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第3章 火焔の女王
5.愛撫
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結界を解いた玉藻と一緒に、咲希は意識を失っている凪紗をホテルのベッドに横たえた。汗に濡れ光る凪紗の裸身には、西条に付けられた赤い痣が無数に刻まれていた。それを隠すようにダウンケットをかけると、咲希は悲痛な表情で玉藻に告げた。
「あの妖魔に凌辱された記憶は残るのよね……?」
「そうですわね。私には記憶を操作する力はありませんから……」
高校の時に咲耶が祝詞を詠んで、記憶を塗り替えたことを咲希は思い出した。
「以前に咲耶は、クラス中の生徒の記憶を上書きしたわ。あたしにもできるのかな?」
咲耶に頼もうとしたが、何度呼びかけても起きる気配がなかったのだ。
「記憶の操作には、膨大な気が必要ですわ。恐らく咲耶も、その力を他の神々から借りたのだと思いますわ」
「そう言えば、あの祝詞は天照皇大御神さまの御名を詠んでいたわ……」
「天照……。また、怖いお方のお名前を……」
ブルッと体を震わせながら、玉藻が顔を引き攣らせた。
「咲耶の旦那さんは、瓊瓊杵尊っていう天照皇大御神さまの孫だそうよ。そう言えば、咲耶も天照さまのことを凄く恐れていたわ」
咲耶に体を奪われたとき、咲希は大声で天照皇大御神の御名を叫んだのだ。その時の咲耶は、本気で慄えながら咲希に泣きついてきたことを思い出した。
「それは当然ですわ。女神と言っても、咲耶は葦原中国の神ですから……。高天原の神々とは格が違いますもの……」
妖魔であるにも拘わらず、玉藻が神々についても詳しいことに咲希は驚いた。
「葦原中国と高天原って、どう違うの?」
「そうですね……。今の言葉で言うならば、高天原は天界、葦原中国は地上界と言えば分かりやすいでしょうか? まして、天照は天界を統べる最高神であり、太陽神ですわ。天照がその気になれば、私や咲耶など瞬く間に消滅させられてしまいますわ……」
玉藻の言葉に、咲希は驚いた。神々の間にも、それほどの力の差があるとは思いもしなかった。
「玉藻のお兄さん……素戔嗚尊も凄い力を持っているんでしょ?」
咲希の言葉に、玉藻が驚いた表情を浮かべながら訊ねた。
「咲耶から聞いたのですか? おしゃべりな女神ですこと……」
「最初に玉藻に会った時、咲耶には自分を絶対に殺せないって言ったわよね? その理由を訊ねたら、玉藻のお兄さんが『鬼神の王』阿修羅で、その正体が素戔嗚尊だと教えてくれたのよ」
玉藻の言葉に苦笑いを浮かべながら、咲希が告げた。
「兄は確かに強い力を持っておりますわ。それでも、天照には敵いません。天照に逆らってその逆鱗に触れ、兄は高天原を追われたのですから……」
「そうだったんだ……。それで地上に降りて、阿修羅を名乗っているの?」
素戔嗚尊が阿修羅になった経緯を、咲希はまだ咲耶から聞いていなかった。ちょうどよい機会だから、玉藻に教えてもらおうと思って訊ねた。
「地上には私のような半神半妖の者たちが多くおりますの。私たち半神半妖は、それなりに力はあるのですが、神からは見放され、妖魔からは襲われる存在なのです。素戔嗚は、そんな私たちを神々や妖魔たちから守護しているのですわ」
玉藻の話に咲希は驚愕した。三大妖魔と呼ばれる九尾狐が、半神半妖であることなど初めて聞いたのだった。
「咲耶は私を素戔嗚の妹だと告げたようですが、正確に言えば娘でもあり、妻でもあるのです」
「どういうこと……?」
楽しそうな笑みを浮かべながら告げた玉藻の言葉に、咲希が混乱しながら訊ねた。
「素戔嗚の正妻は、櫛名田比売という櫛の化身……いわゆる妖魔なのです。素戔嗚と櫛名田との間に生まれたのが、私……九尾狐なのです」
思いも寄らない玉藻の正体に、咲希は茫然として言葉を失った。まさか、玉藻が素戔嗚の娘だったとは考えもしなかった。
「素戔嗚は私を娘として育ててくれましたが、長じてからは妹として扱いました。そして、私はこのとおり淫魔ですので、何度か素戔嗚の寵を受けたこともありますわ」
「それって、自分の娘を抱いたってこと……?」
咲希の常識からすれば、父親が娘を抱くなど信じられないことであった。だが、相手は神と半妖……武神と淫魔なのだ。人間の常識が通じるはずはないのかも知れないと思い、咲希は無理矢理自分を納得させた。
「それ以来、素戔嗚はより一層の愛情を持って、私に接してくれるようになったのですわ。阿修羅が妹である九尾狐を溺愛しているという噂が立ったのも、そのことが原因のようですわ」
自分の父親と関係を持ったことさえも、淫魔である玉藻にとっては当然のことのようだった。咲希は自分の常識の方がおかしいのかと、一瞬不安になった。
その時、咲希のスマートフォンから着信のメロディが流れた。咲希はライディングジャケットの内ポケットからスマホを取り出すと、液晶画面に表示されている名前を見ながら言った。
「将成からだわ。ごめん、ちょっと出るわね……」
そう告げると、通話アイコンをスライドさせて咲希がスマホを左耳に当てた。
