アナタトワタシ

空想書記

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超絶落下

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   77万馬力の出力を遺憾なく発揮した、菩薩の飛空艇はマッハ17ほどの超音速で天獄を目指す。


「菩薩様…」


   黒煙のように立ち上る黒い粒子を視界に捕らえた菩薩はなんという事だと立ち上がり、飛び降りる準備を始めた。


「わらわは飛び降りる故、主らは艇を停めてから来い」


「かしこまりました」


    気魂しい轟音のソニックブームが響き渡ると共に、菩薩サイズに設計された巨大な飛空艇が天獄を通り過ぎた刹那、上空から菩薩が飛び降りてきた。
群がる天使や看守達に向かって「退けい!!」と声を荒げ、堕天するナンシーに全力で駆け寄った。


「行かせぬぞ!!ナンシー!!」


「…観…ちゃん」


「おおおおおおおおお!!!!」


    雄叫びを上げた菩薩は驚異的な壊力を滾らせ、神気を迸らせる…。
金色に輝く後光までも発生させた菩薩は両手のひらで、堕天中のナンシーを保護しているブラック・ドレインと呼ばれる球体を挟み込んだ。
菩薩の神気と堕天の闇気が、チリチリと火花を上げ、触れる菩薩の掌に闇気がウィルスのように侵食を始める刹那、菩薩の掌から、熱した刀に水をかけたような蒸気が立ち上る。


「す、凄い…」


「ミカエル様…。なぜ…菩薩様は堕心に冒されないのですか」


「無限回復と言われる業で、驚異的な速度で細胞を再構築しているのだ…」


「それなら…我等とて」


「…その再構築速度…1アト秒」


「…い、いち…アト…秒…?!」


「1アト秒…つまり 0.000 000 000 000 000 001秒だ…。1/75秒…刹那秒と言われる光速を超える細胞の再構築…。ウィルスの進行を超える速度の再構築だ…。生命の神である菩薩のみが可能な業だ…。ただし、膨大な神気を要する為に反動でしばらくは動けなくなる筈だ」


    菩薩はルシファーの堕天を止められなかった事、ナンシーの両親ヴェイカント夫妻が、ルシファーの堕天の巻き添えで堕心により亡くなった事を悔やみ、堕心を防ぐ手立てを研究した。
堕天する者に光属性の者が触れると堕心 (だしん) という現象に侵され心身が滅却されてしまう。
そのメカニズムは闇のエネルギーがウィルスの様に身体を侵食していく物だと解明した菩薩はそれよりも速く細胞を再構築すれば或いはという答えに至った…。
   それから、菩薩は苦しく厳しい修業で己を高め、刹那秒で細胞の再構築を実現することに成功した。
その驚異的な速度での細胞の再構築--無限回復と言われる手段で、堕心に冒されることなく現に数人の堕天を止める事に成功している…。その功績を讃えられた菩薩はこの天界で絶対的権力を握る最高位の神の一人として存在している。


「ナンシー!!早く!!早く堕天を解くのだ!!まだ間に合う!!まだ間に合う筈だ!!」


「……無理だ…。もう…間に合わん菩薩」


    抑え込む球体がゆっくりと下降していくのを止められない…。
諦めぬ…。絶対に諦めぬ…。
ルシファーの過ちを、ヴェイカント夫妻の過ちを二度と起こさせないと誓ったのだ。
せめて、せめて堕天開始に間に合っていれば…。
到着した時、すでに立ち上る漆黒の粒子に絶望的な思いになった菩薩は、眼前で堕ち行くルシファーを、闇気に侵食されて堕心となり、朽ち果てたヴェイカント夫妻の最期を鮮明に思い返していた。
あの時と同じ、あの時と同じ…。
わらわはもう大切な者を失いとうない…。失いとうない…。失いとうない…。失いとうないのだ…。


「行かせはせぬ!!行かせはせぬぞ!!ナンシー!!わらわが!!わらわが主を護る故!!!」


    涙に濡れる菩薩の顔は母のように温かかった…。
あなたの素敵な笑顔は私の癒しでした。
あなたの深い優しさは私の救いでした。
あなたとの永い時間は私の幸せでした。
こんな私とこんなにも永く一緒に居てくれてありがとう。
こんな私をこんなにも愛してくれてありがとう…。


