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第2章エクスプレス サイドB①魔窟の養生楼閣都市/死闘編
Part37 凶刃と凶弾と凶拳と/誇り高き翼
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大都市東京の空を行く静音ローターヘリの機影がある。
その数3機――
一つは千葉、成田国際空港のヘリポートから飛来
一つは神奈川、横浜ヘリポートから飛来
もう一つは埼玉、入間基地からの飛来であった。
それぞれがそれぞれに機体の脇に『盤古千葉大隊』『盤古神奈川大隊』『盤古埼玉大隊』の銘が記されてあった。
千葉大隊のヘリに同乗しているのは大石拳伍、フィールを擁する警備1課の課長だ。
神奈川大隊のヘリに同乗しているのは小野川康典、センチュリーを擁する少年犯罪課課長である。
そして埼玉大隊のヘリに同乗しているのは――
「ご協力感謝いたします」
その人物は低い落ち着いた声で問いかけていた。声の主は近衛仁一、警備部警備1課の課長にしてエリオットの監督役である男だ。その近衛の問いかけに答えるのは、ヘリに搭乗している盤古隊員たちを統括する臨時小隊長を務める男だった。
「いえ、礼には及びませんよ。本来なら我々が自分たち自身で対処せねばならない問題なのですから」
その男はひどく落ち着いた声で答えていた。
武装警官部隊・盤古、埼玉大隊大隊長・檜枝枝聖人(ひのえきよと)――、東京大隊の妻木と並んで名の知られた大隊長資格者であり、妻木同様に盤古と特攻装警の存在意義について深く理解している人物であった。
「〝あの連中〟は盤古のみならず、警察組織そのものの歪みと言っていい。あんなものを生み出してしまった事自体がそもそもの過ちなのです」
「確かに――、戦後の警察行政が生み出した最悪の亡霊たちです。だがその亡霊たちにこれ以上好き勝手をさせる訳にはいかない」
「えぇ――」
近衛の言葉に檜枝枝はしっかりと頷く。彼の中には確固たる確信があった。
「たとえ非合法な在留者と言えどかけがえのない人命であることに変わりはない。あまつさえ異国のテロリストの置き土産を看過し、これを暴走を許す事など警察としての根本たる矜持すらも捨ててしまったに等しい。もはや彼らは――」
そして檜枝枝の視線はヘリの外へと向いていた。視線の先では、東京湾の洋上に浮かぶ不夜城と化したならず者の楽園が煌々と灯りを撒き散らしていた。その異端の街を視界に捉えつつ強く言い放つ。
「情報戦特化小隊は警察ですらありません」
その言葉に近衛は頷いていた。
「まさに、その通りですな」
ヘリの機内には標準武装体の盤古隊員が檜枝以下10名が搭乗していた。檜枝と近衛とが交わした言葉を彼らもじっと聞き入っていた。それを否定する者は誰も居なかった。そして機内に居る者全員に向けて言い含める様に近衛は力強く告げたのだ。
「だからこその〝ヤタガラス〟なのですよ」
その言葉に同意するように檜枝の顔は縦に振られていた。
だが、そんな彼らにパイロットシート隣のコパイロットシートの通信手が声をかけてくる。
「檜枝大隊長」
「なんだ」
「追跡対象のヘリ、情報戦特化小隊の第1小隊ヘリが当該作戦空域から離脱していきます」
「離脱だと?」
「はい。どうやら第1小隊の部隊員たちの回収任務を放棄して、ヘリ単独で逃走した模様です」
「何かトラブルでも起きたようだな」
「おそらくは。ですが詳細までは――」
二人の言葉が交わされていたときだ。近衛が懐に収めていたスマートフォンを取り、極秘通話用の専用アプリを起動して通話を始めていた。どこからか入感があったらしい。
「わたしだ――これは――はい。え? 第1小隊のヘリパイロットから? それで――わかりました。そちらはおまかせいたします。はい」
手短に通話を終えるとスマートフォンを仕舞いながら近衛は檜枝たちの方へと視線を向けた。
「近衛課長。どこからですか?」
落ち着いた声での檜枝の問いかけに近衛も抑揚を抑えた冷静な口調で答える。
「公安4課課長の大戸島君です。第1小隊専用ヘリのパイロットが第1小隊指揮下から単独離脱。公安4課に保護を求めたそうです。現在、公安4課隷下の情報機動隊が保護に動いてます。どうやらまともな奴が一人だけいたらしい。現地で違法組織の構成員と戦闘行動になり、これに敗北し無力化された事で戦意を喪失。負けを認めて自分の意志で投降したそうだ」
「ならば、あの埋立地のスラムに乗り込んでいった連中は、離れ小島に取り残されたわけだ」
もしそうなら彼の今後の行動は大きく変わる。ヘリによる支援戦闘行動を警戒する必要がなくなるため、現地での制圧行動を優先すればいい事になる。だが檜枝の言葉を近衛は否定した。
「いや、そうとも言えない。情報機動隊からとんでもない情報が入ってきました」
「とんでもない?」
その数3機――
一つは千葉、成田国際空港のヘリポートから飛来
一つは神奈川、横浜ヘリポートから飛来
もう一つは埼玉、入間基地からの飛来であった。
それぞれがそれぞれに機体の脇に『盤古千葉大隊』『盤古神奈川大隊』『盤古埼玉大隊』の銘が記されてあった。
千葉大隊のヘリに同乗しているのは大石拳伍、フィールを擁する警備1課の課長だ。
神奈川大隊のヘリに同乗しているのは小野川康典、センチュリーを擁する少年犯罪課課長である。
そして埼玉大隊のヘリに同乗しているのは――
「ご協力感謝いたします」
その人物は低い落ち着いた声で問いかけていた。声の主は近衛仁一、警備部警備1課の課長にしてエリオットの監督役である男だ。その近衛の問いかけに答えるのは、ヘリに搭乗している盤古隊員たちを統括する臨時小隊長を務める男だった。
「いえ、礼には及びませんよ。本来なら我々が自分たち自身で対処せねばならない問題なのですから」
その男はひどく落ち着いた声で答えていた。
武装警官部隊・盤古、埼玉大隊大隊長・檜枝枝聖人(ひのえきよと)――、東京大隊の妻木と並んで名の知られた大隊長資格者であり、妻木同様に盤古と特攻装警の存在意義について深く理解している人物であった。
「〝あの連中〟は盤古のみならず、警察組織そのものの歪みと言っていい。あんなものを生み出してしまった事自体がそもそもの過ちなのです」
「確かに――、戦後の警察行政が生み出した最悪の亡霊たちです。だがその亡霊たちにこれ以上好き勝手をさせる訳にはいかない」
「えぇ――」
近衛の言葉に檜枝枝はしっかりと頷く。彼の中には確固たる確信があった。
「たとえ非合法な在留者と言えどかけがえのない人命であることに変わりはない。あまつさえ異国のテロリストの置き土産を看過し、これを暴走を許す事など警察としての根本たる矜持すらも捨ててしまったに等しい。もはや彼らは――」
そして檜枝枝の視線はヘリの外へと向いていた。視線の先では、東京湾の洋上に浮かぶ不夜城と化したならず者の楽園が煌々と灯りを撒き散らしていた。その異端の街を視界に捉えつつ強く言い放つ。
「情報戦特化小隊は警察ですらありません」
その言葉に近衛は頷いていた。
「まさに、その通りですな」
ヘリの機内には標準武装体の盤古隊員が檜枝以下10名が搭乗していた。檜枝と近衛とが交わした言葉を彼らもじっと聞き入っていた。それを否定する者は誰も居なかった。そして機内に居る者全員に向けて言い含める様に近衛は力強く告げたのだ。
「だからこその〝ヤタガラス〟なのですよ」
その言葉に同意するように檜枝の顔は縦に振られていた。
だが、そんな彼らにパイロットシート隣のコパイロットシートの通信手が声をかけてくる。
「檜枝大隊長」
「なんだ」
「追跡対象のヘリ、情報戦特化小隊の第1小隊ヘリが当該作戦空域から離脱していきます」
「離脱だと?」
「はい。どうやら第1小隊の部隊員たちの回収任務を放棄して、ヘリ単独で逃走した模様です」
「何かトラブルでも起きたようだな」
「おそらくは。ですが詳細までは――」
二人の言葉が交わされていたときだ。近衛が懐に収めていたスマートフォンを取り、極秘通話用の専用アプリを起動して通話を始めていた。どこからか入感があったらしい。
「わたしだ――これは――はい。え? 第1小隊のヘリパイロットから? それで――わかりました。そちらはおまかせいたします。はい」
手短に通話を終えるとスマートフォンを仕舞いながら近衛は檜枝たちの方へと視線を向けた。
「近衛課長。どこからですか?」
落ち着いた声での檜枝の問いかけに近衛も抑揚を抑えた冷静な口調で答える。
「公安4課課長の大戸島君です。第1小隊専用ヘリのパイロットが第1小隊指揮下から単独離脱。公安4課に保護を求めたそうです。現在、公安4課隷下の情報機動隊が保護に動いてます。どうやらまともな奴が一人だけいたらしい。現地で違法組織の構成員と戦闘行動になり、これに敗北し無力化された事で戦意を喪失。負けを認めて自分の意志で投降したそうだ」
「ならば、あの埋立地のスラムに乗り込んでいった連中は、離れ小島に取り残されたわけだ」
もしそうなら彼の今後の行動は大きく変わる。ヘリによる支援戦闘行動を警戒する必要がなくなるため、現地での制圧行動を優先すればいい事になる。だが檜枝の言葉を近衛は否定した。
「いや、そうとも言えない。情報機動隊からとんでもない情報が入ってきました」
「とんでもない?」
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