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クマさんと、透明なあなた その2
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ニアノ村の北にあるというドワーフの集落に向かっていた僕。
そんな僕の目の前には、集落へと続く道がえぐれてなくなっている光景が広がっていました。
しばらくその周囲をあれこれと確認していた僕なのですが、あいにくこの道は崖の中腹にあるため、迂回路は見当たりません
道の左は切り立った崖ですし、かなりの高さがあります。
普通の人であればそちらへ降りて迂回なんて出来ません。
崖の上部も、かなりの傾斜があるためそちらへ昇って迂回するのもかなりの労力を要するのは間違いありません。
……身体能力を超強化出来る僕なら、そのどちらもたやすく出来ちゃうわけだけど……
今の僕は迂回路云々よりも、この事態がなぜ起きたのか、それを調べる必要があると考えていました。
この事態が、村にドワーフ達がやってこなくなった原因なのは明らかですし。
僕は神の目魔法を発動させました。
このえぐられている一帯を上空から広い範囲確認してみようと思ったわけです。
意識を崖の上部に集中し、そこから見下ろしている自分をイメージしていきます。
すると、僕の脳内に崖を見下ろしている画像が広がっていました。
この時、首にさげている魔石のネックレスが光り始めました。
ピリのおばあさんがかなりの魔力を込めて作成したというこの魔石のネックレスなんだけど、こうして僕が神の目や神の耳といった魔法を使用した時に決まって発光するんです。
それがなぜなのかは、今もわかっていません。
一度ドラコさんにも聞いてみたことがあるんだけど、
『私も魔石に関しては疎いものですから~、今度スア師匠に聞いてみます~』
ってことで、一旦保留になっているんです。
……さて、どんな感じだ?
そんな事を考えながら、僕は目を閉じて脳内の映像に意識を集中していました。
まるで宙に浮かんで、そこから崖を見下ろしているかのような光景が広がっている脳内。
その画像の中には、えぐられている道の端っこに立っている僕自信の姿もありました。
なんだか、自分の姿を見下ろしているというのも不思議な感じです。
そんな違和感を感じながらも、僕は道の様子を確認していったんだけど……
道は、崖の上部から下へと向かってえぐられているような感じになっていました。
例えるなら、砂場で山を作ってですねその一面を手で削り取ったと……そんな表現がしっくり来そうな感じになっています。
これを、目の前の崖の山上に当てはめるならば……何か巨大な生物が、えぐり取った……とでも、いうのでしょうか……
「……そ、そんな馬鹿な……」
思わずそんなことを口にした僕ではあったものの……そんな僕の脳裏にはドラコさんの姿が浮かんでいた。
……ドラコさんがこんなことをするとは思えないけど……でも、彼女のような存在が実際にいる以上、他にもあんな大きさの生物がいたとしてもおかしくはない……かも、しれない……
僕は、そんなことを考えながら、神の耳魔法を展開していった。
周囲の音を拾っていきます。
その気になればかなり広範囲の音を拾うことが出来る一方、あまり広範囲になりすぎると、その中のどの声を拾いあげればいいのか判断に迷うこともあったりします。
気になる音をマーキングしておけば、その場所の音を即座に拾うことが出来るし、人をマーキングしておけばその人の話し声やその周囲の音を拾うことが出来たりもします。
とりあえず今は、自分を中心にした周囲の音を拾っていくことにしました。
……ん?
木々の擦れる音や獣の鳴き声……そんな物に混じって
ズン……ズン……ズン……
そんな音が聞こえてきました。
その音の方へ意識を集中していきます。
ズン……ズン……ズン……
間違いありません。
何か巨大な生き物の足音のようです。
その足音が……僕の方に向かって近づいている……!?
改めて神の目魔法の画像へ意識を集中していきます。
上空から僕の立っている一帯が脳裏に映し出されているわけだけど……
……これかな?
崖の向こう……森の木々をなぎ倒しながらこっちに向かって進んでくる足跡が見えました。
……あれ?
