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第三章 ウェルカムキャンプ編
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オルト様は木々をかき分けて、木の根元を見ながらゆっくりと歩いている。
歩く姿に迷いは見られないため、随分となれているように思える。俺のいない2年間の初学院の授業で、ここまでこなせるようになるのだろうか?
「アース様、ここの木の根元をご覧ください。」
ぼーっと色々考えながら歩いていた俺は、オルト様の呼びかけによって、こちらの世界に引き戻された。
オルト様が指し示す所を見ると、「J」のような形の傷が木の根元についていた。……自然にできた傷ではなさそうだけど。
「不自然な傷ができていますね。何かの痕跡ですか?」
「ええ、そのとおりです。この傷は、ホーンラビットが己の縄張りを示すためにつける傷です。この傷をつける高さは、ホーンラビットの大きさや角の長さで変わりますよね?
それによって、相手に自身の強さを示して縄張を主張するのです。」
なるほど、とても興味深いな。こういうサバイバル知識には、否が応でも男心がくすぐられてしまう。
ホーンラビットということは、角の生えたウサギだよな? ウサギということは食べられるだろうけど、おいしいのだろうか? あと、解体は誰がするのだろうか?
「なるほど、勉強になります。……一応確認ですが、ホーンラビットは食用なのですか?」
「ええ、食用ですよ。上級貴族の食事には出てこないと思いますが、あっさりしていておいしいですよ。解体もできますので、一番おいしいもも肉を食べてみてください。」
「解体もできるのですか? ……まあ、考えてみたら解体ができなきゃ魔物をとっても意味がないですからね。」
「まあ、そういうことです。俺だけではなく、もちろん他の人たちも……キース様もできるはずですよ。キルヴェスター殿下には解体をさせたくないようで、殿下の分まで解体を行っている姿が印象的でしたね。」
なるほど、目に浮かぶような光景だ。キースは何かとキルのお世話をするのが好きなので、キルに触らせまいと淡々と解体をしていいたのだろう。
淡々としすぎて、スプラットで無表情な殺人鬼と間違われていないか少々不安だけど、剣術のように素晴らしい解体技術を持っているに違いない。
「キースならきっとそうするでしょうね。では、オルト様の解体時に俺が清属性の水できれいに洗い流す役をしましょう。水が必要な時はいつでも声をかけてくださいね。」
「………きれいな水で解体し、調理できるのはありがたいです。川の水ではやはり、清潔さに不安がありますからね。お言葉に甘えさせていただきます。」
「任せてください。他にもいろいろ教えてくださいね。」
「もちろんです。ですがまずは、ホーンラビットを仕留めないとですね。……っと、来たようですよ。」
オルト様が俺の後ろを手で示しながら、そう言ったので、後ろを振り向くと、ゴールデンレトリバーくらいの角の生えたウサギがこちらを威嚇するように角を前後させていた。
……でかいな。ふつうに前世のウサギを想像していたけど、このくらい大きいと遠近感が狂ったように思えてしまう。
とりあえず、逃げられないように仕留めておこうか。
俺は『氷弾』と小さく唱えて、ホーンラビットの頭を打ちぬいた。
「では、俺が仕留めますね。C級相手に、キルヴェスター殿下の側近の方のお手を煩わせるわけにはいきませんから。」
「大丈夫です。もう終わっていますよ。」
「………へ?」
俺が笑顔で終了を宣言すると、オルト様は何を言われたのか理解できないというような表情で、変な声を出した。
それと同時に、ホーンラビットの体が横に倒れた。ぐちゃぐちゃにしたら行けないと思い、小さな氷弾で仕留めたのだホーンラビット自身も、撃ち抜かれて絶命したのだと認識するのに
少し時間がかかってしまったようだ。
「小さな氷弾で頭を打ちぬいたので、少々時間差が発生したようですね。これなら、解体や血抜きに問題ないでしょうか?」
「………へ? は、はい……問題ありません。ありがとうございます。」
オルト様は、俺とホーンラビットの亡骸を交互に見やった後に、明らかに無理をした笑顔を浮かべた。
もしかして、頭を打ちぬいたことが悪かったのだろうか? 頭が珍味だから、傷つけたくなかったとか? いや、先程オルト様はもも肉が一番おいしいと言ったから多分違うな。
ということは……あ!
