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第18章 終わる世界と始まる想世
第428話:ズルい大人のイカサマ講座
しおりを挟むロキ――この神の名前はよく知られているはずだ。
北欧神話の有名神である。
神話における“トリックスター”の代名詞としても名高い。
アース神族の主神オーディンと義兄弟の契りを結び、雷の戦神トールとは親友よろしく付き合い(トールからすればトラブルしか持ち込まない悪友)、神々の中で最も自由奔放にして、類い希な美貌を持つプレイボーイ。
あらゆるものに変身する魔法を心得、女性に化ければ子供も産める。変化したものに成り切ることで世界をもペテンに掛ける変幻自在の魔神。
分が悪くなれば、空も海も走れる靴でひとっ飛び。
そして――度し難い悪戯好き。
静寂を嫌い、安寧を拒み、平穏を忌み、混乱と騒動をこよなく愛する。
ゆえに彼はトリックスターの代名詞となった。
(※ロキの場合、嫉妬がその動機となることが多い)
自他ともに破滅をもたらす悪巧みを、後先考えずに行うからタチが悪い。そのくせ悪戯が露見し、自分が罰を受ける段になると小物のように謙る。
必死に命乞いをして、なんとか許してもらうのだ。
こんなことを繰り返すアース神族の厄介者だが、瓢箪から駒というか意外な功績もあるため、オーディンたちも見捨てなかったのかも知れない。
(神槍グングニル、撃槌ミョルニル、神馬スレイプニル……こういったアース神族の宝は、ロキが起こした騒動から誕生した経緯がある)
そんなロキにも年貢の納め時がやってくる。
主神オーディンの後継にして、その妻フリッグが最も愛した息子。光の神バルドルを殺してしまったのだ。当人は直接手を下さず暗殺に近い形式を取ったものの、そのほとんどがロキの仕業である。
黙っていればバレないものを、ロキはこれを宴の席で暴露した。
さすがにこれはアース神族の誰も庇いきれない。
ロキは罰として2人の息子を目の前で処刑され、息子の腸で拷問具に拘束されると、光届かぬ地の底へと封じられてしまった。
以後、ロキは神々の黄昏まで幽閉されたという。
――最悪にして絶死をもたらす終焉にロキを名乗る老爺がいる。
戦争前にロンドの本拠地へ潜入捜査を行った際、20人の終焉者の名前を知るとともにこの事実も得られた。これを聞いた者の大半は「ハハーン、あの有名なロキから取ったんだな」と早合点したものだ。
ロキならば変身能力に長けるのではないか?
誰もが安易にそう予測したのだが、これに異を唱えた者がいた。
博覧強記娘ことフミカである。
『この人、ロキはロキでもウートガルザのロキがモデルッスね多分』
確かにフルネームは“ウトガルザ・ロキ”だった。
ウートガルザのロキとは何者か? トリックスターとして名を馳せるロキとは別物なのか? これらの疑問にフミカは丁寧に教えてくれた。
『ウートガルザは都市の名前、そこを治める巨人の名前がロキッス』
悪戯好きなロキとは同名なだけだという。
(※ただし、どちらのロキも巨人ヨトゥンを祖とする共通点はある)
邪悪の象徴とされる霜の巨人ヨトゥン。
そのヨトゥンのお膝元である巨人の世界ヨトゥンヘイムには、いくつかの都市があった。そのひとつが主要都市でもあるウートガルザだ。
このウートガルザを支配する巨人こそロキである。
『巨人だから怪力なのは勿論のこと、このロキの本当の武器は幻術と知恵ッス。力なんてほとんど使わず、相手を手玉にとって弄ぶタイプの強者ッス』
戦神トールさえ散々なくらい負かされていた。
諸事情によりヨトゥンヘイムを訪れていたトール一行。
ウートガルザのロキは彼らを館へと招き入れた。
そしてトールを挑発すると、自らは動かず下僕や縁者を立てて様々な勝負を挑んできた。喧嘩っ早いトールはこれらすべてに受けて立つ。
しかし、その結果は無残なものだった。
飲み比べで負け、力比べで負け、取っ組み合いで負け……連戦連敗。
この時はロキも同行していたが、彼もウートガルザのロキの幻術や策略を見破ることができず、早食い対決で負けてしまった。
(※トールたちの尊厳のため補足説明すると、ウートガルザのロキは彼らを警戒したからこそ、魔法で追い払ったのだ。炎、老い、思考……神でも太刀打ちできない事象を人間に化身させて勝負に挑ませていた。彼らは負けこそしたが最後まで食い下がったため、ウートガルザのロキは戦々恐々だったという)
居城から動かず、挑戦してくる勇者を待ち構え、徹底的に打ち負かす。
魔王の如き振る舞いをする邪悪な巨人とのことだ。
『もしもこの毛玉みたいなお爺さんがモデルにしているのがウートガルザのロキだったら、変身よりも幻覚などを得意としているかもッスね』
フミカは名前からの推論をそう締め括った。
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「知恵ってのは力だな……ドンピシャだぜ、フミカ嬢ちゃん」
バンダユウはフミカの博識を賞賛した。
イタズラ大好きな悪神ロキが有名なあまり、そちらに気を取られて思い違いをしていたら、もっと不利な揚げ足取りをされていたところだ。
この毛玉ジジイ、奇しくもバンダユウと同じ幻術使いである。
ただし、幻術の性質は恐らく真逆だろう。
――何処ともしれない原野の上空。
具体的な場所はわからないが、位置的に大陸中央にある還らずの都と大陸の西南西の海岸近くにあるハトホル太母国の中間くらい。
ダインとフミカは国へ帰る途中、毛玉ジジイのロキに襲撃された。
そのピンチを情報網で聞きつけたバンダユウが、一番近いという理由から馳せ参じた次第である。遊撃手に選ばれたフットワークの軽さもあった。
同時に――ホムラやゲンジロウの悪報も耳に届いた。
予想通りというか悪い予感が当たったというか……。
案の定、最悪にして絶死をもたらす終焉の一員に成り下がっていた。
大方、ホムラがツバサ君への恋心やミロちゃんへの対抗心を破壊神に焚き付けられた結果だろう。そして、駄々甘なゲンジロウはそれに追従したのだ。
あのバカ息子どもが! と心中穏やかではないのは認めよう。
いの一番に駆けつけて二人の脳天に怒りの拳骨を叩き落としたい衝動に駆られたものの、ゲンジロウには姉弟であるレイジとマリが、ホムラには因縁を断ち切れていないミロちゃんが相対したとの報告を受けた。
これを聞いてバンダユウは踏み留まった。
『……兄弟と子供の喧嘩に親がしゃしゃり出るのもお門違いか』
若者の暴走は若者に決着をつけさせよう。
そう年寄りらしく弁え、こちらを優先した次第である。
老兵は老兵の相手をすればいい。
若い新人が老獪な妖怪ジジイに翻弄されているのを見過ごせず、熟練の老兵として助けに馳せ参じたところだ。
最悪にして絶死をもたらす終焉 20人の終焉者。
№17 混迷のフラグ ウトガルザ・ロキ。
戦争前に把握できた終焉者の1人。
名前から推察が重ねられ、当初は変幻自在なトリックスターのロキのような能力者かと思われたが、博識なフミカのおかげで方向修正された。名前からして幻術を得意とするウートガルザのロキのような過大能力を持っているらしい。
その幻術の仕組みに関して、既にバンダユウは見当を付けていた。
「図らずも幻術対決かよ」
負けるわけにはいかねぇな、と意気込むしかない。
バンダユウ・モモチ――穂村組 組長(代理)。
組の構成員が必ずや一流の武道家である穂村組において、バンダユウは手妻師と呼ばれる幻術を取り入れた特異な武術の使い手として知られていた。
『御陀仏になるのもペテン――地獄の底まで騙される』
現実の裏社会ではそう畏怖されたものだ。
六十絡みだがまだ五十代に見えると評判の伊達男。
老人扱いはお断りだが、初老と呼ばれるのは渋いので大目に見る。色男を気取った先代組長ほどではないが、花街で持て囃された面相だ。
置いて尚も鍛錬を忘れない鋼の肉体。
その長身を装うのは、無地でシックな黒一色の着流し。鯔背に肩へ羽織るのは、金糸銀糸でゴージャスに飾り立てた金襴褞袍。これを目立たせるために地味な着物でコントラストが引き立つようにしている。
かつては石川五右衛門みたいにド派手な鬘を被っていた。
だが、あることを契機にスッパリやめた。今ではロマンスグレーに退色してきた長髪を後ろへ撫でつけ、首の後ろで適当に括るだけだ。
不遜を露わにする口元には、ツチノコみたいな極太煙管が揺れていた。
スパァ……と紫煙を吹きかけて威圧する。
ウトガルザ・ロキと名乗る毛玉の妖怪は串刺しになっていた。
バンダユウが幻から実体化させた法剣。刃渡りだけでも商店の看板くらいはある剣身がズップリ刺さるも、どこに刺さっているか判然としない。