ここで僕は首をひねりました。
……神の目魔法で見えているのは足跡、それも、木々が踏みつけられた跡だけが見えていたんです……それでいて、肝心な、その足跡の主の姿がまったく見えていないんです。
でも、その足跡は確実に僕に接近しています。
僕は、目をあけるとその方角へ視線を向けました。
すでに、ズン……ズン……といった音響が、耳に直に聞こえ、振動を体で感じることが出来はじめています。
低木の木が押しつぶされたり、木々が押しのけられている姿も直接視認することが出来ます。
……ですが
肝心な、その事態を引き起こしている張本人の姿だけがまったく見えないんです。
その光景に戸惑っている僕……そして、次の瞬間……
僕の体にすさまじい衝撃が走り、目の前が真っ赤に染まっていきました。
◇◇
すさまじい衝撃でした。
まるで頭の上からぶん殴られた……そんな感じです。
あれ?……ひょっとして血が出ているのかな?
目の前が真っ赤だ……
そんな事を、どこかぼんやりと考えていた僕は……ここでようやく自分が大量の土砂と一緒に崖下へ落下していることを理解しました。
目を見開く僕……うん、やっと意識がはっきりしてきました。
その眼前に、大量の土砂が落下してくるのが見えました。
「う、うわぁ!?」
僕は立ち上がると、慌てて猛ダッシュしました。
先ほどまで僕が倒れていた場所に、大量の土砂が落下していきます。
ダッシュしていなかったら、僕はあの土砂の下敷きになっていたかもしれません。
不意を突かれたため身体強化がしっかり出来ていなかったのでしょう、体中がすごく痛いです。
それでも、多少は頑強スキルが発動してくれていたみたいで、僕はこうして生き延びることが出来たんだと思います。
何かにぶん殴られたらしいことは、なんとなくわかっていました。
そして、その何かが透明だということも。
僕は、背のバスターソードを抜くと、ダッシュしながら横薙ぎにしまし。
狙ったのは、透明な何かの足があると思われるあたり。
そこには足跡だけが出現しています。
神の目魔法でだいたいの位置は把握出来ていたので、そこに向かっておもいっきりバスターソードを叩きつけました。
がつっ!!
すさまじい手応えがありました。
やはり、そこに透明な何かがいたみたいです。
GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
獣の咆哮が周囲にとどろき、透明な何かがその場に倒れていく気配が伝わってきます。
すると、その透明な何かに色がつき始め、そいつが巨大な白い恐竜のような姿をしている事がわかりました……ですが……次の瞬間には、その姿はみるみる小型になっていって、あっという間にでっかい恐竜の姿から少女の姿へと変化して……
「いった~~~~~~~~~~~~~い」
……な、なんか、その少女ってば、右足を抱えながら地面を転がり回っているんですけど……
* * *
「……だから言ってるじゃん。アタシはただ逃げてただけなんだってばぁ」
少女の右足に応急処置を施している僕に、その少女は涙目になりながら訴えかけていました。
この少女……名前をアジョイというそうです。
古代怪獣族という種族だそうで、生まれつき人型に変化する能力を有している古代怪獣族の希少種なんだそうです……まぁ、いくら説明されてもさっぱり理解出来ないんですけどね。
さらに、アジョイのように透明化出来る古代怪獣族というのは希少種の中でもさらに希少らしく、
「あのね、アジョイはね、産まれてからずっとどこかの部屋に閉じ込められていたの」
と、いうことみたいです。
「……で、アジョイはその部屋を逃げ出して、この森の中を放浪していたってわけなんだ?」
「うん、そう! 出来たら一緒に遊んでくれるお友達も探してたの!」
元気な声でそう言うアジョイなんだけど……まいったことに、彼女の右足は完璧に折れていた。
この状態では、本来の姿である古代怪獣族の姿へ変化してもまず歩けないだろう。
となると……アジョイを閉じ込めていた奴らに見つかって、またその部屋に連れ戻されてしまうのも時間の問題ということなのかもしれない。
相手が、もっと年配であればその言葉を疑うところなんだけど……アジョイはまだ幼い上に純真無垢なことこの上ない感じなんです。
僕をいきなり上部から殴りつけてきたのにしても
『おじさん!遊ぼう!』
って感じで、無邪気に右手を振り降ろしただけだそうで……
いや、そんな軽いノリで殴り殺されでもしたら、ちょっと目も当てられないというか……
ちなみに、先に出来ていたあのえぐれも、やはりアジョイの仕業だった。
何でも、ドワーフが率いている荷馬車を見つけて、僕の時と同じ要領で
『ねぇねぇ遊ぼう!』
ってな感じで腕を振り降ろしていったそうなんだ……
……崖の下に堆積していた土砂の中に、荷馬車の残骸が埋もれているかもしれない。
アジョイの足に添え木をあてて布で縛りながら、僕はそんなことを考えていました。