「もしもし……」
『咲希か? 今どこにいる?』
心配そうな将成の声を聞いて、咲希は思わず頬を緩ませた。
「134号沿いの『ヴァンシュタイン』っていうホテルよ。そこの三〇二号室で凪紗を休ませてるわ」
ドイツにある白亜の城から取ったラブホテルの名前を、咲希が告げた。
『早瀬さんは無事なのか?』
「あまり無事とは言えないけど、取りあえず怪我もなく命に別状はないわ」
中途半端な咲希の表現から、将成は凪紗が妖魔に何をされたのかを察した。
『今、S.A.P.のメンバーと一緒に茅ヶ崎駅の近くにいる。今からそっちに向かうよ。十分くらいで着くから、待っていてくれ』
「分かったわ。気をつけて……。また後でね」
そう告げると、咲希はアイコンをスライドさせて通話を切った。そして、玉藻を振り返って、笑顔で告げた。
「将成がS.A.P.のメンバーを連れて来てくれるって……。STREET BOB 114じゃ三人乗りできないから、助かるわね」
「そうですわね……」
(すべてが終わった後で、今頃ノコノコと現れるなんて何のつもりですの?)」
不満そうな表情で、玉藻が答えた。だが、玉藻の内心には気づかずに、咲希が嬉しそうな笑顔を浮かべながら言った。
「将成が来てくれたら、後のことは彼に任せれば安心よね。あとは凪紗の精神面が心配だけど、いざとなったら咲耶に記憶を上書きしてもらえばいいかな……?」
「そうですわね……」
(どうせ、私には記憶の操作なんてできませんわ。それにしても、今日は二回も命がけで助けてさしあげたのに、咲希の私に対する態度はちょっとアレですわね……?)
大学の剣道部とさっきの妖魔を合わせて、玉藻は二度も自分の身を犠牲にしてまで咲希を助けたのだ。そのことを咲希が軽く見ているようで、玉藻は面白くなかった。
「玉藻がいてくれて、今日は本当に助かったわ。すごく感謝してる。どうもありがとう……」
そう告げると、咲希が長い黒髪を揺らしながら玉藻に頭を下げてきた。
(あら……。私を蔑ろにしていた訳ではなかったのですね? やはり、咲希は可愛いですわ……)
「いえ……。当然のことをしただけですわ。気にしないでください」
改めて咲希に礼を言われて、玉藻の機嫌は瞬く間によくなった。
「将成に後を頼んだら、今日は帰らせてもらおうね。詳しい報告とかは、明日すればいいから……」
「そうですわね。さすがに、今日は疲れましたわ。家に帰ったら、もう少し神気を分けてください」
「う、うん……。分かった……」
カアッと顔を赤らめながら、咲希が恥ずかしそうに頷いた。その様子を見つめて、玉藻はニッコリと微笑みを浮かべた。
(少しと言わず、たくさん気持ちよくしてあげますわ。咲希が二度と私から離れられなくなるくらいに……)
淫魔の面目躍如とも言うべき妖艶な微笑を浮かべながら、玉藻は咲希の美貌を見つめた。
「あッ、あッ、あぁああッ……! いいッ……! イクッ……イクッ……! あッ、あぁああッ……! あッ……?」
歓悦の頂点を極める直前で動きを止めた男を、不満そうな表情で彼女は見つめた。ビクッビクッと小刻みに震える白い肢体は、突然中断された快美の続きを渇望していた。だが、その欲望を彼女の口から告げることは許されてはいなかった。唇から垂れ落ちた涎を右手で拭うと、情欲に濡れ光る濃茶色の瞳で彼女は男を見つめながら訊ねた。
「どうか……なさいましたか、夜叉さま……?」
赤茶色の長い髪を振り乱しながら腰を振り、自分の上で男を熱く締め付けている彼女を見上げながら夜叉が冷めた口調で告げた。
「武羅奴の妖気が消えた。どうやら、人間に斃されたようだ……」
「武羅奴が……?」
愛欲に濡れた濃茶色の瞳が、赤光を放った。彼女よりも力は最も劣るとは言え、武羅奴は夜叉四天王の一角を担う吸血鬼だ。決してただの人間に後れを取るはずはなかった。
「最近、九尾狐が奴の味方についたと聞いた。武羅奴では九尾狐の相手は荷が重かったのだろう」
「あの女狐が……? それにしても、九尾狐が肩入れをする奴とはいったい何者なのですか……?」
三大妖魔の一人である九尾狐は、力こそ夜叉に劣るが簡単に敵に廻してよい相手ではなかった。その兄である阿修羅は、夜叉さえも上回る最強の存在だったからだ。
「木花咲耶の生まれ変わりだ。まだ何の力もない若い娘だが、その内に咲耶を宿している。咲耶と同化すれば、我をも凌ぐ力を持つかも知れぬ。だから、今のうちにその芽を摘んでおこうと思い、武羅奴を使わしたのだが……。どうやら力不足だったようだ」
だが、その言葉とは裏腹に、夜叉は楽しそうな笑みを浮かべた。それはまるで、お気に入りの玩具を与えられた子供のような笑みだった。
「よろしければ、私が参りましょうか? あの女狐には昔、顔を焼かれた怨みもあります故、恩返しをしとうございます」
そう告げると、彼女は長い赤茶色の髪を左手でかき上げた。そこには醜く灼け爛れた半顔があった。かつて、九尾狐の火焔を受けた痕であった。妖気の焔で焼かれたため、二度と治癒することができないのだ。
「行ってくれるか、迦美羅……?」
「仰せとあらば、すぐにでも……」
