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クイン・トールマン

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「手を離してください」

 と、そこでルルが間に割って入ろうとすると、クインは無表情ながらもルルを睨んで憎々しげに言った。

「殿下を好きなように着せ替えて髪型まで変えさせて、さぞ楽しかったろうな、ルル」
「いや、別にそこまで楽しくはないですよ。あなたと一緒にしないでください。私は逃亡のために男装させただけで」
「お前がついていれば殿下の御身が傷つくことはないだろうと信頼していたのに」
「髪も身の内に入るんですか?」

 夏の太陽がじりじりと照り付ける中、クインはルルを睨み続ける。そうこうしている内にサチも騎士たちを引き連れ、こちらに走ってきた。

「クイン! そのまま捕まえててよ!」

 このままでは駄目だと、アイラはクインを見上げて脅した。

「私はお前をこれから魔力で吹っ飛ばそうと思う。だから手を離してくれないか? お前が私の腕を掴んだままだと、私まで一緒に吹き飛んでしまう」

 アイラはクインの紫色の目をじっと見る。
 アイラが行儀の悪いことをした時、ルルは叱ってくるがクインは叱ってこない。アイラが人を殺そうとしても、きっとクインは何も言ってこないし止めない。クインがアイラに小言を言うのは、アイラが怪我をする可能性がある時だけだ。それくらいアイラの外見が傷つくことを嫌がるし、他のことには頓着しない。

「私が怪我をするぞ。いいのか?」

 相手の体を魔力で包みながら言うと、クインはそっとアイラから手を離した。

「マーディルの王子を任せたぞ。逃がすなよ」

 最後にそう伝えた直後、アイラはクインを遠くへ吹き飛ばす。集まっている見物人たちの上を飛んで、クインは人垣の外へ転がった。
 地面に叩きつけられたクインを見てルルは少し気の毒そうに言う。

「何の遠慮もなく吹き飛ばしましたね」
「あいつは頑丈だからあのくらいじゃ怪我すらしないだろ」

 言いながら再び走り出す。サチは吹き飛ばされたクインを見てあっけにとられつつも、すぐにまた他の騎士たちと一緒にアイラを追ってきた。
 トールマン家の者は皆、平均して魔力量が多く、この魔力を活かすために体全体に特殊な魔法陣の刺青を彫っている。この魔法陣によって彼らは肉体を鋼のように強化したり、人の何倍もの速さで走ったり高く跳んだりすることができるのだ。
 これはトールマン家に代々受け継がれている秘伝の魔法で、この魔法を開発したことで王の近衛騎士に選ばれ、地位を得て、今では子爵家になっている。

「クインは私に対抗できる数少ない人間の一人なんだけど、『私の外見を傷つけたくないと思っている』っていう弱点があるせいで絶対私には勝てないんだよなぁ」
「よかったですよ、あの人が変人で」

 走りながら後ろを確認し、アイラたちはそんな会話をした。

「私を追ってきたら、私は自分の髪の毛を全部剃るからな!」

 クインが本気で追ってきたら逃げられないので、アイラは大声でそう伝えておいた。これでクインはまず追ってこないだろう。

「あとはサチとその他の騎士たちか」
「アイラ、前に大きな倉庫が立ち並んでいて行き止まりのようです。こっちは駄目です」

 ルルは前方を確認して言う。通り抜けられる道があるかと思って近づいたがなかったのだ。倉庫と倉庫の間は通れそうだが、先が行き止まりになっている可能性がある。ルルやアイラはこの港のことをよく知らないので、サチたちをまいて逃げるためにどこへ向かえばいいのか分からなかった。

「下手に知らないところに行くより、入ってきたところから出て行く方が良さそうですね。若干引き返すような形になりますが、右に行きましょう」

 サチたちに追いつかれるかもしれないが、彼女たちも見物人がごった返す中、順調には前に進めていないので、ギリギリ追いつかれないことを祈るしかない。吹っ飛ばしたクインのいる方向に向かうことにもなるが、髪を剃るぞと脅して通り抜けるしかなさそうだ。
 アイラとルルが覚悟を決めて右に方向転換しようとした、その時――。

