽に隕石が飛び込むがよろしく、相殺も何もなくおしまいだ。フロスト博士もとんでもない発明をしてくれたもんだ。
ならば同じ白陽をぶつけるのもありだけど、それはそれで逆に吸収される可能性も――
「……あっ。ねえ、フロスト博士。前にアタシとタケゾーも戦った……あの……ドリル付きロボット変形戦車? あれって何だったっけ?」
「フラグシップギアのことか?」
「そうそう。あれってすぐに用意できる?」
――そう思ってたけど、一つだけ対抗できる可能性があった。
もしもあの時にフロスト博士がしていた話の通りなら、コメットノアの白陽炉を停止に持ち込むことだってできる。
「用意はできるが、まさかフラグシップギアをコメットノアまで飛ばすつもりってーことか? それは無理だ。一応の飛行機能はフラグシップギアにもついてるが、流石に沖合までは飛べねーよ」
「いや、本当に欲しいのはフラグシップギア本体じゃなくってね。ほら、フロスト博士も思わず止めた――」
「あー、あの機能のことか。それだったら、同じものを用意してやる。……クーカカカ。中々考えたってーことか」
アタシの提案を話せば、フロスト博士もすんなり理解してくれた。
物が揃えばアタシの方でもなんとかなるし、これで作戦は決定かな。
「結構無茶な作戦じゃねえか? 俺には理解が及ばねえけどよ……」
「大丈夫さ。ある意味で太陽の力の扱いについては、アタシが一番専門家ってね」
「そいだら、オイやフレイム艦尾将も援護できるようにするけん」
フェリアさんやベレゴマもアタシの発案に納得し、それをベースに全体の動きも決まっていく。
いよいよ決戦なんだ。アタシもいつものように思い付きの行き当たりばったりとはいかない。
――この国の未来のためにも、夜が過ぎる中で判断を固めていく。
「なんか疲れた顔しとうね? クジャク様とのバトルが響いてるけんか?」
「いーや。こいつが一人で勝手にタワー内部で迷子になってただけってー話だ。まー、とりあえずメンツは揃ったか」
階層そのものを間違えるという醜態をさらすも、とりあえずは目的地であったフェリアさんの部屋へと到着。フロスト博士と偶然会わなかったら、アタシはあそこを一人で一晩グルグルしてるところだった。
中に入ってみると、部屋の主であるフェリアさんの他に艦首将のベレゴマもいる。このメンツだと艦尾将のフレイムもいそうだけど、流石に体が大きすぎて中に入れない――
「フオオォ。オオォ」
「あっ、外で見張りをしてるのね。ご苦労さん」
――んだけど、しっかり窓の向こうで自己主張してくれた。どうやらジェットパックで宙を浮きつつ、この部屋を守ってくれてるみたいだ。
将軍艦隊の五艦将が三人、ウォリアール王族が(一応アタシを含めて)二人。これだけ揃うと、いよいよ決戦が近いって感じもしてくる。
「それじゃー、少し話をさせてもらうぞ。先代右舷将と左舷将の敗北、クジャク様の離反に伴う内部分裂もあって、天鐘一派の戦力は大幅に減衰してる。とはいえ、今でも厄介なのは変わりねーな。ここで始末をつけねーと、後々の面倒まで引きずっちまう」
「俺としては何よりも栗阿を救いてえ。天鐘をぶちのめすのなんて、そのための『過程』だ。……ともかく、連中に対抗する作戦は用意してんだろうな?」
「えー、まーね。向こうはラルカや牙島がいるのは面倒だが、それ以上に問題視すべきは空中戦艦コメットノアの存在ですな。現在はウォリアール東部沿岸にて待機中も、動き出せばウォリアール本土に被害が及んじまうってーことです。つーわけで、まずはあの空中戦艦をどーにかしよーと思いましてね」
フロスト博士主導の下で話題に上がるのは、敵にとって最大戦力とも言えるコメットノアの存在。もしもあの空中戦艦が本気で攻め入って来れば、ウォリアールという国自体に大打撃だ。
アタシ達の目的は洗居さん救出の他に、天鐘の暴虐を食い止めること。もうこれ以上の被害は出したくない。
「だったら、コメットノアを止めるのが先決ってことかな?」
「そーだな。それも本土に迫るよりも前――沿岸部で待機してるうちにな。俺様の予想じゃ、向こうは夜明けにこっちへ攻め込んでくる。天鐘も手持ちの戦力が減ったことで、相当焦ってるに違いねーな。なりふり構いもしねーだろ。……だから、今夜中に決着を着ける。まずはコメットノアの沈黙からだな」
「それは分かったんだけど、具体的にどうやるのさ? さっきも少しはぐらかしてたし」
そのために必要なのはコメットノアを早期に食い止めること。とはいえ、あんな巨大空中戦艦をどうすればいいのかって話になってくる。
以前に固厳首相が操縦していた時と違い、今のコメットノアはマザーAIで制御されているわけではない。もっとアナログな手段で代用し、その機能を活用してると予測できる。
もう以前と同じようなマザーAIへの干渉という手段は使えない。コメットノアを止めるならば、何か別の手段が必要になってくる。
「そこについてだが、ここにコメットノアの全体図面がある。……空鳥、オメーならこれを参考にして、どーやってコメットノアを止める?」
「へ? ア、アタシ?」
その方法なんだけど、どうにもアタシに白羽の矢が立ってしまう。いや、なんで?
