エルティモエルフォ ―最後のエルフ―

ポリ 外丸

文字の大きさ
275 / 375
第11章

第275話

しおりを挟む
「いや、お前まだ15だろ? この国では10代は戦いに出さないって話なのはお前の方が分かっているだろ?」

「それは……」

 エナグアで寝起きする場所として、ある兄弟と同居をしているケイ。
 その兄弟の兄の方であるオシアスが、指導をしてほしいと頭を下げてきた。
 色々あったらしく、この兄弟の両親はもう亡くなっている。
 ケイの世話係の仕事も、弟と暮らしていくための資金稼ぎに手を上げたと言う所がある。
 そのため、最初のうちはケイに対して何の感情も見せていなかったように感じる。
 弟のラファエルとは違い、ただ仕事として割り切っていたようだが、ケイの実力を聞いて何かが変わったようだ。
 ケイとしても、魔力操作技術が上達しやすい若いうちから指導をしたいところだ。
 しかし、最初に10代の若者を戦いに参加せないと言われているので、教えるのは躊躇われる。
 ケイにやんわり断られたオシアスは、それ以上言い返すことができずに俯いた。

「まさか、親父さんの敵討ちがしたいとか思っているんじゃないだろうな?」

「……聞いたのですか?」

 ラファエルを産んで少しして彼らの母は亡くなった。
 そして、1人で兄弟を育てていた父は、魔人の誘拐を企てた人族によって殺害された。
 簡単に聞いた話だとそういうことらしい。
 人族との戦いが近い今、何としても強くなって父の仇討ちに人族を殺したいと考えているのではないかとケイは思った。
 自分の家のことをケイが知っているとは思わなかったため、オシアスは質問で返す。

「世話になるんだ、少しは知っておこうと思ってな……」

 実際の所は、ケイが聞くより先にバレリオが話してくれたというのが正しい。
 兄弟二人きりの所に要人であるケイを頼むなんて、失礼に当たる気がした。
 しかし、ケイがどこか空き家でも貸してもらえたらいいと言っていたので、訓練場から近いところを探していたらオシアスが立候補した。
 ケイもそこで良いと了承したとは言っても、その家のことを説明しない訳にはいかない。
 なので、本当に最低限教えてもらったといったところだ。

「たしかに父の仇を討ちたい気持ちはあります。しかし、それ以上に今のままではラファエルを守れないと思ったのです」

 彼らの両親のこともそうだが、彼らのことも少しは聞いている。
 10代の若者に実戦はさせないが、訓練はさせている。
 その中でオシアスは普通といった成績。
 魔物の討伐という、この国では花形の仕事ができるとは思えない。
 恐らくは、何かの商売をして働くしかない所だろう。
 そうなると、オシアスの場合はどこかで雇われて働くことになるだろうが、はっきり言ってどこで働こうと裕福な暮らしは不可能だろう。
 何せ人がいないから、物を買う人間も少ないのだから。
 そうなると、確かにまだ小さいラファエルを育てるのは苦しくなる。 
 言い分としては正しい。

「……とりあえず、バレリオに聞いてみるよ」

「はい。お願いします!」

 どうせバレリオが止めるだろうという思いがあったため、ケイは打診するだけ打診してみることをオシアスに約束した。
 まだ望みがあるからだろうか、ケイの言葉にオシアスは嬉しそうに頭を下げ、夕食の準備を始めたのだった。





「構いませんよ」

 翌日、いつものように訓練場に行くと、バレリオが一番乗りで自主練をしていた。
 30代前半くらいの年齢をしているバレリオ。
 魔力操作の技術向上の速度は、どうしても若者よりも鈍い。
 しかし、その分真剣に取り組んでいるからか、誰よりも上達しているように思える。
 そんなバレリオに昨日のことを尋ねてみたら、帰ってきた答えはこれだった。

「……随分あっさりだな」

 昨日ケイが悩んだのが何だったのかと思いたくなるほど、バレリオはあっさりと許可をした。
 元々、10代は戦闘訓練を週に何回かしている。
 それなのに、わざわざ止めるようなことは意味がない。
 だから許可を出すと言ったことらしい。

「どんなに強くなろうとも、参加させるつもりはないですから」

「なるほど……」

 ケイが意外そうな顔をしているのを感じ取ったのか、バレリオは続いてこんなことを言った。
 その言葉にケイは納得する。
 10代は実戦に参加させない。
 このルールは明文化されている訳ではなく、暗黙のルールと言っていい。
 だが、そのルールはかなり強固な物らしい。
 それもそのはず、貴重な若者を死なせるのは、国の衰退に直結しているからだ。

「……という訳で、訓練するだけなら良いんだとさ」

「本当ですか!? ありがとうございます」

 バレリオの許可を得たことを伝えると、オシアスは嬉しそうに頭を下げた。
 まるで強くなることが約束されたかのようだ。

「じゃあ、早速……」

「その前に……」

「?」

 日も暮れて暗くなりだす時刻だというのに、オシアスは稽古用の木剣を持ってケイに稽古をつけてもらおうと外に出ようとする。
 それをケイは手で止めた。
 その意図が分からず、オシアスは首を傾げる。

「俺が教えることと言っても、かなり地味な練習だぞ? 飽きたり、つまらないといった文句は受け付けないからな?」

「は、はい」

 念を押してくるくらいの訓練とはどんなものなのかと、若干押されつつもケイの問いにオシアスは頷く。
 そして、バレリオたちがやっていることと同じように、オシアスは魔力操作の訓練に入ったのだった。





「ケイしゃま! これでいいでしゅか?」

「……天才発見!」

 オシアスの訓練も始まり5日が過ぎたころ、兄と一緒になって遊んでいただけのようなラファエルが、魔力の操作をケイに見せてきた。
 幼児なので魔力は少ないが、指先に集めて火に変換する速度は懸命に頑張っている兄を抜き、バレリオに追いつきそうなほど速かった。
 きちんと教えてもいないのにこの速さとなると、ケイの孫たちを思い起こさせるほどだ。
 エルフの血が薄くなるにつれ、魔力操作の才能も落ちていく。
 ケイの孫世代になるとそれも顕著に表れ始め、息子のレイナルドやカルロスの子供の時と比べると成長が速くない。
 それでも人族の中では天才レベルの速度だが、その天才がここにいた。

「これはこれで困ったな……」

 オシアスの訓練許可は取ったが、まさかラファエルにこんな才があるとは思わなかった。
 きちんと教えないと、これから先の性格が心配になる。
 仕方がないので、ケイはバレリオに話してラファエルの指導もさせてもらうことを頼むことになったのだった。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...