おにぎり好きな天才放浪画家が、異世界転移で絵を実体化させる『画聖』の力を手に入れる話

もう書かないって言ったよね?

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第6話 料理注文と美人画注文

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「み、見回りと配達の仕事がお、多いんだな。は、配達なら出来そうなんだな」
「配達は馬を持ってないと受けられないぜ。馬並みに速く走れて、大量の荷物を抱えて走れるなら話は別だけどな」
「そ、それは無理なんだな。ト、トラックには、な、なれないんだな」

 清は冒険者ギルドの室内に立てられている立て札の依頼を読んで、カイルに言ってみた。
 配達依頼は馬を持っていれば、一人でも受けられるが、馬は購入するにも維持するにもお金がかかる。
 購入するには、金貨15枚、銀貨で150枚必要だ。カイルに言われて、清は配達の仕事を諦めた。
 まあ、その前に冒険者試験に合格しないと依頼は受けられない。

「よ~し、金が入ったから飯に行くぞ」
「あんたの奢りなら行ってもいいわよ」
「はぁ? お前に奢るぐらいなら、清に奢った方がマシだ。自分の分は自分で払え」
「そうね。あんたに女を養う甲斐性を期待する方が馬鹿ね。一生一人分払うのが精一杯でしょうからね」
「え? 女がいるのか? どこにいるんだ? 全然見えねぇな~」

 カイルとジェシカの二人の口喧嘩はまだ続いているが、清とクレアは外に出た。
 カイルが目の前のジェシカを無視して、キョロキョロ女を探している。
 長い赤髪をツインテールにしているのが女だが、気づかずに外に出て行った。

「アイツ、ブッ殺す!」とジェシカもギルドを出て行ったが、悲鳴は聞こえてこない。
 殺すのは今じゃないようだ。

 ミルの町は土の道と煉瓦の道がある。
 土の道は馬車が通ると砂埃が舞うので、この近くに飯屋はない。飯屋があるのは煉瓦道の近くだ。
 土道にある冒険者ギルドから四人は離れて、屋外に白い布のテント屋根を広げている飯屋に向かった。

 飯屋は雨の日は狭い屋内だけで営業するが、晴れている日は外まで使って営業している。
 と言っても、四人用の四角いテーブルが、六個並んでいるだけだ。
 客が30人も来れば、すぐに満員になってしまう。

「キヨシは千切りキャベツでいいな? 俺の奢りなんだから文句言うなよ」
「も、文句は食べてみるまで、わ、分からないんだな。む、難しい事は分からないけど、お、美味しいか、マ、マズイかは分かるんだな」

 飯屋に到着すると、外のテーブルに四人は座った。
 早速カイルが清の料理を決めたが、銅貨1枚のキャベツ半玉を千切りにしただけの料理だ。
 生が嫌なら、頼めば塩コショウで炒めてくれるが、もちろん値段は同じ銅貨1枚だ。

「あんた、本当にケチね。キヨシ、銅貨5枚までなら何でも注文していいわよ。その代わりに私の似顔絵を描いてちょうだい。本物通りに綺麗に描けたら、銀貨5枚で売れるでしょうからね」
「ぶうふっー‼︎ ぷっくふふふ~」

 料理の注文ではなく、清に美人画の注文をしたジェシカに、カイルは思い切り吹き出した。
 右手で口を押さえて、必死に笑うのを我慢している。どんなに頑張っても、なれるのは美少年だと思っている。
 ジェシカには美人画に圧倒的に必要な色気が全然足りない。

「ゔあ? 何笑ってんのよ」
「別に~。笑ってねえよ。キヨシ、綺麗に描いてやれよ。不細工な絵だと誰も買わないからな」
「わ、分かったんだな」

 睨みつけてきたジェシカに、カイルは笑いを飲み込んで、清に実物よりも綺麗に描くように言った。
 特に胸を実物よりも数倍大きく描くように言いたかったが、それは笑いと一緒に我慢して飲み込んだ。

「はい、お待ちどうさま」
「おお! 待ってました! やっぱり肉食べないと強くなれないからな」
「肉食べて強くなれるなら苦労しないわよ。馬鹿は単純でいいわね」
「確かに牛乳飲んでも、もう大きくなるのは無理そうだな。可哀想に、賢いと悲しい現実がよく見えるんだな」
「はぁ? 何の話してんのよ」

 清がスケッチブックを取り出して、ジェシカの絵を描いているが、注文した料理を飯屋のおばちゃんが持って来た。
 カイルは挽き肉パン、ジェシカはキノコパスタ、クレアはコロッケ、清は千切りキャベツだ。
 カイルとジェシカが喧嘩しているが、クレアは丸皿に乗っているコロッケ四個のうち、二個を清のキャベツに乗せた。

「このコロッケにはキャベツが合うのよ。食べてみて」
「あ、ありがとうなんだな。ク、クレアさんの似顔絵も描くんだな」
「ふふっ。絵のモデルになるなんて初めてで、ちょっと恥ずかしいな」
 
 日本でもコロッケに千切りキャベツは定番だ。
 あとは醤油があれば完璧だが、この飯屋にはソースしか置いていない。
 マヨネーズやケチャップ、ぽん酢や塩、そのまま食べるという奴もいるが、そいつらにコロッケを食う資格はない。
 醤油以外で唯一許されるのは、エビフライと同じでタルタルソースだけだ。

「で、出来たんだな」

 話が脱線してしまったが、三人が料理を食べている間も、清はジェシカの絵を描き続けていた。
 黒鉛筆だけで描いた絵にタイトルを付けるなら『キノコパスタを食べる少女』になる。

「え? ちょっと早過ぎるわよ。適当に描いてないでしょうね?」
「だ、大丈夫なんだな」

 制作時間は10分あるかどうかだ。ジェシカが疑うのも無理はない。
 清は自信ありげな顔で椅子から立ち上がると、スケッチブックをジェシカに渡した。

「本当でしょうね~? これで下手だったら、銅貨1枚も払わないわよ」

 スケッチブックを半信半疑で受けると、ジェシカは白黒で描かれた自分の似顔絵を見た。
 眉毛は細く凛々しく、目は獲物を狩る肉食獣のように鋭く、唇はラテン系の女性のように少し分厚くセクシーだ。
 実物よりも4割り増しぐらいに綺麗に描かれているが、清の目にはそう見えたから仕方ない。

「何これ……私じゃないみたい。私って、こんなに綺麗だったのね」
「はぁ? 何言ってんだよ。まるで別人じゃねぇか。清、綺麗に描き過ぎなんだよ」

 ジェシカは自分の似顔絵に見惚れているが、横からカイルが絵を見て、清に抗議した。

「き、綺麗に描いたんじゃなくて、き、綺麗な人を描いたから、き、綺麗な絵になったんだな」
「ちょっとあんた! 分かってるじゃない~!」
「い、痛いんだな」

 カイルの抗議に、清が普通に描いたと反論すると、ジェシカが嬉しそうに、清の背中をバシバシ叩き始めた。
 綺麗なモデルだと褒められて、嬉しいようだ。清は天然だが、女心がよく分かっている。
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