「あの、オルト様。大変申し訳ございませんでした。オルト様が痕跡を見つけたのですから、オルト様が仕留めるべきでしたね。活躍の機会を奪ってしまい、申し訳ございませんでした。次の獲物はオルト様にお譲りします。」
「……こ、光栄です。」
その後は、果物や野草を集めることになった。
先程も思ったけど、オルト様のサバイバル知識が本当に頼りになる。他のみんなもこのレベルでサバイバルを行えるのだろうかと不思議に思う。
「あ、これはクラボの実ですね。柑橘系の実で、爽やかでとてもおいしいですよ。」
「クラボの実は俺も知ってます。木の葉を使った紅茶をジールが好んでいるんですよ。」
「バルザンス様がクラボの実の紅茶を……?」
オルト様はそういうと、不思議そうな表情で首を傾げた。
クラボの実は、割と庶民の間でも食べられている果実だ。そのような庶民的な食べ物の紅茶を、なぜ公爵家のジールが好んで飲んでいるのかと不思議なのだろう。
「ジールが……公爵家の次男が庶民的なクラボの実の紅茶を飲んでいることが不思議ですか?」
「………い、いえ、そういうわけでは」
「あはははは。不思議に思って当然のことだと思いますよ。……実際はというと、ジールは、クラボの実の紅茶が庶民的かそうでないかというのは気にしていないと思いますよ。そういうところがあるんです。それに、ジールの好みの紅茶はころころ変わるんですよ。そろそろ、別の紅茶に好みが移っているかもしれないですね。」
俺がそういうと、オルト様は一瞬難しいと言わんばかりに眉を寄せた後に、「………そういうこともあるのですね。」とつぶやいた。
高位貴族は庶民的な食べ物を口にしないと思っていたのだろうか?
ちなみにクラボの実はというと、日本のスーパーで安売りされているアメリカ産のミネラルオレンジのような果物だ。
俺からすると、充分おいしい果物だ。
歩く姿に迷いは見られないため、随分となれているように思える。俺のいない2年間の初学院の授業で、ここまでこなせるようになるのだろうか?
「アース様、ここの木の根元をご覧ください。」
ぼーっと色々考えながら歩いていた俺は、オルト様の呼びかけによって、こちらの世界に引き戻された。
オルト様が指し示す所を見ると、「J」のような形の傷が木の根元についていた。……自然にできた傷ではなさそうだけど。
「不自然な傷ができていますね。何かの痕跡ですか?」
「ええ、そのとおりです。この傷は、ホーンラビットが己の縄張りを示すためにつける傷です。この傷をつける高さは、ホーンラビットの大きさや角の長さで変わりますよね?
それによって、相手に自身の強さを示して縄張を主張するのです。」
なるほど、とても興味深いな。こういうサバイバル知識には、否が応でも男心がくすぐられてしまう。
ホーンラビットということは、角の生えたウサギだよな? ウサギということは食べられるだろうけど、おいしいのだろうか? あと、解体は誰がするのだろうか?
