地球のお引越し

ハル

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4. なぜ消えたのか

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黒羽賢太くろはけんたは、地制連の外部委員で、地球の自転を制御しているエンジニアの一人である。

先月、南極にある本部での作業を終え長期休暇で、日本地区に帰国している。

帰国の挨拶に、統括本部へやって来た黒羽は報告を終えると、同期でもある大和の部署へ顔を出した。

バタバタと慌ただしく職員が動いている。
大和を見つけた黒羽は、

「浩太、久しぶり…何かあったのか?」

「あ、あぁ、賢太かぁ、ちょっと今手が離せないんだ…わるい、夜連絡するから開けといて!」

大和浩太は、そう言って部屋を出て行った。

賢太も帰国の挨拶に来ただけだったので、そっと出て地下鉄に乗って帰った。

インターネットで情報収集していると、携帯に浩太から電話があった。

「もしもし、賢太?」

「…どうしたんだ?」

「昼間、夜に電話するって言ってたろ!」

「…」

「あのさ、賢太達のやってる実験で、今こんなに暑くなってるんだろう…もう一年遅らすとかできなかったのか?
俺の担当してるエリアは生存者がいなくなっちまった…」

「…そんな事俺みたいな下っ端が、口出しする場所もないよ。…でもなんで生存者が居ないんだ?」

「計画の遅れで、地下都市への転居どころか、地下都市がまだ出来上がって無いんだよ。」

「そ、そんな…でも、急に暑くなるわけじゃなくて、徐々に暑くなるんだから、他に逃げる事も可能だろう?」

二人は沈黙した。

「…そ、そうだな…明日本部に来てくれ、続きを話そう!」

電話が切れた。

賢太は、自分なりに何が起こっているのか考えて見ることにした。

~~~

翌日、賢太は統括本部へやってくると、浩太の所で話をしている。

ドローンが撮った録画を観ながら、数百人の死体は確認できるが、残りの数百万の人が何処に消えてしまったのか?

賢太の仮説では、亡くなっているのは地下都市建設の作業員で、その他の住人は気温上昇の前に脱出してるはずと言うのだ。

「そうだよなぁ…」

「そのエリアの住民のIDをいくつか検索してみれば何処に移ったか解るんじゃ無いのか?」

IDとは、国民を番号で管理するもので、今では世界規準の方式により、携帯と同じように頭に地区番号が振られていて、成人は耳にピアスの様に付ける事が義務付けられている。
そしてこのピアスから発信される微量の電波で、位置を特定する事が可能なのだ。

「でも、そもそも俺の所に報告が上がって来る前に、そのくらい調べて無いかぁ?」

「…そっか」と肩を落とす賢太。

話は、振り出しに戻った。



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