81 / 88
崩壊前夜
嘘がつけない男
しおりを挟む
ちーちゃんから話を聞いた後、なっちゃんが扉を蹴破る前に解散することになる。
「本当に五分も経たずに出てきやがった」
「五分? なんのことですか?」
「いや、なんでもねえよ」
「もしかして僕が早漏だって馬鹿にしてます? 僕は遅漏ですよ」
「してねーよ! つうか誰もテメェのシモ事情聞きたかねえんだよ!」
相変わらずこの兄弟は仲良しさんだな。
俺もちーちゃんの早さとか知りたくなかったけど。
「ま、いいでしょう。あとはこの子の面倒は千夏に任せておきましょうか」
「この子って、もしかして俺のこと言ってる?」
「貴方以外に誰がいるんですか、仙道。……千夏、目を離さないようによろしくお願いしますね。仙道は見た目以上にじゃじゃ馬ですよ」
言いながらなっちゃんの肩を叩こうとするちーちゃん。
じゃじゃ馬って、と呆れる俺の横でなっちゃんは「知ってる」とその手を振り払ってた。
ちーちゃんは「おやおや」と肩を竦め、それからそのまま歩き出した。
「それじゃあ、仙道。また」
背中向けたままひらりと手を振るちーちゃんに、「ん」とだけ返しておく。
ちーちゃんと別れたあとの部屋の前、なっちゃんの突き刺さるような視線を感じた。
「あ、俺急に便所行きたくなってきた」
「おい」
「いてて、なに~ちょっと乱暴やめてよー」
「……あいつと何話してた?」
あ、やっぱ一応気になるんだ。
「そんなに気になるんならちーちゃんに聞けばよかったのに」
「あいつが素直に答えると思うか?」
「思わない」
「……変なこと聞いたんじゃないだろうな」
ほんの少しだけ、ただでさえ怖いなっちゃんの顔が更に怖くなった。
それを見て、あ、と思う。
「変なことってなあに?」
「ああ? なんでお前が質問すんだよ。聞いてんのはこっちだっての」
「言い出したのはそっちじゃん」
「それに、本当になっちゃんに言えるようなことはなんも話してないしね」まあこれは嘘だけど。
適当に笑っておけば、益々なっちゃんの顔がおっかないことになってる。
「あのな、こっちは委員長の命令もあるんだからな」
「あ、なに? マコちゃんを盾にしてる? それ」
「そうじゃねえけど、お前、……」
「あのさ、なっちゃん。君って嘘吐くの下手すぎでしょ」
「ああ゛?」となっちゃんの額に青筋浮かんでるの見て、言い過ぎたかなと思ったけど逆にここまで分かりやすいのは助かる。本当にね。
「なっちゃんの方こそ、俺になにか隠し事してんじゃないの?」
そう、目の前なっちゃんを見上げる。
うーん、ちーちゃんと血の繋がってる双子っていうのに本当に似ていない。
トントンとその分厚い胸板を叩けば、なっちゃんの顔が分かりやすく変色するのを見た。
――嘘が下手なのも、ちーちゃんと似てないな。
「っ、仙道……お前、やっぱなんか聞いたのか?」
「あはっ、なっちゃんってば変な顔~。
……なんかって、ヒズミのこと?」
ここまで来たらもう引っ掛ける必要もないだろう。
なっちゃんの顔を覗き込めば、その表情が更に苦々しく歪んだ。
本当正直者だ、マコちゃんの教育の賜物かもしれない。
「……ッ、の野郎……」
「あー待って、別にちーちゃんから聞いたってわけじゃないから。いまのはただのひっかけ」
「……っ、は?」
「でも、なっちゃんの反応見て確信した。……やっぱヒズミのやつ、いなくなったってこと?」
ちーちゃんの名誉のためにも一応フォローしてやることにした。
というか、さっきからなっちゃんが分かり易すぎるのも問題だと思う。
ぷい、とそっぽ向くなっちゃん。今更だんまりなんて無意味だってのに。
「ねーえ、なに。どこ見てんの?」
「……お前には、余計な負担はかけないようにって……言われてんだよ」
「マコちゃんに?」
どうやらとうとう観念したようだ。
目元を手で覆ったまま、こくり、と頷くなっちゃん。
この顔はもう、マコちゃんに怒られるのを覚悟してる顔だ。
そこまで考えて、はっとした。
「……ってことはさ、そのことマコちゃんも知ってるの?」
ふと疑問に思い、そのままなっちゃんに尋ねればなっちゃんは「いや」と首を横に振る。