「こっちです! 一緒に来てください!」

 アイラの手を引っ張ったのは、見物人たちをかき分けてやってきた薄茶色の髪の少年だった。

「トーイ!」
「逃げてるんでしょう? 急いでこっちに来てください。倉庫に入って裏から出られます」

 ポルティカに着いて以来姿を見ていなかった元奴隷の少年は、日に焼けて少したくましくなっていた。
 アイラはちょっと嬉しくなりながら、前を走るトーイの後を追い駆けつつ言う。

「そうか、お前は港の倉庫で働いてるんだったな」
「そうです! 何の騒ぎかと思ったらライアさんが中心にいてびっくりしましたよ。ライアさん、王女様だったんですね」
「驚かせたな」
「いえ、そんなに驚きませんでした。むしろ納得したというか、どうして気づかなかったんだろうって思うくらいで……僕なんかが親しく話をさせてもらって申し訳ないっていうか、畏れ多いです」

 走りながらもじもじしているトーイの背中をアイラがトンと叩く。

「何を言ってるんだ。私は今は王女じゃないしお前も奴隷じゃないんだ。二人とも庶民だぞ。まぁ、畏れ多いって思う気持ちは分かるけどな」
 
 アイラはあごをつんと上げて尊大に言った。するとトーイは緊張がほぐれた様子で笑う。

「なんで笑う?」
「いえ、すみません! 王族の方って本当に王族っぽいんだなぁと思って……あ、こっちの倉庫です!」

 トーイの案内で倉庫の中を進み、裏口から再び外に出る。そして倉庫の作業員がよく使う目立たない出入り口から港を出た。
 逃げながら、アイラはトーイに姉のティアのことを話す。

「ティアがあの船に乗っていたんだ。マーディルの王子に騙されて、薬を嗅がされて殺されるところだった」
「え? 姉さんが!?」

 トーイはぱちぱちとまばたきして驚いた。

「しばらくティアのそばについていてやってくれ。好きになった男が殺人犯だったなんてショックだろうし」
「はい、もちろんです」
「ティアはまだ若いし綺麗だし優しい。これからいくらでも出会いはあるって励ましておいてくれ。ティアに似合いの誠実な男がいるはずだからって」
「分かりました」

 サチたちをまくために、港を出てから裏道を走り続ける。そうして少し経つと、家や建物の少ない寂しい印象の場所に出た。

「あ、そうか、こっちは家が少ないんだった。左に行きましょう」

 トーイもまだポルティカに来て日が浅いので、この街の全てを知っているわけではないようだ。慌てて方向を変えようとするが、アイラは「いや」と断った。そして立ち止まるとトーイに向かって言う。
 
「お前はここまででいい。戻ってティアを船から出してやれ」
「え、でも、アイラ様とルル様は……」
「私たちは二人でも逃げられる。この辺り、見覚えがあるしな」
「本当に大丈夫ですか?」
「問題ない! 港から脱出させてくれて助かった! じゃあな!」

 トーイに手を振ってアイラは走り出す。そしてルルにこう言った。

「この近くに身投げ事件の遺族の家があったよな。あの老夫婦の」
「ええ、確かにこの辺りですね」
「サチもしばらく滞在するカトリーヌの屋敷には戻れないし、老夫婦の家にかくまってもらわないか? 私たちをかくまったら彼らはサチに処罰されてしまうかな?」

 心配するアイラに、ルルが返す。

「いえ、サチは〝優しい聖女〟という立場を守りたいでしょうから罰したりはしないでしょう。でも一応、バレた場合、老夫婦には私たちに脅されたんだと言ってもらいましょう」
「そうしよう。というか、そもそもかくまってもらえないかもな」