この老躯、本当に毛玉にしか見えないのだ。
真っ白な頭髪と冗談みたいに蓄えた白髭に覆われて、そういう動物じゃないかしらん? と首を傾げたくなる外見だった。
肉や骨を断った感触はある。幻術で作られた偽物ではない。
法剣の柄、その先端に降り立ったバンダユウは分析を仕掛ける。
調べるための技能を両眼に走らせるだけではない。ロキの幻惑に騙されないためにも、こちらも幻術の過大能力で補助をして正体を見極めんとする。
ギロリ! と音が聞こえそうな眼光でバンダユウは睨む。
「……テメエ、それ本体じゃねえな?」
ロキにしてみれば爪先みたいなものだろう。
ただし異様に存在感があり、他者の意識を引いて誘導する。
ゲームで言うところの“攻撃目標”を集める役割があった。この毛玉に注目することで視線が乱されて他が疎かとなり、結果的に惑わされてしまうのだ。
チョウチンアンコウが頭にぶら下げる疑似餌に似ている。ただし、その囮は存在感を示すため、本体と繋がっている必要があるらしい。
(※あの提灯みたいなものは誘引突起というそうな)
ロキは喉が悪そうな軋んだ声を漏らす。
「ギギギ……亀の甲より年の功ギ? 一目で見抜かれるとはな……」
「かといって偽物でもねえ」
本体の一部ってところか、とバンダユウは看破する。
毛玉の顔がありそうな部分が揺れ、血走った丸い目玉を剥いたロキは鷲鼻の先端まで覗かせた。驚きのあまり眉の筋肉が動いて顔面が現れたようだ。
「そこまで気付くか……いやはや侮れん」
喃ッ! とロキは爺臭い語尾を裂帛の気合いにした。
――毛玉から突き出る無数の触手。
伸びる触手もゴワゴワとした剛毛に覆われている。
その先端には象牙色の凶器が生えており、ヌラヌラと粘液を帯びていた。あれも肉体の一部、獲物を仕留めるための爪か牙の代替品である。
獲物へ牙を剥く毒蛇の如く、すべての触手がバンダユウに襲いかかった。
こういう時、玄人は慌てないものだ。
触手を上回る速さで新たな法剣を取り出したバンダユウは、巧みの手捌きでそれらを五指に挟み、迫り来る毛まみれの触手を迎え撃つ。
大道芸の投げナイフ顔負けの凄技で、手当たり次第に飛ばす。
撃ち出す威力はマグナム弾を越えていた。
毛まみれの触手と乱射される法剣が幾度となく交錯する。
両者の攻撃は相殺したかのように見えた。
だが、気付けばバンダユウは全身を串刺しにされて血塗れだった。
触手は一本たりとも近寄らせてはいない。
法剣で悉く撃ち落とすか斬り払ったはずなのに、何故かバンダユウのそこかしこに風穴が開いており、止め処なく血の噴水を噴き出していた。
「……へえ、触手も見えなくさせられるのか」
こいつはお見逸れした、とバンダユウは血反吐を吐いて詫びた。
血に濡れた風穴からミチミチと肉を引き裂く音がする。
「お返しギ! ハデハデ半纏男ッ!」
それは不可視の触手がバンダユウの五体を引き裂く音だった。
およそ聞くことはないだろうが、瞬間的に凄まじい力を加えられた人体がバラバラに爆ぜる音が響いた。目の当たりにした若い衆から悲鳴が聞こえる。
『バンの叔父貴ッ!?』
『バンダユウさんッ!?』
血の泡を吹きながら宙を転げるバンダユウの首。
その唇には若者たちの心配を払拭させて毛玉ジジイの肝を凍らせる、余裕の笑みがくっきり浮かび上がっていた。
「半纏じゃねえよ――こりゃあ褞袍っていうんだ」
首だけのバンダユウは器用に顎をしゃくる。
「お返しは結構だぜ。熨斗つけてくれてやったんだから」
まだロキに刺さったままの特大法剣。その剣身の腹にちゃんと熨斗紙を貼り付けておいた。お品書きは当て付けで『御供』と弔事用である。
当然、これから死ぬであろうロキへ向けての弔事だ。
「足りねぇてんなら……割り増しでくれてやる」
バラバラにされたバンダユウの五体。
ギチギチと硬い皮革を捩るような音とともに肉片や骨片が形を変え、瞬く間に何千本もの法剣へと早変わりする。それは串刺しのロキへ照準を合わせるのみならず、四方八方へ散らばるように射出されていく。
「俺を仕留めたと思って姑息な真似してんじゃねえよ!」
バンダユウは怒号を張り上げる。
怒声の拍車を受けた法剣たちが飛燕の速さで飛び交えば、何もない虚空を斬り裂く度に、そこかしこから「ギィッ!?」とロキの悲鳴が聞こえた。
透明な空に血飛沫が舞い踊る。
やがてジワリと現れるのは、ロキとよく似た無数の毛玉だった。
既に振り落とされているが、先刻バンダユウがフォートレス・ダイダラスに降り注がせた際、何百もの見えない何かを切り刻んだ。
こちらも姿を現してみれば、どれも真っ白い毛玉にしか見えない。
あれらはロキの一部――本体と連結した分身だ。
バンダユウを惨殺してダインたちの注意を引きつけ、その隙に見えない分身たちへ隠密行動を取らせ、再び移動要塞に取り憑かせる算段だったのだろう。
そうは問屋が卸さない。
お互い幻術使い、中途半端な幻覚で出し抜けると思うのは浅はかだ。
「そして、俺の本体はとっくの昔に此処にいると……」
――フォートレス・ダイダラス艦橋。
軍艦ではなく移動要塞との触れ込みなので艦橋という言い方が適切なのかはわからないが、搭乗員がいてそれっぽいから艦橋と呼んでおこう。
バンダユウはその壁面に張り付いていた。
ロキの前で煙管をくゆらせていたのは幻術である。
あの毛玉ジジイは偽物だと見抜けず、ズタズタにして悦に入っていた。どうやらバンダユウの幻術を見分けられるほどの分析能力はないらしい。
そいつは好都合だ――騙して欺いて煙に巻いてやる
『バンの叔父貴、大丈夫がか!?』
情報網を介してダインからこちらの身を案じる声が届く。
『バンダユウさん無事ッスね!? 良かったッス……今、駄目姉の情報網を拝借して専用チャンネル開いたんで、これでやり取りしてくださいッス!』
「おう、通信機みたいなもんだな了解了解」
フミカの心配も身に沁みる。若い娘さんから送られる親身な思い遣りは、いくつになっても男は嬉しいものなのだ。
年は取りたくないが、こういう時は年寄り冥利に尽きる。
振り返れば、手を添えたのは艦橋の真正面。
強化されたガラスの内側にはダインとフミカの姿があった。
ハトホル一家 長兄――ダイン・ダイダボット。
在りし日の番長を思わせる長ラン(※ロングコートみたいに丈の長い学ランのこと。改造学生服の一種)みたいなロングコートを羽織り、銀色の髪を逆立てて派手なグラサンで決めた威勢のいい少年である。
半身を機械化したサイボーグという点もバンダユウには好感触だ。
やっぱりロボやメカはいつまでも男心を擽ってくれる。
ハトホル一家 次女――フミカ・ライブラトート。
褐色ではなく小麦色の肌をした健康的な女の子だ。夫となったダインの気を惹くために選んだという、アラビアンでエジプシャンな踊り子風衣装で悩ましい肢体を惜しげもなく飾り立てている。なのに文系美少女というミスマッチさよ。
前髪を揃えた姫カットな眼鏡ッ娘。萌えないわけがない。
これで情報系最強なのだから、世の中見た目だけで判断してはいけない。
どちらも大人びているが、まだ18か9と聞いた。
バンダユウからすれば孫も同然。可愛がってやりたい盛りである。
ふと――孫娘のことを思い出す。
実はバンダユウには血の繋がった孫が一人いる。
極道の嫁になれず離縁したバンダユウの元妻。彼女が親権を引き取った一人息子がいるのだが、そいつが拵えてくれた一粒種だ。
息子はバンダユウに似ず優等生だが、気の利く男だった。
自分の母、つまりバンダユウの元妻に内緒でちょくちょく会いに来ており、結婚して子供に恵まれると、その孫娘にも会わせてくれたのだ。
孫はバンダユウに似て手先の器用な娘だった。
息子は不器用で物にできなかったが、孫娘はちょいと手解きしただけで初歩とはいえ手妻師の技をいくつか身に付けてしまった。
意外にもバンダユウの血統は受け継がれていたのだ。
『あたし、大きくなったら祖父みたいなマジシャンになるのー』
そんな将来の夢を語る幼い孫娘に「手品師じゃねえんだけどなぁ」とバンダユウは苦笑したものだが、気持ち的には満更でもなかった。
ダインやフミカより少し上だが年は近い。
最後に会った時はどこぞのアイドル事務所に合格したとか、VTuberになったとか、祖父のおかげと嬉しそうに話してくれたっけ……。
懐かしい記憶に懐古している場合ではない。
バンダユウは軽く頭を振って気を引き締めると、強化ガラス越しに艦橋内を見つめたまま、フミカの開いた専用チャンネルに向けて話し出した。
「ダイン君、フミカちゃん、気をつけろぃ」
ウトガルザ・ロキはバンダユウと真逆だ、とロキの能力を解説する。
