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第七十三話 事情聴取

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 ホクトとサクヤが、饕餮とうてつのシエンと、八咫烏のミサキを召喚術で契約した事で、メフィス教授のみならず、シェスター教授や他の教授陣が大騒ぎになった。

 先ず、未知の魔物を召喚したという事。

 さらに、その魔物が強力な個体だという事。

 最後に、一番教師達が問題にしたのは、ホクトとサクヤが使用した未知の言語での呪文と、未知の魔法陣だった。
 中には、呪文と召喚魔法陣の開示をホクトとサクヤへ求めようとした教授陣も居たようだが、シェスター教授とメフィス教授がそれを止めた。学園長も、魔術師の秘匿する呪文や術式を詮索するのは、マナー違反だと反対する。しかも、教師が生徒の成果を横取りする様な事は恥ずべきことであると、キツく釘を刺した為、学園長、シェスター教授、メフィス教授の3人で、話を聴くにとどめる事になった。




「なるほど、五芒星や六芒星を魔法陣に使う意味は分かりました。ところどころ使用されている魔法文字の有用性も気になりますが、力のある言葉なのでしょう」

 メフィス教授は、ホクトとサクヤが魔法陣に使った、漢字について聞きたそうにしていたが、何とか自重していた。

「私は、そのヤタガラスやトウテツと言う魔物に興味を惹かれますね」

 シェスター教授も、ホクト達が使った未知の文字に興味を持った。エルフとしては、二人よりもはるかに年長のシェスターとしては、自分が知らない知識を、年若い二人が使った事に驚きを感じていた。ただ、今は魔物学者でもある自分の興味は、ヤタガラスとトウテツの方に向かっていた。

 新種の魔物が発見されるのは実は珍しくない。何故なら魔物と言う物は、生まれた環境や育つ環境で、突然変異や進化をする事が知られているからだ。実際、シェスター自身も何度も新種の魔物を発見している。ただ、ヤタガラスとトウテツは、シェスターが今まで研究してきた魔物とは、何かが違った。

「先ず、ヤタガラスもトウテツも、身体の大きさを変化させる事が出来ると言う事が異常です。確かに最高位の龍種などは、人化や身体の大きさを変えたりする事が出来ると言われていますが、伝説レベルのお話です。
 それと、ホクト君達が召喚したヤタガラスとトウテツは、使役した主人以外とも意思の疎通、いえ、会話が出来ると聞きました。これも高位の龍なら分かるんですが…………」

「いえ、シェスター教授。実はトウテツやヤタガラスは、厳密には魔物と言うよりも、神霊に近い存在なのです」

 質問途中でひとり考え込むシェスターに、ホクトが訂正を入れる。

「そうか、神霊を召喚出来たという事が、信じられませんが、精霊ならば会話も成り立ちますね。ヤタガラスはまだしも、トウテツの姿が精霊とはかけ離れていたので、その可能性を排除していました。

 なるほど、神霊ですか、トウテツとヤタガラスがどういった存在なのか、検証するのが楽しみですね」

「ウォホォン!」

 暴走し始めたシェスター教授を、王立ロマリア学園の学長、ダプトンが止めた。

「シェスター教授、教授の興味は後回しにして下さい」

「失礼しました」

「それで、ホクト君、サクヤ君、トウテツとヤタガラスは、危険はないのだね。
 特にホクト君がトウテツを召喚した時、その時学園に居た複数の生徒が気絶したと聞いたのだが」

 ホクトが饕餮とうてつを召喚し、契約する際の魔力の奔流と威圧感で、近くに居た生徒が気絶するハプニングがあった。

「すいません。半分以上は僕の所為です」

 ホクトがダプトンに頭を下げて謝る。
 実際、饕餮を屈服させる為にした、魔力と闘気の解放が、耐性の無い生徒達にはキツかったと言うのが真相だった。

「……なるほど、強大な神霊をも力で抑えつける事が出来るのなら問題はないか。

 では、私からはこれ以上言うことはない。ただ、可能な範囲で、シェスター教授やメフィス教授に協力して貰えると有り難い」

「「分かりました」」

 学園長の要請をホクトとサクヤは了承した。
 八咫烏や饕餮に関しても、ホクトやサクヤも、その能力を把握していない。世界を超えての召喚なので、どういった能力を持つのか、ホクト達も検証しなければいけないと思っていた。

 八咫烏は、太陽の化身と言われていたので、属性としては想像出来るが、饕餮は、魔を貪るモノと言われている。それが、この世界でどのような力を得ているのか、ホクトも検証しないと分からないのだから。

「それでは、くれぐれも召喚獣の扱いに気をつけてください。他の生徒達に危害が及ばぬよう、お願いしますよ」

「「はい、分かりました」」

「では、行ってよろしい」

「「失礼しました」」





「ふぅ」

 ホクトとサクヤが退室した後、ダプトンは思わず息を吐き出す。

「ホクト君にサクヤ君ですか、…………つくづく規格外の生徒が入学してしまいましたね」

「まあ、学園長。ホクト君とサクヤさんは、良い子達ですよ。問題を起こす事はないと思います」

「そうですね。素直ですし、勉強熱心です」

 シェスターとメフィスが、ホクトとサクヤのフォローをする。

「いえ、私もそれは心配していません。

 でも惜しいですね。彼がエルフでなければ、男爵家の家柄ならば、高位の貴族家から引く手数多でしたでしょうに」

 種族間差別が法律で禁じられてはいても、実際には存在しているのが現実だ。それは高位の貴族家になる程顕著だったりする。
 他の種族に対して、人口が多い以外、平凡な能力しか持たない人族の貴族は、そういった選民意識を心の支えとしているのだろう。
 その為に、ホクトの様な優秀な人材が、将来的には平民として生きなければならないという現実に、ダプトンは大きく溜息を吐く。

 それを、同じエルフのシェスターも、バンパイヤであるメフィスも、優秀な彼等の将来を憂いた。




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