 面倒事に巻き込まれたくないと思うのは当然で、家に入れてもらえない可能性が高いと思った。
 が、予想は外れて、息を切らせて家の扉を叩いたアイラたちを老夫婦は快く中に入れてくれた。事情を全て話し、アイラのややこしい身分を明かしても、追い出されたりはしなかった。
 逆に身投げ事件の犯人を捕まえたことには泣いて感謝されたのだ。老夫婦は順番に言う。

「ありがとう、ありがとう……。ちょうど今日は娘の命日で、今朝、崖に花を供えに行ってきたところです」
「これで娘も浮かばれます。私たちもこれで、いつ死んでも悔いはない」
「そんなこと言うんじゃない。長生きしろ」

 偉そうに励ましてくるアイラに、老夫婦は泣きながら笑っていた。
 
 その後、王都の騎士たちがこの辺りまでアイラの捜索に来たが、老夫婦がアイラとルルをキッチンに隠して上手く対応してくれた。狭い家なので騎士が中を捜索すればすぐに見つかってしまっただろうが、騎士たちはまさかこんな貧しく小さな家にアイラが隠れているとは思わなかったらしく、玄関から家の中を見ただけで済ませたのだ。

 そして老夫婦の夫が港に確認に行ったところ、王都やポルティカの騎士たちによってファザドもちゃんと捕まっていたらしい。ティアたち捕らわれていた女性三人も無事正気を取り戻していたようだ。ティアは落ち込んでいるかもしれないが、トーイやカトリーヌもいるし、立ち直ることを信じるしかない。


 一方、サチは騎士たちと一緒にアイラを探して歩き回っていた。
 カトリーヌの屋敷に聖女が滞在するという噂が流れていたのか、人の多いポルティカの街で、サチはあちこちから声をかけられた。

「聖女様だ!」
「聖女様、どうかこの子を抱いてやってください!」

 赤ん坊を押し付けられたが、断ることもできないので一度抱っこする。重いし、知らない子供なんて特に可愛くもないけれど、聖女らしくほほ笑んでそれらしいセリフを言わなければならない。

「なんて可愛い。この子に神のご加護がありますように」

 神が本当にいるのかは分からないが、こんなことを言っておけばいいだろうと思う。

「聖女様、握手してくださいませんか?」
「聖女様、病気の母のためにうちに来て祈っていただけませんか?」
「私の病気を治してもらえませんか?」

 人々は次から次へとサチに声をかけてきて、勝手な望みを告げてくる。

(いちいち相手にしてられないし、病気なんて治せるわけないのに)

 そう思っていても、優しく丁寧に対応しなければならないのが聖女の辛いところだ。

「ごめんなさい、皆さん。私は今、逃走中の元王女を捕まえなければならなくて……」

 事情を話すも騒がしくてみんな聞いていないので、サチは隣にいた騎士に目で合図を出した。すると騎士は聖女見たさに集まった人々に大きな声で言う。

「皆さん! 申し訳ありませんが聖女様は今、急いでおいでです! 道を開けてください!」

 騎士たちが人々を下がらせると、やっとサチは前に進むことができた。王都から連れて来た騎士たちは数グループに分かれてアイラを探しているし、ポルティカの騎士も捜索に協力してくれているから、サチたちがここで足止めを食らっていても大きな問題はない。が、やはり自分でもアイラを探したかった。
 新聞記事を見るにアイラはアイリーデやグレイストーンではちょっとした人気者になったみたいだし、早く殺さないとと焦ってしまう。

「なんだ、冷たいな」
「病気くらい治してくれればいいのに」

 自分を囲む群衆の中から、ぽつりと不満の声が聞こえてきた。
 サチは思わずカッと怒鳴り返しそうになったが、手のひらを握って耐える。

(冷たいって何!? アイラを追わないといけないんだからしょうがないでしょ!? それに暇な時だって、ここにいる全員に対応なんてしていられないわよ。勝手に期待して勝手に失望しないでよ!)