「御存知の通り、俺は何もないところから幻を創って実体を生み出す、手妻師っていうイリュージョニストだ。然るにあの妖怪毛玉ジジイは、実体があるところに“何もないぞ”とこちらに勘違いさせてきやがるんだ」
『透明になる能力って解釈してええんやか?』
『でも、ウチの索敵や探知にまったく引っ掛からなかったッスよ?』
そこが恐ろしいところよ、とバンダユウは注意喚起する。
「ただの身隠し、あるいはダイン君のいう透明化ぐらいなら他愛ねぇよ。俺たちLV999の眼は誤魔化せねぇから一発で見破れる。だが、ありゃあ過大能力だ。それも隠れたり姿を消したりってチャチなもんじゃないと来た」
自らの存在を――透過、希釈、抹消する。
だが、実体がそこにあるという事実は変わらない。
存在しないのだからこちらは八方手を尽くしても感知できず、こちらの攻撃が当たらないのは当たり前、ロキからの攻撃も防ぐことはできない。恐ろしいことに、防御結界などのバリアさえすり抜けられるようだ。
でなければ、フォートレス・ダイダラスが航行不能に陥るはずがない。
開戦と同時に巨獣の襲撃を警戒し、防御スクリーンを展開していた移動要塞。そのスクリーンさえロキは潜り抜けていた。
そうして要塞に取り憑き、エネルギーを吸い取っていたに違いない。
「存在を認識できない――ってのは意外とおっかねえぜ」
バンダユウはとある映画を思い出す。
生物の色素を完全に消して透明にする実験をしていた科学者が、自身を透明化することに成功。だが元に戻れなくり、徐々に狂気へ犯されいく話だ。
「狂った透明人間は次から次へと仲間を手に掛けていく。見えないっていうチートを最大限に活かしたらバケモノよ。人間様じゃ太刀打ちできねえ」
それでも何とか手を尽くして倒すのだが――。
ただ透明になるだけでも十分、人間相手ならば無双ができる。
「あの毛玉野郎は透明になる上、存在するという事象を過大能力で薄めることができるらしい。おかげでこっちからは認識できねぇが、あっちからはやりたい放題のし放題よ。バレねぇから手加減もしやがらねぇと来た」
『なんてチートッスかそれッ!?』
『やけんどまあ、チート言うたらお互い様じゃしなぁ……』
フミカは「ズルい!」と怒り気味だが、ダインは「仕方ないだろ」とこの局面を受け入れていた。お互い様なんて一言に大人の理解力を感じさせた。
いい心構えだ――漢として見所がある。
そういうこった、とバンダユウはダインの意見を酌む。
「どっちもチートっていう棒で殴り合ってるのは言わずもがなよ」
幻覚を現実に実体化させる能力――。
森羅万象を情報化して管理できる能力――。
亜空間に巨大工場地帯を擁する能力――。
これらの過大能力も、チートと言われたら十分チートである。
過大能力を持っているのはお互い様だ。相性による優劣はあるかも知れないが、どちらも常軌を逸した超常的な異能を奮える点で差違はない。
「……むぅ、ちょっと子供っぽかったッスね」
反省ッス、とフミカは自身の未熟な発言を顧みていた。
若いうちに顧みられるのはいいことだ。それはすぐに伸び代となって成長を促す糧となる。老いぼれには難しい頭の柔らかさだ。
『そういうたら……叔父貴はどがいしてあん毛玉の能力を見破ったんぜよ?』
ダインが通信越しに素朴な疑問を投げ掛けてきた。
「なぁに、こっちもチートを存分に活かさせてもらったのさ」
バンダユウの過大能力――【詐欺師の騙りは世界に蔓延る】。
嘘を真にする力――幻覚を実体化させる過大能力だ。
ダインとフミカのピンチを聞き、駆けつけたバンダユウが見たのは宙に浮かぶ毛玉ジジイことロキ。そして出力不足のため墜落寸前の移動要塞。
一見するとロキは何もしていない。
だが、フォートレス・ダイダラスは絶不調に陥っている。
――こりゃあ化かさてれいるな。
手妻師であるバンダユウはそう勘付いたが、さすがにこの時点ではロキの幻術がどのような類のものか判別できなかった。そこで若い2人には悪いと思ったものの、しばらく観察させてもらうことで対策を練ることにした。
無論、手を拱いていたわけではない。
幻術を見破るべく看破系の技能をいくつも働かせてみた。
しかし、いまいち要領を得ない。
「だからな――盛大にぶちまけてみたのさ」
バンダユウは幻を現実にする過大能力で、見渡す限りの周囲一帯に微粒子を作ってみた。別段、吸い込んでも命に別状はない小さな粉だ。
「透明人間ってのは見えないだけで実体はそこにある。だから小麦粉とか染料をぶちまけて姿形を捉えられるようにする……ってのが古典的なセオリーだから、ちいっとそいつを参考にしてみたのさ」
やってることは同じだが趣旨は大きく違う。
バンダユウは実体化させた微粒子の状態を把握できる。
すると、あちこちに微粒子を実体化できない空白地帯があることに気付き、至るところにある不可解な空白を徹底的に調べてみた。
「……んで、そこに何かしらの異物がいると突き止めたのよ」
試しに法剣の雨を降らせたら、あの毛玉が正体を現したというわけだ。
存在を知覚できないので狙うことはできないが、散弾めいた攻撃なら何処かに当たると踏んで、とにかく大量に法剣をばら撒いたら大正解である。
『あん毛玉どもがエネルギーを吸ちょったんか!?』
なんぼ動力炉を噴かしてもイカンわけじゃ! とダインは憤慨した。
フォートレス・ダイダラスの不調が判明し、どこにも不備がなければ故障でもないとわかって一安心しているのも声色からも感じられる。
ここでフミカがはたと気付いた。
『あれ? ちょっと待ってくださいッス……バンダユウさんが振り落としてくれたあの妖怪・毛羽毛現みたいなのって、一杯あったみたいなんスけど……あれ、ロキとかいう敵の本体とリンクした分身なんスよね?』
それってつまり……フミカは嫌な予感が止まらないらしい。
「その予感は正しいぜ、フミカ嬢ちゃん」
バンダユウは艦橋から振り返り、ロキへ視線をくれてやる。
――まだ特大法剣が刺さったの毛玉。
その周囲に綿の花が咲くかの如く白い毛髪が次から次へと湧いてきて、見る間のうちに肥大化すると無数の毛玉になっていく。
ある毛玉は大きな口を開き、ガチガチと鋭い牙を打ち鳴らす。
ある毛玉は獣じみた四つ脚になり、野性的に爪を蹴立てている。
ある毛玉は人型に近くなるも、類人猿のように太い腕で腕力を誇った。
現れたのは毛玉の軍勢――個性に溢れて千差万別。
数十万に及ぶそれらは、どれもこれも幻術で作られた幻影ではない。今までそこにいたのに、存在を薄めることで認識できなかっただけなのだ。
「あのロキってジジイ、一個人で群れになれるみたいだぞ」
自身を群体とする特質的な肉体らしい。
すべて実体を持つ怪物。そしてロキの気配を有する分身だ。
従者や眷族ではない。ロキの本体から分かたれたものである。さっきまではロキの過大能力で存在を薄められていたが、バンダユウにケチを付けられたから露わにしたのだろう。老人特有の短気な行動である。
群れなす毛玉にバンダユウは呆れた眼差しで一瞥した。
「なんだろなありゃあ……あのジジイが成った神族がそういうもんなのか?」
『有り得る話ッスよ。群体でひとつの神格を持つってことッス』
――救世主が調伏したとされる1人の男に取り憑いた無数の悪霊。
――黙示録に記された五番目の災厄にして神格化された蝗の大群。
四神同盟にはこの2つの神霊の名を宿した過大能力を持つ者がいるが、彼女のそれはあくまでも無数の従者を喚び出すものだ。
しかし、ウトガルザ・ロキを名乗るこの老人は異なる。
「群れがアイツでアイツが群れで、ってことだな」
昔々のTS小説ッスね、とフミカにツッコまれてしまった。
バンダユウの青春時代でもかーなーり昔に出版されたお話だというのに、それを知っているとは本当にこの娘さんは物知りで頭が下がる。
そのフミカもやや半信半疑だった。
『全にして一というか、一にして全というか……どうやって個々の統制を取っているのかわからないッスけど。個にして群なのは間違いないッスね』
『今週のビックリドッキリメカでいいぜよもう』
ダインくんが投げやりにまとめた。懐かしいアニメのネタだ。
「とにかく、あの毛玉すべてがロキってジジイよ」
ひとまずこの共通認識でいいだろう。
あの毛玉の群れは過大能力ではなく、ロキが肉体に備えている能力だ。
技能で強化をかけた節もあるが、彼にしてみれば地力である。
群れを出現させたのはロキからの示威行為だった。
「何もわからぬまま知らぬまま気付かぬまま……不可視のこやつらに貪られながら死んだ方が楽だったろうに……もうそんな安楽死はさせてやれないギ」
ロキは哀れみを込めた文言でそんなことを言った。
バンダユウたちは遠慮するように片手を振る。
「いやいや、そっちの方が断然怖ぇだろ」
