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1章 The hierarchy of lust

Digital10.ティラニカル・ブラック・フォックス

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 俺とイザナは急いで茶髪先輩が逃げた方に向かう。少し走ったら気絶している白夜と二人の生徒の前に、黒い狐の心の影シャドウと面向かい合っている。
 黒い狐の心の影シャドウの方を見ると視界にTyrannical Black Foxと表示する。
 Tyrannical Black Fox、通訳すると暴虐的なブラックフォックスだ。
 ティラニカル・ブラック・フォックスは俺達を見るなり雄叫びを上げる。

『キュオーン!』

 ティラニカル・ブラック・フォックスは二本の尻尾に火をともすと、俺達の方に投げ飛ばす。
 俺はイザナと白夜、二人の生徒の前に立ってサラマンダーを召喚する。

「召喚、サラマンダー!」
『キィー!』

 サラマンダーは叫び声を上げながら、ティラニカル・ブラック・フォックスの狐火を防ぐ。
 しかしサラマンダーはヒート=火炎の耐性があるとは言えど、無効化や吸収する事は出来ず、もう片方の狐火は白夜に向かっている。

「そうはさせない!」

 イザナは瞬時にイゾウを召喚して白夜の前に立つ。
 紅い炎の狐火をそのまま受け止め、狐火が爆発して吹き飛ばされてしまった。
 イザナは狐火の爆風をもろに受けてしまい、やけどをしてしまいながら叫ぶ。

「グァァァァァァァ!」
「イザナ、しっかりしろ!」

 俺はイザナの方に向かい、リュックサックから応急薬を取り出し、やけどしたところを掛ける。すると白夜は頭をさすりながら起きる。

「イテテテ……ココはッテ、そうだった! 俺は確かデケェ狐の化け物に襲われた奴を助けて、その後は……!?」

 白夜は俺とイザナの方を見ると声を出せずに驚く。そりゃそうだろう、だって俺の肩やイザナの背後にいるのはうっすら何か(アルターエゴ)が見えるからな。
 今はアルターエゴについて説明したいが、今はやけどの手当てとティラニカル・ブラック・フォックスを倒す事に集中しないと。
 俺は急いでやけどの治療をするが、ティラニカル・ブラック・フォックスは鋭い爪を俺に向けて振り下ろす。
 だがその鋭い爪は振り下ろされず、白夜が俺の片手剣を取り、ティラニカル・ブラック・フォックスの手を突き刺して止めた。
 ティラニカル・ブラック・フォックスは手を突き刺された痛みで叫ぶ。

『キュオーン!?』

 ティラニカル・ブラック・フォックスは叫びながら、器用に片手剣を外して後ろに下がる。俺は落ちた片手剣を回収してイザナのやけどを治す、それと白夜の方に近づいて心配する。

「オイ、大丈夫か? 白夜!」
「ぜぇぜぇ……大丈夫だ。だけどなんて俺の名前を……?」

 白夜は息を切らしながら名前を知っている事について質問する。俺はさっき茶髪先輩が言ったと伝える、すると白夜はめんどくさそうに舌打ちをする。

「ツッ――! あの野郎、マジで碌な事しねぇな!」
「どう言う事だ? あの人はお前を助けようと――」
「そんなわけ無いだろ! あいつはあの化け物を倒すのを押し付けられたんだぞ!」

 白夜は俺の言葉を即座に否定して言う。
 確かに茶髪先輩は普段素行が悪く、遊び半分で心理之迷宮アルファポリスに入ったが次の層に入れる扉付近に運悪くティラニカル・ブラック・フォックスに出会ってしまっただろう。
 ハァァ……後でイズナさんにあの三人に説教して貰おうか。
 そう思いながら白夜を角の方に隠して、心の影シャドウを寄せ付けないお香を焚いて置き、俺はティラニカル・ブラック・フォックスの方に向く。
 ティラニカル・ブラック・フォックスはさっき手に片手剣を刺された痛みで俺を強くにらんでいる。
 だったらそっちの方が好都合だ。そう思っているとイザナが立ち上がる。
 俺はイザナを心配しながら聞く。

「おい、やけどは大丈夫か? かなり傷は酷かったけど?」
「応急薬で何とか治癒できたよ……。さて、ここからクライマックスだ!」

 イザナはそう言いながら日本刀をティラニカル・ブラック・フォックスに向ける。なんか懐かしさがあるな、それ。
 マァ、その言葉を聞いて俺も吹っ切れた!

「そうだな……さぁ、吹っ切るぜ!」

 俺はそう叫ぶとサラマンダーを召喚して、ティラニカル・ブラック・フォックスに突撃する。
 ティラニカル・ブラック・フォックスは俺に向けて炎のブレスを放つ。だがサラマンダーを召喚している事でダメージは少なく、なおかつやけどを負う事はない。
 イザナは俺の背後についており、ティラニカル・ブラック・フォックスのブレス攻撃が終えると、イゾウを召喚して五月雨斬りを放つ。
 ティラニカル・ブラック・フォックスの四肢と尻尾に斬撃を食らい、ティラニカル・ブラック・フォックスは叫び声を上げる。

『キュオーン!?』

 ティラニカル・ブラック・フォックスは叫び声を上げつつ、尻尾に狐火を生み出してイザナに向けて放つ。
 しかし俺はイザナの前に立ち、サラマンダーのヒート耐性でダメージを減らす。
 これを繰り返しておけばいずれ倒せる。
 そう思っているとティラニカル・ブラック・フォックスは紫色の狐火を生み出して、それを俺に向けて放つ。
 色違いの狐火だろうと思っている、しかし紫色の狐火を食らう数センチで熱さではなく、禍々しさを感じて俺はイザナを突き飛ばして避ける。
 するとさっきいた場所が燃えず、闇に包まれて消滅する。
 なんだあの攻撃、一瞬でも避けるのが遅れたら消滅していたぞ!
 さっきの攻撃に悍ましく感じている時に、イズナさんが焦りながら言う。

『ゴメン! 少し遅れちゃって、そいつの攻撃を見て爪の斬撃とヒート属性の狐火、あとはアーク=暗黒属性の狐火で、特にそのアーク属性の狐火はとてつもない威力だ!』

 俺はその言葉を聞いて驚く。
 なんじゃそりゃ!? さっきのヒート属性の狐火は耐性付きで15なのに、もしかしたらこの攻撃って即死かも知れない!
 この攻撃をどうやって対処しようか考えていると、ティラニカル・ブラック・フォックスがアーク属性の狐火を放とうとする。
 不味い、急いで避けないと。
 俺とイザナは慌てて避けようとした時、奥から誰かが呼びかけてくる。

「横に避けろ!」

 俺とイザナは横に回避すると、さっきいた場所に石レンガが飛んできて、ティラニカル・ブラック・フォックスの右目をつぶす。
 右目をつぶされた事でティラニカル・ブラック・フォックスは叫び声を上げる。

『キュオーン!?』

 ティラニカル・ブラック・フォックスは右目を抑えながら苦しむ。俺はさっき石レンガが飛んで来た方に向く。
 そこには石レンガを数個抱えている白夜がいた。
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