カオル、白魔女になります!

矢野 零時

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イバラの森大戦

15 次の日

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 朝が来て、窓から明るい日が入ってくると、カオルはすぐにベッドから飛び起きました。
 カオルは、パジャマからいつもの服に着変えると、胸ポケットに杖を入れ、クマのぬいぐるみをリュックに入れて背負い、ホウキを肩にかつぎました。
 やる気満々のカオルはサンダルをはくと部屋から出て螺旋階段をおりていきました。すると、下でニーナとトムが待っていたのです。
「おはよう、カオル」と、ニーナとトムは声をあわせて言いました。
「お二人さんも、私と同じシンドの部屋にいくつもりなのかしら?」
「いや違うよ。今日はレイモンドの旅立ちの日だね。お別れの挨拶をしようと思ってさ」と、トム。
「お別れの朝食会でもしようかなと考えてみたのよ」と言ったニーナは、にやついています。
「そうよね。お別れ会は必要だわ」
「ほら、うわさをすれば影。レイモンドがおりてきたわよ」
 カオルがニーナの視線を追って顔をあげると、レイモンドが螺旋階段をおりてくるのが見えました。
「レイモンド、クニッパ国に帰るんでしょう?」
 ニーナが、そう言うとレイモンドはうなずいていました。
「じゃ、朝食で送別会だね。みんなで、同じ物を食べよう!」
「何を食べたらいいのかな?」とカオルはニーナに聞きました。
「もちろん、デコレーションケーキよ。ママに言って、切り分けてもらってあるわよ」と言って、ニーナはドナレストランのテーブルのひとつを指さしました。指さされたテーブルの上には、予約席と書かれた立て札といつしょに四つの皿に大きなケーキがのせらていたのです。
 ニーナの案内でレイモンドたちはそのテーブルに行ってすわりました。
「お別れは楽しくね。さあ、食べましょう!」
 みんなでうなずき、置かれているフォークを手に食べ出しました。カオルはお腹が空いていたので、ペロリとすぐに食べることができました。グラスに入ったレモネードも添えられていたので、それを飲みながら、みんなの顔を見ていました。

 レイモンドがケーキを食べ終えた頃、グリスが笑いながら近づいてきたのです。
 前もって打ち合わせをしていたのでしょうか。グリスはイバラの花束を手に持ってやってきたのです。
「レイモンド。お別れだね。クニッパ国で畑を復活させることを期待しているよ。ところで、これをイバラの木々に向かって近づければ、正門をふさいでいるイバラたちは、きみを通してくれる」
「ありがとうございます」と言ってレイモンドは花束を受け取り、グリスに頭をさげていました。
「そろそろ、まいります」
 レイモンドがそう言って、みんなに背を向けて歩き出すと、小屋の出入口が現れたのです。グリスやカオルたちは出入口に近づいて並び、レイモンドに向かって手をふりました。やがて、レイモンドはイバラの木々の中に消えて行きました。

「ぼくはネコたちに朝の食事をさせないとね」とトムが言い、「使った皿とフォークをまずかたづけないといけないわ。それは私にまかせて。ドナレストランに行ったら、少しの間、ママの手伝いをするつもりよ」とニーナは言って、二人はカオルから離れていきました。
「私も、そろそろ部屋に戻らないと生徒たちがやってきてしまいますのでね」と言うと、グリスは薄れて見えなくなっていました。

 一人残されたカオルは、何をすべきか思い出し、すぐにシンドの部屋に行きました。
 シンドは入ってきたカオルの顔を見ると話を始めました。待っていてくれたのでしょうか?
「この教室に集まってくれた人たちは、昨日うまく小石をあげることができなかった人たちですね。でも、大丈夫です。今日の授業で小石をあつかうことがうまくなりますよ」
 カオルは、他の四人の生徒たちと一緒にうなずいていました。
「無意識だったかもしれませんが、あなたがたは大事な物を浮かしたことが、すでにあるはずなんです。ぜひ、その時のことを思い出してください。それができれば、何度でも石を浮かすことができますよ」

 すぐに、生徒たちは過去の出来事を思い出していました。
「シンド先生、そうですよね。私も転んで手に持っていたアンパンを放りあげてしまったことがありました。汚れたら食べられなくなると思ったんです。すると、アンパンが空に浮いていたので、すばやく起きて両手を出したら、その上にアンパンが落ちてきました」
「先生、私も似たようなことがありました。妹が小さくて赤ちゃんだった時です。ゆりかごから勝手に出てきて、今にも落ちそうになったんです。チヨちゃん、落ちないでと思うと、チヨちゃんが少しの間、空に浮いてくれたんです。その間にチヨちゃんのところに行って抱きしめることができました。あっ、すいません。チヨちゃんというのは私の妹の名前です」
「そうでしょう。皆さんはその時のことを思い出して練習に励んでください。後は何回も繰り返すことだけです」と言って、シンドは笑っていました。
 カオルも、笑っていました。昨日の夜、ぬいぐるみのクマを動かすことができていたのですから、それと同じように小石を動かせばいいだけのはずです。

 みんなが、シンドからもらった小石で練習を始めたので、カオルもさっそく杖を出して小石に向かって念をかけ出しました。
 やがてカオルは小石を自分の頭の高さまで持ち上げられるようになりました。でも、その時間は三十秒程度の本当に短い間でした。何度もそれができるようになると、カオルは額にうっすらと汗をかいていました。
 

「じゃ、次は、それを飛ばすことができるかどうか、試してみてください」と言って、シンドは生徒たちに新しい課題を与えました。
 すると、部屋はひろがり出し、学校の体育館のようになったのです。
「よし、やってやる」と言った生徒たちは、小石を足元から浮きあがらせると飛ばしました。でも、飛ばした石が足元で転がしてしまう者や、遠くに飛ばすことができなかった者、いろんな生徒たちが出てきていました。

「みなさん、この訓練をもっとやりたいでしょう?」と、シンドが言うと、どの生徒もうなずいていました。
「それでは、みなさんが飛ばした石をすぐに手元に戻してくれるように風の精霊に頼んでおきます。これで、続けて小石を飛ばすことができますよ」
 シンドがそう言うと、飛んで行っていた小石はすぐに生徒たちの足元に飛んで戻ってきました。
 これで生徒たちは何度でも小石を飛ばすことができます。それを知った生徒たちは安心をして次から次へと続けて小石を飛ばし出したのです。

 いつの間にか、生徒の間で、飛ばす競争が始まったようです。
 競争となれば、カオルも参加しない訳にはいきません。何回も、小石を飛ばし続けました。
 やがてカオルは二番目に遠い所に飛ばすことができるようになりました。
 でも、ここで止めるつもりはありません。
 さらに何度も飛ばし続け、カオルの飛ばした小石が一番遠くに飛ぶようになっていました。

「じゃ、今度は的に当ててください」
 シンドは、さらに一段高い課題を生徒たちに与えたのです。 
 シンドが指をパチンとはじくと、小石が一番遠く飛んで行った所に丸が書かれた立て札が立っていたのでした。
 他の生徒たちといっしょにカオルも的をめがけて飛ばし始めました。でも、なかなか的にはあたりません。的に当てられるようになった生徒は、シンドに頭をさげて他の教室に行ってしまいました。

 とうとカオル一人になりました。
 でもカオルは一人になっても、小石の的当てを続けました。そのおかげで、小石を必ず的の真ん中に向かって飛ばせるようになっていました。
「いいね。かなりのスピードが出ている。剛速球だね」と、シンドは喜んでいました。


 
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