「……ごめんなさい…観ちゃん…」


「謝ることなど何もない!!主は!!主はわらわの娘だ!!大切な娘なのだ!!ナンシー!!!」


「……ありがとう…観ちゃん」


「ナンシーィイイイイイ!!!」


「…菩薩様」


「…菩薩」


「うう…何故だ!!!何故だナンシー!!!何故…こんな馬鹿げた事を…。堕天した者が…全て堕天使になれるわけではないのだぞ…」


   彼方に堕ち行くナンシーはアッというまに菩薩の視界から消えた。その彗星の如く堕ちて行く落下速度は音速を遥かに凌駕している。
人間ならば一瞬の内に燃えて塵と化してしまう。
途轍もない速度で彗星の如く落下していくナンシーは地獄に着いたら自分から離れるようにシドに言った。


「…お前…始めから…死ぬ気か」


「…この落下速度に耐えた者だけが堕天使…地獄天使になる…。残念だが私の壊力では凌げない」


「…離さねぇよ…ナンシー」


「何を言うのだシド!お前まで巻き添えで死んでしまう!!何のために私が天獄から助け出したのだ!!」


「離さねぇ!!!俺は死んでも離さねぇぞ!!ナンシー!!!」


「聞くんだシド!!私は本来ならあの時、死んでいた身だ…。お前が…お前が命を懸けて助けてくれた…。それで充分だ」


「うるせぇ!!!護ってやる!!俺が死んでもお前を護ってやる!!!だからナンシー!!」


「…シド」


「死ななかったら!!!俺の女になれ!!!」


「こんな死に間際で…馬鹿げてる…お前は…本当に…」


「返事は!!ナンシー!!」


「……凌いだら…。…その時は死ぬまで添い遂げるよ…」


「キスしてくれ」


「…本当に…馬鹿な男だな…お前は」


    せっかく天獄から逃れたのに…。馬鹿な男だ…。
この男は死んでも私を護ってくれると言ってくれた…。
嬉しい…。嬉しいよ…シド…。
もっと早く…お前に出逢いたかったよ…。
この男となら死んでもいい…。
私の想いなど…当に決まっていたよ…。万に一つ…億に一つ…生き延びていたら…。


   ワタシハアナタトソイトゲル


ナンシーは一筋の涙を溢して笑みを浮かべ、シドと唇を合わせた。


「いいっくぞぉおおおおおおおおおお!!!!!!オラァアアアア!!!」


    ナンシー達が地獄に差し掛かったところで、強大な闇気に包まれた堕天の気配に気づいた上位の悪魔達が、遠方に見える彗星のように落下していく堕天を見据える…。


「堕天だな…誰だ」


「無事、生き残ったら祝杯でもあげようぜ」


    彼方に見えていた地盤が瞬く間に眼前に迫りくる。当分フリーフォールはゴメンだぜと呟いたシドはナンシーを力強く抱き締めて、再び唇を合わせた。


「俺にしっかり捕まってろよ!!ナンシー!!」


「…うん」


「滾るぞ俺!!!!!」


   死ぬな…。死んではならぬナンシー。…堕天使になってもいい…地獄天使になろうと、悪魔になろうとも生きていてくれさえすれば…。菩薩は祈るような思いで、神気から変化したナンシーの闇気を探り、追い続けた…。


「…地面に…接触する…」


「デッド・バイ…」


    シドは壊力を全解放して、右手に高熱を帯びた禍々しい黒炎を滾らせていく…。


「…サンライズ!!!」


    閃光と共に熱量を帯びた巨大な黒炎の塊が、地盤を、更に奥の岩盤を広範囲に渡って破壊する。
その衝撃波の反動を利用した落下速度の減速と、接触する地面を少しでも遠くすることがシドの狙いだった。


ッドッゴォオオオオオオン…


   堕天したナンシーとシドの二人が途轍もない轟音と共に彗星の如く落下した衝突エネルギーは、途轍もない衝撃波を産み、地盤を深く掘り下げて広大なクレーターを創りだした…。
飛散した物質が舞い上がって降り積もったクレーター周辺には特徴的な堆積地形を形成していた。


