6 / 33
第6話 料理注文と美人画注文
しおりを挟む
「み、見回りと配達の仕事がお、多いんだな。は、配達なら出来そうなんだな」
「配達は馬を持ってないと受けられないぜ。馬並みに速く走れて、大量の荷物を抱えて走れるなら話は別だけどな」
「そ、それは無理なんだな。ト、トラックには、な、なれないんだな」
清は冒険者ギルドの室内に立てられている立て札の依頼を読んで、カイルに言ってみた。
配達依頼は馬を持っていれば、一人でも受けられるが、馬は購入するにも維持するにもお金がかかる。
購入するには、金貨15枚、銀貨で150枚必要だ。カイルに言われて、清は配達の仕事を諦めた。
まあ、その前に冒険者試験に合格しないと依頼は受けられない。
「よ~し、金が入ったから飯に行くぞ」
「あんたの奢りなら行ってもいいわよ」
「はぁ? お前に奢るぐらいなら、清に奢った方がマシだ。自分の分は自分で払え」
「そうね。あんたに女を養う甲斐性を期待する方が馬鹿ね。一生一人分払うのが精一杯でしょうからね」
「え? 女がいるのか? どこにいるんだ? 全然見えねぇな~」
カイルとジェシカの二人の口喧嘩はまだ続いているが、清とクレアは外に出た。
カイルが目の前のジェシカを無視して、キョロキョロ女を探している。
長い赤髪をツインテールにしているのが女だが、気づかずに外に出て行った。
「アイツ、ブッ殺す!」とジェシカもギルドを出て行ったが、悲鳴は聞こえてこない。
殺すのは今じゃないようだ。
ミルの町は土の道と煉瓦の道がある。
土の道は馬車が通ると砂埃が舞うので、この近くに飯屋はない。飯屋があるのは煉瓦道の近くだ。
土道にある冒険者ギルドから四人は離れて、屋外に白い布のテント屋根を広げている飯屋に向かった。
飯屋は雨の日は狭い屋内だけで営業するが、晴れている日は外まで使って営業している。
と言っても、四人用の四角いテーブルが、六個並んでいるだけだ。
客が30人も来れば、すぐに満員になってしまう。
「キヨシは千切りキャベツでいいな? 俺の奢りなんだから文句言うなよ」
「も、文句は食べてみるまで、わ、分からないんだな。む、難しい事は分からないけど、お、美味しいか、マ、マズイかは分かるんだな」
飯屋に到着すると、外のテーブルに四人は座った。
早速カイルが清の料理を決めたが、銅貨1枚のキャベツ半玉を千切りにしただけの料理だ。
生が嫌なら、頼めば塩コショウで炒めてくれるが、もちろん値段は同じ銅貨1枚だ。
「あんた、本当にケチね。キヨシ、銅貨5枚までなら何でも注文していいわよ。その代わりに私の似顔絵を描いてちょうだい。本物通りに綺麗に描けたら、銀貨5枚で売れるでしょうからね」
「ぶうふっー‼︎ ぷっくふふふ~」
料理の注文ではなく、清に美人画の注文をしたジェシカに、カイルは思い切り吹き出した。
右手で口を押さえて、必死に笑うのを我慢している。どんなに頑張っても、なれるのは美少年だと思っている。
ジェシカには美人画に圧倒的に必要な色気が全然足りない。
「ゔあ? 何笑ってんのよ」
「別に~。笑ってねえよ。キヨシ、綺麗に描いてやれよ。不細工な絵だと誰も買わないからな」
「わ、分かったんだな」
睨みつけてきたジェシカに、カイルは笑いを飲み込んで、清に実物よりも綺麗に描くように言った。
特に胸を実物よりも数倍大きく描くように言いたかったが、それは笑いと一緒に我慢して飲み込んだ。
「はい、お待ちどうさま」
「おお! 待ってました! やっぱり肉食べないと強くなれないからな」
「肉食べて強くなれるなら苦労しないわよ。馬鹿は単純でいいわね」
「確かに牛乳飲んでも、もう大きくなるのは無理そうだな。可哀想に、賢いと悲しい現実がよく見えるんだな」
「はぁ? 何の話してんのよ」
清がスケッチブックを取り出して、ジェシカの絵を描いているが、注文した料理を飯屋のおばちゃんが持って来た。
カイルは挽き肉パン、ジェシカはキノコパスタ、クレアはコロッケ、清は千切りキャベツだ。
カイルとジェシカが喧嘩しているが、クレアは丸皿に乗っているコロッケ四個のうち、二個を清のキャベツに乗せた。
「このコロッケにはキャベツが合うのよ。食べてみて」
「あ、ありがとうなんだな。ク、クレアさんの似顔絵も描くんだな」
