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9-10 パーティー会場で会った人
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「そこの君、私に白ワインを持ってきてくれないか?」
「私にはシャンパンをお願いするわ」
立食の席で色々な来賓客の人たちが飲み物を頼んでくる。
「はい、少々お待ち下さい」
頭を下げると、奥のテーブルにある飲み物席に行って注文を受けたグラスを探し出す。
「え~と、白ワインと…シャンパン。これね」
間違いが無いか確認し、それぞれのグラスを銀のトレーに乗せると急いで先程のお客様の元へと向かう。
「すみません、お待たせ致しました。白ワインとシャンパンでございます」
頭を下げて男性客と女性客の前にトレーを差し出す。
「ああ、ありがとう」
「フフ、ありがとう。可愛いメイドさん」
「あ、ありがとうございます。それでは失礼致します」
思わず顔が赤くなり、頭を下げるとすぐに待機場所へと戻ると、突然音楽が変わった。
そして人々はホールの中央を開けると、そこ1組の男女のカップルが現れた。
「あ…あれは…」
思わず口に出してしまった。何と現れたのはイアソン王子とワインレッド色のドレスに身を包んだミレーユさんだった。
「イアソン王子…ミレーユさんをパートナーに選んだのね…」
2人は音楽に合わせて優雅に踊っている。本当にお似合いだった。そして改めて思った。
イアソン王子のパートナーにならなくて良かったと。恐らくこのパーティーは身分の高い人が踊った後に、来賓客たちが踊れるようになるのだろう。
私は基本のダンスすら踊れない。きっと猛特訓をしても本番に間に合う事は無かっただろう。
「良かったわ…大勢の人の前で恥をかくことが無くて…」
思わずポツリと呟いた時、背後から声を掛けられた。
「あの、レモネードはあるかな?」
その声には聞き覚えがあった。
「え?」
思わず振り向き…目を見張った。私の背後に立っていたのは高級そうな濃紺スーツに身を包んだ、港で出会ったあの少年だったのだ。
「あ、貴方は…」
「え?僕がどうかした?」
少年は首を傾げて私を見る。その反応に私は落胆してしまった。彼は…私のことを覚えてはいなかったのだ。
「い、いえ。何でもありません。レモネードですね?確認してきますので少々お待ち頂けますか?」
頭を下げると、急いで飲み物席に向かった。そこで待機しているフットマンに尋ねた。
「すみません、レモネードはありますか?」
「ああ、これだよ」
フットマンは細長いグラス指さした。グラスには薄っすらと黄色に色づく飲み物が注がれている。
「どうもありがとうございます」
頭を下げ、手にしていた銀のトレーにレモネード入りのグラスを乗せると、急いで彼の元へ戻った。
「すみません、お待たせ致しました。レモネードでございます」
彼の元へ戻るとトレーを差し出した。
「ありがとう」
彼は私のトレーからすぐにグラスを受け取ると口に入れた。
「それでは失礼致します」
頭を下げて、背を向けた時。
「あ、ちょっと待って」
彼が私を呼び止めてきた―。
「私にはシャンパンをお願いするわ」
立食の席で色々な来賓客の人たちが飲み物を頼んでくる。
「はい、少々お待ち下さい」
頭を下げると、奥のテーブルにある飲み物席に行って注文を受けたグラスを探し出す。
「え~と、白ワインと…シャンパン。これね」
間違いが無いか確認し、それぞれのグラスを銀のトレーに乗せると急いで先程のお客様の元へと向かう。
「すみません、お待たせ致しました。白ワインとシャンパンでございます」
頭を下げて男性客と女性客の前にトレーを差し出す。
「ああ、ありがとう」
「フフ、ありがとう。可愛いメイドさん」
「あ、ありがとうございます。それでは失礼致します」
思わず顔が赤くなり、頭を下げるとすぐに待機場所へと戻ると、突然音楽が変わった。
そして人々はホールの中央を開けると、そこ1組の男女のカップルが現れた。
「あ…あれは…」
思わず口に出してしまった。何と現れたのはイアソン王子とワインレッド色のドレスに身を包んだミレーユさんだった。
「イアソン王子…ミレーユさんをパートナーに選んだのね…」
2人は音楽に合わせて優雅に踊っている。本当にお似合いだった。そして改めて思った。
イアソン王子のパートナーにならなくて良かったと。恐らくこのパーティーは身分の高い人が踊った後に、来賓客たちが踊れるようになるのだろう。
私は基本のダンスすら踊れない。きっと猛特訓をしても本番に間に合う事は無かっただろう。
「良かったわ…大勢の人の前で恥をかくことが無くて…」
思わずポツリと呟いた時、背後から声を掛けられた。
「あの、レモネードはあるかな?」
その声には聞き覚えがあった。
「え?」
思わず振り向き…目を見張った。私の背後に立っていたのは高級そうな濃紺スーツに身を包んだ、港で出会ったあの少年だったのだ。
「あ、貴方は…」
「え?僕がどうかした?」
少年は首を傾げて私を見る。その反応に私は落胆してしまった。彼は…私のことを覚えてはいなかったのだ。
「い、いえ。何でもありません。レモネードですね?確認してきますので少々お待ち頂けますか?」
頭を下げると、急いで飲み物席に向かった。そこで待機しているフットマンに尋ねた。
「すみません、レモネードはありますか?」
「ああ、これだよ」
フットマンは細長いグラス指さした。グラスには薄っすらと黄色に色づく飲み物が注がれている。
「どうもありがとうございます」
頭を下げ、手にしていた銀のトレーにレモネード入りのグラスを乗せると、急いで彼の元へ戻った。
「すみません、お待たせ致しました。レモネードでございます」
彼の元へ戻るとトレーを差し出した。
「ありがとう」
彼は私のトレーからすぐにグラスを受け取ると口に入れた。
「それでは失礼致します」
頭を下げて、背を向けた時。
「あ、ちょっと待って」
彼が私を呼び止めてきた―。
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