『見えんバケモノに食われるなんざ考えたくもないぜよ』
『それなんてアブドル・アルハザードの最期ッスか』
衆人環視の白昼、不可視の怪物に喰われた人がいるとかいないとか。
「えぇい! 黙らっしゃいギ!」
すぐ貪り殺してやるギ! とロキは吠える。
しかし、なかなか攻撃を仕掛けてこない。隠していた毛玉を出すことで兵隊の数を増やすものの、それさえモタモタしている感があった。
「ギギッ……身体が言うことを聞かん……このデカい剣のせいギッ!?」
気付いたところで今更だ。
バンダユウの施した細工がしっかり効いていた。
ロキは毛玉に突き刺さる特大法剣を抜こうと、触手を伸ばして四苦八苦していた。あの法剣、抜けにくいように返しが付いているのみならず、エンシェントドラゴンでも悶絶死する毒を塗っておいた。
LV999の神族なので即死は望めないが、身体の動きは鈍くなる。
他の毛玉までジタバタとのた打っていた。
あの反応こそ、すべての群れのロキの一部だという証拠でもあった。
毒への抵抗と解毒に手間取っているのか、毛玉の群れを嗾けることさえままならないらしい。法剣を抜くのにモタついている有り様だ。
この隙を存分に活かさせてもらおう。
「さて、それじゃあ今のうちに作戦会議でもしておこうか」
バンダユウは若者たちに必勝の策を授けていく。
「まずお復習いだ。あの毛玉ジジイの過大能力は存在の希釈による無敵透明化。そして肉体が素で持っているであろう自身を群体とする能力……」
この2つだけでも手を焼かされること請け合いだ。
「そんでな、俺の“勝負師の勘”っていう固有技能が騒いでんのよ。あの妖怪ジジイがひた隠しにしている切り札、そいつが一等厄介だってな」
その切り札についても察しが付いていた。
多分、あの毛玉たちによる軍勢など前座に過ぎない。
あいつらの後ろにおっかないのが控えている。なので毛玉の多さに惑わされていると、終盤戦でちゃぶ台をひっくり返されかねないのだ。
「肝心なその切り札だけどな? ゴニョゴニョヒソヒソ……」
ロキの本命についても予想だが教えておいた。
その上で若者たちに気を引き締めるよう言い聞かせる。
「恐らくだが……あのジジイ、単騎でLV999を5人は相手取れるぞ」
5人!? とダインやフミカの声は裏返っていた。
単身で複数のLV999を向こうに回して大立ち回りを演じられるのは、生半可な戦闘能力ではない。守護神や破壊神に匹敵するレベルだ。
「一人で軍隊やれるってのは……」
ちとヤバい、とバンダユウは率直な危機感を明かした。
圧倒的な数で圧せるというのは、それだけで十分な脅威だ。どれほど個人の武力を先鋭化させようとも、数による面の制圧には太刀打ちできない。
ついでに――総数がわからない。
過大能力で存在感を操れば、毛玉の群れは神出鬼没に使えるはずだ。
こちらを威圧するために次から次へと毛玉の軍団が姿を現しているが、隠したままの毛玉がまだいくらでもいるだろう。その数を読み取ることができない。
これにより敵戦力の総数は不明瞭となる。
結果、こちらは場当たり的な対応を強いられてしまう。
「どれだけ毛玉を倒せば終わるのか? どうすればロキという終焉者を始末できるのか? それを悟らせないことで、俺たちの力配分っていうテンポを狂わせてくる気満々だな。全力の出し方を間違えたら終わりだぜ」
戦力の全体像を把握させず、伏兵は至るところに仕込み放題。
推測や推察を重ねるほどロキが難敵になってくる。
「自分の存在を消せる、ただ数が多い。どちらも単能ならば今の俺たちには大した脅威じゃねえが、こうもベストマッチなタッグを組まれると……」
想像を越える面倒臭い能力となるだろう。
『バンの叔父貴、合体兵器が強いんは世の常ぜよ』
『巨大ロボも合体してこそパワーアップするのが決まりッスからね』
若い2人も妙ちきりんな納得で諦めていた。
「ま、ここまで読めればある程度の予測も成り立つけどな」
ロキの戦術も大まかにだが読めてきた。
たとえばバンダユウたち3人が死力を尽くして、ロキの群体でもある毛玉の群れを全滅させたとする。その頃にはもうヘトヘトになっているだろう。
そこでロキは切り札を出してくるに違いない。
手を変え品を変えはするが、大凡の手順はこんなところだろう。
だからロキの切り札には警戒せざるを得ないのだ。
「存在感を希釈させる過大能力、たった一人で軍隊をリアルに実行できる肉体、その2つを織り交ぜて器用に使い熟すか……」
いやはや――曲者だねぇ。
まともに戦りあえばバンダユウでも危ういかも知れない。
「だが、心配無用だ少年少女諸君!」
キラーン! と安っぽい効果音をさせて白い歯を輝かせたバンダユウは、信用ならない悪党の笑顔で自信満々な口上を並べていく。
「自分より強い奴を欺いて手玉に取る、強敵とはまともにぶつからず搦め手で騙くらかす。大軍が押し寄せてきても手練手管を誑かす……」
俺はそういう喧嘩が得意なのよ、とバンダユウは胸を張った。
欺き、騙し、誑かす、これぞ手妻師の真骨頂である。
「勝てば官軍って言うように、勝つためなら手段を選ばないってのが戦争の道理ってもんよ。あっちもズルしてんだからこっちもズルすりゃあいい」
バンダユウは艦橋の強化ガラスをリズミカルに叩いた。
ダインとフミカの視線を集めてから言い放つ。
「そこで――ズルいオジさんからとっておきのイカサマ講座だ」
あの毛玉妖怪を退治するための必勝法である。
「初回無料の大サービス、若人たちはしっかり聞いておくように」
ダインとフミカにひとつずつ、それぞれの能力に相応しい助言を与えた。詳細に語らずとも、戦場の流れを読んで上手に立ち回ってくれるだろう。
この2人の才覚なら成し得るはずだ。
育ち盛りな若者たちの芽、それが伸びるところを是非とも拝みたい。
「さてそれじゃあ……ぶぅわぁぁぁ~~~と行ってみようか!」
バンダユウが柏手を鳴らした瞬間、移動要塞が鳴動する。
空飛ぶ鋼の巨城とでも形容するべき超巨大要塞。
フォートレス・ダイダラスが巨大ロボへと変型を始めたのだ。
中心的な区画でもある要塞本体からは、いくつもの長大な棟が伸びている。これらが形を変えながら伸縮を繰り返し、巨大ロボの手足を形成していく。本体は追加装甲をまとって鎧武者のような外観となり、艦橋が頭部として迫り上がる。
頭となった艦橋には前立ての装飾も雄々しい兜を装着していた。
要塞から伸びるのは、天を押し上げる巨人の豪腕。
腕の先から現れた手首は、絶大な力の解放に打ち震えるかのように痙攣しながらも目一杯まで開かれ、そこから握力を込めて鉄拳を形作る。
全長1㎞にも及ぶ巨体を支えるのは、その一歩で大地を揺るがす剛脚。
派手なエフェクト、濃霧のような蒸気、めまぐるしい変型。
絶えずそれらを繰り返すことで、要塞は巨神へと姿を変える過程を覆い隠そうとしていた。だが、変型前と変型後にちゃんと関連性が窺える。
現れたのは――雲を突く超巨大ロボ。
巨大要塞としての面影を残したまま、人体を模しながらも武骨な重厚感を湛えたフォルムを形成している。要塞という鎧を身にまとった武神が如くだ。
猛々しくも神々しい大巨神である。
かつて一世を風靡した“勇者ロボ”というシリーズを彷彿とさせる。
だが、ここまで巨大なものはなかったはずだ。
『『想世を成す地母神をお守りするため、その子らである工芸の神と文化の神……我らが造り上げし、世界を創り還る御技を奮うは大巨神ッ!!』』
ダインとフミカの息を合わせた掛け声が天に轟いた。
変型バンクと決め台詞――この2つは巨大ロボに欠かせないものだ。
『『想世巨神王・フォートレスダイダラス──ここに顕現ッ!!』』
要塞から生まれ変わった大巨神は、歌舞伎を思い出させる大見得を切った。その所作で大気が乱され、嵐のような突風が吹き荒れて雷鳴が鳴り響く。
大巨神が地に降り立てば激震に揺れる。
突然の風と雷に巻き込まれても、バンダユウは腕を組んで仁王立ちだ。
「よおぉ~~~し! カッコいいぞぉ~~~ッ!」
むしろ昂揚感を刺激されてハイテンションになっていた。
ド派手な演出を決めた若者たちに負けまいと、幻から数え切れない法剣を実体化させて兵団のように統率する。どちらかと言えばミサイル無限連発だ。
大巨神も元を正せば空飛ぶ移動要塞。
敵を攻撃するための武装は所狭しと搭載済みだ。
『全砲門開けぇい! 砲塔旋回! 目標はどれでも構わんきに!』
『標的、ロキを名乗る群体! 識別できる個体であれば仔細問わないッス!』
フォートレス・ダイダラスは全身から無数の砲塔を起動させる。
装甲の各部が開き、蜂の巣みたいなミサイルポッドをいくつも覗かせた。
これで迎撃態勢は整った。
「さあ親愛なる諸君! 派手に戦ろうぜッ!」