そんな僕の目の前には、集落へと続く道がえぐれてなくなっている光景が広がっていました。
しばらくその周囲をあれこれと確認していた僕なのですが、あいにくこの道は崖の中腹にあるため、迂回路は見当たりません
道の左は切り立った崖ですし、かなりの高さがあります。
普通の人であればそちらへ降りて迂回なんて出来ません。
崖の上部も、かなりの傾斜があるためそちらへ昇って迂回するのもかなりの労力を要するのは間違いありません。
……身体能力を超強化出来る僕なら、そのどちらもたやすく出来ちゃうわけだけど……
今の僕は迂回路云々よりも、この事態がなぜ起きたのか、それを調べる必要があると考えていました。
この事態が、村にドワーフ達がやってこなくなった原因なのは明らかですし。
僕は神の目魔法を発動させました。
このえぐられている一帯を上空から広い範囲確認してみようと思ったわけです。
意識を崖の上部に集中し、そこから見下ろしている自分をイメージしていきます。
すると、僕の脳内に崖を見下ろしている画像が広がっていました。
この時、首にさげている魔石のネックレスが光り始めました。
ピリのおばあさんがかなりの魔力を込めて作成したというこの魔石のネックレスなんだけど、こうして僕が神の目や神の耳といった魔法を使用した時に決まって発光するんです。
それがなぜなのかは、今もわかっていません。
一度ドラコさんにも聞いてみたことがあるんだけど、
『私も魔石に関しては疎いものですから~、今度スア師匠に聞いてみます~』
ってことで、一旦保留になっているんです。
……さて、どんな感じだ?
そんな事を考えながら、僕は目を閉じて脳内の映像に意識を集中していました。
まるで宙に浮かんで、そこから崖を見下ろしているかのような光景が広がっている脳内。
その画像の中には、えぐられている道の端っこに立っている僕自信の姿もありました。
なんだか、自分の姿を見下ろしているというのも不思議な感じです。
そんな違和感を感じながらも、僕は道の様子を確認していったんだけど……
道は、崖の上部から下へと向かってえぐられているような感じになっていました。
例えるなら、砂場で山を作ってですねその一面を手で削り取ったと……そんな表現がしっくり来そうな感じになっています。
これを、目の前の崖の山上に当てはめるならば……何か巨大な生物が、えぐり取った……とでも、いうのでしょうか……
「……そ、そんな馬鹿な……」
思わずそんなことを口にした僕ではあったものの……そんな僕の脳裏にはドラコさんの姿が浮かんでいた。
……ドラコさんがこんなことをするとは思えないけど……でも、彼女のような存在が実際にいる以上、他にもあんな大きさの生物がいたとしてもおかしくはない……かも、しれない……
僕は、そんなことを考えながら、神の耳魔法を展開していった。
周囲の音を拾っていきます。
その気になればかなり広範囲の音を拾うことが出来る一方、あまり広範囲になりすぎると、その中のどの声を拾いあげればいいのか判断に迷うこともあったりします。
気になる音をマーキングしておけば、その場所の音を即座に拾うことが出来るし、人をマーキングしておけばその人の話し声やその周囲の音を拾うことが出来たりもします。
とりあえず今は、自分を中心にした周囲の音を拾っていくことにしました。
……ん?
木々の擦れる音や獣の鳴き声……そんな物に混じって
ズン……ズン……ズン……
そんな音が聞こえてきました。
その音の方へ意識を集中していきます。
ズン……ズン……ズン……
間違いありません。
何か巨大な生き物の足音のようです。
その足音が……僕の方に向かって近づいている……!?
改めて神の目魔法の画像へ意識を集中していきます。
上空から僕の立っている一帯が脳裏に映し出されているわけだけど……
……これかな?
崖の向こう……森の木々をなぎ倒しながらこっちに向かって進んでくる足跡が見えました。
……あれ?
ここで僕は首をひねりました。
……神の目魔法で見えているのは足跡、それも、木々が踏みつけられた跡だけが見えていたんです……それでいて、肝心な、その足跡の主の姿がまったく見えていないんです。
でも、その足跡は確実に僕に接近しています。
僕は、目をあけるとその方角へ視線を向けました。
すでに、ズン……ズン……といった音響が、耳に直に聞こえ、振動を体で感じることが出来はじめています。
低木の木が押しつぶされたり、木々が押しのけられている姿も直接視認することが出来ます。
……ですが
肝心な、その事態を引き起こしている張本人の姿だけがまったく見えないんです。
その光景に戸惑っている僕……そして、次の瞬間……
僕の体にすさまじい衝撃が走り、目の前が真っ赤に染まっていきました。
◇◇
すさまじい衝撃でした。
まるで頭の上からぶん殴られた……そんな感じです。
あれ?……ひょっとして血が出ているのかな?
