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第七章 外から見た彼女と彼

恵まれた環境(カカオ視点)

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 うちの師匠には類まれな知識と才能がある。
 料理スキルを預かるキャットシー族ではないからか、俺様たちとは違う細い指から作り出される料理は驚き以外の何物でもなかった。
 師匠が材料の計測を終え、粉を台に山を作るように盛り、中央に穴を開けて広げていく。
 その中に卵を割り入れたあとフォークで撹拌する。
 今回は新人の弟子であるマリアベルに合わせてレシピを作るようだ。

 つまり、あの硬い生地を便利なパスタマシーンを使わずに伸ばしていくのか……すげー力仕事だな。
 リュート様は、それを止めること無く見守っている。

 そうだよな……この人は、仕事を任せたら最後まで信じて口を挟まない。
 それが師匠であっても変わらずにいてくれるのは、とても嬉しく感じた。
 あまり束縛がキツイと逃げられちまうぜ? リュート様!

 全体的に混ざったのを確認したら、塩とオリーブオイルを加え、ここからは手で捏ねていく作業に移った。
 師匠は全身の力を使って捏ねていくのだが、なかなか力のいる作業なのだろうか、額に汗が光る。

「ふみふみしないの?」
「それでもいいですねぇ、でも、たぶん……フライフィッシュの浮き袋を常備していることは稀でしょうから」
「なるほどなのっ」

 春の女神様もわかっているよな。
 さすが、一番近くで師匠の料理を見てきただけはある。
 師匠が何をしようとしているのか、この中ではリュート様の次に理解しているだろう。
 まあ、俺様は3番手ってことにしておくか。
 他の3人にはぜってー負けねぇし!

 15分ほど捏ねていただろうか、生地の表面に艶が出てきた。
 いい艶だよな。

「マリアベル様、この艶と感触を覚えておいてください」

 一度生地に触れさせて見た目と触感で覚えさせる。
 これは、師匠ならではの教え方だ。
 キャットシー族の師弟ではあり得ない光景である。

「レシピだけでは分かりづらいでしょう?」
「確かに……絵と文字で、この生地の状態は分からないかもしれません」

 師匠の言う通り、料理をはじめたばかりのヤツに、どういう状況か説明しただけで理解しろというのは難しいだろう。
 俺様たちだって、最近はソレだもんな……ある程度の知識があっても、師匠の料理は見ていないと分からないことが多い。

「あ、そうだ、お師匠様! 私のことは他の先輩方と同じように呼び捨てでお願いします」
「え? で、でも……」
「ぜひっ! これは弟子のけじめなのですっ」
「え、あ……は、はい……わかりました、マリアベル」
「はいっ! ありがとうございますっ」

 微笑ましいその状況を見ていたリュート様が「そうか弟子なら呼び捨てにされるのか……」と呟いたのは聞かなかったことにしよう。
 弟子入りしなくても呼ばれるように頑張れよ……

「先輩たちも、お願いしますっ」

 目をキラキラさせてそう言ったマリアベルは、純粋にそう願っているようで他意はない。
 良いのか? と、一応リュート様に確認を取るように視線を走らせると、問題ないというように頷いたので承諾したら嬉しそうに微笑まれた。
 ま、まあ……悪い気はしねーな。
 でも、本当に恵まれた環境にいるよな俺様たち。
 キャットシー族は料理しか取り柄がないと言って下に見る輩も多いというのに、ここにいる人達に蔑むような色はない。

 正直に言うと、蔑みを持った目には慣れていた。

 俺様はいつまでも古いやり方から抜け出せず、濃い味付けを好む弟分のカフェとラテを認めない父である村長に反発し、家を飛び出して船を乗り継ぎやってきたのが聖都レイヴァリスである。
 俺様が人間の世界で成功すれば、父だってカフェとラテを認めざるを得まい。
 アイツらは争うことを好まない優しい性格だから、兄貴分の俺様が何とかしてやんねぇと……
 そう思って飛び出したはいいが、村長の推薦状もなく働かせてくれる家は稀である。
 やっと雇ってくれるところを見つけたのは良いが、思い出すだけでも『クソ家』だと言えるくらい、ラングレイ家と比べ物にならないほど酷いところであった。

 獣人差別を平気にする家であったし、扱いは召使い以下だ。
 飯を作っているのに、俺様たちは食べることを許されない。
 食材も勝手に使えない、ただ言われたままに作れと最低限の食事と水で、寝る間も惜しんで働かされた。
 気に入らないことがあればムチで打たれ、殴られたり蹴られたりするなんて日常茶飯事だ。
 それでも帰るという選択肢を取ることはなく、ただひたすらに料理を作る日々……