刀身の長い法剣を構えたバンダユウはそれを軍配にする。
切っ先でロキを指し示すと、法剣たちは一斉に毛玉の群れへ降り注ぐ。後を追うようにフォートレス・ダイダラスから砲撃が乱れ飛んだ。
ようやく自身を貫く特大法剣を抜いたロキ。
法剣を放り捨てると、白髭が割れるほど口を開けて吠えた。
「調子に乗るなギ……若造どもがぁッ!」
これを号令と受け取ったのか、毛玉の軍勢が動き出す。
――大空に赤い花が咲き乱れた。
フォートレス・ダイダラスの砲撃が剛毛に覆われた獣を撃ち落とし、バンダユウの操る法剣が牙を剥く毛髪の塊を切り刻む。
そうした血と火による真紅の花が、絶え間なく咲き誇った。
赤い花が咲き乱れる園をバンダユウは駆け抜ける。
法剣と砲撃の真っ只中を潜り抜け、先ほど貫いたロキへ肉薄していく。
こいつは群体の一匹に過ぎないが――特別枠だ。
頭脳や心臓ほど重要性は高くないが、群体を統率する隊長的な役割を担っているらしい。人体に置き換えれば脊髄みたいなものだろう。
条件反射か脊髄反射か、全身である群体に指示を与えていた。
おまけにバンダユウたちの注意を惹く役目もある。
だから毒の大剣で刺されたのにも関わらず、引っ込めるどころか存在感を薄めて隠すことすらできないのだ。
端的に言えば司令塔のロキといったところか。
「だったら、おまえを虐めてりゃ切り札も出てくんじゃねえか?」
バンダユウは鬼のような笑顔で、容赦なくロキを袈裟懸けに斬りつける。フェイントに小型の法剣を投げつけるのも忘れない。
しかもダース単位でだ。
「ギィッ!? 切り札にも勘付くか……つくづく油断ならない男ギ!」
白刃のショットガンみたいな法剣を、ロキは全身から伸ばした剛毛の触手を振るって打ち払う。先端に生やした角ではバンダユウを狙ってきた。
角の中には一際大きな刀剣を模したものもある。
これでバンダユウの法剣を防ぎ、思い掛けず殺陣のように斬り結ぶ。
「ギギギ……さっきから見ていれば若い連中に眼を掛けて」
気に入らんギ! と司令塔のロキは刀剣みたいな角を振り回して、バンダユウを詰りながら何度も何度も斬りつけてきた。
鉈みたいに分厚い角を軽々といなすバンダユウは鼻で笑う。
「なんでぇ、若い奴らに華を持たせちゃ悪いのかい? さっきの『老人より先に死ね』発言といい、おめえさん老害を極めてんねぇ……」
「ギィ! 若いのなど放っておけばいいギ! 育つ奴は勝手に育つし、駄目な奴は人知れずくたばる……それでいいギ! 手間暇掛ける必要などないギ!」
――若者に花を持たせて何が楽しい!?
遠心力を乗せた大振り、刀剣めいた角が真っ向から振り下ろされてくる。
これに返答するべくバンダユウは敢然と受け止めた。
「楽しいねえ――老後の楽しみじゃねえか」
それが穂村組という子供らを育ててきた親父の本懐である。
「ヨチヨチ歩きだった新人が、艱難辛苦を乗り越えて一人前になっていく……それをずっと後ろで腕組みしながら見守るのが熟練のしがない娯楽じゃねえか」
違うかい? とバンダユウは共感の水を向けてみる。
司令塔のロキはわずかに反応した。
「ギギッ、儂にも倅はいるが……とてもそんな気持ちにはなれんギッ!」
「だから老害なんだろうが……よおッ!」
法剣と刀剣めいた角で鍔迫り合いになりかけた直前、バンダユウは軸足を回転させながら腰を捻り、勁を乗せたヤクザキックをロキにお見舞いする。
「大人としてのスタンスが相容れねえな」
「大人? ギギッ、老いぼれの間違いであろうよ……ギギギッ!」
蹴りをまともに受けた司令塔のロキは、そのまま後方へ飛び下がっていく。
彼を守る護衛よろしく、新たな毛玉が湧いてくる。
「破壊神様の巨獣、魔母ジンカイの怪物、頭脳役マッコウの餓鬼……眷族を無数に創れる過大能力はあれど、自らを無限に増やせるのは儂だけギッ!」
過大能力――【澄み渡るゆえ捉えられぬ無敵の軍勢】
自分自身を不可視の軍勢とする能力。
群体を生み出すのに制限はない、ロキはそう口走った。
感情的な発言なので取り繕う余裕はない。ということは体力や魔力に支障がない限り、ロキはいくらでもあの毛玉たちを増産できるというわけだ。
いいことを聞いた――バンダユウはほくそ笑む。
毛玉狩りに精を出さず、さっさと正体を露見させて仕留めればいい。
「じゃあ……この細っそい糸はおまえさんの神経かい?」
バンダユウは視認できない糸を摘まむ。
毛玉から生える超極細の糸を見つけられたロキは動揺する。
「この糸にまで気付くとは……貴様、とんでもない視力ギッ!?」
「あいにく老眼とは無縁でね。最後尾からストリップショーを眺めてても、最前列のかぶり付きと大差ないくらい楽しめるぜ」
目を凝らすと、すべての毛玉から細い糸が伸びていた。
単分子ナノワイヤーとでも言えばいいのか? SF作品なんかに登場するような、分子レベルの細さなのに高性能な超極細な糸なのだろう。
強度も然る事ながら、情報伝達量も桁違い。
これで群体すべてを繋げており、肉体の一部として動かしているのだ。
いくら自分の肉体とはいえ、これだけの途方もない数の分身をひとつひとつ別個の生命体みたいに操れるものだろうか? かなり疑わしい。
操り人形にしても、優れた人形遣いだって数体が限度のはずだ。
尋常ならざる腕なら話は別だが――。
「……そういや昔、テメエみたいな奴がいたな」
バンダユウは裏社会で名を上げた御同輩のことを思い出した。
「一度に百を越える人形を操り、通風口などの狭い道を潜らせて、盗みでも暗殺でも請け負う傀儡師がいるってな。名前は確か……」
――宇頭駕寿郎。
ピクリ、とロキの眉に相当する毛が反応した。
「儂も聞いたことがあるギ……」
御陀仏になるのもペテン――地獄の底まで騙される。
「手妻師の百地万治……そんな男の名をな」
「なんでぃ、お互い様かよ。どっちも有名人じゃねえか」
傀儡師・宇頭駕寿郎は、一度は手合わせしたいと思っていた強者だ。
現実世界へ置き去りにしてきた幻術使い対決のタイトルマッチを、まさか異世界転移の果てに開催できるとは夢にも思わなかった。
「こりゃあ益々負けらんねぇなぁ……」
バンダユウは手にした法剣を振りかざすと、周囲に新たな幻覚を創り出して法剣を何千何万と呼び出した。これまでより大型で突撃に向いた形状に仕上げてみたので、ミサイルみたいに巨大な金剛杵となってしまった。
これで毛玉軍団を蹴散らすつもりだ。
「存在を希釈して透過した儂を見つけた……そこは褒めてやるギ」
圧倒的な攻勢を見せつけても、司令塔のロキは不敵に髭を揺らした。
「しかし、すべてを看破できたわけではないギ?」
はい正解――存在の希釈なんてチート級のズルは破れていない。
防御結界さえすり抜けるほど存在を薄めるなんてどうやってんだよ? って難癖つけたいレベルの話だ。詐欺だ何だと訴えてやりたい。
ただ、攻撃を素通りさせるのは難しいらしい。
おかげでフォートレス・ダイダラスに取り付き、姑息にエネルギーをチュウチュウ吸っていた毛玉たちを追い払えたのだ。あの時やったことは「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」なので、ぶっちゃけ効率が悪い。
こうしている間にも、姿を消した毛玉の群れが忍び寄っているだろう。
「儂のやることは最初から一貫しているギ」
それを采配するロキは、勝利を確信した笑みを浮かべる。
「まずは若造どもをデカブツごと潰す。ジワジワとエネルギーを奪っていってな。そちらの始末が終わったら、おまえを陣を囲んで押し潰すギ」
「ハン! 作戦にもなってねえ……ただの数任せな人海戦術じゃねえか」
せせら笑うバンダユウは背後を仰いだ。
「完璧な作戦ってのを見せてやるよ。なあ人生の新兵諸君!」
『応よ! 任せちょくれバンの叔父貴!』
『まだ人生二十年も歩んでない若造の小細工見せてやるッス!』
フォートレス・ダイダラスの拡声器から元気な声がする。
大巨神の形態になろうとも全身に帯びた武装は健在なので、怒濤の勢いで砲撃が飛んでくる。広範囲を爆破する仕掛けがされた砲弾はそこかしこで炸裂し、目に見える毛玉はおろか見えない毛玉まで吹き飛ばしていた。
飛び交うミサイルも、対人地雷のように爆散力があるものだ。
見えようが見えまいが、周囲一帯を隈なく攻め立てる。
バンダユウからの攻撃も止まらない。
特大ミサイルに等しい巨大金剛杵を際限なく創り、百万連発と叫びたくなる速さで連射乱発を続けていた。これもロキの群体を薙ぎ払っている。
見渡す限りを攻撃する――滅多矢鱈の絨毯爆撃。
自慢でもある毛玉の群れを蹴散らされても、決してロキは怯まない。