凄愴な微笑を浮かべた迦美羅を満足そうに見つめると、夜叉はニヤリと笑みを浮かべながら告げた。
「だが、まだ楽しむ時間くらいはあるだろう……? 我が精を受けてからでも遅くはあるまい……」
そう告げると、夜叉は動きを再開した。猛々しく反り返った長大な男で、ゆっくりと下から迦美羅の肢体を突き上げ始めた。
「あッ……! 夜叉さまッ……! だめッ……! それッ……! あッ、あッ、いいッ……! あぁああッ……!」
再び始まった夜叉の責めに、迦美羅は長い赤茶色の髪を振り乱しながら悶え啼いた。重たげに揺れる豊かな乳房を、夜叉が両手で握り締めた。そして、鴇色の媚芯を指先で摘まみ上げながら、激しく揉みしだいた。
「夜叉さまッ……! お願い……私の血をッ……! あッ、あッ、あぁああッ……!」
迦美羅の言葉にニヤリと笑みを浮かべると、夜叉はカアッと口を開いて白い乱杭歯を光らせた。そして、汗に濡れ光る迦美羅の右首筋に、ザクリとその牙を挿し込んだ。
「ひぃいいッ……!」
その瞬間、迦美羅が全身をビクンッビクンッと激しく痙攣させながら、壮絶な極致感を極めた。
「凄いッ……! あッ、あッ……! ひぃいいッ……! 狂うッ……! また、イクッ! イグぅうッ……!」
長い赤茶色の髪を振り乱し、随喜の涙と涎を垂れ流しながら迦美羅が大きく仰け反った。凄絶に極致感を極める迦美羅を激しく突き上げながら、夜叉はゴクゴクと喉を鳴らしてその鮮血を飲み干した。
倒錯と狂瀾の宴は、黄金に縁取られた漆黒の棺の中で、夜空が白むまで続けられた。
将成が連れて来たS.A.P.のメンバーは全部で五人だった。その内の一人は、以前にS.A.P.本部で会ったことがある朝比奈桃花という黒縁メガネをかけた知的美人だった。
将成たちを部屋から追いだした後で、咲希と玉藻は桃花に手伝ってもらいながら凪紗に服を着させた。妖魔の被害者とはいえ、さすがに全裸の凪紗を男たちの眼に晒すわけにはいかなかったからだ。
将成たちに後のことを任せると、咲希と玉藻は先に帰らせてもらうことにした。S.A.P.によるドローンで計測した妖魔のSA係数は、二千を超えていたため正確に測定することはできなかった。その推定予想値は、六千以上であった。
SA係数六千の妖魔を倒したことで、咲希には殲滅報酬が支給されるとのことだった。その手続きも含めて、明日の午後にS.A.P.本部へ行き、色葉たちに詳細な報告をすることになった。
「さすがに疲れたわね。お風呂に入って、すぐに横になりたいわ……」
自宅マンションに到着すると、咲希は大きく伸びをしながら凝った体を解した。壁の掛け時計を見ると、夜の十時半を廻っていた。二人乗りのため高速が使えず、国道129号を二時間以上かけて北上してきたのだ。
「運転お疲れ様でした、咲希……。疲れているところ申し訳ありませんが、少しだけ神気を分けてくれませんか? さすがにちょっと辛くて……」
蒼白な表情で咲希の顔を見つめながら、玉藻が告げた。妖気をほとんど使い切った状態で二時間もピリオンシートに乗っているのは、三大妖魔と呼ばれる玉藻にとってもかなりの苦痛だったのだ。
「大丈夫、玉藻……? 顔色が真っ青じゃない? ごめん、全然気づかなかったわ……」
玉藻の状態に驚いて、咲希が慌てて駆け寄った。
「あまり大丈夫とは言えませんわ……。少しだけでいいですから、神気をくださいませんか……?」
滅多に弱音を吐かない玉藻の言葉に、咲希は頷きながら告げた。
「とにかく、ベッドに横になって……。すぐに神気をあげるから……」
「はい……、お願いします……」
弱々しい笑みを浮かべながら頷くと、玉藻は咲希のシングルベッドに体を横たえた。
「いい……? 神気を渡すわね……」
カアッと赤面しながら告げると、咲希は左手で長い漆黒の髪をかき上げながら玉藻に顔を近づけた。そして、魅惑的な玉藻の唇に自分の紅唇を重ねた。
熱く小さい玉藻の舌が、咲希の唇を割って入ってきた。ネットリと舌を絡まされた瞬間、咲希はビクンッと体を震わせた。
(あッ……だめッ……! 凄いッ……! イッちゃうッ! だめ、イクッ……!)
想像を絶する歓喜の潮流が全身を駆け抜けた瞬間、咲希はビクンッビックンッと総身を震わせながら絶頂を極めた。快感の愉悦を噛みしめてガクガクと慄える体を、玉藻が抱き寄せた。咲希は崩れ落ちるようにベッドに横たわり、玉藻と体を重ねた。
「ありがとうございます、咲希……。少しは楽になりましたわ……。もう少しいただいてもいいですか?」
絶頂の余韻でビクッビクンッと痙攣している咲希は、玉藻の言葉に小さく頷いた。その様子を見てニヤリと笑みを浮かべると、玉藻は咲希のライディングジャケットを脱がせてベッドの下に落とした。そして、体を入れ替えて咲希を組み敷くと、背中に廻した左手でプチンとブラジャーのホックを外した。
「何を……んッ……!」
抗議の言葉を告げようとした咲希の唇を、玉藻は素早く塞いだ。そして濃厚に舌を絡めながら、Tシャツと一緒にブラジャーのカップをずり上げた。プルンと揺れながら姿を現した白い双乳を、玉藻の両手が包み込んだ。
(だめッ……玉藻ッ……! 何をッ……? あッ、いやッ……! だめぇッ……!)
