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9-11 写生の誘い
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「はい、何か御用でしょうか?」
振り向いて返事をすると彼が私に尋ねてきた。
「君…ひょっとして何処かで会ったことないかな?」
もしかして…私の事を思い出したのだろうか?
「はい。数日前に港でお会いしています」
「あ、やっぱりあの時の人か。メイドさんの姿をしているから気づかなかったよ。君は城で働くメイドさんだったんだね?」
「いえ、本日だけ臨時でメイドのお仕事をさせて頂いているだけです」
…何故か彼には勘違いされたくなかった。
「え?そうだったのかい?それじゃ普段は王宮務めじゃないんだね?」
「はい。普段は学校に通っています。今は冬期休暇中なのでお休みなのです」
「そうか…君も僕と同じ学生だったんだね?でも偉いね。学校のお休み中に仕事をして働いているなんて」
彼は笑みを浮かべて私を見た。
「え…?」
その言葉に驚いた。
お城のクリスマスパーティーに招かれ、そして見るからに高級そうな服を身につけている彼は恐らく高位貴族に間違いないだろう。
私は今迄身分の高い人たちに散々蔑みの目で見られてきた。そして初めて私を軽蔑の目で見なかった貴族の人は…レナート様だった。
だからこそ、私はレナート様を好きに…。
尤も今ではもう、終わってしまった初恋だけど。
「あの…どうかした?」
不意に戸惑った様子で彼は声を掛けてきた。気づけば私は彼を凝視してしまっていたようだった。
「あ…す、すみません。そのお召し物が…とても良くお似合いだったので思わずみてしまいました」
とっさに言い訳めいた言葉を口にしたが自分で言った台詞に恥ずかしくなり、思わず顔が赤くなってしまった。
「…」
彼は一瞬驚いた様子で私を見たけれども、次の瞬間フッと笑い…私に言った。
「君も、そのメイド服…とてもよく似合っているよ」
「え…?」
「明日…」
不意に彼が言う。
「え?」
「明日もこの間の港に11時に写生をしに行くつもりなんだ」
「11時…」
「もしよければ君も来るかい?絵を描きたいんだろう?教えてあげるよ」
「え…?い、いいのですか…?」
「うん、いいよ。待ってるから」
「!」
待ってる…。その言葉に顔が赤くなるのを感じた。
「あ、あの…私…」
本当に行ってもいいのですか…?
そう言おうとした矢先―。
「おーい、そこのメイド、ちょっと手を貸してくれ!」
突然背後から呼ばれた。振り向くと手招きしているフットマンがいた。
「あ…呼ばれたので、私…行かないと…」
「うん、そうだね。行ったほうがいいかもね」
「すみません、失礼します」
頭を下げ、踵を返すと私は急いでフットマンの元へ向かった。
「すみません、お呼びでしたか?」
「ああ、立食用の食事が足りなくなりそうなんだ。運ぶのを手伝ってくれ」
「はい、わかりました」
そして私はフットマンに連れられて、厨房へと向かった。
その後―
私はパーティー会場で忙しく働き…彼に会うことは無かった―。
振り向いて返事をすると彼が私に尋ねてきた。
「君…ひょっとして何処かで会ったことないかな?」
もしかして…私の事を思い出したのだろうか?
「はい。数日前に港でお会いしています」
「あ、やっぱりあの時の人か。メイドさんの姿をしているから気づかなかったよ。君は城で働くメイドさんだったんだね?」
「いえ、本日だけ臨時でメイドのお仕事をさせて頂いているだけです」
…何故か彼には勘違いされたくなかった。
「え?そうだったのかい?それじゃ普段は王宮務めじゃないんだね?」
「はい。普段は学校に通っています。今は冬期休暇中なのでお休みなのです」
「そうか…君も僕と同じ学生だったんだね?でも偉いね。学校のお休み中に仕事をして働いているなんて」
彼は笑みを浮かべて私を見た。
「え…?」
その言葉に驚いた。
お城のクリスマスパーティーに招かれ、そして見るからに高級そうな服を身につけている彼は恐らく高位貴族に間違いないだろう。
私は今迄身分の高い人たちに散々蔑みの目で見られてきた。そして初めて私を軽蔑の目で見なかった貴族の人は…レナート様だった。
だからこそ、私はレナート様を好きに…。
尤も今ではもう、終わってしまった初恋だけど。
「あの…どうかした?」
不意に戸惑った様子で彼は声を掛けてきた。気づけば私は彼を凝視してしまっていたようだった。
「あ…す、すみません。そのお召し物が…とても良くお似合いだったので思わずみてしまいました」
とっさに言い訳めいた言葉を口にしたが自分で言った台詞に恥ずかしくなり、思わず顔が赤くなってしまった。
「…」
彼は一瞬驚いた様子で私を見たけれども、次の瞬間フッと笑い…私に言った。
「君も、そのメイド服…とてもよく似合っているよ」
「え…?」
「明日…」
不意に彼が言う。
「え?」
「明日もこの間の港に11時に写生をしに行くつもりなんだ」
「11時…」
「もしよければ君も来るかい?絵を描きたいんだろう?教えてあげるよ」
「え…?い、いいのですか…?」
「うん、いいよ。待ってるから」
「!」
待ってる…。その言葉に顔が赤くなるのを感じた。
「あ、あの…私…」
本当に行ってもいいのですか…?
そう言おうとした矢先―。
「おーい、そこのメイド、ちょっと手を貸してくれ!」
突然背後から呼ばれた。振り向くと手招きしているフットマンがいた。
「あ…呼ばれたので、私…行かないと…」
「うん、そうだね。行ったほうがいいかもね」
「すみません、失礼します」
頭を下げ、踵を返すと私は急いでフットマンの元へ向かった。
「すみません、お呼びでしたか?」
「ああ、立食用の食事が足りなくなりそうなんだ。運ぶのを手伝ってくれ」
「はい、わかりました」
そして私はフットマンに連れられて、厨房へと向かった。
その後―
私はパーティー会場で忙しく働き…彼に会うことは無かった―。
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