 料理を作るしか能がないなら、狩りの生き餌になるか? と下品な笑みを浮かべた雇い主の息子が、俺様たちを魔物の前に放り投げたことを今でも忘れない。

「ほら、逃げないと死んじまうぞー? お前らのかわりなんていくらでもいるんだから、死にたくなかったらみっともなく逃げ惑えよ」

 散り散りに逃げる姿を見てケタケタ笑う人間の醜悪さに、激しい嫌悪を覚えた。
 自分は魔物よけの結界の中にいて安全を確保し、その中へ逃げ込もうとするキャットシーの仲間たちを護衛と称して連れてきたガラの悪い男たちに命じて投げ飛ばす。
 その光景を見た俺様は、この手はどうして料理を作るためだけにあるのだろう、どうしてこの眼の前の男を殺す手段を持っていなかったのだろうと呪った。
 ただ殺されてなるものかっ!
 己の内から勇気を奮い起こし、護衛たちの間をすり抜けて雇い主の息子の足に噛みつき、魔物の群れの方へ蹴り飛ばされてしまったのは運がなかったと言えるだろう。
 大型の犬のような魔物が一瞬にして俺様を取り囲む。
 俺様の腕に犬型の魔物が噛み付いた瞬間、空気が変わったことを肌で感じた。
 全身を刺すような強大な魔力がその場を支配し……魔物ですら怯えて餌であるはずの俺様を手放し、後方へ下がったのだ。

「お前ら……何してやがる」

 尻尾の先まで震えてしまうような低く力のある声が響き渡る。
 その声に気を取られている間に魔物は音もなく崩れ去り、死の恐怖よりも、この先、料理を作れなくなるのではないかという絶望に染め上げられた体には震えが残っていて、助けてくれたらしい人を見上げることしか出来なかった。
 逆光でよくわからなかったが、髪は死を司る神が纏うローブのように黒く、不可思議な色の青い瞳は鋭利な刃の如く研ぎ澄まされており、視線だけでも魔物を殺せるんじゃないかと本気で考えたくらいだ。

「随分なマネをしているみたいだな……お前、どこの家だっけ? 家に仕える者を魔物に差し出しているように見えるが、それは魔物を討伐することを生業にしている家に喧嘩を売っていると考えていいよな」
「ひ……ひぃっ」
「お前が餌を与えるから、魔物が増えた。つまり、聖都を危険に晒したっていう解釈で間違ってねーよな」
「ち、ちが……ちがうっ……そ、そんなつもりはっ!」
「じゃあ、どういうつもりだったんだ? 説明してみろ」

 完全に死神のような男に呑まれて小さくなる雇い主のバカ息子は、俺様たちには恐怖の象徴であったというのに、今はとても弱々しくて、ちっぽけな存在に見えた。
 こんな奴に、俺様たちは恐怖していたのか?

「話になんねーな。ったく……テメーは邪魔だから暫く黙っていろ」

 蹴り一つで吹き飛び気を失った雇い主の息子は、ぐったりと体を大地に横たえているし、先程までそいつと一緒になって笑っていた護衛は、思いっきり殴り飛ばされたのか、俺様の何倍もありそうな巨体が吹っ飛んだかと思うと木にぶつかって力なく倒れる。
 あり得ないくらい強ぇ……気を失っている雇い主のバカ息子の心配なんてしない。
 それどころか、妙にスカッとした気分だ。
 それから、漆黒を纏う男は血の匂いに引き寄せられたのか集まってきた魔物を瞬く間に退治してしまい、こちらを見た。

「あー……んー……少し深いか? 痛みは?」
「え……えっと……」

 先程までの威圧は消え失せ、完全に下がってしまった耳と尻尾を見て何を思ったのか、俺様の頭を優しく撫でたあと、手早く傷の手当をしてくれたのだ。
 駆けつけた男たちは、その人の指示に従いポーションを惜しげもなく使って、他の怪我をしているキャットシーたちの手当をしつつ、何かのリストと照らし合わせて見ている様子だった。

「リュート様、こちらの4名は身元確認ができました。一度、故郷の村へ帰ることを希望しているようです」
「了解。だったら、あとはロン兄の指示に従ってくれ」
「しかし、リュート様。このバカは、どうします? ボンクラーノ商会のドラ息子ですよ?」
「あー、裁判にかけても金で買収する可能性が捨てきれないな。そちらはシモンの家に任せるが、念の為に急いで帰国させたほうが良いだろう。白騎士に話を通して護衛もつけるから大丈夫だ」

 この国の黒騎士……だろうか。
 全員が黒い鎧を身にまとっているが、目の前の青年だけは黒い服という出で立ちである。
 鎧もまとわずに魔物と戦っても平気なことから、この男の実力が底抜けなのは理解できた。