 聖女が何でも病気を治せるというのも、そうであればいいなという願望から国民が勝手に噂し始めたにすぎない。

(悪い噂ではないし箔がつくと思ったから、否定しないでいたのが悪かったわね)

 サチはイライラしながらそう思った。可哀想な人を助け、感謝されるのは快感だ。みんなから尊敬されるのも気分が良い。
 だけど幻想を抱かれてとんでもなく崇高で完璧な女性だと思われるのは疲れてしまう。

「行くわよ。もう少し人通りの少ない道を探しましょう」

 サチは騎士たちと一緒に、大通りを離れて路地に入っていった。そして辺りが静かになったところで、「あーあ」とため息をついて愚痴を言う。

「ポルティカでゆっくりするつもりだったのに、アイラを捕まえるまでのんびりできそうにないわね。カトリーヌは私の味方だって言ってくれてるけど『殿下のことも好き』とも言ってるし、一応屋敷に匿ってないか調べないと」

 同じ女性であり人の上に立つ仕事をしているカトリーヌは、サチにとって頼りになる存在だった。気軽に悩みを相談できるし、話していて楽しい。向こうもサチに「何でも相談して」と言って好意的に接してくれている。
 だがカトリーヌはアイラへの好意も隠していないし、アイラの処刑には反対している。サチと友好的な関係でいながらアイラの味方もする、というのはカトリーヌなら有り得る話だ。

 そんなことを考えると、サチは今度はすぐ後ろを歩いていたクインを睨んで言う。

「クイン、あなたさっきどうしてアイラたちを追わなかったの? あなたが本気で走ればアイラだって捕まえられるはずでしょ? それをじっと動かないでアイラを目で追うだけで」

 するとクインはいつも通りの無表情で返してきた。

「けれど追えば髪を剃ると言うので」
「それがどうしたって言うのよ! アイラが髪を剃ったからって何だって言うの!?」
「殿下は私の一番お気に入りの特別な人形なので髪を剃られると困るのです」
「何それ?」

 サチは眉間にしわを寄せながらクインを睨み続ける。

「だいたい、アイラはもう『殿下』じゃないでしょ。そんな呼び方しないで。彼女にはもう何の地位も権力もないんだから」
「そうですが……、殿下は『殿下』という感じなので。『陛下』も似合いますが」
「偉そうってだけでしょ。今はアーサーが陛下なんだから、アイラのことを陛下なんて呼んでたら温厚なアーサーも怒るわよ」
「そうでしょうか?」

 クインは不思議そうに言った。クインの印象としては、アーサーはアイラに王の地位を奪われても怒らないだろう。それどころか肩の荷が下りたとホッとするかもしれない。
 アーサーにも確かに王族の血が流れてはいるが、庶子として育ったせいか控えめなところがあり、王の器ではないのだ。それを自分でも理解している節がある。

「で? アイラが特別な人形って何? 確かに見た目は人形みたいに……まぁ、綺麗だけど」

 サチはちょっと悔しそうに言った。
 質問にクインは恥ずかしがる様子もなく淡々と返す。

「私、人形が好きなのです。たくさん集めています。けれど私の家にある人形はほとんど動きません。動いても、それは単調な動きをするゼンマイ仕掛けの人形なのです」

 人形が好きと言うクインの告白に、一旦前を見て歩いていたサチは気持ち悪そうな顔をして再び振り返る。

「けれど殿下は生きていて、動きます。人形と見まがう容姿で動くのです。殿下がお菓子を食べている姿を見たりすると、私はこの上なく幸福な気持ちになるんですよ」

 クインはそう言ってポケットから飴玉の入った小さな缶を取り出した。アイラにあげられるよう、常備しているのだ。一粒が少し大きなこの飴玉をアイラが頬張り、頬がぷくっと膨らんでいる様子を見るのが好きだった。
 残念そうに飴玉の缶をカラコロ鳴らしているクインを見ながら、サチは険しい顔をして言う。

