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第十章 冒険編 魔王と勇者
復讐者
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「そんな……エジタスさんが死んだ……?」
「何がどうなっでいるだぁ……」
「こんな……こんな結末……辛すぎます…………」
真緒とエジタス、二人の一連のやり取りを見ていた三人は、エジタスの死を深く悲しんでいた。
「あ……ああ……あああ……ああああ……あああああ……」
心から愛する人が、目の前で死んでしまった事に真緒は語彙力が著しく低下していた。その場に両膝をつき、泣き崩れてしまった。
「マオ…………」
「マオぢゃん…………」
「マオさん…………」
そんな真緒の様子に三人は、声を掛ける事が出来なかった。エジタスの死を、遠くで見ていた自分達でこんなにも辛いのなら、目の前で見ていた真緒はどれ程辛いのか想像もつかなかった。
「あ……ああ……あああ……師匠……師匠……」
この時、真緒の脳裏にはエジタスとの今までの思い出がフラッシュバックされていた。
***
私が初めて師匠と出会ったのは、私がこの異世界に来てすぐの事だった。
“ん、どうしましたか?”
師匠が落とした食事用ナイフを届け様としたけど、当時の私は上手く声を出す事が出来なかった。また、泥棒扱いされてしまうと思っていた。
“大丈夫ですよ。ゆっくり話してください”
でも、師匠はそんな私に優しく声を掛けてくれた。
“お~!ありがとうございます!まさか拾って届けて下さるとは、感謝感激です”
それだけでなく、お礼まで言ってくれた。あの時の感謝は今でもわすれる事が出来ない。
“拾ってくれた恩人が、そんな辛そうな顔をしているのにほっとくわけにはいきませ~ん”
師匠は、表情が暗くなっている私を見かねて気遣い、親身になって聞いてくれた。
“なに言ってるんですか。笑うのに許可なんか必要ありません!笑いたい時に笑えばいいのです…………マオさん、あなたの人生は確かに不幸の連続かもしれません。でもそんな時だからこそ、笑ってください。落ち込んで見るよりも笑って見る方がその景色はきっと、良いものになっているはずですよ”
この時から、私は師匠と一緒に旅をする事になった。その時の暖かく、優しい言葉はずっと私の心を支えていた。そんな師匠が堪らなく大好きだった。しかしそれも、師匠が死んでしまった事で絶望に変わってしまった。
***
時を同じくして、魔王城玉座の間。ここにもエジタスが死んだ事で深く悲しんでいる者達がいた。
「まさか……自爆してしまうとは……」
「エジタスちゃん……勝てないと悟って、道連れにでもしようとしたのかしら…………」
「センセイ……モットイロイロ、オシエテホシカッタ」
「あのバカ……勝てないと思ったらここに戻って来いよ……」
クロウト、アルシア、ゴルガ、シーラ、四人はエジタスの死に思わず俯いてしまっていた。
「あ……ああ……あああ……ああああ……あああああ……」
サタニアもまた心から愛する大切な人が死んでしまった事で、真緒と同じ様に語彙力が著しく低下しており、玉座から前のめりに倒れ、両膝をついて泣き崩れてしまった。
「サタニア様…………」
「魔王ちゃん…………」
「マオウサマ…………」
「魔王様…………」
そんなサタニアの様子に、四人は声を掛ける事が出来なかった。今、慰めてしまえばエジタスの死がより明確に伝わり、悲しさが一層増してしまう。何も声を掛けない方が良い時もあるのだ。
「エジタス……エジタス……あ……ああ……あああ……」
この時、サタニアの脳裏にもエジタスとの今までの思い出がフラッシュバックされていた。
***
“ヘーッドスライディーング!!!”
エジタスと最初に出会ったのは、僕が二人の人間に襲われていた時だった。
“ついに手に入れましたよ。幻の茸、たらふく茸!!!!”
