上 下
360 / 800
★ピタラス諸島第二、コトコ島編★

349:三つの島の情報

しおりを挟む
「じゃあ、これから向かう三つの島に、その三体の神様達が存在している可能性は大いにあるという事ね。それで……、ネフェ、お願いがあるの。ピタラス諸島に存在する島々について、その特徴とか、住んでいる種族の事とか、なんでもいいから知っている事があれば教えてもらえないかしら?」

   グレコの言葉に、袮笛は再度こくんと頷いた。

「私と砂里は掟に背いて、たびたび外界の島々へと出掛けていた。そこで聞いた噂によると、ここより南に位置するニベルー島には、太古からの神が存在するという。今現在、島に暮らしているのは主に、他の島からの移住者達のはずだ。故に島民の種族は様々。おそらくだが、大陸が分かたれた後に移り住んだのだろう。ただ、彼等が暮らすのは島の東側のみ。西側には、その太古からの神が住まう、深い森が広がっていると聞いた」

「じゃあ、もしかしたらそこに……、河馬ほま神か蘑菇もご神がいるかも知れない、って事?」

「或いは蛾神だな。蛾神は当時、竜人族に守られていた故、河馬神に喰われたとは考えにくい。だが、確実に生きているとは断言出来ない。竜人族は、ここより東に位置するロリアン島に住んでいるが……、なかなかに好戦的な輩でな。私も砂里も、容易には港に近付かぬようにしていた程だ。周辺の諸島に暮らす者たちの話では、竜人族はロリアン島の全土を支配しているとの事だった。なんでも、島の中央に巨大な帝国を築いているとかなんとか……。そのような種族に、果たして神を守る意思があるのかどうかは、甚だ疑問ではあるところだな」

「なるほどね……。あ、モッモ、もう一度世界地図を見せてくれない?」

   グレコに言われて、俺は鞄の中から世界地図を取り出し、それを手渡す。
   グレコはベッドから立ち上がり、袮笛と砂里にも見えるようにと、机の上に世界地図を広げた。
   俺も、一応立ち上がってみたものの……

   あ……、あのさ、その……
   机の上だとさ、俺には見えないんだよ。
   何故って? 俺が小さいからだようっ!

「モッモさん、こっち来る?」

   机の下で怪訝な顔をしている俺に気付いた砂里が、ヒョイと俺の体を抱き上げて、自分の膝の上に乗せてくれた。

「あ、ありがとう……」

   ちょっぴり恥ずかしいのと、不意に体に触れられたゾクゾク感で、俺は少々モゾモゾとした。

「ここがコトコ島よね? それで……、ニベルー島がこっちで、ロリアン島はこれかしら??」

「うむ、恐らくそうだろう。地図というものを初めて見る故、断言は出来ぬが……。コトコ島からの位置的に考えて、こちらがニベルー島で、こちらがロリアン島だ」

「じゃあ、やっぱり……。モッモ、次の島には、きっと何らかの神様が存在するわよ。ネフェ、この地図の上の光はね、神様の居場所を示しているのよ」

   そう言って、グレコか指差す地図の上には、黄色い光が二つ存在していた。
   一つはニベルー島の西側に、もう一つはロリアン島の中央にある。

「神の居場所を示す? それはなんとも不思議な道具だな。ならば、この光がある場所は……。うむ、間違いなく、帰らずの森だな」

   帰らずの森!? また物騒なお名前ねっ!??

「帰らずの森って……、どういう場所なの?」

「その名の通りだ。ニベルー島の西側に位置する、太古からの神が存在するという森に足を踏み入れた者は、誰一人として帰ってきた試しがないと、港町の者達は言っていた。森の近くに住む者の話だと、巨大な生き物が群れを成して走る姿を見た事があると……。しかし、それが何なのかは誰も知らないと言っていた」

   ひゃあっ!? マジの帰らずだぁあっ!??
   そんなとこに神様の光があるとっ!?!?
   うぅう~……、行きたくないぃ~……

「けど……。ねぇモッモ、ニベルー島には、ケンタウロス達が住んでいるって、前にノリリアに聞いたわよね?」

「え!? けっ!?? ……あ、そんな気もする」

「そんな気もするって……、はぁ……。まぁいいわ」

   グレコ! 呆れた顔しないでくだぱい!!
   体の小ささに比例して、脳味噌も小さいんです!!!
   物覚えが悪いのは、仕方のない事なんです!!!!

「ケンタウロス? かつての大陸にあった、各種族が住処としていた森の位置から考えると、ニベルー島に位置する土地には、半人半馬の馬人族共が存在していたが……」

「半人半馬の馬人族? それはきっとケンタウロスね。特徴が一致するもの。となると、帰らずの森に住んでいるのは、ケンタウロスで間違いなさそうね。でも……、ノリリアは、彼らは五種族の中でも知性が高くて、一番話が通じるって言っていたのに……。そんな彼らの住む森に、どうして帰らずの~なんて名前が付いているのかしらね」

   ……ねぇグレコ、気付いてる?
   今君、暗に、鬼族は話が通じないって言ったんだよ??
   きっと、袮笛も砂里も、気にしちゃいないだろうけどね。

「ニベルー島には、島の南東に交易の為の港町がある。小さい町ではあるが、とても綺麗な所だ。そして、足を運んだ事はないが、島の北側には古くから島に暮らす者達の国があると聞いた。どんな種族の者達が暮らしているのかは定かではないが……、先ほども言ったように、港町の者は他の島からの移住者が多い。帰らずの森の情報を知り得たいのならば、一度北の地に赴き、古くからの住人である北の国の者達に話を聞いた方が賢明だろう」