シナシナと乳房を揉みしだかれ、固く突き勃った媚芯を指で扱かれると、咲希はビクンッと体を震わせながら顎を突き上げて仰け反った。
細い唾液の糸を引きながら唇を離すと、玉藻は咲希の右乳房に顔を近づけて媚芯を唇で啄み、歯で甘噛みをし始めた。その間も玉藻の右手は、咲希の左乳房を揉みしだき、コリコリと媚芯を指先で扱き続けていた。
「ひぃいいッ……!」
甘噛みされた媚芯に淫気を放射されると、壮絶な快感が潮流となって咲希の全身を駆け抜けた。腰骨が熱く灼き溶けて、背筋を快美の奔流が舐め上げた。脳天を快絶の落雷が襲った瞬間、咲希は全身を大きく震撼させながら絶頂を極めた。ビクンッビックンッと痙攣する咲希を見下ろすと、玉藻は手慣れた仕草で咲希のTシャツを脱がし、ブラジャーを外した。そして、全身の力が抜けきった咲希から、ジーンズを脱がして白い下着一枚だけを残した。
「あら、こんなにビッショリと濡らして……。咲希の大事なところが透けて見えますわ」
「いや……恥ずかしい……」
玉藻の言葉にカアッと顔を赤らめると、羞恥のあまり咲希は顔を背けた。その様子を満足げに見つめると、玉藻は濡れた下着の上から咲希の秘唇に指を這わせ始めた。そして、固くなった真珠を探り当てると、指先でコリコリと転がした。
「ひぃッ……! いや、そこッ……! だめッ……!」
ビクンッと上体を仰け反らせると、咲希は快感から逃げるかのように激しく首を振った。白いシーツの上を長い漆黒の髪が舞い乱れて、濃厚な女の色香を撒き散らした。
「失礼しました。下着の上からでは、いやですわよね? 直接触ってさしあげますわ……」
そう告げると、玉藻は右手を濡れた下着の中へと挿し込んだ。そして、クチャクチャと卑猥な音を奏でながら蜜液を掬い取ると、真珠の薄皮をクルンと剥き上げ、淫気を纏った指先で円を描くように塗り込み始めた。
「ひぃいいッ……! だめぇ、それぇッ……! イッちゃうッ! あッ、あッ、あぁああッ……!」
グンッと顎を突き上げると、裸身を大きく仰け反らせて咲希はあっという間に絶頂を極めた。真っ赤に染まった目尻から随喜の涙が溢れ、白い頬を伝って流れ落ちた。ガチガチと歯を鳴らしている口元からは、ネットリとした涎が糸を引いて垂れ落ちた。
玉藻はその様子をニヤリと笑みを浮かべて見つめると、最後に残った下着を咲希の両脚から抜き去った。柔らかい叢に隠された咲希の秘唇が、玉藻の目の前に曝け出された。
「まだ、咲希には教えてませんでしたわね。九尾狐の愛撫がどういうものかを……。今宵は心ゆくまで堪能させてあげますわ」
そう告げると、玉藻は美しい貌を咲希の股間に埋めた。そして、ピチャピチャと卑猥な音色を奏でながら、淫気を纏わせた舌先で咲希の秘唇を舐り始めた。
「ひぁああッ……! だめぇえッ……! それ、いやぁあッ……!」
淫気を纏った舌がネットリと秘唇を這う度に、咲希は絶頂を極めた。敏感な箇所に淫魔の淫気を直接当てられたら、一瞬たりとも我慢などできるはずがなかった。休みなく送り込まれる快感のパルスに、咲希は深い縦皺を刻みながら激しく首を振った。
(こんなの……おかしくなるッ! 快感が強すぎて……息ができないッ! 頭が溶けるッ!)