初めて会った時はとても驚いた。突然頭から突っ込んで来たかと思うと、僕を助けた訳じゃ無くて僕の足元に生えていた茸が目的だったんだからね。
“これがいわゆる男の娘ということでしょうか。いや~人生は驚きの連続ですね”
僕の事も女の子だと思っていた。でも時々、本当に女の子だったら良かったのにと思う事がある。
“そんなの困っている人がいたら助けるのは当たり前ですよ”
あの時の言葉は本当に嬉しかった。魔族である僕の事を、当たり前の様に助けてくれた。
“……いいですか、この世には確かに生きてはいけない人がいるかもしれません。ですが、だからといって殺すのは間違っています。それはエゴですエゴの押し付けなのです。だからサタニアさん、生きていいんですよ。あなたの人生はあなただけのもの。分かりましたか”
この言葉のお陰で、僕は生まれ変われた。他人に左右される人生は終わりを告げ、僕自身が人生を決める事が出来た。エジタスと出会わなかったら、僕は魔王という重圧に押し潰されていただろう。そんな重圧から救ってくれたエジタスが、僕は大好きだった。だけどそれは、エジタスが死んでしまった事で叶わぬ恋となってしまった。
***
「師匠……師匠……」
真緒は泣き続ける。エジタスとの思い出が止めどなく溢れ出て、涙が止まらなかった。
「どうして……どうして……」
どうして、どうしてこんな事が起こってしまったのか。真緒はその元となる原因を呼び起こす。
“……私はマオさん達の仲間である以前に、魔王であるサタニアさんの四天王なのです……裏切る事は出来ませんよ……”
「!!!」
その時、エジタスの言葉である一つの“感情”が心の奥底から湧き上がった。
「そうか……魔王のせいだ……」
「「「マオ?」」」
真緒のボソリと呟いた一言に、三人は首を傾げた。
「魔王さえ……魔王さえいなければ…………師匠は……死なずに済んだ!!!」
真緒の心の奥底から湧き上がった感情。それは“怒り”、魔王であるサタニアがいなければエジタスが死ぬ事は無かったと気がついた。
***
「エジタス……エジタス……」
一方、サタニアも泣き続けていた。エジタスとの思い出が止めどなく溢れ出て、涙が止まらなかった。
「どうして……どうして……」
そしてまたサタニアも、どうして、どうしてこんな事が起こってしまったのかと、その元となる原因を呼び起こす。
“私がカルド王国まで偵察に向かいましょう”
「!!!」
それは、エジタスが真緒と出会う切っ掛けとなった言葉だった。その言葉を思い出したサタニアにもある一つの“感情”が心の奥底から湧き上がった。
「勇者……マオ……お前のせいだ……」
「「「「魔王様?」」」」
サタニアのボソリと呟いた一言に、四人は首を傾げた。
「勇者さえ……勇者さえ現れなければ……エジタスが……死ぬ事は無かった!!!」
サタニアの心の奥底から沸き上がった感情。同じく“怒り”、勇者である真緒が現れなければエジタスが死ぬ事は無かったと気がついた。
***
勇者と魔王。先程まで泣き崩れていた両者がゆっくりと立ち上がる。
「「許さない……許さない……」」
お互い目が血走り、殺意が全身から漏れ出ていた。
「魔王を…………」
「勇者を…………」
「「絶対に殺してやる!!!」」
この瞬間、一人の道化師がこの世からいなくなり、勇者と魔王。二人の“復讐者”がこの世に誕生した。
「何がどうなっでいるだぁ……」
「こんな……こんな結末……辛すぎます…………」
真緒とエジタス、二人の一連のやり取りを見ていた三人は、エジタスの死を深く悲しんでいた。
「あ……ああ……あああ……ああああ……あああああ……」
心から愛する人が、目の前で死んでしまった事に真緒は語彙力が著しく低下していた。その場に両膝をつき、泣き崩れてしまった。
「マオ…………」
「マオぢゃん…………」
「マオさん…………」
そんな真緒の様子に三人は、声を掛ける事が出来なかった。エジタスの死を、遠くで見ていた自分達でこんなにも辛いのなら、目の前で見ていた真緒はどれ程辛いのか想像もつかなかった。
「あ……ああ……あああ……師匠……師匠……」
この時、真緒の脳裏にはエジタスとの今までの思い出がフラッシュバックされていた。
***
私が初めて師匠と出会ったのは、私がこの異世界に来てすぐの事だった。
“ん、どうしましたか?”
