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16.好きでも嫌いでも
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「それで、この学校の授業の時間割の決め方がスゴく特殊ってどういうこと?」
スネているチョウちゃんに問いかけると、チョウちゃんは大きなため息を吐いた。
スゴく不本意な反応ではあるが、さっきまでおちょくっていた手前何も言えないので聞かなかったことにして、チョウちゃんの言葉を待った。
「特殊っていうのは、最低限の条件はあるんだけど、生徒が受ける授業を選んだうえでその人専用の時間割が作られるからなんだよ」
「どういうこと?」
授業が選択式ということは理解できたのだが、最低限の条件とかその人専用の時間割とかいう部分がわからなかったので首を傾げた。
「最低限の条件というのは、国語・数学・社会・理科・英語の5教科のうちから最低でも2教科、副教科も含めた全教科のうちから最低でも5教科を選ばないといけないというものですね」
「つまり、5教科全て選ぶ代わりに副教科は全く選ばないとか、5教科から2教科選んでのこり3教科は副教科とか、5教科も副教科も全部選ぶとかも出来るってわけだよ」
ヒサコさんの補足とチョウちゃんの例えのおかげでようやく特殊と言っていた意味が理解出来た。
最低限の条件はあるものの、全教科から自分にあった授業だけを選んで時間割が組めるなんて、確かに特殊と言える。
高校の中には一部授業が選択式になっていたりはするが、ここまで自由に授業を選べる高校なんてどこを探してもないだろう。
「でも、それだと生徒の選ぶ教科数によっては生徒間で5教科の授業の進み具合とかに差が出てしまわないの?それに、時間割を作るのも大変でしょ?」
新入生が何人いるのかは知らないけど、5教科と副教科から最低限でも5教科、最大だと全教科となると選べる選択肢の数は途方もない数になり、選択肢が全てかぶる生徒がたくさん出てくる可能性はほぼない。
そうなると、それぞれの教科の受ける授業数も変わってくるわけで、同じ教科を選択していても進み方は生徒によって差が出てくる。
「それは大丈夫ですね。時間割の作り方としては、まず5教科だけの時間割を作ったうえで生徒それぞれが選んだ5教科のうちの2教科以外の場所に副教科を当てはめていくという作り方なので5教科の授業の受ける回数は同じになるので、授業の進み具合に差が出ることはありません」
「それに、大体みんな5教科からは2教科、副教科からも3教科の最低限の5教科しか選ばないから時間割作るのも苦労しないんだよ」
確かに、好きに授業を選べるからといって、多くの授業を選んで受けようとは思わないよね。特に5教科は受ける授業が増えれば増えるほど覚えることも増えてくるし。
「じゃあ、テストとかはどうするの?」
5教科の中から最低2教科となると、選ばなかった残り3教科は当然全く授業を受けてないのでテストをしたところで0点を取るだろう。
「それはもちろん授業を受けた5教科のテストだけを受けてもらうよ」
「副教科については中間・期末共にテストはありませんから授業数が変わっても問題ないのですよ」
まぁ、当然そうなるよね。
納得しつつもやっぱり不思議に思う。
「これだけ自由に授業を選べるって、かなり異例の考え方だよね」
昔っから日本の教育の考え方はみんな同じことを習う集団教育が基本だ。
もちろんそれが悪いとは言わないけど、それでも多様化しつづけ、個性を伸ばすことも必要になっている現代ではそれだけではダメになっているのも確かなわけで。
って、なんで僕がそんなことを考えているんだろうか。
「それは初代理事長のこんな言葉があるからだよ。
『人には誰しも得意不得意がある。なのに世の中は不得意があることが悪のように言い、1つでも出来ないことがあるとそれを欠点と呼ぶ。
おかしいとは思わないか?
別に不得意なことがあるのは悪ではなく、出来ないことは欠点ではない。
もちろん不得意なことを出来るように頑張ることがムダだとは言わないが、やりたいことを自由にやらせることもまた1つの教育の形だとワシは思っている。だから、何を選択して何を習うかは生徒が決めるべきだと思っている』
ってね」
「そんなことを言えて、こうして学校を立ち上げた初代理事長ってスゴい人だったのでしょうね」
なかなか言葉に出来てもそれを本当に行動に移せる人間はそうそういないので、僕はその初代理事長をスゴく尊敬する。
「本当にスゴい人だと私も思うね!