「…は…はぁ…はぁ…生き…てる」


    自分の身体を見回し、無事を確認したナンシーは直ぐ様シドを探した…。どこだ?!どこに居る…。
まさか…私を護って消滅してしまったのか…。衝突時に地面から深く深く埋まった洞穴から地獄の薄暗い空が遠い…。
シドが…居ない。堀下がった周囲の岩盤を見回し、視線を下に送ったナンシーは足元に転がる生首だけのシドを発見した。
弱々しく唇を動かして、虚ろな眼で自分を見つめるシドを見たナンシーは大粒の涙を溢して声を張り上げた。


「…シド!!シドォオオオ!!!」


「……ナ……ナン……シ…」


「…シド…シド…。死なせない…。お前を…お前を…死なせてなるものか…」


    息も絶え絶えのシドの生首を胸に抱えたナンシーが泣き崩れている頃と同時刻、とある地獄の居城に集った悪魔達が、新たな堕天使-地獄天使の誕生に祝杯を上げていた。


「…新たな地獄天使の誕生だ」


「…誰だろうなロットン」


「見てきてやるよ…ベルゼブブ」


    右手に持ったワイングラスを禍々しい装飾の付いた巨大なテーブルに置いたロットンは不敵な笑みを浮かべて城を後にした。
天上界では、神気から闇気に切り替わったナンシーの気配を追っていた菩薩が震える声で言葉を紡ぐ。


「…ナンシーは…堪えよった…」


「…本当か…菩薩」


「…ふっ…ふっ…ううぅ……」


「如何がなされました菩薩様」


「…許さぬ…許さぬぞ…。…シド…ファッキンダム」


   結い上げた瑠璃色の髪が弾けるようにほどけ、頭上の宝冠は脆く崩れ去った…。
コメカミにミリミリと血管が浮き出し、瑠璃色の瞳の奥に燃えるような怒りを滾らせた菩薩の周囲の小石が浮き上がって、地面に亀裂を発生させて行く…。


「菩薩様、ここで壊力を全解放してはなりませぬ」


「…ハイタム…ロータム…。三日後に出撃する故…、主らも…天封羅 (テンプラ) を…解除しておけ」


「…か、かしこまりました」


「天封羅解除って、菩薩…。地獄に攻め込む気か」


「如来殿に掛け合って…シド・ファッキンダムの生殺与奪の権利をわらわが…一任してもらう」


「待て菩薩!!落ち着け!!」


「ミカエル…。わらわを止められるものなら…止めてみい」


「ミカエル様…。お手を離しくださいませ」


「わらわの邪魔をする者は…鏖(ミナゴロシ)にしてくれる…。行くぞハイタム、ロータム」


「失礼いたします。ミカエル様。菩薩様はミカエル様には海よりも深く感謝しております故」


「ミカエル様…。侍女ハイタムとロータムが天封羅とは…どういう事なのですか」


「汝等は…知らぬのか…。今でこそ可愛らしく菩薩の侍女を勤めるハイタムとロータムたが、数百年前は皆殺しのハイ& ローという通り名が付く程の悪童だったのだ」


「…み、皆殺しの…ハイ& ロー」


    天封羅 (テンプラ) とは羅刹の力を封じ込める為の封印術。
侍女のハイタム、ロータムは数百年前に悪童として天界に名を轟かせ、通称  “皆殺しのハイ& ロー”  と言われた褐色の双子の姉妹だった。
天界の鉄壁なる守護神として君臨していたが、血と争いを好む二人は徹底的に粗暴で徹底的に残虐。
天界以外の他種族には容赦の無い所業を施し、果てはその肉片を喰らうほどだった…。
あまりの非道振りに注意がなされる物の、私等より弱い者の意見になど従わないと嘲り笑っていた。
赤手空拳に長けている二人は、腕力で我等を捩じ伏せられる者を連れて来いと息を巻いていた。
護法善神-羅刹天に匹敵する武力を持つ二人に対して、炎や雷などの神力-顕現力を使わずに闘うなど愚かしい事だと、誰も二人に物申す者は居なくなってしまっていた。
そんな二人の傍若無人な振る舞いに火を点けられたのは、同系統の羅刹天、阿修羅、毘沙門天、帝釈天などの戦いや力の神々ではなく菩薩だった。