師匠が落とした食事用ナイフを届け様としたけど、当時の私は上手く声を出す事が出来なかった。また、泥棒扱いされてしまうと思っていた。
“大丈夫ですよ。ゆっくり話してください”
でも、師匠はそんな私に優しく声を掛けてくれた。
“お~!ありがとうございます!まさか拾って届けて下さるとは、感謝感激です”
それだけでなく、お礼まで言ってくれた。あの時の感謝は今でもわすれる事が出来ない。
“拾ってくれた恩人が、そんな辛そうな顔をしているのにほっとくわけにはいきませ~ん”
師匠は、表情が暗くなっている私を見かねて気遣い、親身になって聞いてくれた。
“なに言ってるんですか。笑うのに許可なんか必要ありません!笑いたい時に笑えばいいのです…………マオさん、あなたの人生は確かに不幸の連続かもしれません。でもそんな時だからこそ、笑ってください。落ち込んで見るよりも笑って見る方がその景色はきっと、良いものになっているはずですよ”
この時から、私は師匠と一緒に旅をする事になった。その時の暖かく、優しい言葉はずっと私の心を支えていた。そんな師匠が堪らなく大好きだった。しかしそれも、師匠が死んでしまった事で絶望に変わってしまった。
***
時を同じくして、魔王城玉座の間。ここにもエジタスが死んだ事で深く悲しんでいる者達がいた。
「まさか……自爆してしまうとは……」
「エジタスちゃん……勝てないと悟って、道連れにでもしようとしたのかしら…………」
「センセイ……モットイロイロ、オシエテホシカッタ」
「あのバカ……勝てないと思ったらここに戻って来いよ……」
クロウト、アルシア、ゴルガ、シーラ、四人はエジタスの死に思わず俯いてしまっていた。
「あ……ああ……あああ……ああああ……あああああ……」
サタニアもまた心から愛する大切な人が死んでしまった事で、真緒と同じ様に語彙力が著しく低下しており、玉座から前のめりに倒れ、両膝をついて泣き崩れてしまった。
「サタニア様…………」
「魔王ちゃん…………」
「マオウサマ…………」
「魔王様…………」
そんなサタニアの様子に、四人は声を掛ける事が出来なかった。今、慰めてしまえばエジタスの死がより明確に伝わり、悲しさが一層増してしまう。何も声を掛けない方が良い時もあるのだ。
「エジタス……エジタス……あ……ああ……あああ……」
この時、サタニアの脳裏にもエジタスとの今までの思い出がフラッシュバックされていた。
***
“ヘーッドスライディーング!!!”
エジタスと最初に出会ったのは、僕が二人の人間に襲われていた時だった。
“ついに手に入れましたよ。幻の茸、たらふく茸!!!!”
初めて会った時はとても驚いた。突然頭から突っ込んで来たかと思うと、僕を助けた訳じゃ無くて僕の足元に生えていた茸が目的だったんだからね。
“これがいわゆる男の娘ということでしょうか。いや~人生は驚きの連続ですね”
僕の事も女の子だと思っていた。でも時々、本当に女の子だったら良かったのにと思う事がある。
“そんなの困っている人がいたら助けるのは当たり前ですよ”
あの時の言葉は本当に嬉しかった。魔族である僕の事を、当たり前の様に助けてくれた。
“……いいですか、この世には確かに生きてはいけない人がいるかもしれません。ですが、だからといって殺すのは間違っています。それはエゴですエゴの押し付けなのです。だからサタニアさん、生きていいんですよ。あなたの人生はあなただけのもの。分かりましたか”
この言葉のお陰で、僕は生まれ変われた。他人に左右される人生は終わりを告げ、僕自身が人生を決める事が出来た。エジタスと出会わなかったら、僕は魔王という重圧に押し潰されていただろう。そんな重圧から救ってくれたエジタスが、僕は大好きだった。だけどそれは、エジタスが死んでしまった事で叶わぬ恋となってしまった。
***
「師匠……師匠……」
真緒は泣き続ける。エジタスとの思い出が止めどなく溢れ出て、涙が止まらなかった。
「どうして……どうして……」
どうして、どうしてこんな事が起こってしまったのか。真緒はその元となる原因を呼び起こす。
“……私はマオさん達の仲間である以前に、魔王であるサタニアさんの四天王なのです……裏切る事は出来ませんよ……”
「!!!」
その時、エジタスの言葉である一つの“感情”が心の奥底から湧き上がった。
「そうか……魔王のせいだ……」
「「「マオ?」」」
真緒のボソリと呟いた一言に、三人は首を傾げた。
「魔王さえ……魔王さえいなければ…………師匠は……死なずに済んだ!!!」
真緒の心の奥底から湧き上がった感情。それは“怒り”、魔王であるサタニアがいなければエジタスが死ぬ事は無かったと気がついた。
***
「エジタス……エジタス……」
一方、サタニアも泣き続けていた。エジタスとの思い出が止めどなく溢れ出て、涙が止まらなかった。
「どうして……どうして……」
そしてまたサタニアも、どうして、どうしてこんな事が起こってしまったのかと、その元となる原因を呼び起こす。
“私がカルド王国まで偵察に向かいましょう”
「!!!」
それは、エジタスが真緒と出会う切っ掛けとなった言葉だった。その言葉を思い出したサタニアにもある一つの“感情”が心の奥底から湧き上がった。
「勇者……マオ……お前のせいだ……」
「「「「魔王様?」」」」
サタニアのボソリと呟いた一言に、四人は首を傾げた。
「勇者さえ……勇者さえ現れなければ……エジタスが……死ぬ事は無かった!!!」
サタニアの心の奥底から沸き上がった感情。同じく“怒り”、勇者である真緒が現れなければエジタスが死ぬ事は無かったと気がついた。
***
勇者と魔王。先程まで泣き崩れていた両者がゆっくりと立ち上がる。
「「許さない……許さない……」」
お互い目が血走り、殺意が全身から漏れ出ていた。
「魔王を…………」
「勇者を…………」
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