しかも方法についてまでアタシに一任だし、ちょいと責任重大過ぎない? ご丁寧にコメットノアの図面まで用意しちゃってさ。
「オメーだってツバメ様と元将軍艦隊ボス候補の娘だろーが。技術者観点考察に基づき、どんな作戦を立てるのか俺様も興味があるってーことだ」
「まあ、アタシも責任を背負う立場ではあるけどさ。……分かった。ちょいと時間をもらうよ。外観だけでなく、電気系統に至る内部構造まで記されてるなら――」
なんだかフロスト博士の調子に乗せられ、アタシもとりあえずは図面を手に取って眺めてみる。
両親のことを引き合いに出されると、思わず技術者根性も一緒に騒ぐ。アタシの力が役に立つならば、率先して使いたいしね。
「……マザーAIを失った代わりに、おそらくは乗組員が手動で各装置を操作させてるんだろうね。そうなってくると、制御系を一つ潰したところで停止は難しい」
「だろーな。俺様もそこで難儀してる」
「強いて言うなら、緊急用の着地機能だけは元々のマザーAIとも別設定で、飛行性能を失えば自動で発動するってことか。ここら辺の安全装置って、いかにも星皇社長らしい設計だよね」
少しずつ設計図を読み解き、何かしらの停止手段を必死に模索。難しい話だけど、このぐらいの図面ならアタシでも読める。
まさか工業高校主席の頭脳が、こんなとんでも兵器を相手にするために使われるとはね。流石に色々と範疇を超えちゃってる気がするけど。
――でも、一つだけアタシにも可能性が見えてきた。
「コメットノアのメイン動力核融合炉――白陽炉だったっけ? あそこを壊しちゃえば、コメットノアはその機能を完全に停止するね。幸い、まだ沖合にあるなら緊急システムも含めて、被害も少なく着水できそうだ」
「……成程。だが、どーやって白陽炉を停止させるつもりってーんだ? あれはオメーの青い太陽よりも強力な核融合エネルギーだぞ? 止める手段がなければ、ただの机上の空論ってーやつだ」
「うん。アタシもそこが課題だと思うんだけど……」
制御系統が実質複数に別れているなら、動力系統の方を止めてしまうのが一番だ。コメットノアの動力源は白陽炉だけだし、ここを潰すのが総合的に見てもベストだ。
ただ、あれって核融合エネルギーなのよね。フロスト博士も述べるけど、その規模はアタシの空色の魔女としての力をも上回ってる。
一応はアタシの中でも『別の核融合エネルギーをぶつけて相殺』みたいな手段は思いついてるけど、それは同じ規模のエネルギーをぶつけられれば可能という話だ。
アタシの青陽では太陽に隕石が飛び込むがよろしく、相殺も何もなくおしまいだ。フロスト博士もとんでもない発明をしてくれたもんだ。
ならば同じ白陽をぶつけるのもありだけど、それはそれで逆に吸収される可能性も――
「……あっ。ねえ、フロスト博士。前にアタシとタケゾーも戦った……あの……ドリル付きロボット変形戦車? あれって何だったっけ?」
「フラグシップギアのことか?」
「そうそう。あれってすぐに用意できる?」
――そう思ってたけど、一つだけ対抗できる可能性があった。
もしもあの時にフロスト博士がしていた話の通りなら、コメットノアの白陽炉を停止に持ち込むことだってできる。
「用意はできるが、まさかフラグシップギアをコメットノアまで飛ばすつもりってーことか? それは無理だ。一応の飛行機能はフラグシップギアにもついてるが、流石に沖合までは飛べねーよ」
「いや、本当に欲しいのはフラグシップギア本体じゃなくってね。ほら、フロスト博士も思わず止めた――」
「あー、あの機能のことか。それだったら、同じものを用意してやる。……クーカカカ。中々考えたってーことか」
アタシの提案を話せば、フロスト博士もすんなり理解してくれた。
物が揃えばアタシの方でもなんとかなるし、これで作戦は決定かな。
「結構無茶な作戦じゃねえか? 俺には理解が及ばねえけどよ……」
「大丈夫さ。ある意味で太陽の力の扱いについては、アタシが一番専門家ってね」
「そいだら、オイやフレイム艦尾将も援護できるようにするけん」
フェリアさんやベレゴマもアタシの発案に納得し、それをベースに全体の動きも決まっていく。
いよいよ決戦なんだ。アタシもいつものように思い付きの行き当たりばったりとはいかない。
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