限界を遥かに超える快絶に、随喜の涙が止まらなかった。せわしなく熱い喘ぎ声を上げる唇からは、トロリとした涎が溢れてツッツーッと糸を引きながらシーツに淫らな染みを描いた。
真っ赤に充血し一回り大きくなった真珠を、玉藻が激しく舌で転がした。そして、魅惑的な唇で真珠を啄むと、膨大な淫気を送り込みながらチューッと強く吸い上げた。
「ひぃいいッ……! イグぅうッ……!」
その瞬間、プシャアッという音を立てて、咲希は生まれて初めて秘唇から凄絶に蜜液を迸らせた。虚空に弧を描いた潮流が、玉藻の貌にビシャッと音を立てて降りそそいだ。
「あらあら……。ずいぶんと派手に達しましたわね。でも、咲希の蜜は甘くて美味しいですわ……」
顔にかかった蜜液を赤い舌で舐め取ると、玉藻は満足そうな笑みを浮かべながら咲希を見下ろした。ビックンッビックンッと激しく裸身を痙攣させながら、超絶すぎる快絶に咲希の意識は暗闇へと消失していった。
随喜の涙とネットリとした涎に塗れたその表情は、紛れもなく激烈な官能の奔流に狂わされた濃艶な女の末路そのものであった。
「あの妖魔に凌辱された記憶は残るのよね……?」
「そうですわね。私には記憶を操作する力はありませんから……」
高校の時に咲耶が祝詞を詠んで、記憶を塗り替えたことを咲希は思い出した。
「以前に咲耶は、クラス中の生徒の記憶を上書きしたわ。あたしにもできるのかな?」
咲耶に頼もうとしたが、何度呼びかけても起きる気配がなかったのだ。
「記憶の操作には、膨大な気が必要ですわ。恐らく咲耶も、その力を他の神々から借りたのだと思いますわ」
「そう言えば、あの祝詞は天照皇大御神さまの御名を詠んでいたわ……」
「天照……。また、怖いお方のお名前を……」
ブルッと体を震わせながら、玉藻が顔を引き攣らせた。
「咲耶の旦那さんは、瓊瓊杵尊っていう天照皇大御神さまの孫だそうよ。そう言えば、咲耶も天照さまのことを凄く恐れていたわ」
咲耶に体を奪われたとき、咲希は大声で天照皇大御神の御名を叫んだのだ。その時の咲耶は、本気で慄えながら咲希に泣きついてきたことを思い出した。
「それは当然ですわ。女神と言っても、咲耶は葦原中国の神ですから……。高天原の神々とは格が違いますもの……」
妖魔であるにも拘わらず、玉藻が神々についても詳しいことに咲希は驚いた。
「葦原中国と高天原って、どう違うの?」
「そうですね……。今の言葉で言うならば、高天原は天界、葦原中国は地上界と言えば分かりやすいでしょうか? まして、天照は天界を統べる最高神であり、太陽神ですわ。天照がその気になれば、私や咲耶など瞬く間に消滅させられてしまいますわ……」
玉藻の言葉に、咲希は驚いた。神々の間にも、それほどの力の差があるとは思いもしなかった。
「玉藻のお兄さん……素戔嗚尊も凄い力を持っているんでしょ?」
咲希の言葉に、玉藻が驚いた表情を浮かべながら訊ねた。
「咲耶から聞いたのですか? おしゃべりな女神ですこと……」
「最初に玉藻に会った時、咲耶には自分を絶対に殺せないって言ったわよね? その理由を訊ねたら、玉藻のお兄さんが『鬼神の王』阿修羅で、その正体が素戔嗚尊だと教えてくれたのよ」
玉藻の言葉に苦笑いを浮かべながら、咲希が告げた。
「兄は確かに強い力を持っておりますわ。それでも、天照には敵いません。天照に逆らってその逆鱗に触れ、兄は高天原を追われたのですから……」
「そうだったんだ……。それで地上に降りて、阿修羅を名乗っているの?」
素戔嗚尊が阿修羅になった経緯を、咲希はまだ咲耶から聞いていなかった。ちょうどよい機会だから、玉藻に教えてもらおうと思って訊ねた。
「地上には私のような半神半妖の者たちが多くおりますの。私たち半神半妖は、それなりに力はあるのですが、神からは見放され、妖魔からは襲われる存在なのです。素戔嗚は、そんな私たちを神々や妖魔たちから守護しているのですわ」
玉藻の話に咲希は驚愕した。三大妖魔と呼ばれる九尾狐が、半神半妖であることなど初めて聞いたのだった。
「咲耶は私を素戔嗚の妹だと告げたようですが、正確に言えば娘でもあり、妻でもあるのです」
「どういうこと……?」
楽しそうな笑みを浮かべながら告げた玉藻の言葉に、咲希が混乱しながら訊ねた。
「素戔嗚の正妻は、櫛名田比売という櫛の化身……いわゆる妖魔なのです。素戔嗚と櫛名田との間に生まれたのが、私……九尾狐なのです」
思いも寄らない玉藻の正体に、咲希は茫然として言葉を失った。まさか、玉藻が素戔嗚の娘だったとは考えもしなかった。
「素戔嗚は私を娘として育ててくれましたが、長じてからは妹として扱いました。そして、私はこのとおり淫魔ですので、何度か素戔嗚の寵を受けたこともありますわ」
「それって、自分の娘を抱いたってこと……?」
咲希の常識からすれば、父親が娘を抱くなど信じられないことであった。だが、相手は神と半妖……武神と淫魔なのだ。人間の常識が通じるはずはないのかも知れないと思い、咲希は無理矢理自分を納得させた。
「それ以来、素戔嗚はより一層の愛情を持って、私に接してくれるようになったのですわ。阿修羅が妹である九尾狐を溺愛しているという噂が立ったのも、そのことが原因のようですわ」
自分の父親と関係を持ったことさえも、淫魔である玉藻にとっては当然のことのようだった。咲希は自分の常識の方がおかしいのかと、一瞬不安になった。
その時、咲希のスマートフォンから着信のメロディが流れた。咲希はライディングジャケットの内ポケットからスマホを取り出すと、液晶画面に表示されている名前を見ながら言った。
「将成からだわ。ごめん、ちょっと出るわね……」
そう告げると、通話アイコンをスライドさせて咲希がスマホを左耳に当てた。
「もしもし……」
『咲希か? 今どこにいる?』
心配そうな将成の声を聞いて、咲希は思わず頬を緩ませた。
「134号沿いの『ヴァンシュタイン』っていうホテルよ。そこの三〇二号室で凪紗を休ませてるわ」
ドイツにある白亜の城から取ったラブホテルの名前を、咲希が告げた。
『早瀬さんは無事なのか?』
「あまり無事とは言えないけど、取りあえず怪我もなく命に別状はないわ」
中途半端な咲希の表現から、将成は凪紗が妖魔に何をされたのかを察した。
『今、S.A.P.のメンバーと一緒に茅ヶ崎駅の近くにいる。今からそっちに向かうよ。十分くらいで着くから、待っていてくれ』
「分かったわ。気をつけて……。また後でね」
そう告げると、咲希はアイコンをスライドさせて通話を切った。そして、玉藻を振り返って、笑顔で告げた。
「将成がS.A.P.のメンバーを連れて来てくれるって……。STREET BOB 114じゃ三人乗りできないから、助かるわね」
「そうですわね……」
(すべてが終わった後で、今頃ノコノコと現れるなんて何のつもりですの?)」
不満そうな表情で、玉藻が答えた。だが、玉藻の内心には気づかずに、咲希が嬉しそうな笑顔を浮かべながら言った。
「将成が来てくれたら、後のことは彼に任せれば安心よね。あとは凪紗の精神面が心配だけど、いざとなったら咲耶に記憶を上書きしてもらえばいいかな……?」
「そうですわね……」
(どうせ、私には記憶の操作なんてできませんわ。それにしても、今日は二回も命がけで助けてさしあげたのに、咲希の私に対する態度はちょっとアレですわね……?)