「そもそも、日桷のやつの話だってまだごく一部にしか伝わっていないはずだ。なんでまた……」
「それはまあ、俺にもネットワークってものがあるからね」
そこらへんの情報屋よりも情報の早いネットワークが。
そう答える俺に、なっちゃんは「はあ」と露骨にクソでかいため息をついた。
「ちょっと、人の顔見てため息つかないでよ」
「……委員長には言うなよ、日桷のこと」
「まあ、そりゃね。……言えるわけないでしょ」
普通に考えたら。
ヒズミのことは俺だって怖くないわけではない。
けど今現状恐ろしいのは、これ以上マコちゃんの立場が悪化することだった。
頷き返す俺に安心したようだ。タバコを取り出し、そのまま咥えるなっちゃんに「あ」と声を上げたら本人も気付いたらしい、「うるせえ!」と言いながら俺の口を塞いできた。
無茶苦茶だ。
「もが……、風紀のくせに煙草吸ってる~」
「ちが、これは……作りもんだ」
「だとしたら余計おかしいでしょ」
「……っ、とにかく!」
都合が悪くなったちーちゃんはそのまま煙草をもみくちゃにしてポケットに突っ込んでた。
あーあ、もったいね。と思いながら見てたら、いきなり両肩を掴まれる。
「そういうことだから、お前は部屋で大人しくしてろ」
やっぱそうなるのね。
振り出しに戻る、という言葉が頭に浮かんだ。
けどまあ、ここは大人しくした方がいいだろう。
……一応、純にも連絡したしな。
俺は「はーい」とだけ応え、なっちゃんに押し込められるがまま部屋へと戻された。
「本当に五分も経たずに出てきやがった」
「五分? なんのことですか?」
「いや、なんでもねえよ」
「もしかして僕が早漏だって馬鹿にしてます? 僕は遅漏ですよ」
「してねーよ! つうか誰もテメェのシモ事情聞きたかねえんだよ!」
相変わらずこの兄弟は仲良しさんだな。
俺もちーちゃんの早さとか知りたくなかったけど。
「ま、いいでしょう。あとはこの子の面倒は千夏に任せておきましょうか」
「この子って、もしかして俺のこと言ってる?」
「貴方以外に誰がいるんですか、仙道。……千夏、目を離さないようによろしくお願いしますね。仙道は見た目以上にじゃじゃ馬ですよ」
言いながらなっちゃんの肩を叩こうとするちーちゃん。
じゃじゃ馬って、と呆れる俺の横でなっちゃんは「知ってる」とその手を振り払ってた。
ちーちゃんは「おやおや」と肩を竦め、それからそのまま歩き出した。
「それじゃあ、仙道。また」
背中向けたままひらりと手を振るちーちゃんに、「ん」とだけ返しておく。
ちーちゃんと別れたあとの部屋の前、なっちゃんの突き刺さるような視線を感じた。
「あ、俺急に便所行きたくなってきた」
「おい」
「いてて、なに~ちょっと乱暴やめてよー」
「……あいつと何話してた?」
あ、やっぱ一応気になるんだ。
「そんなに気になるんならちーちゃんに聞けばよかったのに」
「あいつが素直に答えると思うか?」
「思わない」
「……変なこと聞いたんじゃないだろうな」
ほんの少しだけ、ただでさえ怖いなっちゃんの顔が更に怖くなった。
それを見て、あ、と思う。
「変なことってなあに?」
「ああ? なんでお前が質問すんだよ。聞いてんのはこっちだっての」
「言い出したのはそっちじゃん」
「それに、本当になっちゃんに言えるようなことはなんも話してないしね」まあこれは嘘だけど。
適当に笑っておけば、益々なっちゃんの顔がおっかないことになってる。
「あのな、こっちは委員長の命令もあるんだからな」
「あ、なに? マコちゃんを盾にしてる? それ」
「そうじゃねえけど、お前、……」
「あのさ、なっちゃん。君って嘘吐くの下手すぎでしょ」
「ああ゛?」となっちゃんの額に青筋浮かんでるの見て、言い過ぎたかなと思ったけど逆にここまで分かりやすいのは助かる。本当にね。
「なっちゃんの方こそ、俺になにか隠し事してんじゃないの?」
そう、目の前なっちゃんを見上げる。
うーん、ちーちゃんと血の繋がってる双子っていうのに本当に似ていない。
トントンとその分厚い胸板を叩けば、なっちゃんの顔が分かりやすく変色するのを見た。
――嘘が下手なのも、ちーちゃんと似てないな。
