長女は家族を養いたい! ~凍死から始まるお仕事冒険記~

灰色サレナ

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宴の終わり ③

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「すげぇ弱い……なんだこいつらハリボテか???」

 火災現場に到着すると早速、炎に巻かれたディーヴァがキズナめがけて突進してきたのだが……銃弾一発で額を撃ち抜かれ機能停止してしまった。
 あまりのあっけなさに拍子抜けして周りを見渡すと、数名がかりでディーヴァを抑え込んでいる衛兵や出店の一般人までいる。

「嘘だろ……まさかこいつ劣化かなんかしてんのか? こんな特徴のないのっぺらぼう見間違う訳ねぇしな」

 キズナの知るディーヴァは時速60キロで走り、関節の可動域が異様に広いめちゃくちゃタフな人型殺戮兵器だ。間違っても一般人が束になってもかなう相手ではない。
 首を傾げるキズナに新たなディーヴァが迫るが、無造作に四肢を撃ち抜いて動きを止め。腰に差した小太刀で首を斬ると驚くほどあっさりとその頭は地面に落ちた。

「おい、君は……秘書官の護衛官か?」

 首を傾げるキズナに消火活動中の衛兵が声をかける。一目で弥生の護衛官とわかる位に自分は有名だっただろうかと、訝し気に声のする方へ振り返った。そこには取り立てて特徴の無いのが特徴のような青年が居た。
 必死に火事や襲撃と言う事態に立ち回ってたのか、普段はノリがしっかり効いた衛兵用の制服は煤だらけだ。そんな彼の姿を見てキズナが気づいた……彼の胸元にある書記官のバッジに。

「ああ、弥生の命令で先行して増援に来たんだが……ずいぶんと派手にやってるな。後夜祭にしては」
「いきなり出店にあのよくわからん人形が飛び込んで火災が起きてな……商人や出店の店員、一般人を避難させるのを優先していたんだ。運悪く戦闘が得意な者が少なくて困ってる。期待しても?」
「もちろん任せろ、戦闘以外は苦手だけどな……書記官なのに戦えてる時点で驚いてるよ」
「気づいていたのか、なら任せる。おい、人形の排除を彼女が請け負う! 手が空いた者から消火に当たれっ!!」

 キズナが周りを見渡すと確かに焼き鳥のような物を出していた屋台などが大分派手に焼け落ちていた。微妙に香ばしい匂いにお腹がなりそうだが、もちろんそんな場合ではないので……気を取り直して視界に居るディーヴァ(?)を左から順番に銃で撃ち抜いて行った。

 小気味良い発砲音と同じ数だけのディーヴァが次々と崩れ落ちていき、食い止めていた衛兵たちがキズナへお礼を残し門へと走る。

「……こういう時までしっかり統制取れてるとか、この国すげぇな」

 奇しくも桜花と同じ感想を抱くキズナが手際良く排除していくと、結構な数のディーヴァが居た。
 動きが遅いのもあるが、何より厄介だった耐久性がまるで嘘のように低い。へたをすると壊した後に自爆する事もあるので一体でも危険なのに、今回は作業的に駆逐できている。

 それだけに疑問はどんどん膨らんでいくのだが、少し離れた先で桜花も順調に倒しているのを察してまずは安全の確保に努めた。

「消火の方は俺の出る幕はねぇな……死人もいなさそうだし、なんだったんだろうな」

 一応多めに弾倉は持ってきてあるので数発残っていた弾倉を新しいのに入れ替えて、暗視機能付きの単眼鏡を取り出しざっくりと桜花のいる辺りを探してみる。
 すると百メートルほど先の街道で数体のディーヴァをまとめて大鎌で切り伏せていた。

「……なんか死神みたいな奴だな」

 白衣を黒くしたらそれだけで死神の仮装です。と言い切れそうな桜花の格好の方に注目しながら感想をつぶやく。
 そんな桜花に死角から一体のディーヴァが近づくが、キズナが数発撃って牽制した直後に大鎌が首を刎ねた。そのまま桜花はキズナに軽く手を上げて礼を示す。

「向こうも苦戦してねぇならバケツリレーの手伝いでもするか。これ以上は無駄撃ちになりそうだしな」

 キズナも桜花へ手を振りなおして門の方へ向かおうとすると、一瞬影が差した。
 何だろうかと夜空を仰ぎ見ると月に重なる様に飛行機の影のようなものが浮かんでいる。
 それはほんの数瞬、滞空した後……斜めに傾いで急降下を始めた。

「あん? 空挺騎士……じゃねぇよな?」

 ちょうど両翼を広げたその姿は飛竜のようにも思えたが、空挺騎士団であれば誰かが乗っているはずの場所に誰も居ない。
 それにその影はぐんぐんと速度を上げてキズナたちの方へ……。

 ――退避!! そいつ戦闘機よ!!

 遠すぎて微かにしか聞こえない桜花の絶叫に、キズナが反射的にその場を飛びのいて転がった瞬間だった。
 轟音が連なり掠っただけで致命傷になる5.56㎜の機関砲が鉄の雨を降らせる。

「うおおおっ!?」

 明らかにキズナを狙って放たれた弾丸が地面をえぐり、土埃と砕かれた石があたりの視界を遮った。
 幸いにも桜花の声にいち早く反応したおかげで一発も当たらなかったが、キズナの血の気が引く。
 唐突な破壊音と甲高い飛行音に消火に当たる衛兵たちも、何事かと一斉に振り返りキズナの安否を確認しようと数名が駆け寄ろうとした。

「離れろ!! 当たると即死すんぞ!!」

 キズナは大声を張り上げながら門と反対側に走り出し、桜花の方へと向かう。
 その間も旋回しては戦闘機はキズナを執拗に狙い発砲を繰り返した。

「なんでこう!! 俺は機械に好かれんだろうな!!」

 夜梅雨に濡れた草を踏み散らかし、青臭い汁と砂に巻かれながら必死で走る。
 それなりに足は速いが最初に避けた時、靴の紐が片方ほどけてしまい……やたらと動きにくい。

「キズナ! 伏せなさい!! EIMS、形状大楯!!」
「頼む!!」

 間一髪、銃撃される前に桜花と合流したキズナが滑り込むように桜花の背後へ逃げる。
 桜花は発砲音とえぐれた地面から銃撃の威力を把握しEIMSで盾を作った。
 
『警告、盾を斜めに構えることを推奨。敵機の兵装変更を確認しました』
「「……はい?」」

 これで大丈夫、と一安心した瞬間。EIMSが無慈悲な警告を飛ばしてきて桜花とキズナが顔を見合わせながら唇をへの字に曲げる。

「逃げるか?」
「もう無理よ!? 覚悟決めて!!」

 次の瞬間、頭上からカキンッ! と何かを切り離す音がする。嫌な予感がして桜花とキズナが盾の影から見上げると、用は済んだとばかりに高速で離脱する戦闘機と……小さな丸い点がどんどん大きくなってくるのが見えた。

「ド畜生!! ここら一体吹っ飛ばす気か!?」
「伏せて!! 口を半開きにして耳を塞いで!!」

 もはや徒歩で離脱するだけ無駄だと判断して、盾を背負い桜花はキズナに覆いかぶさる。
 EIMSも緊急と判断して桜花の背中と盾の間にありったけの緩衝機構を自動構築した。

「お前っ!」

 キズナの無事を優先させた桜花の行動にキズナが声を上げた瞬間。
 対地爆弾が直撃した。
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