大学の剣道部とさっきの妖魔を合わせて、玉藻は二度も自分の身を犠牲にしてまで咲希を助けたのだ。そのことを咲希が軽く見ているようで、玉藻は面白くなかった。
「玉藻がいてくれて、今日は本当に助かったわ。すごく感謝してる。どうもありがとう……」
そう告げると、咲希が長い黒髪を揺らしながら玉藻に頭を下げてきた。
(あら……。私を蔑ろにしていた訳ではなかったのですね? やはり、咲希は可愛いですわ……)
「いえ……。当然のことをしただけですわ。気にしないでください」
改めて咲希に礼を言われて、玉藻の機嫌は瞬く間によくなった。
「将成に後を頼んだら、今日は帰らせてもらおうね。詳しい報告とかは、明日すればいいから……」
「そうですわね。さすがに、今日は疲れましたわ。家に帰ったら、もう少し神気を分けてください」
「う、うん……。分かった……」
カアッと顔を赤らめながら、咲希が恥ずかしそうに頷いた。その様子を見つめて、玉藻はニッコリと微笑みを浮かべた。
(少しと言わず、たくさん気持ちよくしてあげますわ。咲希が二度と私から離れられなくなるくらいに……)
淫魔の面目躍如とも言うべき妖艶な微笑を浮かべながら、玉藻は咲希の美貌を見つめた。
「あッ、あッ、あぁああッ……! いいッ……! イクッ……イクッ……! あッ、あぁああッ……! あッ……?」
歓悦の頂点を極める直前で動きを止めた男を、不満そうな表情で彼女は見つめた。ビクッビクッと小刻みに震える白い肢体は、突然中断された快美の続きを渇望していた。だが、その欲望を彼女の口から告げることは許されてはいなかった。唇から垂れ落ちた涎を右手で拭うと、情欲に濡れ光る濃茶色の瞳で彼女は男を見つめながら訊ねた。
「どうか……なさいましたか、夜叉さま……?」
赤茶色の長い髪を振り乱しながら腰を振り、自分の上で男を熱く締め付けている彼女を見上げながら夜叉が冷めた口調で告げた。
「武羅奴の妖気が消えた。どうやら、人間に斃されたようだ……」
「武羅奴が……?」
愛欲に濡れた濃茶色の瞳が、赤光を放った。彼女よりも力は最も劣るとは言え、武羅奴は夜叉四天王の一角を担う吸血鬼だ。決してただの人間に後れを取るはずはなかった。
「最近、九尾狐が奴の味方についたと聞いた。武羅奴では九尾狐の相手は荷が重かったのだろう」
「あの女狐が……? それにしても、九尾狐が肩入れをする奴とはいったい何者なのですか……?」
三大妖魔の一人である九尾狐は、力こそ夜叉に劣るが簡単に敵に廻してよい相手ではなかった。その兄である阿修羅は、夜叉さえも上回る最強の存在だったからだ。
「木花咲耶の生まれ変わりだ。まだ何の力もない若い娘だが、その内に咲耶を宿している。咲耶と同化すれば、我をも凌ぐ力を持つかも知れぬ。だから、今のうちにその芽を摘んでおこうと思い、武羅奴を使わしたのだが……。どうやら力不足だったようだ」
だが、その言葉とは裏腹に、夜叉は楽しそうな笑みを浮かべた。それはまるで、お気に入りの玩具を与えられた子供のような笑みだった。
「よろしければ、私が参りましょうか? あの女狐には昔、顔を焼かれた怨みもあります故、恩返しをしとうございます」
そう告げると、彼女は長い赤茶色の髪を左手でかき上げた。そこには醜く灼け爛れた半顔があった。かつて、九尾狐の火焔を受けた痕であった。妖気の焔で焼かれたため、二度と治癒することができないのだ。
「行ってくれるか、迦美羅……?」
「仰せとあらば、すぐにでも……」
凄愴な微笑を浮かべた迦美羅を満足そうに見つめると、夜叉はニヤリと笑みを浮かべながら告げた。
「だが、まだ楽しむ時間くらいはあるだろう……? 我が精を受けてからでも遅くはあるまい……」
そう告げると、夜叉は動きを再開した。猛々しく反り返った長大な男で、ゆっくりと下から迦美羅の肢体を突き上げ始めた。
「あッ……! 夜叉さまッ……! だめッ……! それッ……! あッ、あッ、いいッ……! あぁああッ……!」
再び始まった夜叉の責めに、迦美羅は長い赤茶色の髪を振り乱しながら悶え啼いた。重たげに揺れる豊かな乳房を、夜叉が両手で握り締めた。そして、鴇色の媚芯を指先で摘まみ上げながら、激しく揉みしだいた。
「夜叉さまッ……! お願い……私の血をッ……! あッ、あッ、あぁああッ……!」