「お前の名前は?」
「カカオ」
「カカオも国へ一旦帰るか?」
「嫌だ。俺様は……親父に認めてもらうまで帰らねぇ」
「認めてもらう?」
「そうだよ、俺様は弟分のカフェとラテがちゃんと料理ができるようになるまで……アイツらの濃い味付けでも他の国で受け入れられるって証明するまで、どんなことがあっても帰らねぇ!」

 血を吐くような俺様の叫びを聞いた男は、驚いたように目を丸くしてから数回まばたきをした後、優しいまなざしで見つめる。
 先ほどの恐ろしい男と同一人物とは思えないくらい、柔らかな雰囲気をまとっていた。
 なんだ……この人……怖くねーじゃん。

「なんだ、お前……カフェとラテの知り合いか。だったら、俺についてこい。良いところへ連れて行ってやる」

 カフェとラテを知っている……?

 人間にひどい仕打ちをされたあとだが、この人は信じていいような気がした。
 魔物の遺体を丁寧に埋葬し、手を合わせて目を閉じる姿は、なんだか神秘的でもあり悲しみと葬った命を背負っているように感じたからだ。
 魔物を殺すことを生業としているのに、悲しんでいるのか?
 お人好しだよな……と思うのと同時に、この人の考え方は好きだと思えたのだ。

 その後、カフェとラテに再会し、リュート様には現在の職場である彼の実家───ラングレイ家を紹介してもらった。
 落ち着いた頃を見計らったようなタイミングでリュート様に実家の食の改善を依頼され、カフェとラテと一緒に相談しつつスープやら肉や魚の味付けを試行錯誤して出していたら、いつの間にか料理長になっていた。
 以前に勤めていた奴らはリュート様の求める料理を「馬鹿らしい」と一蹴したけど、俺様はそう思えなかったし、リュート様が求める新しい料理をこの目で見たかったのだ。

 その願いは叶った。
 師匠が来て、全てが変わった。

 基本的なことは完璧!
 さすが俺様!
 なんて思っていた過去の自分をシバいてやりたい。
 師匠の下ごしらえと知識や技術を知ったら、俺様なんてまだまだ赤子同然。
 完璧なんて烏滸がましい。
 しかも、俺様から見たら完璧だと思える師匠は、更に上がいるという。
 師匠に料理を教えた人は、神かなにかに違いない。

 それくらい、師匠の手から作り出される料理は最高なのだ。

 キュステの手ほどきもあって、改良された発酵石の器に何とか魔力を込めた師匠は「本来は1時間~丸一日ほど冷蔵庫で寝かせてくださいね」と注釈を入れつつ生地をしまい込む。

「そして、1時間経った生地がこちらです」
「料理番組かよ」

 ボソリと呟いたリュート様の言葉の意味はわからなかったが、師匠がピクリと反応して肩を震わせて笑いを堪えていることから、二人だけに通じるなにかなのだろう。
 いいよな……仲良さそうで……
 これが、召喚術師と召喚獣の間だけで理解できるイメージだというのなら、羨ましくもある。
 そしたら、料理の知識もある程度共有できるのに……
 だけど、そのイメージを通してリュート様が調理器具を開発しているというのなら、良いこと……か?
 新たに最近作られている調理器具は、どれも大量生産に役立ちそうだし、カフェとラテだけではなくナナトも喜んでいたから、欠けているモノを補うために呼ばれる召喚獣という考えは間違いないのだろう。

 これって、料理関連で最強ペアなのは間違いないよな。
 リュート様の『食の変人』の異名が轟くのも……いや、そのうちそれが『食の魔神』とか全く別の異名になっていても驚きはしない。
 だって、リュート様だもんな……『魔王』とか『魔神』とか、とりあえず『魔』のつく称号が似合いすぎるんだって……

 そんなことを考えている間に師匠はテーブルに粉を薄く敷き、その上に生地を置いて適当な大きさに切り分けてから、太い木の棒を使って平らに伸ばしていく。
 みんなに食べてもらった生地は、リュート様が作ってくれたパスタマシーンで伸ばして切ったけど……棒で伸ばすのは大変そうだ。

 平たく均一に伸ばされていく生地をマリアベルは目を輝かせて見ているし、他の人達も興味津々である。
 まあ、師匠の料理に興味を覚えない方がおかしいよな。
 すげー料理の数々を俺様たちに伝授してくれる師匠の洗練された動きにまで到達しようとしたら、一体どれくらいの月日が必要になるのだろう。

 そんなことを考えながら、隣で「くるくる~なの、くる、くるる~なの」と歌っている春の女神様を見て、全員が和んだのは仕方がないことだと思えた。

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