「手当たり次第に攻撃すれば儂のどこかに攻撃が当たると期待しての総攻撃……そっちの方が考え無しの能なしギギギッ!」
むしろバンダユウたちの奮闘を愚策とあざ笑った。
バンダユウの周囲に綿の花が咲く。
気付いた時にはもう遅い。極道老人の五体には目に見えない牙や爪がいくつも突き立てられていた。首筋にも齧りつかれ、引き千切られながら縊られる。
いつの間にか毛玉の獣で取り囲まれていたらしい。
こういう伏兵をやってくるから、まったく気が抜けなかった。
「ギギギッ! 伝説の手妻師この手で仕留めたギィ!」
毛玉の中から皺くちゃの手を出して、ロキは自画自賛の拍手を送る。
「おいおい~……ぬか喜びはいけないぜぇ?」
縊り殺されたバンダユウの首は悪夢のように笑った。
首は風船のように膨らむと乾いた音をさせて破裂し、煌びやかな花吹雪を撒き散らしたかと思えば、無数の法剣を四方八方へ炸裂させた。
毛玉たちに噛み破られた肉体も同様、紙吹雪と法剣に早変わりする。
「ハアッハーッ♪ ざんねん、ハッズレー♡」
マジシャンのように最高の笑顔でバンダユウは再出現する。
場所は司令塔になっているロキの背後、意表を突くのもバッチリだ。
「ギギィ!? ま、またしても偽物……ッ!」
「吃驚仰天、度肝を抜かれたって顔だな? 手妻師冥利に尽きるぜ」
手妻師も手品師も、観客を驚かせてナンボである。
それよりロキが驚愕したのは、本物と偽物がすり替わる瞬間をまったく悟らせなかった点についてだろう。群体となった彼ならば尚更のはずだ。
周囲を埋め尽くす速さで湧いてくる毛玉の獣。
あれらは極細の神経で繋がったロキの一部であり、五感を共有している。つまり、数十万を超える毛玉たちの視界は、そのままロキの視野となるわけだ。
それだけの眼を持ちながら、いつバンダユウが偽物になったかわからない。
本物がどこに隠れていたかも掴めなかった。
これぞ裏社会で恐れられた手妻師――その本領発揮である。
背後からバンダユウの不意打ち、これを咄嗟に防いだロキは歯噛みした。
「ギィィィ……手品師風情が小賢しいギッ!」
「そういうテメエはなんだよ、たかが人形遣いじゃねえか」
悪口合戦をしつつ、法剣と刀剣めいた角で忙しく競り合っている。
戦いは膠着状態に突入しようとしていた。
ロキが率いる毛玉の群れはいつまで経ってもバンダユウを始末できず、想世巨人王フォートレス・ダイダラスを墜とすことも叶わない。
一方、バンダユウたちもロキの正体をまだ捉えられずにいた。
群がる毛玉を切り捨てたバンダユウは吐き捨てる。
「幻みてえに出たり消えたりしやがって……ったく鬱陶しい」
この言葉を拾ったロキは哀愁を漂わせて呟く。
どこかの琴線に触れたらしい。
「所詮、儂らは泡と生まれて泡と消えていく泡沫のようなものギ……何を成し遂げても何を成し得ても、どうせいつかは夢幻と消え去るのみ……」
そんなの儚すぎるギ! とロキは拒むように叫んだ。
気持ちはわからなくもない。
積み上げたものが消え去ると考えれば、これまでの人生が無駄になるような徒労感を覚えるものだ。だからこそ、バンダユウは後進に道を譲りたい。
彼らの進む未来こそ――自分の生きた証となる。
ゆえにバンダユウは若人を愛でるのだ。
だが、このロキという毛玉ジジイは考え方が違うらしい。
「どうせみんないつかは消えるなら、みんな諸共に消えればいいギ! 儂だけ先に逝くなんてゴメンギ! みんな消えたままになるか、みんな一緒に転生するか……たった一人で消えていくなどゴメンだギ!」
「どこのメンヘラだよ!? めんどくせえジジイだなぁ!」
同じ老人として恥ずかしい! とバンダユウは嫌悪を露わにした。
気を落ち着けたくて極太煙管で一服する。
紫煙を吹いて老熟した渋味を醸しながらバンダユウは言ってやる。
「誰だって死ぬ時は一人――棺桶は一人用なんだよ」
どう死ぬかが大切ではない。どう生きたかが人生の要点である。
思い遺すことなく一人で死ぬ。それが大往生というものだ。
「泡沫? ハッ、結構なことじゃねえか、やるべきこととやりたいことをやったら、後はサパッと死んで消えればいい。後腐れなんて残すもんじゃねえ」
若い奴らに迷惑だぜ、とバンダユウは後裔を思い遣った。
この発言を受けたロキは毛玉から眼を剥いた。
血走るギョロ目は怒りに燃えている。どうやらカチンと来たらしい。
「口を開けば若い奴ら若い奴らと……貴様は悔しくないのギ!? 老いさらばえて消えていくだけの我らを後から来たひよっこどもが追い抜いていくのを!? 我らの積み上げたものを踏み台にして奴らが駆け上がっていくのを!?」
「あー、おまえさんの根っこはそこか」
後進に追い越されるのが怖い――先を行く年長者に共通する恐れだ。
正直な話、バンダユウにもその気持ちはある。
若い者にはまだまだ負けん! なんて老人らしい台詞が口から出るし、若人たちへの対抗意識が頭をもたげることもある。
だが、若者へ抱く嫉妬ほど惨めなものはない。
そんなものに囚われる矮小さをバンダユウは思い知らされていた。
手妻師の先達である祖父との死別を思い返す。
「親って字はな、木の上に立って見ると書くんだ……知ってるか?」
「ギィ? 貴様なにを言って……」
いいから聞け、とバンダユウは法剣で「親」という字を空に書く。
そして、死に際の祖父が寄越した遺言を繰り返す。
「それはな、いつの日か我が子が自分の立っている木の上にまで届くことを待ってるんだ。やがては自分より高いところまで我が子が昇っていくことを夢見てのことでもある……わかるか? それが人の営みなんだよ」
バンダユウの祖父はこう続けた
『木の上に立つなど――まるっきり猿じゃねえか』
『きっと猿の頃から同じことを繰り返してきたんだよ……人間ってのはな』
『孫弟子は木の上に立ってた師匠を追い越した』
『それでいい、それが親孝行なんだよ……息子や孫に追いつかれたくねえから親は頑張れるし、子供たちはそんな親に追いつこうと努力する……そうやって切磋琢磨しながら、高い木をいつまでもどこまでも昇っていく……』
いつか誰かが――大樹の梢に届くその日まで。
『そんな日は永遠に来ねえかも知れねえ……だが、そう考えた方が楽しいし、ワクワクが止まらねえじゃねえか……』
世界は終わらない――果てしなく何処までも行ける。
『オレがここで終わろうとも、オレの生きた証を受け継いでくれた子や孫が……おまえが高みを目指してくれる……おまえがいつかオレのように終わりを迎えても、おまえが育てた子が、孫が、弟子や生徒が……おまえの志を受け継ぐ……』
人間の意志は――世界の果てへ届くのだ。
『孫弟子は師匠を超えた……それはオレにとって何よりの誉れだ』
そう言って祖父は爽快な笑顔とともにこの世を去った。
あの大往生にバンダユウは憧れた。
だからこそ後進の育成に人一倍の力を注ぎ、いつの日か自分を越える才能を発揮する若人の成長を見守ってきた。
別にバンダユウの意志なんぞ継がなくても構わない。
バンダユウとて祖父の志を100%引き継いだ覚えはなかった。
それでも――親の気持ちを子は酌むものだ。
何億年も前から、神も人も獣もそうやって連綿と続けてきた。バンダユウは祖父の遺言をそのように解釈し、後継を育ててきたのである。
「そんな子供らの見本にならなきゃいけねえ大人がだ……一生懸命追いかけてくる若者たちにヤキモチを焼くなんざありえねぇだろ?」
度量がねぇなぁ、とバンダユウはこれ見よがしに嘆息する。
ロキみたいな輩に相応しい言葉があった。
「おまえみたいな老害はな――狭量っつうんだよ」
若い連中に道を示す余裕もない、心も器もさもしい哀れな老いぼれだ。
バンダユウは勿体ぶらずにストレートに言ってやった。
ブヅン! と堪忍袋の緒が切れる音がした。
些細なことでキレるのも老害の特徴だ。バンダユウの長ったらしい煽り文句は、ロキの短そうな怒りの導火線に火を着けることができたらしい。
「言ったギ? イカサマ師如きが……ッ!」
突如、空間を押し潰すような圧迫感に見舞われる。
山脈が重い腰を上げて、身の丈が天まで届く大男になると錯覚する。そんな威圧感が迫ってきた。隠されていた存在感が露わになりつつあるのだ。
バンダユウの後ろには鋼鉄でできた巨神王。
ダインとフミカの操縦するフォートレス・ダイダラスが聳え立つ。
まるで巨神王と対を成すかのように姿を現す巨体。
ビッグフットかイエティか、それは白銀の毛で覆われた超巨大な類人猿を連想させる毛むくじゃらの大巨人だった。図体はフォートレス・ダイダラスの全長と大差ないが、ズングリムックリしているためやや小柄に見える。
山よりデカい毛玉に太い手足が生えた案配だ。
「出やがったな、毛玉の総大将!」
これこそロキの切り札――あるいは本体というべきか?
