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第19話『人形遣いの魔王』②
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「喜ぶがいい! 君はあのお方のお友達に選ばれたのだ!」
「悪いですが……」
私は右足に魔力を集中し、床に強く叩きつけた。
さらに衝撃と同時に魔力を組合の建物全てにいる人たちへ向け、細く伸ばされている魔力の線を断ち切ってゆく。
「っ!?」
「やらせない!!」
そして、傀儡魔法が消え崩れていく人々の向こうで、今まさにナイフを振り上げて、自分に突き刺そうとしている子を抱きしめて、ナイフを手で掴んで止めるのだった。
右手から血が流れ落ちるが、気にせず、ナイフを奪い取ると遠くへと投げ捨てる。
「……」
一応全て壊したはずと思いながら、建物の中で傀儡魔法の気配を探るが、どうやらもう全て解除出来た様だ。
何とか一安心と、抱きしめていた女の子を解放しようとしたのだが、よほど怖かったのだろう。私の服を強く掴んで……。
「ふふ、うふふ。こうやって、あの子の傀儡魔法を壊したのね?」
「っ!? 君は!」
「だーめ。もう逃がさないわ」
少女が私の手に触れた瞬間、全身の力が抜けて、床に倒れこんでしまう。
指先一つだって動かないが、少女の話はハッキリと聞こえていた。
「貴女の噂を聞いた時から、欲しいなって思っていたの。でも、エルフってよく知らないし。もしかしたら傀儡魔法が効かないかもしれないじゃない? だからね。試すことにしたの」
「……」
「あぁ、ごめんなさいね。話せるようにしてあげるわ」
「っ! 感謝はしませんよ」
「別に良いわ。どうなっても最後は私の『お友達』になるもの」
自信満々に言い放つ少女を睨みながら、確かに心の奥に妙な感情が浮かんでいる事に気づいて、それを封じ込めた。
こんな状況でこの少女に親しみを感じるなんて異常だ。
つまりはこれこそ、いずれ『お友達』になるという意味なのだろう。
「あぁ、まだお話の途中だったわね。それでね。あの子に力を与えて、派手に動かして、貴女を呼び寄せてみたわ。結果は、貴女も知っている通り、あの子の集めたお人形は全部。貴女に取られちゃった。色々な方法を教えたんだけどね」
「あの子って、まさか……! アイヴィ!?」
「あぁ、そんな名前だったっけ? 忘れちゃった。ふふ。でも名前は忘れちゃったけど。あの子の願いは覚えてるわ。自分を愛してくれる家族が欲しいよぉーって心の中で泣いてたの。ふふ。面白いでしょ? 人間って不思議よね。あの子の家族はすぐ近くに居るのに、誰もあの子の事を見ようとしなかったんだって。ふふ。それでね? あの子に傀儡魔法を教えたら、何をしたと思う? 自分のお母さんとお姉ちゃんに自分を愛してくれる様にってお願いしてたのよ? アハハ! 必死になっちゃって! 私、面白くなって、貴女の力を試すためのオモチャだったのに、何度かあの子の傀儡魔法を解いて、からかってみたのよ。そしたら、あの子! メソメソ泣きながら、おかーさーん。おねーちゃーん。だって! アハハハ。ほんとにおかしい!」
「悪いですが……」
私は右足に魔力を集中し、床に強く叩きつけた。
さらに衝撃と同時に魔力を組合の建物全てにいる人たちへ向け、細く伸ばされている魔力の線を断ち切ってゆく。
「っ!?」
「やらせない!!」
そして、傀儡魔法が消え崩れていく人々の向こうで、今まさにナイフを振り上げて、自分に突き刺そうとしている子を抱きしめて、ナイフを手で掴んで止めるのだった。
右手から血が流れ落ちるが、気にせず、ナイフを奪い取ると遠くへと投げ捨てる。
「……」
一応全て壊したはずと思いながら、建物の中で傀儡魔法の気配を探るが、どうやらもう全て解除出来た様だ。
何とか一安心と、抱きしめていた女の子を解放しようとしたのだが、よほど怖かったのだろう。私の服を強く掴んで……。
「ふふ、うふふ。こうやって、あの子の傀儡魔法を壊したのね?」
「っ!? 君は!」
「だーめ。もう逃がさないわ」
少女が私の手に触れた瞬間、全身の力が抜けて、床に倒れこんでしまう。
指先一つだって動かないが、少女の話はハッキリと聞こえていた。
「貴女の噂を聞いた時から、欲しいなって思っていたの。でも、エルフってよく知らないし。もしかしたら傀儡魔法が効かないかもしれないじゃない? だからね。試すことにしたの」
「……」
「あぁ、ごめんなさいね。話せるようにしてあげるわ」
「っ! 感謝はしませんよ」
「別に良いわ。どうなっても最後は私の『お友達』になるもの」
自信満々に言い放つ少女を睨みながら、確かに心の奥に妙な感情が浮かんでいる事に気づいて、それを封じ込めた。
こんな状況でこの少女に親しみを感じるなんて異常だ。
つまりはこれこそ、いずれ『お友達』になるという意味なのだろう。
「あぁ、まだお話の途中だったわね。それでね。あの子に力を与えて、派手に動かして、貴女を呼び寄せてみたわ。結果は、貴女も知っている通り、あの子の集めたお人形は全部。貴女に取られちゃった。色々な方法を教えたんだけどね」
「あの子って、まさか……! アイヴィ!?」
「あぁ、そんな名前だったっけ? 忘れちゃった。ふふ。でも名前は忘れちゃったけど。あの子の願いは覚えてるわ。自分を愛してくれる家族が欲しいよぉーって心の中で泣いてたの。ふふ。面白いでしょ? 人間って不思議よね。あの子の家族はすぐ近くに居るのに、誰もあの子の事を見ようとしなかったんだって。ふふ。それでね? あの子に傀儡魔法を教えたら、何をしたと思う? 自分のお母さんとお姉ちゃんに自分を愛してくれる様にってお願いしてたのよ? アハハ! 必死になっちゃって! 私、面白くなって、貴女の力を試すためのオモチャだったのに、何度かあの子の傀儡魔法を解いて、からかってみたのよ。そしたら、あの子! メソメソ泣きながら、おかーさーん。おねーちゃーん。だって! アハハハ。ほんとにおかしい!」
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