目の前が真っ赤だ……
そんな事を、どこかぼんやりと考えていた僕は……ここでようやく自分が大量の土砂と一緒に崖下へ落下していることを理解しました。
目を見開く僕……うん、やっと意識がはっきりしてきました。
その眼前に、大量の土砂が落下してくるのが見えました。
「う、うわぁ!?」
僕は立ち上がると、慌てて猛ダッシュしました。
先ほどまで僕が倒れていた場所に、大量の土砂が落下していきます。
ダッシュしていなかったら、僕はあの土砂の下敷きになっていたかもしれません。
不意を突かれたため身体強化がしっかり出来ていなかったのでしょう、体中がすごく痛いです。
それでも、多少は頑強スキルが発動してくれていたみたいで、僕はこうして生き延びることが出来たんだと思います。
何かにぶん殴られたらしいことは、なんとなくわかっていました。
そして、その何かが透明だということも。
僕は、背のバスターソードを抜くと、ダッシュしながら横薙ぎにしまし。
狙ったのは、透明な何かの足があると思われるあたり。
そこには足跡だけが出現しています。
神の目魔法でだいたいの位置は把握出来ていたので、そこに向かっておもいっきりバスターソードを叩きつけました。
がつっ!!
すさまじい手応えがありました。
やはり、そこに透明な何かがいたみたいです。
GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
獣の咆哮が周囲にとどろき、透明な何かがその場に倒れていく気配が伝わってきます。
すると、その透明な何かに色がつき始め、そいつが巨大な白い恐竜のような姿をしている事がわかりました……ですが……次の瞬間には、その姿はみるみる小型になっていって、あっという間にでっかい恐竜の姿から少女の姿へと変化して……
「いった~~~~~~~~~~~~~い」
……な、なんか、その少女ってば、右足を抱えながら地面を転がり回っているんですけど……
* * *
「……だから言ってるじゃん。アタシはただ逃げてただけなんだってばぁ」
少女の右足に応急処置を施している僕に、その少女は涙目になりながら訴えかけていました。
この少女……名前をアジョイというそうです。
古代怪獣族という種族だそうで、生まれつき人型に変化する能力を有している古代怪獣族の希少種なんだそうです……まぁ、いくら説明されてもさっぱり理解出来ないんですけどね。
さらに、アジョイのように透明化出来る古代怪獣族というのは希少種の中でもさらに希少らしく、
「あのね、アジョイはね、産まれてからずっとどこかの部屋に閉じ込められていたの」
と、いうことみたいです。
「……で、アジョイはその部屋を逃げ出して、この森の中を放浪していたってわけなんだ?」
「うん、そう! 出来たら一緒に遊んでくれるお友達も探してたの!」
元気な声でそう言うアジョイなんだけど……まいったことに、彼女の右足は完璧に折れていた。
この状態では、本来の姿である古代怪獣族の姿へ変化してもまず歩けないだろう。
となると……アジョイを閉じ込めていた奴らに見つかって、またその部屋に連れ戻されてしまうのも時間の問題ということなのかもしれない。
相手が、もっと年配であればその言葉を疑うところなんだけど……アジョイはまだ幼い上に純真無垢なことこの上ない感じなんです。
僕をいきなり上部から殴りつけてきたのにしても
『おじさん!遊ぼう!』
って感じで、無邪気に右手を振り降ろしただけだそうで……
いや、そんな軽いノリで殴り殺されでもしたら、ちょっと目も当てられないというか……
ちなみに、先に出来ていたあのえぐれも、やはりアジョイの仕業だった。
何でも、ドワーフが率いている荷馬車を見つけて、僕の時と同じ要領で
『ねぇねぇ遊ぼう!』
ってな感じで腕を振り降ろしていったそうなんだ……
……崖の下に堆積していた土砂の中に、荷馬車の残骸が埋もれているかもしれない。
アジョイの足に添え木をあてて布で縛りながら、僕はそんなことを考えていました。
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