「ふふっ。絵のモデルになるなんて初めてで、ちょっと恥ずかしいな」
日本でもコロッケに千切りキャベツは定番だ。
あとは醤油があれば完璧だが、この飯屋にはソースしか置いていない。
マヨネーズやケチャップ、ぽん酢や塩、そのまま食べるという奴もいるが、そいつらにコロッケを食う資格はない。
醤油以外で唯一許されるのは、エビフライと同じでタルタルソースだけだ。
「で、出来たんだな」
話が脱線してしまったが、三人が料理を食べている間も、清はジェシカの絵を描き続けていた。
黒鉛筆だけで描いた絵にタイトルを付けるなら『キノコパスタを食べる少女』になる。
「え? ちょっと早過ぎるわよ。適当に描いてないでしょうね?」
「だ、大丈夫なんだな」
制作時間は10分あるかどうかだ。ジェシカが疑うのも無理はない。
清は自信ありげな顔で椅子から立ち上がると、スケッチブックをジェシカに渡した。
「本当でしょうね~? これで下手だったら、銅貨1枚も払わないわよ」
スケッチブックを半信半疑で受けると、ジェシカは白黒で描かれた自分の似顔絵を見た。
眉毛は細く凛々しく、目は獲物を狩る肉食獣のように鋭く、唇はラテン系の女性のように少し分厚くセクシーだ。
実物よりも4割り増しぐらいに綺麗に描かれているが、清の目にはそう見えたから仕方ない。
「何これ……私じゃないみたい。私って、こんなに綺麗だったのね」
「はぁ? 何言ってんだよ。まるで別人じゃねぇか。清、綺麗に描き過ぎなんだよ」
ジェシカは自分の似顔絵に見惚れているが、横からカイルが絵を見て、清に抗議した。
「き、綺麗に描いたんじゃなくて、き、綺麗な人を描いたから、き、綺麗な絵になったんだな」
「ちょっとあんた! 分かってるじゃない~!」
「い、痛いんだな」
カイルの抗議に、清が普通に描いたと反論すると、ジェシカが嬉しそうに、清の背中をバシバシ叩き始めた。
綺麗なモデルだと褒められて、嬉しいようだ。清は天然だが、女心がよく分かっている。
「配達は馬を持ってないと受けられないぜ。馬並みに速く走れて、大量の荷物を抱えて走れるなら話は別だけどな」
「そ、それは無理なんだな。ト、トラックには、な、なれないんだな」
清は冒険者ギルドの室内に立てられている立て札の依頼を読んで、カイルに言ってみた。
配達依頼は馬を持っていれば、一人でも受けられるが、馬は購入するにも維持するにもお金がかかる。
購入するには、金貨15枚、銀貨で150枚必要だ。カイルに言われて、清は配達の仕事を諦めた。
まあ、その前に冒険者試験に合格しないと依頼は受けられない。
「よ~し、金が入ったから飯に行くぞ」
「あんたの奢りなら行ってもいいわよ」
「はぁ? お前に奢るぐらいなら、清に奢った方がマシだ。自分の分は自分で払え」
「そうね。あんたに女を養う甲斐性を期待する方が馬鹿ね。一生一人分払うのが精一杯でしょうからね」
「え? 女がいるのか? どこにいるんだ? 全然見えねぇな~」
カイルとジェシカの二人の口喧嘩はまだ続いているが、清とクレアは外に出た。
カイルが目の前のジェシカを無視して、キョロキョロ女を探している。
長い赤髪をツインテールにしているのが女だが、気づかずに外に出て行った。
「アイツ、ブッ殺す!」とジェシカもギルドを出て行ったが、悲鳴は聞こえてこない。
殺すのは今じゃないようだ。
ミルの町は土の道と煉瓦の道がある。
土の道は馬車が通ると砂埃が舞うので、この近くに飯屋はない。飯屋があるのは煉瓦道の近くだ。
土道にある冒険者ギルドから四人は離れて、屋外に白い布のテント屋根を広げている飯屋に向かった。
飯屋は雨の日は狭い屋内だけで営業するが、晴れている日は外まで使って営業している。
と言っても、四人用の四角いテーブルが、六個並んでいるだけだ。
客が30人も来れば、すぐに満員になってしまう。
「キヨシは千切りキャベツでいいな? 俺の奢りなんだから文句言うなよ」
「も、文句は食べてみるまで、わ、分からないんだな。む、難しい事は分からないけど、お、美味しいか、マ、マズイかは分かるんだな」
飯屋に到着すると、外のテーブルに四人は座った。
早速カイルが清の料理を決めたが、銅貨1枚のキャベツ半玉を千切りにしただけの料理だ。