迦美羅の言葉にニヤリと笑みを浮かべると、夜叉はカアッと口を開いて白い乱杭歯を光らせた。そして、汗に濡れ光る迦美羅の右首筋に、ザクリとその牙を挿し込んだ。
「ひぃいいッ……!」
その瞬間、迦美羅が全身をビクンッビクンッと激しく痙攣させながら、壮絶な極致感を極めた。
「凄いッ……! あッ、あッ……! ひぃいいッ……! 狂うッ……! また、イクッ! イグぅうッ……!」
長い赤茶色の髪を振り乱し、随喜の涙と涎を垂れ流しながら迦美羅が大きく仰け反った。凄絶に極致感を極める迦美羅を激しく突き上げながら、夜叉はゴクゴクと喉を鳴らしてその鮮血を飲み干した。
倒錯と狂瀾の宴は、黄金に縁取られた漆黒の棺の中で、夜空が白むまで続けられた。
将成が連れて来たS.A.P.のメンバーは全部で五人だった。その内の一人は、以前にS.A.P.本部で会ったことがある朝比奈桃花という黒縁メガネをかけた知的美人だった。
将成たちを部屋から追いだした後で、咲希と玉藻は桃花に手伝ってもらいながら凪紗に服を着させた。妖魔の被害者とはいえ、さすがに全裸の凪紗を男たちの眼に晒すわけにはいかなかったからだ。
将成たちに後のことを任せると、咲希と玉藻は先に帰らせてもらうことにした。S.A.P.によるドローンで計測した妖魔のSA係数は、二千を超えていたため正確に測定することはできなかった。その推定予想値は、六千以上であった。
SA係数六千の妖魔を倒したことで、咲希には殲滅報酬が支給されるとのことだった。その手続きも含めて、明日の午後にS.A.P.本部へ行き、色葉たちに詳細な報告をすることになった。
「さすがに疲れたわね。お風呂に入って、すぐに横になりたいわ……」
自宅マンションに到着すると、咲希は大きく伸びをしながら凝った体を解した。壁の掛け時計を見ると、夜の十時半を廻っていた。二人乗りのため高速が使えず、国道129号を二時間以上かけて北上してきたのだ。
「運転お疲れ様でした、咲希……。疲れているところ申し訳ありませんが、少しだけ神気を分けてくれませんか? さすがにちょっと辛くて……」
蒼白な表情で咲希の顔を見つめながら、玉藻が告げた。妖気をほとんど使い切った状態で二時間もピリオンシートに乗っているのは、三大妖魔と呼ばれる玉藻にとってもかなりの苦痛だったのだ。
「大丈夫、玉藻……? 顔色が真っ青じゃない? ごめん、全然気づかなかったわ……」
玉藻の状態に驚いて、咲希が慌てて駆け寄った。
「あまり大丈夫とは言えませんわ……。少しだけでいいですから、神気をくださいませんか……?」
滅多に弱音を吐かない玉藻の言葉に、咲希は頷きながら告げた。
「とにかく、ベッドに横になって……。すぐに神気をあげるから……」
「はい……、お願いします……」
弱々しい笑みを浮かべながら頷くと、玉藻は咲希のシングルベッドに体を横たえた。
「いい……? 神気を渡すわね……」
カアッと赤面しながら告げると、咲希は左手で長い漆黒の髪をかき上げながら玉藻に顔を近づけた。そして、魅惑的な玉藻の唇に自分の紅唇を重ねた。
熱く小さい玉藻の舌が、咲希の唇を割って入ってきた。ネットリと舌を絡まされた瞬間、咲希はビクンッと体を震わせた。
(あッ……だめッ……! 凄いッ……! イッちゃうッ! だめ、イクッ……!)
想像を絶する歓喜の潮流が全身を駆け抜けた瞬間、咲希はビクンッビックンッと総身を震わせながら絶頂を極めた。快感の愉悦を噛みしめてガクガクと慄える体を、玉藻が抱き寄せた。咲希は崩れ落ちるようにベッドに横たわり、玉藻と体を重ねた。
「ありがとうございます、咲希……。少しは楽になりましたわ……。もう少しいただいてもいいですか?」
絶頂の余韻でビクッビクンッと痙攣している咲希は、玉藻の言葉に小さく頷いた。その様子を見てニヤリと笑みを浮かべると、玉藻は咲希のライディングジャケットを脱がせてベッドの下に落とした。そして、体を入れ替えて咲希を組み敷くと、背中に廻した左手でプチンとブラジャーのホックを外した。
「何を……んッ……!」
抗議の言葉を告げようとした咲希の唇を、玉藻は素早く塞いだ。そして濃厚に舌を絡めながら、Tシャツと一緒にブラジャーのカップをずり上げた。プルンと揺れながら姿を現した白い双乳を、玉藻の両手が包み込んだ。
(だめッ……玉藻ッ……! 何をッ……? あッ、いやッ……! だめぇッ……!)