というわけだから、多分コウくんが懸念している体育については、コウくんが選ばなければ済むっていう話なんだよ」
確かに体育についてはどうするのかを聞いてはおきたかった。なにせ、授業の中で1番問題になるのは体育の時の着替えと水泳だと思っていたからね。
着替えについては最悪中に体操服をずっと着込んでいればいいだけなのだけど、それでも夏は暑いのでそうもいってられないし、汗をかいた後の体操服をずっと着続けるのは気持ち悪いので出来ればしたくない。
そして、水着なんてもはやどうしようも出来ないものであり、水着姿になった時点で1発アウトだ。
しかし、授業を自分で選択出来るのであれば、チョウちゃんの言う通り僕が選ばなければいいだけのことなので、授業の中で1番の問題点は解決したといえる。
僕的には体育は好きでも嫌いでもない授業だから選べなくても問題はないし、別に運動したいなら体育の授業以外ですればいいわけだし。
「なるほど。確かに時間割の決め方がスゴく特殊だし、体育を選ぶ理由はないね」
「だよね。もしここまで聞いても体育を選ぶって言われたらどうしようかとハラハラしてたよ」
と言っているチョウちゃんだが、僕が体育を選ぶと言ったところで笑ってOKを出すだろう。
スネているチョウちゃんに問いかけると、チョウちゃんは大きなため息を吐いた。
スゴく不本意な反応ではあるが、さっきまでおちょくっていた手前何も言えないので聞かなかったことにして、チョウちゃんの言葉を待った。
「特殊っていうのは、最低限の条件はあるんだけど、生徒が受ける授業を選んだうえでその人専用の時間割が作られるからなんだよ」
「どういうこと?」
授業が選択式ということは理解できたのだが、最低限の条件とかその人専用の時間割とかいう部分がわからなかったので首を傾げた。
「最低限の条件というのは、国語・数学・社会・理科・英語の5教科のうちから最低でも2教科、副教科も含めた全教科のうちから最低でも5教科を選ばないといけないというものですね」
「つまり、5教科全て選ぶ代わりに副教科は全く選ばないとか、5教科から2教科選んでのこり3教科は副教科とか、5教科も副教科も全部選ぶとかも出来るってわけだよ」
ヒサコさんの補足とチョウちゃんの例えのおかげでようやく特殊と言っていた意味が理解出来た。
最低限の条件はあるものの、全教科から自分にあった授業だけを選んで時間割が組めるなんて、確かに特殊と言える。
高校の中には一部授業が選択式になっていたりはするが、ここまで自由に授業を選べる高校なんてどこを探してもないだろう。
「でも、それだと生徒の選ぶ教科数によっては生徒間で5教科の授業の進み具合とかに差が出てしまわないの?それに、時間割を作るのも大変でしょ?」
新入生が何人いるのかは知らないけど、5教科と副教科から最低限でも5教科、最大だと全教科となると選べる選択肢の数は途方もない数になり、選択肢が全てかぶる生徒がたくさん出てくる可能性はほぼない。
そうなると、それぞれの教科の受ける授業数も変わってくるわけで、同じ教科を選択していても進み方は生徒によって差が出てくる。
「それは大丈夫ですね。時間割の作り方としては、まず5教科だけの時間割を作ったうえで生徒それぞれが選んだ5教科のうちの2教科以外の場所に副教科を当てはめていくという作り方なので5教科の授業の受ける回数は同じになるので、授業の進み具合に差が出ることはありません」
「それに、大体みんな5教科からは2教科、副教科からも3教科の最低限の5教科しか選ばないから時間割作るのも苦労しないんだよ」
確かに、好きに授業を選べるからといって、多くの授業を選んで受けようとは思わないよね。特に5教科は受ける授業が増えれば増えるほど覚えることも増えてくるし。
「じゃあ、テストとかはどうするの?」
5教科の中から最低2教科となると、選ばなかった残り3教科は当然全く授業を受けてないのでテストをしたところで0点を取るだろう。
「それはもちろん授業を受けた5教科のテストだけを受けてもらうよ」
「副教科については中間・期末共にテストはありませんから授業数が変わっても問題ないのですよ」
まぁ、当然そうなるよね。
納得しつつもやっぱり不思議に思う。
「これだけ自由に授業を選べるって、かなり異例の考え方だよね」
昔っから日本の教育の考え方はみんな同じことを習う集団教育が基本だ。
もちろんそれが悪いとは言わないけど、それでも多様化しつづけ、個性を伸ばすことも必要になっている現代ではそれだけではダメになっているのも確かなわけで。
って、なんで僕がそんなことを考えているんだろうか。
「それは初代理事長のこんな言葉があるからだよ。
『人には誰しも得意不得意がある。なのに世の中は不得意があることが悪のように言い、1つでも出来ないことがあるとそれを欠点と呼ぶ。
おかしいとは思わないか?
別に不得意なことがあるのは悪ではなく、出来ないことは欠点ではない。
もちろん不得意なことを出来るように頑張ることがムダだとは言わないが、やりたいことを自由にやらせることもまた1つの教育の形だとワシは思っている。だから、何を選択して何を習うかは生徒が決めるべきだと思っている』
ってね」
「そんなことを言えて、こうして学校を立ち上げた初代理事長ってスゴい人だったのでしょうね」
なかなか言葉に出来てもそれを本当に行動に移せる人間はそうそういないので、僕はその初代理事長をスゴく尊敬する。
「本当にスゴい人だと私も思うね!
というわけだから、多分コウくんが懸念している体育については、コウくんが選ばなければ済むっていう話なんだよ」
確かに体育についてはどうするのかを聞いてはおきたかった。なにせ、授業の中で1番問題になるのは体育の時の着替えと水泳だと思っていたからね。
着替えについては最悪中に体操服をずっと着込んでいればいいだけなのだけど、それでも夏は暑いのでそうもいってられないし、汗をかいた後の体操服をずっと着続けるのは気持ち悪いので出来ればしたくない。
そして、水着なんてもはやどうしようも出来ないものであり、水着姿になった時点で1発アウトだ。
しかし、授業を自分で選択出来るのであれば、チョウちゃんの言う通り僕が選ばなければいいだけのことなので、授業の中で1番の問題点は解決したといえる。
僕的には体育は好きでも嫌いでもない授業だから選べなくても問題はないし、別に運動したいなら体育の授業以外ですればいいわけだし。
「なるほど。確かに時間割の決め方がスゴく特殊だし、体育を選ぶ理由はないね」
「だよね。もしここまで聞いても体育を選ぶって言われたらどうしようかとハラハラしてたよ」
と言っているチョウちゃんだが、僕が体育を選ぶと言ったところで笑ってOKを出すだろう。
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