すべての毛玉を生み出し、操り人形よろしく意のままに動かす。巨大な人形遣いと比喩するしかない、途方もなく大きな毛玉のバケモノだ。
毛玉から伸びる極細の神経は、すべて本体に繋がっている。
長毛を掻き分けるように大口を開いた毛玉の巨人は、大型類人猿らしく遠吠えを上げると、割れた銅鑼みたいな大音声で怒鳴りつけてくる。
「誰が狭量ギ!? 見るがいい、破壊神様より授かりし我が巨躯を!」
「……物理的にデカいから何だよ?」
呆れた手妻師は小指で耳の穴を掻っ穿っていた。
バンダユウが説いたのは精神的なもの、心という懐の広さである。
いくら図体がデカくても、蚤の心臓な者もいれば肝が小さい奴もいるし尻の穴が汚い輩もいる。熱いハートがなければただの木偶の坊だ。
「若い奴の脚を引っ張りたがる時点で、おまえは単なるイジワル爺だ。心が狭くてみっともねえ、誰からもそっぽ向かれるクソ老害なんだよ」
「そういう偉そうな台詞は……ッ!」
儂を止めてからほざくギィ! と巨人のロキが動き出す。
毛玉の軍勢を押し出すように、ズシンズシンと地響きをさせてバンダユウへと突き進んでくる。しかし、お目当ては別にある足取りだった。
バンダユウは眼中にない。狙いはその背後にいる鋼鉄の巨神王。
「おまえが大切にしている若い衆! そいつらを先に片付けてやるギィ!」
「お、悪役のセオリーに則った行動すんのな」
感心するバンダユウは、巨人のロキへ道を譲るように横へ逸れた。
この瞬間、フォートレス・ダイダラスからの砲撃も緩む。バンダユウたちにしてみれば最悪のタイミングで、弾切れを起こしたとしか思えない。
ロキにしてみれば絶好のチャンスだった。
巨人は剛毛に覆われた腕を振り上げ、二の腕に力瘤を盛り上げる。
ロキの耳障りな哄笑は止まらない。
「ギギギギギッ! どうしたイカサマ手品師!? おまえが可愛がっている若い衆もこの程度! そして、おまえも儂の強大さには手も足も出ないギ!」
満身の力を込めて繰り出される巨人の拳。
「狭量なのは……やっぱりおまえらの方ギィィィッ!」
それはフォートレス・ダイダラスの装甲を容易くブチ破り、巨神王の腹部を抉って中枢機関まで破壊する必殺の一撃となった。
天まで届く巨神王、その巨体が後ろへと“く”の字に曲がっていく。
誰の目から見ても「勝負あり」の光景に見えるだろう。
しかし、ロキの笑い声はそこで止まる。
バンダユウと対峙する司令塔のロキは、息を飲んで絶句した。
「…………ハリボテ!?」
幻術師であるはずの己が一杯食わされた。
その事実にようやく気付いたが、もはや後の祭りである。
~~~~~~~~~~~~
バンダユウがダインとフミカに伝えた必勝法。
ロキを騙かしてイカサマに落とし込む作戦である。
前提条件はバンダユウが囮になることだ。
「いいか? まずはオレがあの毛玉野郎をトコトン挑発する。噛みつかずにはいられないってくらい、口八丁手八丁、舌先三寸二枚舌を使い回して、あいつの注意を引きつけておく。その間に二人は手筈を整えておいてくれ」
ダインに頼んだのは盛大なハッタリだった。
「虚勢じゃなく威勢を張れ。嘘はデカいほど人を化かす」
この手解きを受けたダインは、途轍もない大嘘を仕立ててきた。
フォートレス・ダイダラスの偽物を建造したのだ。
いつもより派手なエフェクトや濃い蒸気を吹いて目眩ましの煙幕にすると、その向こう側では移動要塞を自らの道具箱である【要塞】内へと格納し、想世巨神王と瓜二つのガワを即興で造り上げた。
変型するフリをして、偽りの外装を貼り合わせる。
それを重ね合わせることで、現物と寸分違わぬ想世巨神王フォートレス・ダイダラスの偽物を作ったのだ。製造期間は変型バンクの短時間しか要していない。
天才工作者に名に恥じぬ手際の良さ。
そしてバンダユウの助言通り、デカいほど人を化かす大嘘である。
さっきまで戦っていたのは中身のない鋼鉄のハリボテ。
砲塔こそ本物だが、このためだけに用意した贅沢な使い捨てである。
ちなみに――砲撃の手数が緩んだのも作戦のひとつ。
ロキのような老害の場合、必ずと言っていいほど短気なものだ。
バンダユウが「やーいやーい、このウンコタレ~♪」などと煽れば十中八九頭に血が上り、奥の手でもある巨人という鬼札を切ってくると踏んでいた。
そのタイミングを狙って攻撃の手を緩める。
ロキはこれを好機と思って、一気呵成に攻めてくるに違いない。
その隙に畳みかけるイカサマコンボ。
ダインとフミカに講義したのは、このイカサマの段取りである。
そして鋼鉄のハリボテを操っていたのは――。
『ジャジャジャーン! 実はウチが一人でやってたッス!』
巨人のロキのパンチを喰らい、ガラガラと轟音を立てて崩れていく全長1㎞にもなる想世巨神王のハリボテ。その内側から大型の軍艦が現れる。
飛行母艦――ハトホルフリート。
移動要塞フォートレス・ダイダラスからこちらに乗り移ったフミカが、ダインの即興建造した巨神王のハリボテと砲塔類を操作していたのだ。
ハトホルフリートは戦艦にしては独特だった。
そのフォルムは飛行船に近い。
2つの気嚢が艦体を吊り下げる形状をしている。
艦の船首にはツバサ君を模した爆乳の女神像が飾られているのだが、そこと艦を支える二つの気嚢の先端に、莫大なエネルギーが集まっていた。
三カ所のエネルギーが圧縮し、やがて結ばれていく。
真紅に輝くラインで結ばれた三角形、その中心に莫大な力が集束する。
この力は覚えがある――殺戮の女神のものだ。
『ツバサさんには遠く及ばないッスけど……ウチだってこれくらい!』
尊敬する地母神の力を借りたフミカは咆哮を上げる。
『殲滅式波動砲――“獅子女王の絶叫”発射ァァァースッ!」
至近距離から迸る真紅に染め上げられた主砲。
破滅の奔流をまともに浴びて、巨人のロキは仰け反っていた。
「ギィィッ!? あ、熱ッ! 焼けるギィィィッ!?」
ご自慢の真っ白い体毛を焼かれ、真紅の光を浴びたところの肉は瞬時に炭化して再生する間もなく崩れ去る。これは堪らんと後退るしかない。
そんな巨人の土手っ腹を――鋼鉄の拳が貫いた。
『ダインがやられたんやなかが……お返しじゃ、毛玉ジジイッ!』
巨人のロキを背中から腹まで穿ったのは、虚空から現れたフォートレス・ダイダラスの右腕だ。亜空間にある【要塞】から突き出されたものである。
格納した亜空間からの不意打ちだ。
こんな局面でなければ、隙が大きすぎて絶対に使えない。
逆に言えば、同等の巨人にこそ通じる手だった。
「ギ、ギギギッ……お、おのれぇ小童がぁ……わ、儂の巨躯に……ッ!?」
巨人のロキは、自身の腹を貫通した鋼鉄の腕を掴む。
そうしてフォートレス・ダイダラスの腕を封じ、そのまま身体を捩って反撃に転じつつあった。肉体がイカレても構わない動きである。
ハトホルフリートの主砲すら意に介していない
ダインも気にせず、この場で果たすべき務めを勧めていく。
『まだじゃ! わしの攻撃は終わっちょらん!』
フォートレス・ダイダラスが、握り締めた鉄拳を開いた。
