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第4章 いばら姫編
104話 いばら姫の世界
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◆◆◆
いばら姫
あるお城に子供を望む王様と王妃様がいました。
長い月日を経て王妃は遂に女の子を授かります。
お城ではお祝い事として人々を呼んでパーティーを開きました。
この国には13人の魔法使いがいました。彼らも生まれてくる女の子に祝福の魔法をかける為にパーティーに呼ばれます。
しかし王様は魔法使いのうち一人だけ招待しませんでした。
会場で魔法使い達は順番に女の子に祝福の魔法をかけていきます。
11番目の魔法使いが魔法を唱えた後、突然パーティーに招待していないはずの魔法使いが現れます。そして女の子に呪いの魔法をかけました。
12番目に魔法をかけたその魔法使いは言います。
「この子が15歳になると針に刺さって死ぬ呪いをかけた」
12番目の魔法使いはそれだけ言い残し、いなくなりました。
パーティーに呼ばれていた本当の12番目の魔法使いが続けて言いました。
「呪いを解くことは出来ないが、効力を弱めることは出来る」
13番目の魔法使いとなった男は12番目にかけられた呪いの効果を和らげる魔法をかけました。
「死ぬことはないが、もしも針に刺されば100年の眠りについてしまう」
それから王様は城中の針を撤去させました。
月日が流れ、二人の子であるお姫様が15歳を迎えた日、お姫様は一人でお城にある塔の最上階に向かいます。そこには一人の老人と見たことのない糸織り機がありました。
お姫様が糸織り機に触れると紡ぎ車についていた針がお姫様に刺さります。
呪いによってお姫様は100年の眠りにつきました。
城にいた全ての人々も呪いに巻き込まれ、お姫様と同じように永い眠りにつきました。
呪いと同時に突如現れたいばらによってお城は包まれてしまいます。
それから100年が過ぎたころ、いばらに包まれたお城に美しいお姫様がいると噂を聞いた隣国の王子様が訪れます。
茨に囲まれたお城の中でお姫様を見つけた王子様はお姫様に口づけします。
するとお姫様は眠りから覚めました。
お城の中にいた人々も呪いから解放され、その後王子様とお姫様は幸せに暮らしました。
◆◆◆
「いばら姫の世界に訪れるのは初めてだ」
グリムの言葉を聞いて少年は「ほー」と感心するような反応を示す。
「ボクはこの世界から出たことがなかったので、グリムさんの台詞は新鮮です」
「サンドリオンさんも初めてですかね?」
「そうだな」
シツジはちらりと彼女を見ながら会話する。サンドリオンと目線が合うと慌てて目をそらした。少年の反応を見る限りどうやら初対面の印象で彼女は怖い人と思われてしまったのかもしれない。
「……どうした?」
「周囲からいくつもの人の気配を感じる」
サンドリオンは木々を見渡しながら話す。グリムも周りを確認するが人影はなかった。
「気のせいじゃないか?」
「かもしれないな……どうやら彼を演じていた癖が抜けていないのかもしれない」
サンドリオンは謝罪をするが、グリムは気にするなと適当に流す。
彼、というのは間違いなくアーサー王の事である。
彼女は一つ前の世界では正体がばれないように常に周囲に警戒していた。
その癖が残ってしまっているのかもしれない。
「お二人は色んな世界を回られているんですか?」
「いや……」
「ひとつ前の世界で彼とは初めて出会った」
サンドリオンが少年に回答する。「初めて出会った」その何気ない言葉にグリムは内心何とも言えない気持ちになる。
「その世界はどんな物語だったのですか?」
少年の無邪気な質問にサンドリオンは一瞬だけ答えるのに戸惑いかけたが、すぐに優しい笑みで少年を見ながら口を開く。
「この世で一番偉大な王様の物語……アーサー王伝説だ」
「アーサー王!」
サンドリオンの言葉に少年は目を輝かせる。彼ぐらいの年頃ならば誰しもが憧れる騎士の世界から来たと知って嬉しくなるのは当然だろう。
アーサー王の世界について話をせがまれたサンドリオンは少年に円卓の騎士達の物語を語った。先ほどまでの彼女に対する怯えはいつの間にか無くなっていた。
◇
それからグリム達はシツジに案内されてお城の前までとたどり着いた。
「でも、驚きました。こんなにも「白紙の頁」の人間が集まる事ってあるんですね」
「確かに3人もそろうのは珍しいよな」
グリムは赤ずきんの世界で起きたことは例外として彼の意見に賛同する。
「いえ、3人ではないですよ」
「何?」
「この世界には君以外にも「白紙の頁」の人間がいるのか?」
彼女の問いにシツジは「いいえ」と否定するとすぐに衝撃の発言をする。
「お二人を除いて、つい先日3人の「白紙の頁」の方たちがこの世界にやってきました」
「「3人?」」
グリムとサンドリオンは驚きの声を上げる。彼女にとってはその人数の多さによるものだが、グリムが驚いたのは他に要因があった。
「その3人は……少女と騎士の姿をした男が二人か?」
グリムの言葉を聞いてシツジは目を見開いた。
「すごい、正解ですグリムさん」
「……知り合いなのか?」
「あぁ……」
サンドリオンの疑問にグリムは肯定する。少女に騎士二人と言う珍しい組み合わせの「白紙の頁」の人間たちなど他にいるとは思えない。まず間違いなくマロリー達であるとグリムは確信する。
「それではお城に入りましょう」
◇
「待て、シツジ。そいつらは何者だ」
場内へ入ろうとすると警備していた衛兵に呼び止められる。
「この方たちも外の世界から来た「白紙の頁」の所有者ですよ」
シツジの言葉を聞くと兵士は構えていた武器をおろして道を譲る。グリム達は兵士を横切って場内へと進んだ。
「……警戒されているな」
通り過ぎた兵士や場内にいる人々の視線を感じ取ったサンドリオンはグリムにだけ聞こえる小さな声でそうつぶやいた。
「けれど、城の中へ通したって事は敵対するほどではないわけだ」
「すみません。今この世界は緊急事態でして……外の世界から来た人たちに対する接し方がわからなくなっているのです」
サンドリオンに対しるグリムの返答が聞こえていたのか、シツジは先頭を歩きながら説明する。
「緊急事態?」
「グリムさんたちはいばら姫のあらすじを知っていますか?」
「基本的な流れなら……」
グリムの言葉にサンドリオンも同意する。
こちら側を向いたシツジは二人の反応を見るとそれなら話が早いですと前置きを置くと、とんでもない事実を口にした。
「この世界で12番目の魔法使いの役割を与えられた男がいなくなりました」
いばら姫
あるお城に子供を望む王様と王妃様がいました。
長い月日を経て王妃は遂に女の子を授かります。
お城ではお祝い事として人々を呼んでパーティーを開きました。
この国には13人の魔法使いがいました。彼らも生まれてくる女の子に祝福の魔法をかける為にパーティーに呼ばれます。
しかし王様は魔法使いのうち一人だけ招待しませんでした。
会場で魔法使い達は順番に女の子に祝福の魔法をかけていきます。
11番目の魔法使いが魔法を唱えた後、突然パーティーに招待していないはずの魔法使いが現れます。そして女の子に呪いの魔法をかけました。
12番目に魔法をかけたその魔法使いは言います。
「この子が15歳になると針に刺さって死ぬ呪いをかけた」
12番目の魔法使いはそれだけ言い残し、いなくなりました。
パーティーに呼ばれていた本当の12番目の魔法使いが続けて言いました。
「呪いを解くことは出来ないが、効力を弱めることは出来る」
13番目の魔法使いとなった男は12番目にかけられた呪いの効果を和らげる魔法をかけました。
「死ぬことはないが、もしも針に刺されば100年の眠りについてしまう」
それから王様は城中の針を撤去させました。
月日が流れ、二人の子であるお姫様が15歳を迎えた日、お姫様は一人でお城にある塔の最上階に向かいます。そこには一人の老人と見たことのない糸織り機がありました。
お姫様が糸織り機に触れると紡ぎ車についていた針がお姫様に刺さります。
呪いによってお姫様は100年の眠りにつきました。
城にいた全ての人々も呪いに巻き込まれ、お姫様と同じように永い眠りにつきました。
呪いと同時に突如現れたいばらによってお城は包まれてしまいます。
それから100年が過ぎたころ、いばらに包まれたお城に美しいお姫様がいると噂を聞いた隣国の王子様が訪れます。
茨に囲まれたお城の中でお姫様を見つけた王子様はお姫様に口づけします。
するとお姫様は眠りから覚めました。
お城の中にいた人々も呪いから解放され、その後王子様とお姫様は幸せに暮らしました。
◆◆◆
「いばら姫の世界に訪れるのは初めてだ」
グリムの言葉を聞いて少年は「ほー」と感心するような反応を示す。
「ボクはこの世界から出たことがなかったので、グリムさんの台詞は新鮮です」
「サンドリオンさんも初めてですかね?」
「そうだな」
シツジはちらりと彼女を見ながら会話する。サンドリオンと目線が合うと慌てて目をそらした。少年の反応を見る限りどうやら初対面の印象で彼女は怖い人と思われてしまったのかもしれない。
「……どうした?」
「周囲からいくつもの人の気配を感じる」
サンドリオンは木々を見渡しながら話す。グリムも周りを確認するが人影はなかった。
「気のせいじゃないか?」
「かもしれないな……どうやら彼を演じていた癖が抜けていないのかもしれない」
サンドリオンは謝罪をするが、グリムは気にするなと適当に流す。
彼、というのは間違いなくアーサー王の事である。
彼女は一つ前の世界では正体がばれないように常に周囲に警戒していた。
その癖が残ってしまっているのかもしれない。
「お二人は色んな世界を回られているんですか?」
「いや……」
「ひとつ前の世界で彼とは初めて出会った」
サンドリオンが少年に回答する。「初めて出会った」その何気ない言葉にグリムは内心何とも言えない気持ちになる。
「その世界はどんな物語だったのですか?」
少年の無邪気な質問にサンドリオンは一瞬だけ答えるのに戸惑いかけたが、すぐに優しい笑みで少年を見ながら口を開く。
「この世で一番偉大な王様の物語……アーサー王伝説だ」
「アーサー王!」
サンドリオンの言葉に少年は目を輝かせる。彼ぐらいの年頃ならば誰しもが憧れる騎士の世界から来たと知って嬉しくなるのは当然だろう。
アーサー王の世界について話をせがまれたサンドリオンは少年に円卓の騎士達の物語を語った。先ほどまでの彼女に対する怯えはいつの間にか無くなっていた。
◇
それからグリム達はシツジに案内されてお城の前までとたどり着いた。
「でも、驚きました。こんなにも「白紙の頁」の人間が集まる事ってあるんですね」
「確かに3人もそろうのは珍しいよな」
グリムは赤ずきんの世界で起きたことは例外として彼の意見に賛同する。
「いえ、3人ではないですよ」
「何?」
「この世界には君以外にも「白紙の頁」の人間がいるのか?」
彼女の問いにシツジは「いいえ」と否定するとすぐに衝撃の発言をする。
「お二人を除いて、つい先日3人の「白紙の頁」の方たちがこの世界にやってきました」
「「3人?」」
グリムとサンドリオンは驚きの声を上げる。彼女にとってはその人数の多さによるものだが、グリムが驚いたのは他に要因があった。
「その3人は……少女と騎士の姿をした男が二人か?」
グリムの言葉を聞いてシツジは目を見開いた。
「すごい、正解ですグリムさん」
「……知り合いなのか?」
「あぁ……」
サンドリオンの疑問にグリムは肯定する。少女に騎士二人と言う珍しい組み合わせの「白紙の頁」の人間たちなど他にいるとは思えない。まず間違いなくマロリー達であるとグリムは確信する。
「それではお城に入りましょう」
◇
「待て、シツジ。そいつらは何者だ」
場内へ入ろうとすると警備していた衛兵に呼び止められる。
「この方たちも外の世界から来た「白紙の頁」の所有者ですよ」
シツジの言葉を聞くと兵士は構えていた武器をおろして道を譲る。グリム達は兵士を横切って場内へと進んだ。
「……警戒されているな」
通り過ぎた兵士や場内にいる人々の視線を感じ取ったサンドリオンはグリムにだけ聞こえる小さな声でそうつぶやいた。
「けれど、城の中へ通したって事は敵対するほどではないわけだ」
「すみません。今この世界は緊急事態でして……外の世界から来た人たちに対する接し方がわからなくなっているのです」
サンドリオンに対しるグリムの返答が聞こえていたのか、シツジは先頭を歩きながら説明する。
「緊急事態?」
「グリムさんたちはいばら姫のあらすじを知っていますか?」
「基本的な流れなら……」
グリムの言葉にサンドリオンも同意する。
こちら側を向いたシツジは二人の反応を見るとそれなら話が早いですと前置きを置くと、とんでもない事実を口にした。
「この世界で12番目の魔法使いの役割を与えられた男がいなくなりました」
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