「わらわがあの二人を侍女に迎えてやる故」


    その言葉が天界を駆け巡り、ハイタム、ロータムの耳に伝わった。菩薩如きが生意気なと、二人は菩薩の居る神の宮へと殴り込みをかけた。
闘いは赤手空拳のみとの条件を飲んだ菩薩は二人を迎え撃つばかりではなく、対峙した二人に対してハンデだと七メートルほどの身体を縮めて見せた。
ふざけやがってと憤った二人は、得意とする  ” 皆殺し組手 “  と呼ばれる戦闘方で、殺す気で菩薩に飛び掛かって行った。
双子の為せる連係に、菩薩は身体を標準化、顕現力の封印というハンデで戦い、苦戦を強いられた。
ぶつかり合う身体と身体の轟音は天界の者達が見守る中、一ヶ月ほどが続いた。
先ずロータムが「…畜生」と力尽き、その翌日にハイタムと、菩薩は同時に膝から崩れ落ちた…。
結果は引き分けに終わったが、約束を守り、顕現力を一切使わずに最後まで赤手空拳で闘い、ニ対一の上、身体のサイズを縮めてまで向き合った菩薩に、いたく感銘を受けた二人は、 “  私らはこの方に生涯付いていく ” と自ら進んで菩薩の侍女となった。
その際に自ら制御できない粗暴な精神と力を封印する為、自らの手で施した術が天封羅と言われる封印術で、有事の際に菩薩の許可が下りた時にだけ解除がなされる。
その侍女二人の天封羅を解除するという事は、それだけ菩薩が本気だという事を物語っていた。
ミカエルの話を聞いた天使達は背筋を凍らせて息を呑んだ…。


「…天界は…菩薩様は…どうなってしまうのでしょうか…」


「…予想もつかぬ…。ただ…三日後に…菩薩の通り道に居る悪魔は…鏖(ミナゴロシ)…という事だ…。汝等…くれぐれも今の菩薩達に近づいてはならぬぞ」


「ミカエル様は…如何がなされるおつもりですか」


「…当然、菩薩に同行する…。留守を頼むぞ…シロフォン」


「はい、かしこまりました」


   菩薩の身の丈、七メートルよりも高い、大理石で創られた門柱に天法庁と刻まれた厳格な佇まいの門を菩薩はくぐった。
通常ならば入場手続き等を済ませなければならないのだが、菩薩の鬼の形相に誰一人として目も合わせられず、止める事などできなかった。
ここ天法庁は天界における司法の全てを取り仕切る機関で、ここの最高権力者-天法司法総裁に阿弥陀如来が就いている。


「如来殿」


「おお…菩薩…。一体…何があったのだ…」


「シド・ファッキンダムの生殺与奪の権利をわらわに一任してたもう」


     菩薩のその言葉に、そこに居合わせた面々は呆然としている。
ナンシー・ヴェイカントの堕天についての詳細も、シド・ファッキンダム脱獄の詳細も未だ不明の状況だ…。
脱獄の経緯はナンシーが手引きしたのか?
ナンシーがシド・ファッキンダムに催眠術をかけられて脱獄させたのか?
そのナンシーはなぜ堕天という経緯に至ったのか?
    ナンシー・ヴェイカントが堕天したという事、シド・ファッキンダムが脱獄したという報告だけは天獄から届いている。
阿弥陀如来がその事について話しているのを遮るように菩薩は声を荒らげた。