その巨大な掌にはロボットや航空機が発艦や着艦する、そのための開口部が作られていた。大型の機体を発進させるべく、形状を変えて間口を広げていく。
そこから弾丸の如く一機の巨大ロボが撃ち出される。
大巨神王――グレート・ダイダラス。
ダインが戦闘車両ダインローラーと合体。
巨神王ダイダラスへと変型し、そこにテンリュウオーとチリュウオーという巨大ドラゴン型のメカが追加合体することで完成する巨大ロボだ。
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グレート・ダイダラスも“勇者”と呼びたくなる造形である。
背に広げたウィングで風を切り、宙の彼方を目指して急上昇していく。
「い、いかんギ!?」
巨神王の目指す先に司令塔のロキが狼狽した。
「我が軍勢よ我が群体よ! その鉄屑を何としても食い止めるギ!」
「おっと、させねぇよ?」
慌てるロキの命令により毛玉の群れはグレート・ダイダラスを追いかけるが、バンダユウがそれを許さない。たちまち幻から法剣の嵐を喚び出すと、ダインを追跡する毛玉たちを一匹残らず掃討した。
「ギヒィ!? き、貴様ぁ……イカサマ師ィィッ!」
司令塔のロキは親の敵を見る眼でこちらを睨んできた。
燻し銀な笑みを浮かべたバンダユウは、貫禄のある眼光で迎え撃つ。
「若い奴に花を持たせてやるのが大人なんだよ」
今日のオレはサポート役さ、と自身の役割分担を明かしておく。
囮と足止め――この二役がバンダユウの仕事だった。
勇者ロボらしくカッコイイ大剣を構えたグレート・ダイダラスは、何者にも邪魔されることなく飛翔。雲海を飛び越えて空の高みへ辿り着く。
広がる青空の他には何も見当たらない。
虚空の一点を狙い澄まし、グレート・ダイダラスは大剣を振り上げる。
「――ダイダノトツカブレイド!」
膨大な“気”を発する大剣は、巨大なエネルギーブレイドと化す。それをグレート・ダイダラスは躊躇せず何もない空間へと振り下ろした。
「八岐大蛇薙ぎィィィーーーッッッ!」
巨大ロボの必殺技が決まり、エネルギー波の斬撃が突っ走る。
雲海を真っ二つに斬り裂いただけに終わったように見えたが、何もないはずの空間にジワリジワリと実体を滲ませるものがあった。
「な、何故……どうして、わかった?」
現れたのは、白髪三千丈の仙人みたいな老体だった。
足下まで届いて眼元をも隠す長髪は純白、股下まで伸びるほど蓄えた髭も蒼白。薄汚れた白いローブを身にまとう姿は、どう見ても仙人のそれだ。仙人として減点ポイントは、杖を持っていないことくらいである。
毛玉に似ているが、彼の五体はちゃんと人間に準じていた。
どちらかと言えばこの仙人をデフォルメしたのが、あの毛玉の群体である。司令塔のロキも巨人のロキも、この男がモデルのようだった。
それはつまり――そういうことだ。
手ぶらの両手は、下界に向けて鈎のように五指を曲げている。
それは操り人形を従える傀儡師の仕種に見えた。
「どうして……ほ、本当の儂がここにいると……わかったのだ!?」
本物のロキは驚きを隠さずに呻く。
グレート・ダイダラスの必殺剣をまともに喰らったためか、身体を正中線から右と左に分断されていた。神族であろうと致命傷だ。
それでも往生際は悪いのか、しぶとく訊いてくる。
「儂の隠形術は完璧のはず……群体を目眩ましにして完全に、気配を……いいや、存在その物を希釈することで、消えていたはず……なのにッ!?」
――どうして!?
そんなロキの疑問に彼女は答える。
『あなたは完璧が過ぎたんスよ! 透明になりすぎたんス!』
ハトホルフリートからフミカの声が鳴り響く。
バンダユウは彼女にもひとつ、有効なアドバイスをしていたのだ。
「何もないところを探せ。そこに不自然なものがある」
手品師にしろマジシャンにしろ、幻覚を扱う者は大勢の注意を目立つところへ誘っておき、人の眼が集まらないところにタネを仕込んでおくものだ。
ロキとて例外ではあるまい。
そこでバンダユウは情報処理能力に優れ、探知や感知といった索敵能力も磨いているフミカに「不自然に何もない場所を調べろ」とアドバイスした。
彼女は見事に本物のロキを炙り出してくれた。
『どんなに何もない空間でも、そこには必ず大気があるッス。酸素や二酸化炭素に窒素、その他様々な気体や微粒子が飛び交っているはずッス』
なのに――まったく何もない空白があった。
しかもその空白は人間の形に刳り抜かれている。
過大能力で存在を薄められた毛玉たちも、よく調べればそこだけ大気の組成が抜けており、空白への違和感を拾うことができた。
だが、本物のロキが我が身に施していた隠形術はレベルが違う。
本当に“何もない”を実現させていたのだ。
『あまりに何もなさ過ぎて、空間すらもなくなっているように感じたッス……そこまですれば普通に五感を研ぎ澄ませても見つけられなかったでしょうけど、神族として探知能力をフル活用すれば……』
「逆に不自然さが際立ち、くっきり浮かび上がるって寸法さ」
語尾を濁らすフミカに代わってバンダユウが締めた。
『フミがピックアップした不自然な座標に、わしが機動性の高いグレート・ダイダラスで駆けつけ、ピンポイントで斬りつけたちわけや』
十拳剣と名付けた大剣を担ぎ、ダインの巨神王は空に佇んでいた。
「そういうこった。おまえの負けだよ、老害」
若い力を甘く見たな、とバンダユウは総評をくれてやった。
本物のロキの前まで飛んでいくのは億劫なので、目の前にいる司令塔となっていたロキに話し掛ける。本体がやられても、まだ意識はあるだろう。
しかし眼から精気を失い、体毛も萎れていた。
「幻を気取りすぎたな、宇頭……幻術使いとして失格だぜ」
種も仕掛けもあってこそ――幻は花開くものだ。
「そんな基礎を忘れて、自らが幻になるなんざ愚の骨頂。夢幻と消え失せるのも仕方ねえ……初心を忘れやがったな」
馬鹿野郎が、とバンダユウは同類相哀れむように叱りつけた。
司令塔のロキは何も言わない。
ただ、悔いが残る吐息を漏らしてから崩れ落ちる。
「口惜しい……ただただ、それだけギ」
それは群体のひとつ、ロキという老人の意識が零した残滓だった。
バサリと音を立てて毛玉がほつれていく。司令塔のロキのみならず、毛玉の軍勢は散り散りに、巨人のロキも朝日に溶ける雪像のように消えていく。
守護神と破壊神の盤上――№17のコインが真っ二つに割れる。
正中線から左右に斬り裂かれた本物のロキ。
どちらも苦悶の表情となり、白髭を振り乱して断末魔を上げる。
「グ、グンザ……すまぬぅ! あとは頼むぞ、我が倅よぉぉぉぉぉーッ!」
「申し訳、あ、ありませぬぅ……ドラクルンさまぁぁぁぁぁぁー!」
勇者ロボの必殺技を受けた敵は爆発する。
その決まりに従い、本物のロキは爆発四散して果てた。
だが、今際の際に叫んだ言葉にバンダユウは怪訝なものを覚える。
「倅がいたのはともかく……ドラクルンって誰?」
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