「ちょっと待って。じゃあクインはアイラを捕まえる気がそもそもないんじゃないの? あなたはアイラに生きていてほしいんでしょ? 処刑したい私とは対立するじゃない」
「捕まえる気はありますよ。外を歩くと転んでけがをするかもしれませんし、日焼けもしてほしくないので城に閉じ込めておきたいのです。でも確かに処刑には反対ですね」

 そこで少し考えると、クインは無表情のまま良い案を思いついたとばかりに言う。

「間を取って、殿下をどこかに一生幽閉するというのはどうですか? 世話は私がしますし、絶対に逃がさないようにしますから」
「あんた、おかしいわよ」

 サチの言葉も思わず雑になる。しかしこのままアイラを自由にさせておくくらいなら、幽閉した方がサチとしてもマシだ。それにクインは国で一番強い騎士だし、いざという時は頼りになるから、たとえ変人といえど自分のそばに置いておきたかった。
 と、裏通りにちょうどあった人形屋のショーウィンドウを見て、クインがサチに言う。

「見てください、可愛らしいビスクドールですよ。ポルティカは異国の文化や技術も一番に入って来ますから、王都の店より良いものが置いてあるかもしれません」

 しかしサチは呆れたようにこう返した
 
「人形? いらないわ、そんなおもちゃ。確かに買い物をしたら少しはストレス発散できるけどね。みんなからあれをしてくれこれをしてくれって希望ばかり言われて、聖女は重圧が多い立場だし」

 人形屋のショーウィンドウにちらっと目をやっただけで、サチはそこを通り過ぎた。
 すると騎士たちと一緒に王都からサチについて来ていたとある男が、サチに話しかけた。

「では、サチ様は何が欲しいのですか?」

 彼は王城で働いていた元奴隷で、黒い髪に浅黒い肌をした、少し弱々しい細身の男だ。体には細かい傷跡がたくさんあり、名前をプシという。彼は城の使用人から暴力を受けていたところをアイラに助けられたこともある。
 なのでアイラに悪い感情は持っていなかったが、それ以上に自分を含めた奴隷たちを解放してくれたサチに感謝していて、今は使用人としてサチの元で働いている。

 奴隷と言ってもティアやトーイの姉弟のように、比較的良い扱いを受けてきた者は多い。しかしプシは奴隷時代に周囲から暴力を振るわれ、ひどい扱いを受けてきたので、自分を助けてくれた聖女に心酔している。何かあった時に身を挺してサチを守れればと思っているのだ。
 サチは前を向いたままプシの質問に答える。

「私は人形よりも服や靴、鞄が欲しいわ。ブランド物のね。アクセサリーや宝石もいいわね」

 騎士たちやプシは、サチが高潔な聖女でなく普通の欲望も持ち合わせている女性だということを知っているので、ある程度本音を話せた。

「でも、聖女はそんなものに大金を使わないし、贅沢品を欲しいと思ってもいけないの。聖女はつつましやかな生活を好むし、国民も聖女にそれを望んでるんだから」

 サチは不満そうに言う。

「さぁ、もう行くわよ。その人形も高そうだし、買ったら『聖女様が高級な人形を買っていた』って噂されるんだから」
「そうですか。ではちょっと待ってください。私は自分の分を買ってきます。可愛い子がいたので」

 クインが人形屋を指さすと、サチはあからさまに気味悪がった。

「体の大きい大人の男が人形好きって、本当に気持ち悪いんだけど……」

 しかしクインはそんなことを言われても平気な様子で淡々と返す。

「よく言われます。しかしこれでも私、子供の頃は女の子と間違えられるほど可愛らしい子供だったのです。女の子が欲しかったらしい親も、幼い私にドレスを着せたり人形を買ってきたりしてね。けれどそれから人形が好きになりました。元々可愛らしいものや美しいものが好きなのです」
「うーん……。説明聞いてもやっぱり気持ち悪い」
「じゃあちょっと買ってきますので」
「あ、ちょっと、もう! 聖女を待たせるなんて!」

 護衛対象を放ってそそくさと人形屋に向かうクインに、サチは怒りながら呆れたのだった。
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