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やっぱ朝食は和食だよね!

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朝起きた千春はサフィーナと厨房に立っていた。

「チハル何作るの?」
「そりゃ朝ごはんだよ。」
「それはわかりますけど、コレ何ですか?」
 サフィーナは千春が日本から持ってきた味噌を見ながら問いかける。

「みそ!味噌汁作ろうと思ってね。」
「こちらにも味噌ありましたよ。」
「え!?味噌あるの?!」
「はい、交易品にありました、お湯に溶いて飲むスープですよね?」
「そ、ダシと具で味が変わるんだよ。」
 ハース領主邸の料理人ヘンスが千春の調理を見て話しをする。

「ダシは煮干しって言う小魚を干したのを煮て出すんだけど、あっちから持ってきたダシ使うね。」
 軽くお湯で溶きヘンスに味見をさせる。

「軽く磯の風味と魚の味が出てますね、かなり薄いですけど。」
「うん、この少しの風味が味を変えるんだよ。」
 だし汁にハース領で売っていたワカメとカニの足を食べやすいサイズに切り入れる。

「コレで一度沸騰させて煮えたら火を落として味噌を入れまーす。」
 少し冷ましてから味噌を入れ沸騰させないように温める。

「はい、ヘンスさん味見。」
「ありがとうございます・・・美味い。」
「でしょ?」
「こんなに美味しいスープが簡単に出来るなんて信じられません。」
「作り方覚えた?」
「はい!」
「それじゃ次ー、玉子焼きと焼き魚、魚はコレね。」
 アジのような魚を3枚にささっと下ろしかるく塩を振る。

「この魚を焼いてもらって良いですか?」
「はい、あちらのオーブンで焼いてきます。」
「サフィー魚終わったよ。」
「はい。」
 魚を出したら後ろを向いていたサフィーナに声をかけて卵を割っていく。

「味は白だしで、少し砂糖を入れます、油を入れてフライパンに馴染ませて薄く卵液を入れて広げていきまーす。」
 フライパンを軽く回して卵を広げる。

「薄いですね。」
「これをフライパンの上で重ねて行くんだよ。」
 端からクルクルと折り畳んでいく。

「焦げないくらいでどんどん重ねて行くの。」
 畳んだ玉子焼きを端に寄せ、また卵液を入れ広げる、そしてまたクルクルと重ねて行く。

「簡単そうに作ってますけど崩れないんですか?」
「慣れだねー、やってみる?」
「はい。」
 途中からサフィーナが同じように玉子焼きを作る。

「あ、これは、中々、難しい、です!」
 それでも少し菜箸で崩れた所は出来たがコツを掴んだサフィーナは作り上げた。

「上手!最後が綺麗なら途中崩れてもバレないから大丈夫!」
 フライパンから取り出しナイフで一口サイズに切り分け口に入れる。

「うん、美味しい、はいサフィーの初玉子焼き。」
「ありがとうございます。」
 サフィーナも味見をする。

「ヘンスさんもどうぞ。」
「いただきます。」
 作り方を見ていたヘンスも一口食べる。

「美味しい、卵は毎日使っていますが、こんな料理もあったんですね。」
 感動した様に呟くヘンス。

「他にもオムレツやお米に味付けして包むオムライスなんかも有るよ。」
「それは一度食べてみたいですね。」
「今度王都でも作ったらレシピを送る様にアリンに言っておくよ。」
「いえ、もう少しすれば社交シーズンが始まります、ハース様のご家族も王都に行くと思われますので、その際にでも言付けして頂ければ。」
「りょーかい♪多分ハースさんがルノアーさんに嫌でも聞くだろうし大丈夫だね。」
 この厨房には醤油も豊富に置いてあった、千春は焼き魚には醤油で、玉子焼きも覚えたと言うヘンスへ後を任せ部屋に戻る事にする。

「サフィー、社交シーズンって何するの?」
「各地の領主や貴族が王都に集まり、お茶会や夜会をする期間です、情報交換や交流で親密関係を上げる大事な貴族のお仕事ですよ。」
「へぇ、貴族も大変だにゃー。」
「何を他人事みたいに言ってるんですか?王族も有る程度は出席しますからチハルも行く事になりますよ?」
「えー!めーんーどーくーさーいー!」
「まぁチハルが行きたくないと言えば行かないで良くなると思いますけど、王妃殿下が無理強いしませんので。」
「あー、お母様そう言う事言ってたなー、行かないでも良いの?」
「えぇ、ただ王宮で有る夜会等には出た方が良いでしょうね、ハルト殿下の許嫁になりますから。」
「あ、そう言う事?」
「何がです?」
「ハルトが何処に連れて行っても問題ないって食事の時に言ってたのよ。」
 ふと千春は食事の時に聞き返した時、エンハルトの含みの有る言い方が引っかかっていた。