「なるほど、勉強になります。……一応確認ですが、ホーンラビットは食用なのですか?」
「ええ、食用ですよ。上級貴族の食事には出てこないと思いますが、あっさりしていておいしいですよ。解体もできますので、一番おいしいもも肉を食べてみてください。」
「解体もできるのですか? ……まあ、考えてみたら解体ができなきゃ魔物をとっても意味がないですからね。」
「まあ、そういうことです。俺だけではなく、もちろん他の人たちも……キース様もできるはずですよ。キルヴェスター殿下には解体をさせたくないようで、殿下の分まで解体を行っている姿が印象的でしたね。」
なるほど、目に浮かぶような光景だ。キースは何かとキルのお世話をするのが好きなので、キルに触らせまいと淡々と解体をしていいたのだろう。
淡々としすぎて、スプラットで無表情な殺人鬼と間違われていないか少々不安だけど、剣術のように素晴らしい解体技術を持っているに違いない。
「キースならきっとそうするでしょうね。では、オルト様の解体時に俺が清属性の水できれいに洗い流す役をしましょう。水が必要な時はいつでも声をかけてくださいね。」
「………きれいな水で解体し、調理できるのはありがたいです。川の水ではやはり、清潔さに不安がありますからね。お言葉に甘えさせていただきます。」
「任せてください。他にもいろいろ教えてくださいね。」
「もちろんです。ですがまずは、ホーンラビットを仕留めないとですね。……っと、来たようですよ。」
オルト様が俺の後ろを手で示しながら、そう言ったので、後ろを振り向くと、ゴールデンレトリバーくらいの角の生えたウサギがこちらを威嚇するように角を前後させていた。
……でかいな。ふつうに前世のウサギを想像していたけど、このくらい大きいと遠近感が狂ったように思えてしまう。
とりあえず、逃げられないように仕留めておこうか。
俺は『氷弾』と小さく唱えて、ホーンラビットの頭を打ちぬいた。
「では、俺が仕留めますね。C級相手に、キルヴェスター殿下の側近の方のお手を煩わせるわけにはいきませんから。」
「大丈夫です。もう終わっていますよ。」
「………へ?」
俺が笑顔で終了を宣言すると、オルト様は何を言われたのか理解できないというような表情で、変な声を出した。
それと同時に、ホーンラビットの体が横に倒れた。ぐちゃぐちゃにしたら行けないと思い、小さな氷弾で仕留めたのだホーンラビット自身も、撃ち抜かれて絶命したのだと認識するのに
少し時間がかかってしまったようだ。
「小さな氷弾で頭を打ちぬいたので、少々時間差が発生したようですね。これなら、解体や血抜きに問題ないでしょうか?」
「………へ? は、はい……問題ありません。ありがとうございます。」
オルト様は、俺とホーンラビットの亡骸を交互に見やった後に、明らかに無理をした笑顔を浮かべた。
もしかして、頭を打ちぬいたことが悪かったのだろうか? 頭が珍味だから、傷つけたくなかったとか? いや、先程オルト様はもも肉が一番おいしいと言ったから多分違うな。
ということは……あ!
「あの、オルト様。大変申し訳ございませんでした。オルト様が痕跡を見つけたのですから、オルト様が仕留めるべきでしたね。活躍の機会を奪ってしまい、申し訳ございませんでした。次の獲物はオルト様にお譲りします。」
「……こ、光栄です。」
その後は、果物や野草を集めることになった。
先程も思ったけど、オルト様のサバイバル知識が本当に頼りになる。他のみんなもこのレベルでサバイバルを行えるのだろうかと不思議に思う。
「あ、これはクラボの実ですね。柑橘系の実で、爽やかでとてもおいしいですよ。」
「クラボの実は俺も知ってます。木の葉を使った紅茶をジールが好んでいるんですよ。」
「バルザンス様がクラボの実の紅茶を……?」
オルト様はそういうと、不思議そうな表情で首を傾げた。
クラボの実は、割と庶民の間でも食べられている果実だ。そのような庶民的な食べ物の紅茶を、なぜ公爵家のジールが好んで飲んでいるのかと不思議なのだろう。
「ジールが……公爵家の次男が庶民的なクラボの実の紅茶を飲んでいることが不思議ですか?」
「………い、いえ、そういうわけでは」
「あはははは。不思議に思って当然のことだと思いますよ。……実際はというと、ジールは、クラボの実の紅茶が庶民的かそうでないかというのは気にしていないと思いますよ。そういうところがあるんです。それに、ジールの好みの紅茶はころころ変わるんですよ。そろそろ、別の紅茶に好みが移っているかもしれないですね。」
俺がそういうと、オルト様は一瞬難しいと言わんばかりに眉を寄せた後に、「………そういうこともあるのですね。」とつぶやいた。
高位貴族は庶民的な食べ物を口にしないと思っていたのだろうか?
ちなみにクラボの実はというと、日本のスーパーで安売りされているアメリカ産のミネラルオレンジのような果物だ。
俺からすると、充分おいしい果物だ。
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