「っ、仙道……お前、やっぱなんか聞いたのか?」
「あはっ、なっちゃんってば変な顔~。
……なんかって、ヒズミのこと?」
ここまで来たらもう引っ掛ける必要もないだろう。
なっちゃんの顔を覗き込めば、その表情が更に苦々しく歪んだ。
本当正直者だ、マコちゃんの教育の賜物かもしれない。
「……ッ、の野郎……」
「あー待って、別にちーちゃんから聞いたってわけじゃないから。いまのはただのひっかけ」
「……っ、は?」
「でも、なっちゃんの反応見て確信した。……やっぱヒズミのやつ、いなくなったってこと?」
ちーちゃんの名誉のためにも一応フォローしてやることにした。
というか、さっきからなっちゃんが分かり易すぎるのも問題だと思う。
ぷい、とそっぽ向くなっちゃん。今更だんまりなんて無意味だってのに。
「ねーえ、なに。どこ見てんの?」
「……お前には、余計な負担はかけないようにって……言われてんだよ」
「マコちゃんに?」
どうやらとうとう観念したようだ。
目元を手で覆ったまま、こくり、と頷くなっちゃん。
この顔はもう、マコちゃんに怒られるのを覚悟してる顔だ。
そこまで考えて、はっとした。
「……ってことはさ、そのことマコちゃんも知ってるの?」
ふと疑問に思い、そのままなっちゃんに尋ねればなっちゃんは「いや」と首を横に振る。
「そもそも、日桷のやつの話だってまだごく一部にしか伝わっていないはずだ。なんでまた……」
「それはまあ、俺にもネットワークってものがあるからね」
そこらへんの情報屋よりも情報の早いネットワークが。
そう答える俺に、なっちゃんは「はあ」と露骨にクソでかいため息をついた。
「ちょっと、人の顔見てため息つかないでよ」
「……委員長には言うなよ、日桷のこと」
「まあ、そりゃね。……言えるわけないでしょ」
普通に考えたら。
ヒズミのことは俺だって怖くないわけではない。
けど今現状恐ろしいのは、これ以上マコちゃんの立場が悪化することだった。
頷き返す俺に安心したようだ。タバコを取り出し、そのまま咥えるなっちゃんに「あ」と声を上げたら本人も気付いたらしい、「うるせえ!」と言いながら俺の口を塞いできた。
無茶苦茶だ。
「もが……、風紀のくせに煙草吸ってる~」
「ちが、これは……作りもんだ」
「だとしたら余計おかしいでしょ」
「……っ、とにかく!」
都合が悪くなったちーちゃんはそのまま煙草をもみくちゃにしてポケットに突っ込んでた。
あーあ、もったいね。と思いながら見てたら、いきなり両肩を掴まれる。
「そういうことだから、お前は部屋で大人しくしてろ」
やっぱそうなるのね。
振り出しに戻る、という言葉が頭に浮かんだ。
けどまあ、ここは大人しくした方がいいだろう。
……一応、純にも連絡したしな。
俺は「はーい」とだけ応え、なっちゃんに押し込められるがまま部屋へと戻された。
82
あなたにおすすめの小説
世話焼き風紀委員長は自分に無頓着
二藤ぽっきぃ
BL
非王道学園BL/美形受け/攻めは1人
都心から離れた山中にある御曹司や権力者の子息が通う全寮制の中高一貫校『都塚学園』
高等部から入学した仲神蛍(なかがみ けい)は高校最後の年に風紀委員長を務める。
生徒会長の京本誠一郎(きょうもと せいいちろう)とは、業務連絡の合間に嫌味を言う仲。
5月の連休明けに怪しい転入生が現れた。
問題ばかりの転入生に関わりたくないと思っていたが、慕ってくれる後輩、風紀書記の蜂須賀流星(はちすか りゅうせい)が巻き込まれる______
「学園で終わる恋愛なんて、してたまるか。どうせ政略結婚が待っているのに……」
______________
「俺は1年の頃にお前に一目惚れした、長期戦のつもりが邪魔が入ったからな。結婚を前提に恋人になれ。」
「俺がするんで、蛍様は身を任せてくれたらいいんすよ。これからもずっと一緒っすよ♡」
♢♦︎ ♢♦︎ ♢♦︎ ♢♦︎ ♢♦︎ ♢♦︎ ♢
初投稿作品です。
誤字脱字の報告や、アドバイス、感想などお待ちしております。
毎日20時と23時に投稿予定です。
【完結】僕らの関係─好きな人がいるのに、学園の問題児に目をつけられて─
亜依流.@.@
BL