「如来殿!!!わらわはお願いに来ているのではない!!!!」


「少し落ち着け菩薩…」


「わらわが直接出向く故…。通り道に悪魔が居れば…鏖(ミナゴロシ)にすると悪魔共に伝えておくのだ 」


「…わかった。手続きに二週間」


「わらわは…三日後に天封羅解除したハイタム、ロータムと出撃する故…」


    その言葉に他の神、仏が反応した。天封羅解除だと?!再び戦争でも起こす気か。いささか図に乗り過ぎではないかと数人の神や仏が菩薩に詰め寄る。


「そんな勝手が許されると思っているのか!!!」


「…主ら、如来殿の犬如きが…誰に物を言っているのかわかっておるのか?」


「なんだと!!!」


「主ら如きに…わらわが止められるとでも思うてか…。わらわを止めたければ四大熾天使でも誰でも連れてくるがよい…。おそらくその内の一人、ミカエルはわらわと同行するがな…」


「菩薩…」


「なんだ…如来殿」


「気をつけて行け」


「すまぬ…如来殿」


   菩薩に甘過ぎだろうと何人もの神や仏に詰め寄られた阿弥陀如来は無礼な菩薩の態度を詫びつつ、ワシが責任を取るからとその場を収めた。
報せを聞いた四大熾天使達も胸中は穏やかではなく、ガブリエル、ラファエル、ウリエル達はミカエルに詳細を聞き、今回はミカエルが同行するという事で折り合いをつけた。
ミカエルを通して親交のある三人は、怒りで周りが見えなくなっている菩薩を複雑な思いで心配していた…。


「大丈夫かなぁ…菩薩ちゃん」


「心配するな、ガブリエル…。ミカエルがなんとかするって…多分」


「そうそう。もしもの時は、ミカエルがなんとかするって…多分」


「汝等は…他人事のように言うな…。彼女は我等とは近しい間柄であろう」


「一番近い人は、もうここに居ないけどね」


「……そうだな…。アイツがここに居ればな…」



             -地獄界-


   堀下がった岩盤からクレーターに這い出たナンシーはシドの生首に治癒を施し、闇の力を分け与えた…。
朦朧としたシドの首辺りの細胞が蠢き、再構築を始めた事にナンシーは涙を溢してその場に踞った。


「…細胞が…蠢いている…。良かった…。良かった…。シドは…死んではいない…」


    その時、一人の悪魔が舞い降りて来てナンシーに声をかけてきた…。知ってる声だ…。この声の主は忘れもしない…。
私の部下と仲間を惨殺し、シドを瀕死に追い込み、恐らくは呪言を飲ませ、シドに罪を被せた男…。


「誰かと思えば…これは随分と大物が堕天してきたものだな…」


「…ロットン…ファッキンダム」


「何があったかは知らないが…地獄へようこそ」


「私に話しかけるな…下衆が…」


「そう尖るな…。地獄天使として生まれ変わったお前は…我等の仲間だ」


「反吐が出る」


「シドは…いい手土産を持ち帰ったな…。まあ…これで全ては水に流してやろう」


   水に流すだと?流されたくもないし、お前を許す気などない…。
自分が堕天してどれほど壊力が増大したのかは不明だが、この男とは相容れない…。いずれ何らかの形で合い間みえる事になるだろうとナンシーは感じた。


「ともあれ…歓迎するぜ、ナンシー・ヴェイカント」


    そう言い残すとロットンは彼方に飛び去って行った。その様を見据え舌打ちをしたナンシーは、少しずつ再生していくシドを見つめる…。


「…ナン…シー」


「…もう…もう死んでしまうかと思った…。シドのおかげで…私は死なずに済んだよ」


「…だが…俺の壊力と…闇気が…驚異的に上がったのは…、ナンシーの…堕天による…恩恵があったからだ…。それで…凌げたようなものだ」


「……二度も…いや、三度目だな…助けられたのは」


「…何度でも…助けるさ」


「……ありがとう。シド」


「……愛してるぜ。ナンシー」


「…うん。私も…愛してる」


     涙を溢したナンシーは生首から細胞をゆっくりと再構築していくシドを見つめる…。
誰にも祝福などされない二人は、ひっそりとした地獄の最下層で唇を合わせた…。


   それと同じ頃、周囲の者が慄いて誰も口を開けないほどの怒りをメラメラと滾らせた菩薩は三日後の出撃に備えていた…。


「わらわの家族に手を出したことを…三千世界の果てほど後悔させてやるぞ…。シド…ファッキンダム」







……続く。












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