シナシナと乳房を揉みしだかれ、固く突き勃った媚芯を指で扱かれると、咲希はビクンッと体を震わせながら顎を突き上げて仰け反った。
細い唾液の糸を引きながら唇を離すと、玉藻は咲希の右乳房に顔を近づけて媚芯を唇で啄み、歯で甘噛みをし始めた。その間も玉藻の右手は、咲希の左乳房を揉みしだき、コリコリと媚芯を指先で扱き続けていた。
「ひぃいいッ……!」
甘噛みされた媚芯に淫気を放射されると、壮絶な快感が潮流となって咲希の全身を駆け抜けた。腰骨が熱く灼き溶けて、背筋を快美の奔流が舐め上げた。脳天を快絶の落雷が襲った瞬間、咲希は全身を大きく震撼させながら絶頂を極めた。ビクンッビックンッと痙攣する咲希を見下ろすと、玉藻は手慣れた仕草で咲希のTシャツを脱がし、ブラジャーを外した。そして、全身の力が抜けきった咲希から、ジーンズを脱がして白い下着一枚だけを残した。
「あら、こんなにビッショリと濡らして……。咲希の大事なところが透けて見えますわ」
「いや……恥ずかしい……」
玉藻の言葉にカアッと顔を赤らめると、羞恥のあまり咲希は顔を背けた。その様子を満足げに見つめると、玉藻は濡れた下着の上から咲希の秘唇に指を這わせ始めた。そして、固くなった真珠を探り当てると、指先でコリコリと転がした。
「ひぃッ……! いや、そこッ……! だめッ……!」
ビクンッと上体を仰け反らせると、咲希は快感から逃げるかのように激しく首を振った。白いシーツの上を長い漆黒の髪が舞い乱れて、濃厚な女の色香を撒き散らした。
「失礼しました。下着の上からでは、いやですわよね? 直接触ってさしあげますわ……」
そう告げると、玉藻は右手を濡れた下着の中へと挿し込んだ。そして、クチャクチャと卑猥な音を奏でながら蜜液を掬い取ると、真珠の薄皮をクルンと剥き上げ、淫気を纏った指先で円を描くように塗り込み始めた。
「ひぃいいッ……! だめぇ、それぇッ……! イッちゃうッ! あッ、あッ、あぁああッ……!」
グンッと顎を突き上げると、裸身を大きく仰け反らせて咲希はあっという間に絶頂を極めた。真っ赤に染まった目尻から随喜の涙が溢れ、白い頬を伝って流れ落ちた。ガチガチと歯を鳴らしている口元からは、ネットリとした涎が糸を引いて垂れ落ちた。
玉藻はその様子をニヤリと笑みを浮かべて見つめると、最後に残った下着を咲希の両脚から抜き去った。柔らかい叢に隠された咲希の秘唇が、玉藻の目の前に曝け出された。
「まだ、咲希には教えてませんでしたわね。九尾狐の愛撫がどういうものかを……。今宵は心ゆくまで堪能させてあげますわ」
そう告げると、玉藻は美しい貌を咲希の股間に埋めた。そして、ピチャピチャと卑猥な音色を奏でながら、淫気を纏わせた舌先で咲希の秘唇を舐り始めた。
「ひぁああッ……! だめぇえッ……! それ、いやぁあッ……!」
淫気を纏った舌がネットリと秘唇を這う度に、咲希は絶頂を極めた。敏感な箇所に淫魔の淫気を直接当てられたら、一瞬たりとも我慢などできるはずがなかった。休みなく送り込まれる快感のパルスに、咲希は深い縦皺を刻みながら激しく首を振った。
(こんなの……おかしくなるッ! 快感が強すぎて……息ができないッ! 頭が溶けるッ!)
限界を遥かに超える快絶に、随喜の涙が止まらなかった。せわしなく熱い喘ぎ声を上げる唇からは、トロリとした涎が溢れてツッツーッと糸を引きながらシーツに淫らな染みを描いた。
真っ赤に充血し一回り大きくなった真珠を、玉藻が激しく舌で転がした。そして、魅惑的な唇で真珠を啄むと、膨大な淫気を送り込みながらチューッと強く吸い上げた。
「ひぃいいッ……! イグぅうッ……!」
その瞬間、プシャアッという音を立てて、咲希は生まれて初めて秘唇から凄絶に蜜液を迸らせた。虚空に弧を描いた潮流が、玉藻の貌にビシャッと音を立てて降りそそいだ。
「あらあら……。ずいぶんと派手に達しましたわね。でも、咲希の蜜は甘くて美味しいですわ……」
顔にかかった蜜液を赤い舌で舐め取ると、玉藻は満足そうな笑みを浮かべながら咲希を見下ろした。ビックンッビックンッと激しく裸身を痙攣させながら、超絶すぎる快絶に咲希の意識は暗闇へと消失していった。
随喜の涙とネットリとした涎に塗れたその表情は、紛れもなく激烈な官能の奔流に狂わされた濃艶な女の末路そのものであった。
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