【あらすじ】
全寮制の男子校私立掟聖学園には、学力向上を目的とした特殊なペア制度が存在した。
─────────────────
2年の入谷優介は、生徒会長であり学園のカリスマ、3年・中篠翔へ密かに思いを寄せていた。
翔とペアになる事を夢見る優介は、ある事件をきっかけに、同じく3年の超絶問題児、本郷司とペアを組む事になってしまう。傲慢な司に振り回される優介に手を差し伸べたのは、初恋の相手である翔だった。
【R18】一匹狼は愛とか恋とか面倒くさい
藍生らぱん
BL
一匹狼(仔犬)と前世の記憶持ち生徒会書記(忠犬)が主人公の非王道学園オメガバース
Ωの颯は一つ年上の風紀委員長でαの京夜の番。
そして颯の従兄弟で兄弟同然のαの健太は前世の記憶を持っている。
二人のαに溺愛されつつも束縛を嫌う颯は今日も一人で自由に学園を闊歩する。
健太は颯を見守りつつ、前世の記憶と因縁の相手に翻弄される。
風紀委員長と一匹狼の固定cp
書記は本命以外との絡み有り
非王道主人公・面倒くさがり干物系一匹狼(お一人様)Ω
ワンコ書記α? 忠犬(番犬・猛犬注意 非王道主人公その2)
俺様生徒会長α
腹黒副会長Ω
チャラ男会計α
双子庶務β
ホスト系教師α 生徒会OB
王道主人公系転校生α 駄犬
爽やかスポ根同級生α
巻き込まれクラス委員長β
魔王系風紀委員長α 狂犬
ポメ・チワワ系親衛隊 βとΩの群れ
アンチ王道主人公? 駄犬
学園理事長α 駄犬
ムーンライトさんと同時連載
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
高辻家のΩ
椿
BL
色々あって季節外れの転校生である陽キャβに抱かれたい主人公Ω(受け)が、ツンデレ許嫁Ωと健気で可愛い皮を被ったドメンヘラαの弟にめちゃくちゃ邪魔されつつも、βに抱かれるべく決死のリアルタイムアタック(RTA)に挑戦する話(そんな話だとは言ってない)。
宗教っぽい終わってる家で唯一まともな主人公とオメガバースのドッキング。
テーマは「Ωの受けをα、β、Ωで囲んでみた明るい泥沼」なので、地雷の気配察知はお早めに。
四角関係というよりは総受け。
ギャルゲーの主人公みたいな受け。
他サイトにも掲載してます。
『定時後の偶然が多すぎる』
こさ
BL
定時後に残業をするたび、
なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。
仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。
必要以上に踏み込まず、距離を保つ人――
それが、彼の上司だった。
ただの偶然。
そう思っていたはずなのに、
声をかけられる回数が増え、
視線が重なる時間が長くなっていく。
「無理はするな」
それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、
彼自身はまだ知らない。
これは、
気づかないふりをする上司と、
勘違いだと思い込もうとする部下が、
少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。
静かで、逃げ場のない溺愛が、
定時後から始まる。
ひみつのモデルくん
おにぎり
BL
有名モデルであることを隠して、平凡に目立たず学校生活を送りたい男の子のお話。
高校一年生、この春からお金持ち高校、白玖龍学園に奨学生として入学することになった雨貝 翠。そんな彼にはある秘密があった。彼の正体は、今をときめく有名モデルの『シェル』。なんとか秘密がバレないように、黒髪ウィッグとカラコン、マスクで奮闘するが、学園にはくせもの揃いで⁉︎
主人公総受け、総愛され予定です。
思いつきで始めた物語なので展開も一切決まっておりません。感想でお好きなキャラを書いてくれたらそことの絡みが増えるかも…?作者は執筆初心者です。
後から編集することがあるかと思います。ご承知おきください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる