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第19話『人形遣いの魔王』①

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いつもの様に何とか魔物討伐の依頼を受けようと冒険者組合へ行った私であったが、明らかにおかしなその状況に目を細めた。

「いらっしゃいませ」

「いらっしゃいませ」

「いらっしゃいませ」

冒険者組合の女性方が横並びになりながら、微笑を浮かべて同じ言葉を繰り返している。

そして男性方は無表情のまま壁際に立っていた。

こうしてみると、意識の高すぎるデパートの入り口の様であるが、まぁ冒険者組合はそういう所ではない。

普段であれば、多少かしこまっている部分はあれど、それなりに親しく接してくれるのだ。

こんな他人行儀では無かった。

そして、これと同じ様なものを私は以前にも見たことがあるのだ。

そう。傀儡魔法とかいう胸糞魔法である。

私は、以前と同じ様に冒険者組合のみんなに伸びる魔力の線を断ち切ろうとした。

しかし、それを見越しているかの様にみんなの奥から一人の豪華な服を来た少女が現れたのだ。

「……たす、けて」

「っ」

その少女は涙を流しながら、私に助けを求めつつ、自分の首にナイフを当てていた。

「人質。という訳ですか。やり方が汚いですね」

「目的を果たす為なら、どの様な手段を取ろうと問題はあるまい?」

普段は明るくて、楽しい話ばかりをしてくれる男性冒険者の人が、私の前に立って、彼らしくない口調で私に語りかけた。

それを私はジッと睨みつけながら、距離を取って傀儡魔法に警戒をする。

「おやおや。逃げ出すつもりか? それであるならば、お前が大切にしている子供を魔法で操って、魔物と戦わせる遊びでもするか」

「お前……!」

瞬間怒りが吹き上がる。

子供たちはいたずら好きな子もいるけれど、みんないい子たちばかりなのだ。

こんなふざけた魔法を使う奴の好き勝手にされてたまるか!!

「何が目的なんですか? ここまで大がかりな事をするからには、何か目的があるんでしょう?」

「ふ、ふふ。思っていたよりも冷静みたいだな。それでこそ、あの方の『お友達』に相応しい」

「あの方……?」

「そう。偉大なるあのお方。人形遣いの魔王様だ」

「魔王!」

人形遣いという名は聞いたことが無いが、魔王という名は知っている。

そう。『春風に囁く恋の詩』に登場する歩く災害。それが魔王だ。

何をどうやろうが滅ぼす事は出来ず、歩くだけで魔力を振り撒き魔物を刺激する。

そして戦闘をしようものなら、その魔力に当てらえた魔物が暴走し、村や町を襲い、果ては王都が壊滅し、国が崩壊する。

存在するだけで人間にとっては百害あって一利なしである。

しかも、魔王は倫理観なんてものは持っていないので、たびたび人間を苦しめては遊び半分で村や町、国を滅ぼしたりする最低最悪の存在だ。
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