   袮笛の言葉に、俺とグレコはふむふむと頷いた。

「そして、こちらのロリアン島にある光は、恐らく竜人族の帝国がある場所だ。島のほぼ中央に位置している故、間違いない」

「竜人族の帝国かぁ……。まだその、竜人族ってのがどんなものなのか分からないから何とも言えないけれど……。とにかく、行き先は決まったわね。ニベルー島の西側にある帰らずの森と、ロリアン島の中央にある竜人族の帝国。この二つには、是が非でも足を運ばないと」

   くぅおおぉぉ~……、帰らずの森も、竜人族の帝国も、どっちも俺には荷が重いぞぉ~!?

「姉様、ここは? こちらにも光がありますよ??」

   砂里が指差すのは、ピタラス諸島のほぼ中央に位置する大きな島。
   大小様々な形をした島々に囲まれた、アーレイク島だ。

「この島は駄目だ。砂里、お前も知っているだろう? ここには凶暴な鳥人族が暮らしている」

「あっ! もしかして……、他種族であれば何者であろうとも攻撃を仕掛けて、その肉を喰らい尽くすというあの、恐ろしい鳥人族の島ねっ!?」

   うえぇええぇぇ……、アーレイク島が一番ヤバいの~ん?

「それって、ハーピー族の事かしら? 背中に羽の生えた……、半分鳥で、半分人間のような姿の種族よね??」

「恐らくそれだろう。我々は奴らの事を鳥人と呼ぶが、奴ら自身は自らの事をハルピュイアと呼んでいた。かつての大陸でも、現在の諸島内でも、鳥人族がもっとも獰猛で危険な種族だと私は考えている」

   ぐはっ! ……もう、行きたくないれす。
   やっぱり、パーラ・ドット大陸に到着するまでの間、ずっと船の中に閉じこもっていた方がいいんじゃないかなぁ?

「そうなのね……。でも、ここにも神様の光がある以上、避けて通る事は出来ないわね」

   あぁああぁぁ……、考えただけでも死んじゃいそう……

「アーレイク島には近付いた事すらない故、島内がどうなっているのかは私にも分からない。ただ、一番近くの島の者の話では、鳥人族達はある建物を守っているそうだ」

「建物?」

「うむ。なんでも、ピタラス諸島に暮らす種族の力では到底造る事など出来そうもない、天にも届きそうなほどに高い建物だと聞いた事がある」
   
   それは、もしかして……、いや、もしかしなくても、アーレイク・ピタラスの墓塔、別名封魔の塔なのでは?

「ハルピュイア達が、建物を守っている……? それは興味深い話ね」

   顎に手を当てて、考える素振りを見せるグレコ。

「私が二人に伝えられる事はこのくらいだな。だが、これだけは言っておかねばなるまい……。神というものは、どのような神であっても、邪神となり得る可能性がある存在だ。あの白様ですら、邪神になりかけた過去をお持ちなのだからな。一度滅びる事で、自らそれを阻止なされたが……。そのような意志の強い神はそうそういないだろう。この光が示すものが神々であるのならば、二人とも、それ相応の覚悟を持っていけ。神に近付くという事は、そういう事だ」

   袮笛の言葉に、俺とグレコは、ゴクリと生唾を飲んだ。

   ……ねぇグレコ、とりあえずさ、各島々の港に導きの石碑を建てておくからさ、島の攻略はまたの機会にしない?
   ノリリア達がいろいろと問題を解決して……、安全になってから、島を巡る事にしない??
   なんかもう、話を聞いている限りだと、命がいくつあっても足りない気がします、はい。
   野蛮で危険な種族達と、邪神かも知れない神々だって???
   もう……、最弱の俺には、いろいろと難易度高すぎですよぉっ!!!!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

魔境暮らしの転生予言者 ~開発に携わったゲーム世界に転生した俺、前世の知識で災いを先読みしていたら「奇跡の予言者」として英雄扱いをうける~

鈴木竜一
ファンタジー
「前世の知識で楽しく暮らそう! ……えっ? 俺が予言者? 千里眼?」  未来を見通す千里眼を持つエルカ・マクフェイルはその能力を生かして国の発展のため、長きにわたり尽力してきた。その成果は人々に認められ、エルカは「奇跡の予言者」として絶大な支持を得ることになる。だが、ある日突然、エルカは聖女カタリナから神託により追放すると告げられてしまう。それは王家をこえるほどの支持を得始めたエルカの存在を危険視する王国側の陰謀であった。  国から追いだされたエルカだったが、その心は浮かれていた。実は彼の持つ予言の力の正体は前世の記憶であった。この世界の元ネタになっているゲームの開発メンバーだった頃の記憶がよみがえったことで、これから起こる出来事=イベントが分かり、それによって生じる被害を最小限に抑える方法を伝えていたのである。  追放先である魔境には強大なモンスターも生息しているが、同時にとんでもないお宝アイテムが眠っている場所でもあった。それを知るエルカはアイテムを回収しつつ、知性のあるモンスターたちと友好関係を築いてのんびりとした生活を送ろうと思っていたのだが、なんと彼の追放を受け入れられない王国の有力者たちが続々と魔境へとやってきて――果たして、エルカは自身が望むようなのんびりスローライフを送れるのか!?

処理中です...