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第三章 ウェルカムキャンプ編

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貴族院が所有する森の北側に馬車が到着した。
俺とキースは後半に仮眠をとっていたため、寝ている間に到着したようだ。
俺達は荷物をまとめて、乗ってきた馬車から降りた。俺はこの後、後続の馬車でやってくるオルト様たちをこの北の入り口で待つことになる。


「じゃあ、アース。俺たちは先に行かせてもらうな。……本当は、アースと一緒に待っていたいんだが。」


「うん、ありがとう。だけどキルたちは、森の中心付近が指定の場所なんだから、できるだけ早く出発しないと日が暮れちゃうよ。お互いのチームでめいいっぱい楽しもうね。何かあったらいつでも合図してね。」


「……ああ、わかった。アースの方こそ、何かあったら必ず助けを呼べよ。」


「うん、了解。……じゃあみんな、俺達の主を頼んだよ。」



俺がそういうと、他の側近3人はそれぞれのしぐさで了解の意を表してくれた。
そしてキルたちは、森の中心に向かって歩き出した。俺はそれから、魔力を薄く展開し、キルたちの居場所をいつでも把握できるようにした。
……あくまで仕事であって、決してストーカー行為ではない。


オルト様たちは下級貴族の中でも一番下に近い身分だから、馬車が来るまでは少し時間があるだろう。まあそのお陰で、時間がかかるからと入り口付近にキャンプポイントが指定されたから、その場所まであまり歩かなくていいのだけど。

俺は暇つぶしにと思って、森の周りに配備されている騎士や魔導士たちに話しかけながら時間をつぶした。今回の警備では割と若い世代が多く派遣されているようだ。森を取り囲むように、騎士や魔導士たちが配備されているようだ。

そうして時間をつぶしていると、オルト様たちの乗った馬車が到着した。



「アース様、すみません! お待たせいたしました!」


オルト様たちは馬車から転げ落ちそうになりながら、俺の近くまで走ってきた。いくら普通に話させるようになったとはいえ、一応上級貴族の俺を待たせる形となったため、かなり恐縮しているようだ。


「待つのは苦ではないので、全然大丈夫ですよ。のどが渇いたのではありませんか? 水でも飲んで落ち着いてください。」



俺はグラスを取り出して、清属性のキラキラ水を注いで渡した。


「こ、これが、噂のアース様の清属性魔法なんですね! とてもきれいです!」


「ドール様、ありがとうございます。お礼に氷もお付けしましょう。」


「わー! ありがとうございます!」


ドール様はそういうと、水を一気に飲み干した。ドール様は何というか、いい意味で俺に対して緊張していないようだ。というか、誰に対してもこんな感じなんだと思う。



「さてと、では行きましょうか。すみません、オルト様とケラト様にキャンプ用具を持って頂いて……。重くはないですか?」


「これくらい大丈夫ですよ。力仕事は騎士見習の俺たちに任せてください。なあ、ケラト?」


「俺はこれくらいしかできないので、いつでもお申し付けください。」


「充分助かっていますよ。何か力仕事があったら頼らせてもらいますね。」



そうして俺たちは、指定のポイントを目指して歩き出した。道中では、オルト様の指示のもと木の枝を集めた。初学院の後半2年間では、こうした野営のための授業が行われたようで、それを受けていない俺は基本的に指示を聞いて動くことにしている。



「そういえば、ドール様の属性をお聞きしてもよろしいですか? 戦闘等の参考にしたいので。」


「俺の属性は火と土です! 特に、火属性の瞬間火力には自信があります!」


「なるほど、瞬間火力に自信があるのですね。……もし今日の夜に、魔力量余裕がありましたら教えていただいてもいいですか? 」


「それはもちろん構いませんよ。何でも協力します!」


素晴らしい属性の組み合わせだ。ドール様の土属性で土の壁をつくって、俺の水球を温めてもらえば簡易的なお風呂がつくれるかもしれない。……もちろん、ドール様の魔力に余裕があったらだよ?







ーー







そうこうしているうちに、指定の場所までたどり着いた。
近くに川が流れているから、結構ベストポイントではないだろうか?



「それでは、テントの組み立てや火おこしを担当する班と食料調達をする班に分かれましょうか。……っと、すみません。先ほどから俺が仕切っていますけど、アース様はご不快ではないですか?」


「全く不快ではないですよ。むしろ、的確な指示を出していただいて助かっていますし、感心しています。オルト様は指揮官に適性があるかもしれませんね。」


「い、いえ! 俺のような下級貴族には力不足ですよ。」


「能力の有無に、家の格は関係ないと俺は思いますよ。今の王族なら、能力をある人を引き立ててくれると思いますし、なにより下級貴族だからと侮るような方々ではないですよ。」


「わ、わかりました……。」


すると、ドール様が勢いよく手を挙げ、てぴょんぴょんと跳ねながらオルト様に駆け寄った。


「アース様、オルトは剣も優れていますよ!」


「お、おいドール! 俺がすぐれているなんてそんなこと……。」


「ええ、殿下やキースからも聞いていますよ。もちろん、オルト様だけではなくドール様やケラト様も素晴らしい腕をお持ちだと聞いております。Aクラスに入学した実績があるのです。もっと自信を持っていいと思いますよ。」



実際にキルやキースから、オルト様とケラト様はなかなか筋がよさそうだということを聞いている。学年が同じで騎士同士だから、2人の訓練の様子を見る機会があるのだ。ケラト様の方は、魔道具士として優秀そうだとジールから聞いている。



「………アース様にそう言って頂けると、嬉しいですね。」


「本心を言ったまでですよ。それじゃあ、班分けはどうしますか? 俺はどちらでも構いませんよ?」


「えーと、それでは……。ケラトと火の使えるドールはここに残ってくれ。アース様は俺と一緒に食料調達に行きましょう。」


「食料調達ですね、了解です。川に入って魚を取りますか、釣りをしますか? それとも狩りをしましょうか?」



俺がそういうと、3人は目を瞬かせながら視線を交わし合った。
何だろうか、俺の発言がワイルドすぎたのだろうか?


「どうかしましたか?」


「………いえ、何でも。少し、アース様からそのような提案が出たことに驚きました。1日だけですので食べられる果物を探して、あとは食べられる魔物を狩りましょうか。」


「了解です。俺は殿下の位置把握のために魔力展開をしているので、C級の魔物を見つけることができない状態ですが大丈夫でしょうか?」


「大丈夫ですよ。一般的には、感知を使わずに食料調達をするので問題ありません。」


あ、確かにその通りだな。
魔物の痕跡とかをたどって、見つけ出すのだろうか? とても楽しみである。


「わかりました。では、行きましょうか。」


そうして、俺達は二手に分かれて行動を開始した。

















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