生が嫌なら、頼めば塩コショウで炒めてくれるが、もちろん値段は同じ銅貨1枚だ。
「あんた、本当にケチね。キヨシ、銅貨5枚までなら何でも注文していいわよ。その代わりに私の似顔絵を描いてちょうだい。本物通りに綺麗に描けたら、銀貨5枚で売れるでしょうからね」
「ぶうふっー‼︎ ぷっくふふふ~」
料理の注文ではなく、清に美人画の注文をしたジェシカに、カイルは思い切り吹き出した。
右手で口を押さえて、必死に笑うのを我慢している。どんなに頑張っても、なれるのは美少年だと思っている。
ジェシカには美人画に圧倒的に必要な色気が全然足りない。
「ゔあ? 何笑ってんのよ」
「別に~。笑ってねえよ。キヨシ、綺麗に描いてやれよ。不細工な絵だと誰も買わないからな」
「わ、分かったんだな」
睨みつけてきたジェシカに、カイルは笑いを飲み込んで、清に実物よりも綺麗に描くように言った。
特に胸を実物よりも数倍大きく描くように言いたかったが、それは笑いと一緒に我慢して飲み込んだ。
「はい、お待ちどうさま」
「おお! 待ってました! やっぱり肉食べないと強くなれないからな」
「肉食べて強くなれるなら苦労しないわよ。馬鹿は単純でいいわね」
「確かに牛乳飲んでも、もう大きくなるのは無理そうだな。可哀想に、賢いと悲しい現実がよく見えるんだな」
「はぁ? 何の話してんのよ」
清がスケッチブックを取り出して、ジェシカの絵を描いているが、注文した料理を飯屋のおばちゃんが持って来た。
カイルは挽き肉パン、ジェシカはキノコパスタ、クレアはコロッケ、清は千切りキャベツだ。
カイルとジェシカが喧嘩しているが、クレアは丸皿に乗っているコロッケ四個のうち、二個を清のキャベツに乗せた。
「このコロッケにはキャベツが合うのよ。食べてみて」
「あ、ありがとうなんだな。ク、クレアさんの似顔絵も描くんだな」
「ふふっ。絵のモデルになるなんて初めてで、ちょっと恥ずかしいな」
日本でもコロッケに千切りキャベツは定番だ。
あとは醤油があれば完璧だが、この飯屋にはソースしか置いていない。
マヨネーズやケチャップ、ぽん酢や塩、そのまま食べるという奴もいるが、そいつらにコロッケを食う資格はない。
醤油以外で唯一許されるのは、エビフライと同じでタルタルソースだけだ。
「で、出来たんだな」
話が脱線してしまったが、三人が料理を食べている間も、清はジェシカの絵を描き続けていた。
黒鉛筆だけで描いた絵にタイトルを付けるなら『キノコパスタを食べる少女』になる。
「え? ちょっと早過ぎるわよ。適当に描いてないでしょうね?」
「だ、大丈夫なんだな」
制作時間は10分あるかどうかだ。ジェシカが疑うのも無理はない。
清は自信ありげな顔で椅子から立ち上がると、スケッチブックをジェシカに渡した。
「本当でしょうね~? これで下手だったら、銅貨1枚も払わないわよ」
スケッチブックを半信半疑で受けると、ジェシカは白黒で描かれた自分の似顔絵を見た。
眉毛は細く凛々しく、目は獲物を狩る肉食獣のように鋭く、唇はラテン系の女性のように少し分厚くセクシーだ。
実物よりも4割り増しぐらいに綺麗に描かれているが、清の目にはそう見えたから仕方ない。
「何これ……私じゃないみたい。私って、こんなに綺麗だったのね」
「はぁ? 何言ってんだよ。まるで別人じゃねぇか。清、綺麗に描き過ぎなんだよ」
ジェシカは自分の似顔絵に見惚れているが、横からカイルが絵を見て、清に抗議した。
「き、綺麗に描いたんじゃなくて、き、綺麗な人を描いたから、き、綺麗な絵になったんだな」
「ちょっとあんた! 分かってるじゃない~!」
「い、痛いんだな」
カイルの抗議に、清が普通に描いたと反論すると、ジェシカが嬉しそうに、清の背中をバシバシ叩き始めた。
綺麗なモデルだと褒められて、嬉しいようだ。清は天然だが、女心がよく分かっている。
0
あなたにおすすめの小説
無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった!
「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」
主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる