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崩壊前夜
時間制限付きのお話
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憂鬱だ。
「んー……」
携帯片手に文字を何度も打ち直しては、何度も消す。
そんなことばかりを繰り返したって、マコちゃんへのメッセージができあがるわけがない。
「……はあ」
直接謝るのが早いとわかってても、さっきみたいにまたマコちゃんを傷つけたくない。
女々しいのだろうか。
ならもうこの際女々しくたっていい。
どうしたって頭の片隅にユッキーとのことがあった。
なんで、あんなことしたのか。
そんなこと俺が知るわけねーじゃん。
「……やーめた」
誰もいない部屋の中、携帯を放り投げてベッドに潜る。
外にはなっちゃんがいて、きっと一生懸命見張りをしてくれてるだろう。
なら、今は甘えて少し休もう。
そんなことを考えていたときだった。
扉の外からなにやら言い争うような声が聞こえてきた。
このうるせー声は間違いなくなっちゃんだ。
むくりと起き上がり、そのまま俺は扉へと向かった。
なんだよ、人がくつろいでる時に。
と思いながら扉を開いたときだった。
「やあ、仙道。遊びに来ましたよ」
丁度なっちゃんに羽交い締めにされていたちーちゃんは、俺の顔をみるなりそう王子様の笑顔を浮かべるのだ。
「ちーちゃん……なにしたの?」
「なにってことはないでしょう。友人に会いに来るのがなにか理由が必要ですか?」
「……」
言ってることはおかしくないんだけど、言ってる人がおかしいんだよなぁ。
「なにが友人だ、お前まさかこいつに目え付けてんじゃないだろうな」
「何言ってるんですか、千夏。そういうあなたこそ、そんな発想が出るなんて……さては仙道のこと『いいなー』って思ってるんじゃないですか?」
「え、なっちゃんそーなの?」
「な゛……っ、ちげえよ! んなわけねえだろ!」
そんな全力出否定しなくってもいいじゃん。なっちゃんのバカ。
「……あーあ、見てください。千夏が冷たいから仙道ますます萎れてるではありませんか。おー可哀想に、よしよし」
「ちーちゃん抱きしめないで」
「おっと……お触り厳禁でしたか、これは失敬」
相変わらずどこまでか冗談なのかわからないが、手ぶらに親衛隊なしのちーちゃんを見ると本当に俺の様子を見に来ただけらしい。
「――風紀委員長とは会いましたか?」
そんで、多分こっちが本題。
「……まあ、会ったよ」
「それなのにその元気のなさ……ふむ、なるほど」
「察さなくていーよ。あと、変な気遣いもしなくていいから」
「おや、相変わらず仙道はばっさりですね」
「けど、そこまでいう元気は戻ったということでしょうか」ちーちゃんは笑うけど俺は全然全く面白くなかったので白い目だけ向けておく。
「しかし千夏もいるなら丁度良い。千夏、ちょっと仙道と二人きりにさせてもらいますよ」
「「……は?」」
「ほら、早く僕を貴方の部屋へ招いてください。仙道」
「いや、強引すぎだし。つか、俺今から寝ようと思ったんだけど」
「添い寝なら付き合いますよ。……という冗談はさておき、少々込み入った内容でして」
「なるべくなら、部外者に聞かれない貴方の部屋がいいのですが」さっきまでの軽いノリで続けるちーちゃん。
これも、嘘じゃない。
気分は乗らないが、断ったところで普通に入ってきそうだし。
「……五分だけだからね」
「ええ、十分です。貴方が物分りの言い方でよかった」
「それって嫌味?」
「いいえ、本心です」
「というわけで千夏、番犬よろしくお願いしますね」と手を振り、ちーちゃんはうきうきで人の部屋にあがるのだ。
続いて俺もその後に続こうとしたら、なっちゃんに止められた。
「おい、いいのかよ」
「んー……まあ、ちーちゃんがああいってるし」
「……お前な、」
「五分経っても戻ってこなかったら、扉ぶっ壊していいよ」
よろしくね、となっちゃんの肩を叩き、俺はちーちゃんに続いて部屋にあがる。
なっちゃんは驚いたような顔をしていたが、それ以上なにもいってこなかった。
俺の部屋の中。
「いい香りがしますね」なんてどうでもいいこと言ってくるちーちゃんに「それで、話って何?」と尋ねれば、ちーちゃんは肩を竦める。
そして、
「彼のこと、覚えてますか?風紀委員長と揉めて、謹慎と入院していた彼のことですよ」
……忘れるわけがない。
このタイミングでちーちゃんの口からあいつの――ヒズミの話題が出てることに血の気が引いた。
確か、純が言うにはあいつは病院を抜け出したはすだ。
嫌な予感しかしなかった。
「……それがなに?」
「僕の親衛隊の子が見たそうなんですよ、校内で会長と一緒にいたところを」
「……は?」
思わず口にしていた。
なんで、どうして、あいつが。
確かによく生徒会室に一緒にいるところは見たけれど。
「なんで会長……」
「その反応、もしかして仙道はご存知だったんですか? 日桷君が脱走していたことを」
しまった、と思ったときには遅い。
できることなら大事になる前にこちらで処理しておきたかった。
けれど、敏いちーちゃんには嘘は通用しない。
「……噂ではね。一応、純たちにも探させていたけど……まさかかいちょーが匿ってるってこと?」
「あくまで推測に過ぎませんが、日桷君の謹慎はまだ解けていません。それなのに校内にいる日桷と接触しているのに、まだ僕たちの耳に入ってこないのは黒でしょう」
「……あいつ……」
散々マコちゃんに対して偉そうな口を利いておきながら。
腹が立ってきたが、そこが繋がっているとなると嫌な考えがよぎる。
「……っ、待って、その見かけたのって、いつ」
「つい先ほどですよ」
この学校内に日桷が戻ってきている。
そしてマコちゃんもさっきまでいた。
まさか、マコちゃんに報復しようだなんて思っていないだろうな。
「……っ、ちーちゃん、その日桷を見かけたのってどこで?」
「寮の会長の部屋の近くだそうですよ。……ま、匿うなら自室が安牌でしょうけど……」
「……そう」
「おや、どちらへ向かうのですか? 仙道」
「べつに? ちょっと小便」
「はしたないですよ、その言い方」と呆れるちーちゃん。
ちーちゃんにだけは言われたくない。
けどこのまま放置しておくわけにはいかないだろう。
「貴方、会長と日桷君の逢瀬の瞬間を記録して公開すれば会長諸共失脚させられる、なんて思ってませんか?」
「……その手があったか」
「仙道」
「冗談冗談。俺だってあいつらには関わりたくないし」
なんて言いながら純に、一応今の話を端的にまとめてメッセージ送っておく。
会長の部屋に日桷がいるかもしれない。記録だけ残せばいいと。絶対に手を出すな、あとまこちゃんにも会わせないように見張っててと。
……端的ってなんだっけ?
「んー……」
携帯片手に文字を何度も打ち直しては、何度も消す。
そんなことばかりを繰り返したって、マコちゃんへのメッセージができあがるわけがない。
「……はあ」
直接謝るのが早いとわかってても、さっきみたいにまたマコちゃんを傷つけたくない。
女々しいのだろうか。
ならもうこの際女々しくたっていい。
どうしたって頭の片隅にユッキーとのことがあった。
なんで、あんなことしたのか。
そんなこと俺が知るわけねーじゃん。
「……やーめた」
誰もいない部屋の中、携帯を放り投げてベッドに潜る。
外にはなっちゃんがいて、きっと一生懸命見張りをしてくれてるだろう。
なら、今は甘えて少し休もう。
そんなことを考えていたときだった。
扉の外からなにやら言い争うような声が聞こえてきた。
このうるせー声は間違いなくなっちゃんだ。
むくりと起き上がり、そのまま俺は扉へと向かった。
なんだよ、人がくつろいでる時に。
と思いながら扉を開いたときだった。
「やあ、仙道。遊びに来ましたよ」
丁度なっちゃんに羽交い締めにされていたちーちゃんは、俺の顔をみるなりそう王子様の笑顔を浮かべるのだ。
「ちーちゃん……なにしたの?」
「なにってことはないでしょう。友人に会いに来るのがなにか理由が必要ですか?」
「……」
言ってることはおかしくないんだけど、言ってる人がおかしいんだよなぁ。
「なにが友人だ、お前まさかこいつに目え付けてんじゃないだろうな」
「何言ってるんですか、千夏。そういうあなたこそ、そんな発想が出るなんて……さては仙道のこと『いいなー』って思ってるんじゃないですか?」
「え、なっちゃんそーなの?」
「な゛……っ、ちげえよ! んなわけねえだろ!」
そんな全力出否定しなくってもいいじゃん。なっちゃんのバカ。
「……あーあ、見てください。千夏が冷たいから仙道ますます萎れてるではありませんか。おー可哀想に、よしよし」
「ちーちゃん抱きしめないで」
「おっと……お触り厳禁でしたか、これは失敬」
相変わらずどこまでか冗談なのかわからないが、手ぶらに親衛隊なしのちーちゃんを見ると本当に俺の様子を見に来ただけらしい。
「――風紀委員長とは会いましたか?」
そんで、多分こっちが本題。
「……まあ、会ったよ」
「それなのにその元気のなさ……ふむ、なるほど」
「察さなくていーよ。あと、変な気遣いもしなくていいから」
「おや、相変わらず仙道はばっさりですね」
「けど、そこまでいう元気は戻ったということでしょうか」ちーちゃんは笑うけど俺は全然全く面白くなかったので白い目だけ向けておく。
「しかし千夏もいるなら丁度良い。千夏、ちょっと仙道と二人きりにさせてもらいますよ」
「「……は?」」
「ほら、早く僕を貴方の部屋へ招いてください。仙道」
「いや、強引すぎだし。つか、俺今から寝ようと思ったんだけど」
「添い寝なら付き合いますよ。……という冗談はさておき、少々込み入った内容でして」
「なるべくなら、部外者に聞かれない貴方の部屋がいいのですが」さっきまでの軽いノリで続けるちーちゃん。
これも、嘘じゃない。
気分は乗らないが、断ったところで普通に入ってきそうだし。
「……五分だけだからね」
「ええ、十分です。貴方が物分りの言い方でよかった」
「それって嫌味?」
「いいえ、本心です」
「というわけで千夏、番犬よろしくお願いしますね」と手を振り、ちーちゃんはうきうきで人の部屋にあがるのだ。
続いて俺もその後に続こうとしたら、なっちゃんに止められた。
「おい、いいのかよ」
「んー……まあ、ちーちゃんがああいってるし」
「……お前な、」
「五分経っても戻ってこなかったら、扉ぶっ壊していいよ」
よろしくね、となっちゃんの肩を叩き、俺はちーちゃんに続いて部屋にあがる。
なっちゃんは驚いたような顔をしていたが、それ以上なにもいってこなかった。
俺の部屋の中。
「いい香りがしますね」なんてどうでもいいこと言ってくるちーちゃんに「それで、話って何?」と尋ねれば、ちーちゃんは肩を竦める。
そして、
「彼のこと、覚えてますか?風紀委員長と揉めて、謹慎と入院していた彼のことですよ」
……忘れるわけがない。
このタイミングでちーちゃんの口からあいつの――ヒズミの話題が出てることに血の気が引いた。
確か、純が言うにはあいつは病院を抜け出したはすだ。
嫌な予感しかしなかった。
「……それがなに?」
「僕の親衛隊の子が見たそうなんですよ、校内で会長と一緒にいたところを」
「……は?」
思わず口にしていた。
なんで、どうして、あいつが。
確かによく生徒会室に一緒にいるところは見たけれど。
「なんで会長……」
「その反応、もしかして仙道はご存知だったんですか? 日桷君が脱走していたことを」
しまった、と思ったときには遅い。
できることなら大事になる前にこちらで処理しておきたかった。
けれど、敏いちーちゃんには嘘は通用しない。
「……噂ではね。一応、純たちにも探させていたけど……まさかかいちょーが匿ってるってこと?」
「あくまで推測に過ぎませんが、日桷君の謹慎はまだ解けていません。それなのに校内にいる日桷と接触しているのに、まだ僕たちの耳に入ってこないのは黒でしょう」
「……あいつ……」
散々マコちゃんに対して偉そうな口を利いておきながら。
腹が立ってきたが、そこが繋がっているとなると嫌な考えがよぎる。
「……っ、待って、その見かけたのって、いつ」
「つい先ほどですよ」
この学校内に日桷が戻ってきている。
そしてマコちゃんもさっきまでいた。
まさか、マコちゃんに報復しようだなんて思っていないだろうな。
「……っ、ちーちゃん、その日桷を見かけたのってどこで?」
「寮の会長の部屋の近くだそうですよ。……ま、匿うなら自室が安牌でしょうけど……」
「……そう」
「おや、どちらへ向かうのですか? 仙道」
「べつに? ちょっと小便」
「はしたないですよ、その言い方」と呆れるちーちゃん。
ちーちゃんにだけは言われたくない。
けどこのまま放置しておくわけにはいかないだろう。
「貴方、会長と日桷君の逢瀬の瞬間を記録して公開すれば会長諸共失脚させられる、なんて思ってませんか?」
「……その手があったか」
「仙道」
「冗談冗談。俺だってあいつらには関わりたくないし」
なんて言いながら純に、一応今の話を端的にまとめてメッセージ送っておく。
会長の部屋に日桷がいるかもしれない。記録だけ残せばいいと。絶対に手を出すな、あとまこちゃんにも会わせないように見張っててと。
……端的ってなんだっけ?
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