「そうですね、まぁ王都に帰ったら私が有る程度の作法をお教えしますから大丈夫ですよ。」
「お願いしまーすサフィー先生ー。」
「今まで見ていた限りでは問題無いですけどね、チハルって貴族の前じゃ大人しいですから。」
「褒めてないよねそれ。」
「大絶賛です。」
 2人は笑いながら部屋に戻る、まだロイロ達は寝ていたが、リビングで話をしていると起きて来た。

「おはようユラ、ロイロ。」
「あーおはようチハル。」
「チハルおねえちゃんおはよぉー。」
 ユラはチハルを見ると駆け寄って抱き付く。

「ほら、顔洗って歯磨いておいで、もうすぐご飯来るからね。」
「はーい。」
 モリアンに洗面所まで連れて行かれ朝の準備を始めるユラ。

「ロイロ、昨日アイトネどれくらいまで居たの?」
「酒とお菓子が無くなったらさっさと帰ったぞ。」
「え、お菓子全部食べたの?お酒も?」
「あぁ全部平らげたな。」
「てっきりサフィーが残ったのアイテムボックスに入れてると思ってたよ。」
「入ってますよ、ゴミと空瓶が。」
「・・・また補充しないと、持ってきたの全部消えたよ。」
 呆れた様に千春はロイロ達を見る。

「千春わっちは日本酒がまたのみたいんやけど。」
「俺も日本酒の補充して欲しいな。」
「儂はやっぱりウイスキーじゃなー、焼酎も美味かったがな。」
 人外3人は昨日の酒の味を思い出しながらニヤニヤしつつ千春に注文する。

「チハルおはよう。」
「おはようハルト、ハルトも昨日遅かったの?」
「いや、チハルが寝てから少しして寝室の方でアリンと飲んだがすぐ寝たぞ。」
「そっか、何飲んだの?」
「ウイスキーとワインだな、まだ残ってるが貰って良いか?」
「うん、荷物になるから預かるよ。」
 千春はエンハルトの荷物を纏めてアイテムボックスに入れる。

「やっぱり便利だな。」
「そだね、今の所これ使えるのはこの世界で3人だからね。」
「3人?チハルとサフィー以外に居るのか?」
「うん、冒険者の狼の牙って居たでしょ、あのメンバーのユーリンが使えたよ。」
「凄いな、冒険者でこの魔法が使えたら便利すぎるだろう。」
「うん、めっちゃメンバー喜んでたよ。」
「ふむ、使える条件は何なんだろうな。」
「・・・・ひんにゅー(ボソッ)」
「え?なんだって?」
「何でもありまっせーん!!!!」
 ぷいっと顔を逸らしリビングに戻ると執事が食事の準備が出来たと報告に来る。

「アリンは?」
「早くから起きて部屋を出たぞ、部下に指示しに行ったんだろう、一緒に帰ると意気込んでたからな。」
「へぇ、頑張るじゃん。」
「一緒に帰れなければ最速でも10日馬車でかかる距離だからな、チハル達の休みはいつまでだ?」
「んっと今日何日だっけ・・・5日か、10日から学校始まるから今日合わせて5日だね。」
「そうか、まだ日はあるんだな。」
「あるけどあっという間だよねぇ、お父さんも来週末には出張先戻るって言ってたからなー。」
「来週末?あと何日有るんだろうか。」
「14日の土曜に飛行機に乗るからあと10日だね。」
「有難う、色々と相談もあるから時間が有るのは助かる。」
「相談?」
「あぁ、俺とチハルの事とかな。」
「あっ・・・あー、うん、そだね。」
 千春は少し赤くなりながら頷く、そして朝食が並べられ皆で食べる。

「ほう、チハルの国の料理を作ったんじゃな。」
「わっちもこういう飯が好きだ、米もあったんか?」
「ご飯は私が持って来てる米を炊いたよ。」
「美味しいですね、焼き魚と醤油、ご飯が凄く合います。」
「チハルおねえちゃんたまごやきおいしい!」
 皆美味しいとバクバク朝から食べ、満足してくれた、そしてアリンが戻るまでゆっくりと・・いや、昨日の疲れが残っていたせいか、皆はソファーでだらけて待った。







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